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論文データベース(最新論文順)

中国のパワーを検証する
――軍事、経済、ソフトパワーの実態と課題

2007年1月号

デビッド・M・ランプトン 米中関係全米委員会前会長

アメリカを含む世界各国は、中国の軍事パワーを過大評価し、経済面でも、売り手、輸出業者としての中国の役割を過大評価し、買い手、輸入業者、投資家としての中国の活動を過小評価している。そして、中国のソフトパワーの拡大はおおむね無視されている。一方の中国は、経済成長を持続させることこそ、現在の共産党政府の政治的正統性を維持していくうえでの不可欠の要因とみている。そのために、(技術、投資、戦略物資などの)資源を可能な限り国際社会から調達し、対外的脅威を緩和させようと心がけている。だが、国内での政治的緊張に直面すると対外的ナショナリズムのカードを切ろうとする傾向があるし、経済パフォーマンスが低下すれば、政府の正統性も、中国のソフトパワーも損なわれていく。状況が流動的であるがゆえに、中国のパワーの実態を明確に把握しておく必要がある。

CFRインタビュー
ブッシュ政権のイラク新路線と
二つのギャンブル

2007年1月号

リチャード・N・ハース 米外交問題評議会(CFR)会長

ブッシュ政権は、「イラクへの米軍増派という賭け」に打って出ただけでなく、「イラクのマリキ政権が大きな変貌を遂げ、シーア派主導の政府よりも、国民和解政府の実現を試みていくこと」に賭けている。イラク政府が国民和解を実現できるかどうかが今回のギャンブルを左右するもっとも重要なポイントとみなすリチャード・ハースは、「ブッシュ政権の賭けが実を結ぶように期待したいが、マリキ首相や彼の側近が、特定の宗派ではなく、イラク国家の指導者としてのアイデンティティーを意識しているようには思えない」と語る。米軍の増派でアメリカがイラクで成功する見込みを高められると大統領は考えているのかもしれないが、イラクからの撤退を検討せざるを得ない状況に陥るリスクも高めてしまったとみるハースは、有り体に言えば、米軍の増派決定など戦略とは呼び得ないし、米軍の増派を中心とする政策路線で、状況を改善できるとは考えられないと語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

アメリカ、イラク、 そして対テロ戦争

2007年1月号

リー・クアンユー シンガポール政府顧問相

イラク政策をめぐっては、シンガポール政府はブッシュ政権を手堅く支持してきたが、米軍がイラク軍、警察組織を解体し、すべてのバース党員をイラク政府から追放するに及び、私はアメリカのやり方に違和感を覚え始めた。これによって、政治的、社会的な空白がつくりだされるのではないかと懸念したからだ。自己統治という歴史も伝統もない国にあっては、自由で公正な選挙を実施することが、民主主義確立のための最初のステップになるわけではない。混乱のなかにあるとはいえ、イラク問題の解決に向けて決意をもって対応していけば、現在のイラク戦争へのネガティブな一般通念もいずれ覆されるかもしれない。ベトナム戦争同様に、それがそのまま歴史的評価につながるとは限らない。必要なのは、アメリカが広範な同盟関係をまとめて適切な姿勢を保つことだ。

CFRブリーフィング
イラクを自治地域に分けて統合を保て  
――米上院外交委員会での証言から

2007年1月号

レスリー・H・ゲルブ 米外交問題評議会(CFR)名誉会長

イラク内の各勢力間の相互不信感は強く、ともに利益を共有しているという認識は存在しない。当然、特定の集団が大きな力を持つ中央政府が「イラク全土」を安定的に支配できるようになることはあり得ない。とすれば、イラクが必要としているのは中央集権システムではなく、(各地域が踏み込んだ自治権を持つ)分権システムということになる。各地域の政府が立法、行政、治安の責任を負い、中央政府の役割は外交、国境防衛、通貨の管理、そして石油や天然ガスからの歳入の管理などに限定する。重要なポイントは、各地域の指導者が、自分たちの地域は自分たちで守るという意識を持ち、地域内の民衆の面倒をみるようになることだ。ここにおける最大の課題は、スンニ派の対総人口比に応じて石油からの歳入の20%を、今後、そして将来にわたって与えるという点での合意をいかに他の集団から取り付けるかだ。

イラクにおける宗派間抗争を沈静化させられるか。それは、民族・宗教的に多様なイラク社会をうまく統治できる国民和解政府の形成が進むかどうかに左右される。だが、専門家の多くは、各民族・宗派の利益をバランスよく促進する国民和解政府が近いうちにイラクに誕生する可能性は低いとみている。本来、国民和解の象徴とすることが意図されていたサダム・フセインの裁判と処刑が、逆に宗派間対立を煽りたててしまっているし、イラクの政治勢力は依然として石油の歳入、連邦制などの懸案をめぐって対立を打開できずにおり、スンニ派は、マリキ政権は「シーア派武装集団の言いなりで、結局のところ、テヘランの傀儡政権に過ぎない」とみている。国民和解を試み、スンニ派をイラクの権力分有合意に参加させない限り、今後も宗派間紛争による社会暴力は続くとみる専門家は多い。

