1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

論文データベース(最新論文順)

イランがここにきて、ウラン濃縮のための遠心分離器の設置ペースをスローダウンし、国際原子力機関(IAEA)との協議にも前向きな姿勢をとっていることについて、「遠心分離器を設置することはともかく、それを高速で稼働させることをめぐって技術的問題に遭遇しているようだ」と核不拡散問題の専門家、ゲリー・サモアは指摘する。ただし、この動きは「新たな制裁決議を採択しないように安保理を牽制するための政治的試みの一環とみなすこともできる」と指摘した同氏は、制裁が効果を上 げ、国際社会への対応をめぐってテヘランの強硬派と現実主義者の間に亀裂が生じている可能性を示唆する。一方、イラクのシーア派勢力への武器援助については、米軍によるイランの核施設への軍事攻撃を牽制するための手段だとみる同氏は、(イラクに米軍が釘づけにされていれば)アメリカがイランの核施設を軍事攻撃した場合に、イランは、アメリカ軍を標的にした反撃を行うことができる(その結果、アメリカはイランへの軍事攻撃を行いにくい、ある種の抑止状況に置かれることになる)とコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

国家通貨時代の終わり
――ドル、ユーロ、アジア共通通貨の時代へ

2007年7月号

ベン・ステイル/米外交問題評議会・国際経済担当ディレクター

この数十年間で、金融危機が非常に深刻な事態を伴うようになったのはなぜだろうか。途上国の通貨価値が下落しそうになると、対外債務の返済が困難になることを見越して、内外の現地通貨の保有者はこれを手放して出口へと殺到し、これが通貨危機を誘発する。だが、そうした危機に陥った通貨が「必要とされない通貨」であることに目を向ける必要がある。安全にグローバル化を進めていくには、各国政府は通貨ナショナリズムを捨て去り、市場の不安定化を引き起こす「必要とされない通貨」をなくしていく必要がある。一般に各国政府は自国通貨をドルやユーロに置き換えるべきだし、アジア諸国の場合は、広大な範囲におよぶ多様な経済発展レベルの地域を包み込めるような、単一の多国間通貨を創造するために協力していくべきだろう。

アメリカのリーダーシップを刷新する

2007年7月号

バラク・オバマ/米民主党予備選大統領候補

「アメリカだけでは21世紀型の脅威に対処できないし、また世界もアメリカ抜きではそうした脅威に対処していけない。われわれは孤立主義へと逃げ込むべきではないし、傲慢な態度で世界を押さえつけようとすべきでもない。われわれは行動を起こし、模範を示すことで、世界を主導していかなければならない。……アメリカ人の安全と繁栄は、アメリカの国境の外側に住む人々の安全と繁栄とますます一体化してきている。アメリカの使命は、『世界が安全保障と人間性を共有している』という理解に根ざしたグローバルなリーダーシップを提供することにほかならない。アメリカの時代はまだ終わっていない。だが、新たなパワーを確立しなければならない。アメリカのパワーが衰退に向けて低下しているとみなすのは、世界におけるアメリカの任務と歴史的目的を無視することになる。私が大統領になれば、就任した当日からそうした任務と目的の刷新に取り組んでいく」

グローバルな新世代の課題に立ち向かうには

2007年7月号

ミット・ロムニー
米共和党予備選大統領候補

「イスラム過激派の狙いはただ一つ、近代的なイスラム国家のすべてをカリフの統治に置き換え、アメリカを破壊し、人々を力ずくでもイスラム教に改宗・帰依させることだ。この計画は不合理なように思えるが、実際、彼らの運動はこれを実現することを目的に据えている。……イスラム過激派の脅威はいまそこにある実存的な脅威である。……大統領に選ばれれば、私は真っ先に、中東問題に対処していくための、サミットの開催を求める。……目的は、イスラム過激派を打倒しようと試みるイスラム穏健派を支援する世界戦略を考案することだ。私は、このサミットの結果、繁栄と進歩のためのパートナーシップ構想が誕生すると考えている」

働き口とよりよい生活を求めて、数多くのアフリカの人々が、危険を顧みずに、ヨーロッパを目指して地中海の旅へと繰り出している。アフリカからの移民・難民が殺到しているヨーロッパ諸国は、経済移民および政治・経済難民の受け入れ制度を改革し、域内で調和させる必要性に直面しつつあり、欧州連合(EU)も、これを経済、人道上の緊急課題と捉えだしている。だが、ヨーロッパ各国がこの問題をめぐって、立場を共有しているわけではない。殺到するアフリカからの難民に特に悩まされているのが、地中海沿岸に位置する南ヨーロッパ諸国だ。一方、移民、難民の増大に悩まされる一方で、ヨーロッパ社会の高齢化が進み、出生率が低下するなか、EUは、近い将来に労働力不足に陥ると考えられている。つまり、そこには、アイデンティティーを脅かすアウトサイダーとしての移民、貴重な労働力としての移民という認識上のジレンマがあるだけでなく、その受け入れをめぐって加盟国間に立場の違いがある。

