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論文データベース(最新論文順)

イランとの選択的パートナーシップを
――新しい中東の現実をふまえた問題管理策を

2007年1月号

ゲーリー・シック コロンビア大学ガルフ2000プロジェクト エグゼクティブ・ディレクター

アメリカとイランは、石油資源を持つペルシャ湾地域における重要なプレーヤーであり、両国の関係がどのようになるかでこの地域の命運が左右される。イランの台頭と強大化、出口の見えないイラクの混迷、そして姿を現しつつあるシーア派の三日月地帯に特徴づけられる新しい中東に対処していくにはどうすればよいのか。重要なのは、イラン問題は当面解決できず、管理していくしかないことを認識することだとレイ・タキーは言う。変化し続けるさまざまな問題をめぐって、アメリカは、イランとの選択的パートナーシップを構築する必要があるし、イランを世界経済と地域安全保障の枠組みに参加させれば、アメリカは共通の懸念についてイランと協力していく基盤を築くことができる、と同氏は指摘している。

いまこそ、包括的中東和平を試みよ

2007年1月号

エドワード・P・ジェレジアン 元駐イスラエル米大使

アラブ・イスラエル紛争に始まり、イラクの混迷、イラン問題、中東地域全域での政治・経済改革の必要性、過激主義、そしてテロリズムにいたるまでの、中東における主要な問題のすべては、不可分に結びついている。一部の問題の管理を試みても、この地域が抱える一連の問題を解決することはできない。アラブ・イスラエル紛争の平和的な解決と、中東全域での政治・経済改革を促してイスラム世界の穏健派を助けることをアメリカの政策目標に据え、包括的交渉戦略をとる以外に手はない。いま求められているのは、中東の平和構築に関与していくという政治的意志である。

論争 トウモロコシは食糧か燃料か

2007年11月号

トム・ダシュル 前米上院議員
C・フォード・ランゲ ミネソタ大学応用経済学・法学教授
ベンジャミン・セナウアー ミネソタ大学応用経済学教授

フォーリン・アフェアーズ日本語版2007年5月号の「エタノール燃料は本当に人と地球に優しいのか」で、C・フォード・ランゲとベンジャミン・セナウアーは、原油価格が高騰するなか、世界的に代替燃料として注目を集めているエタノールも、トウモロコシや大豆を原料として生産する限り、食糧としての供給が奪われることになり、世界の穀物供給を連鎖的に逼迫させ、主要産品の価格を高騰させると警告した。「トウモロコシや大豆を原料とするバイオ燃料の需要増によって主要産品の実勢価格が1%上昇するごとに、世界で食糧難に苦しむ人々の数は1600万人ずつ増えていく」と指摘した両氏は、「エタノールを真にグリーンで持続可能な代替燃料とするには、トウモロコシや大豆ではなく、木や草のセルロースからの生産の実用化を期待するしかない」と論文で結論づけている。以下は、トウモロコシからのエタノール生産を推進する立場から、2人の論文への反論を寄せた前米上院議員のトム・ダシュルの議論と、それに対するランゲ、セナウアー両氏の再反論。

民主国家連合の可能性
――第2のX論文を求めて

2007年1月号

スピーカー
アン=マリー・スロータープリンストン大学ウッドロー・ウィルソン公共・国際問題大学院長
G・ジョン・アイケンベリー
プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン公共・国際問題大学院教授
司会
リチャード・N・ハース
米外交問題評議会(CFR)会長

「 民主国家連合は、現在の漠然とした「民主主義国家コミュニティー」よりも小さな組織とし、厳格な義務を定めた条約に調印した国をメンバーとする。この組織が、国連その他の国際機関の踏み込んだ改革を求めて中心的な役割を果たしていくことも期待できる。国連が必要な改革を断行しない場合には、長期的にはこの民主国家連合が国連に代わる役割を担っていくようになる可能性もある。」(A=M・スローター)

「21世紀のグローバル構造は、複数の層からなるレイヤーケーキのようなものとみなす必要がある。そうした層をなす機構には、グローバルなものもあれば地域的なものもあり、政府の統治スタイルを基準とするものもあるだろう。こうした複数の機構にはそれぞれ役割があって、さまざまな問題を解決するために協力しあう。最終的には誰もが重要視する伝統的な「大国間」メカニズムである安保理が、その頂点にあるような構造ができることを私たちは期待している。」(G・J・アイケンベリー)

感情の衝突
―― 恐れ、屈辱、希望の文化と新世界秩序

2007年1月号

ドミニク・モイジ フランス国際関係研究所上席顧問

西洋世界は「恐れの文化」に揺れ、アラブ・イスラム世界は「屈辱の文化」にとらわれ、アジア地域の多くは「希望の文化」で覆われている。アメリカとヨーロッパは、イスラム過激派テロを前に恐れの文化を共有しながらも分裂し、一方、イスラム世界の屈辱の文化は、イスラム過激派の思想を中心に西洋に対する「憎しみの文化」へと姿を変えつつある。かたや、さまざまな問題を抱えているとはいえ、中国、インドを中心とするアジア地域の指導者と民衆は、西洋とイスラムの「感情の衝突」をよそに、今後に向けた期待を持っており、経済成長が続く限り、アジアでは希望の文化が維持されるだろう。恐れの文化、屈辱の文化、そして希望の文化のダイナミクスと相互作用が、今後長期的に世界を形づくっていくことになるだろう。