議会の多数派となった民主党が、2国間貿易協定の批准を拒絶し、保護貿易路線を強化していくのではないかとの懸念が浮上している。事実、民主党議員のなかには、自由貿易合意に否定的な公約を掲げて当選した者もいるし、アメリカの労働者を守るために、途上国との自由貿易合意に労働基準、環境基準を盛り込むように圧力をかけることを示唆する有力者もいる。過小評価されたままの人民元レートをバックに、中国がアメリカに対する貿易上の優位を高めつつあるとみなす危機感も米議会では高まっている。山積する貿易問題に民主党議会はどう対処していくのか。

CFRミーティング
次期台湾総統候補
呂秀蓮台湾副総統が語る台湾と中国

2007年1月号

スピーカー 呂秀蓮(アネッタ・ルー)  台湾副総統
司会 ジェローム・A・コーエン  米外交問題評議会(CFR) アジア担当非常勤シニア・フェロー

台湾と中国は別の存在であり、ともに独立している以上、国際社会は、もはや時代にそぐわず、とかく誤解をまねくだけの「一つの中国」政策を再検証する必要がある。こうした再検証作業を行って初めて、海峡間論争の効果的な解決策を見いだすことができる。われわれは、台湾の歴史を検証するにつけて、台湾の運命は中国によってではなく、世界情勢によって左右されていると確信している。北京にしてみれば、中国を台湾に再編するのは必然なのかもしれない。しかし、グローバルな視点でみれば、台湾が中国に帰属しないこと、台湾はむしろ世界の一部であることがわかるはずだ。(アネッタ・ルー)

ブッシュの一般教書演説を読み解く
――イラクとガソリン消費の削減

2007年1月号

ナンシー・E・ローマン 米外交問題評議会(CFR) ワシントンプログラム・ディレクター

ブッシュ大統領が一般教書演説でイラクへの米軍増派戦略への支持を強く求めたのは、予算承認権を持つ議会が、増派策を予算面から切り崩そうと試みる危険があることを認識していたからだ。実質的に大統領は「しばらくの間、この戦略にチャンスをくれないか」と議会に訴えかけたと指摘するナンシー・ローマンは、大統領がイランの核開発問題についても簡単なコメントに留めたのは、増派によって「バグダッドの治安を確保して流れをつくりだし、イラク問題で活路が見えてくれば、イランについても有利な状況をつくりだせる」と考えているからだと指摘する。また、外交ではなく、国内領域のアジェンダを重視し、ガソリン消費の削減に向けて包括的で大胆な措置をとると約束したのは、「外交領域ではレームダックに陥らざるを得ない」ことを大統領が認識しているからだろうとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

なぜ今後10年が将来のエネルギートレンドを左右するのか
――エネルギートレンドに関するIEA報告から

2007年1月

スピーカー
ファティ・バイロル/国際エネルギー機関(IEA)チーフエコノミスト
司会
ジャッド・モーアワッド/ニューヨーク・タイムズ紙 エネルギー担当記者

現在経済ブームのなかにある中国とインドは、エネルギーインフラに莫大な投資を行い、発電所、精製所、送電網その他を整備しており、両国は今後50年から60年のエネルギーパターンを左右するような一連の決定を下しつつある。一方、経済協力開発機構(OECD)加盟諸国にとっても今後の10年間は重要だ。OECD加盟国が発電所、送電網などエネルギーインフラに大規模な投資を行ったのは第2次世界大戦直後で、これらのインフラの多くを新しいインフラに置き換えていかなければならないからだ。どのような技術、燃料資源、どのような設計が好ましいのかを、今後を見据えて判断しなければならない。今後の10年間は、われわれがエネルギー路線を見直すうえで非常に重要な時期になり、この間に現在の路線を見直さなければ、好ましくないエネルギートレンドを覆すのはますます難しくなる。

CFRブリーフィング
アメリカはガソリン消費を削減できるか

2007年1月号

デビッド・G・ビクター 米外交問題評議会(CFR) 科学技術担当非常勤シニア・フェロー、ロバート・マクマホン www.cfr.org 副編集長

この30年間にわたって、アメリカ政府は車の燃費改善に向けた大がかりな措置を導入しようとはしなかった。1990年代以降は、大きなトラックやスポーツ・ユーティリティー車(SUV)の市場での人気が高まり、新車の平均燃費は向上するどころか、低下するようになった。だが、昨今では輸入石油への依存の高まりが危険視され、二酸化炭素排出による地球温暖化問題が再度注目されるようになり、ガソリン消費の削減に向けた措置も検討されている。ブッシュ大統領は、1月24日の一般教書演説で、10年以内にアメリカのガソリン使用量を20%削減させるという大胆な構想を発表した。実際にそうできるかどうかの鍵を握るのが、バイオ燃料(エタノール)の開発と、燃費の改善だ。だが、エタノールの開発をめぐっては、その現実性をめぐってさまざまな議論があるし、燃費の改善についても、各種利益団体の圧力で議会は身動きがとれなくなる恐れもある。

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