米英の政府関係者は、ここにきて、「イランがタリバーンに武器を提供している証拠が出てきている」と相次いで発言している。だが、シーア派のイランが、スンニ派が主体のタリバーンを支援する必然性が本当にあるだろうかという大きな疑問がある。一方で、タリバーンを短期的に支えることはイランの利益になると指摘する専門家もいる。タリバーンを支援することで、アメリカの戦力バランスを崩すとともに、自国の核開発に寄せられている国際的関心と批判を低下させることができれば、それは、テヘランにプラスに作用する。歴史的にイランとアフガニスタンは複雑な関係にあるが、2001年のタリバーン政権崩壊以降は、少なくとも、両国間の商取引、文化的な交流は進んできたし、イランはカルザイ政権を支援してきた。米英が主張するように、イランがタリバーンに兵器を提供しているとすれば、その思惑は何なのか。米英の批判に対して、イラン政府は「根拠がない」と反論している。

アメリカ政府は人民元は不当に過小評価されており、その結果、中国製品の競争力がますます強化され、グローバル貿易に大きなねじれが生じ、欧米諸国、特にアメリカの貿易収支に(巨額の貿易赤字として)大きなしわ寄せが来ているとみている。ヘンリー・ポールソン米財務長官は最近の米外交問題評議会(CFR)インタビューで次のように語っている。「中国の人民元のレートは中国経済の実態を反映していないし、すでにグローバルな金融システムの主要な一部を担いつつある中国が、経済の実態を反映しないような通貨を持っていることは大いに問題がある。短期的には、われわれは、より大きな柔軟性(変動幅)を導入するように求めていく。中国は人民元の為替レートを切り上げる必要がある」。しかし、人民元レートをいじった程度では、アメリカの巨大な貿易赤字は減少しないし、中国における政治的反動を誘発する恐れがあると指摘する専門家もいる。

穏健派ムスリム同胞団との対話を試みよ

2007年6月号

ロバート・S・レイケン ニクソン・センター、 移民・国家安全保障プログラムディレクター
スティーブン・ブルック ニクソン・センター、リサーチアソシエート

ザワヒリのようなジハード戦士たちは、ムスリム同胞団のことを、「グローバルなジハード(世界聖戦)を拒絶して、民主主義を擁護する」団体とみなし、毛嫌いしている。そうだとすれば、同胞団はまさにアメリカがイスラム世界で必要としている味方、つまりイスラム「穏健派」ではないのか。同胞団を理解する最初のステップは二つ。まずは同胞団を、急進的イスラム主義から離して考えること。次に、異なる国々で活動する同胞団系列のグループの間には、大きな違いが存在することを知ることだ。これらの多様性は、ワシントンが「同胞団」に対して是々非々のアプローチをとる必要があることを示唆している。

時は1940年代のヨーロッパ。目の前には困窮したユダヤ人がいる。上司からはビザに「許可」印を押さなくて済むように手を尽くせと命令されている。ユダヤ人を本国政府は受け入れたくないと考えている。「許可」を出し過ぎれば、あなたの今後のキャリアに影響が出る。だが、本国からの指令に忠実に従えば、多くのユダヤ人を死に追いやることになる……。多くの外交官は保身に走ったが、勇気ある人々もいた。ブラジル、中国、オランダ、イタリア、ポルトガル、ルーマニア、スペイン、スイス、トルコ、バチカン、ユーゴスラビアの外交官だけでなく、日本やドイツの外交官のなかにも、窮状にある人々を救うために、自分のキャリア、名声、ときには生命さえも危険にさらした人々がいた。

石油シーレーンの安全確保と海軍力

2007年5月号

デニス・C・ブレア 元米太平洋軍司令官
ケネス・リーバーサル ミシガン大学政治学教授

ますます多くの国が中東からの輸入石油への依存を高めるなか、グローバルな石油シーレーンの安全確保が注目されるようになり、中国やインドのように、石油タンカーを守るために外洋展開型海軍の整備を検討している国もある。だが一般に考えられているのとは逆に、テロ集団の行動や紛争によって、石油シーレーンの航行が脅かされるリスクはかなり小さくなってきている。タンカーが大型化し頑丈につくられるようになったために、機雷、潜水艦、そしてミサイル攻撃に対しても打たれ強くなっているし、仮にテロリストが石油タンカーをシンガポール海峡に沈めることに成功しても、海峡を封鎖できるわけではない。唯一、海洋の交通路を完全に遮断する力を持つ米海軍も、公海上の航行の安全を守ることを心がけており、国際輸送に干渉するような行動をとることはあり得ない。

Page Top