「イラン対イスラエル」へと変化した中東紛争の構図

2006年12月号

ゼーブ・シーフ ハーレツ紙記者

ヒズボラが2000年以降、イスラエルの都市センターを脅かす恐れのあるロケットを備蓄していることを察知しながらも、イスラエルはこれまで攻撃を慎んできた。そのイスラエルが、なぜ今回ヒズボラとの紛争の道を選んだのか。それは、ヒズボラとハマスの連帯、イランとヒズボラの連帯を早急に切り崩す必要があると判断したからだ。シリアがロケットをヒズボラに提供し続けていたにもかかわらず、「ダマスカスがイスラエルの攻撃によって危機にさらされることはない」とイスラエルが表明したのも、シリアとの戦端を同時に開くことを避け、シリアを助けるという口実でイランが介入してくるのを阻止したかったからだ。いまや中東紛争の構図は「イランVS.イスラエル」へとシフトしている。イスラエルは、パレスチナ問題をめぐる政治的妥協を試み、来るべきイランとの衝突に備えた政治環境の整備に努める必要がある。

現代版奴隷貿易を阻止するには

2006年12月

イーサン・B・カプスタイン 仏欧州経営大学院(INSEAD)教授

人身売買業者は、貧しい国の貧しい人々に遠い国での高賃金の仕事を約束してその気にさせ、渡航手続き、必要書類の整備、渡航先での仕事を見つけるための資金を法外な金利で貸しつける。しかし、渡航先には仕事はなく、何千ドルもの借金だけが残る。被害者はその後すべての渡航書類を奪われ、偽名を使っての強制労働を強いられる。当局に訴えたり逃亡を試みたりすれば、痛めつけるか殺すと、被害者とその家族は脅される。国連の推計によると、人身売買産業が得る利益は年間約320億ドル。いまや「127カ国の出身者が、137カ国において強制労働を強いられ、搾取されている」。

CFRミーティング
ヒラリー・クリントンが語る
世界を混乱に陥れたブッシュ外交

2006年12月号

スピーカー
ヒラリー・クリントン/米上院議員
司会
ピーター・G・ピーターソン/米外交問題評議会理事長

「アメリカ人は常に、理想主義と現実主義間の創造的な緊張、つまり、世界の現実をそのまま受け入れようとする一方で、かくあるべきと考える状況へと世界をつくり替えたいという熱意の葛藤がつくりだす緊張に正面から取り組んできました。だがブッシュ政権は、この緊張に直面することを回避して、短絡的に世界を善と悪の二つに切りわけ、悪とみなす勢力との対話を拒絶しました」 (H・R・クリントン)

中国の人民元切り上げ問題を考える
――人民元切り上げで「グローバルな不均衡」をなくせるのか

2006年12月号

スティーブン・ローチ モルガンスタンレー・チーフエコノミスト(当時)
デスモンド・ラックマン アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)レジデントフェロー

ワシントンは、中国政府は輸出競争力を強化しようと、人民元レートを人為的に低いレベルにとどめようとしていると批判し、北京が人民元を早急に切り上げることが、アメリカの膨大な経常赤字と中国の巨大な貿易黒字という「グローバルな不均衡」を是正することにつながると主張してきた。しかし、人民元が切り上げられてもアメリカの経常赤字はなくならないとする見方もあれば、人民元が切り上げられなければ、米欧では保護主義が台頭して、グローバル経済の流れが停滞するという議論もある。アメリカの消費者がモノを買いすぎることが問題なのか、それとも、中国が為替操作を通じて輸出競争力を強化しようとしていることが問題なのか。スティーブン・ローチとデスモンド・ラックマンという2人のエコノミストが検証する中国の人民元切り上げ問題。

CFRブリーフィング
北朝鮮経済制裁とイランの核問題の行方

2006年11月号

ライオネル・ビーナー  CFR スタッフライター 

今後、北朝鮮に対する厳格な制裁措置が間違いなく履行されていけば、イランも考えを改めるかもしれないが、現実にそうなるとは思えないし、中国とロシアが、イランに対して強硬な路線へとシフトするとも考えにくい。むしろイランの交渉上の立場は今後強まっていくと考える専門家は多い。北朝鮮は核不拡散条約(NPT)から離脱し、公然と核開発の意図を表明し、プルトニウムの再処理を通じた核分裂物質の生産を試みていたが、イランの場合、ウラン濃縮による核分裂物質の生産を試みているとはいえ、今もNPTに加盟しており、核兵器の開発ではなく、核の平和利用を目指していると繰り返し表明している。ブッシュ政権の高官のなかには、イランのような核開発の初期段階にある相手には、外交的に対処したほうが成果を期待できると考える者もいる。

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