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論文データベース(最新論文順)

米議会は米印核合意を阻止する

2007年9月号

エドワード・J・マーキー

インドがアメリカに対して、友人であることの証に核不拡散政策を曲げるように求め、それをアメリカが受け入れればどうなるだろうか。パキスタンは中国に対して同じことをしてほしいと求めるかもしれない。仮に核供給国グループ(NSG)や国際原子力機関(IAEA)が、インドとアメリカの核合意を成立させるためにルールからの逸脱を例外措置として認め、その後、パキスタンの要請を受けた中国が同様の例外措置をパキスタンに適用するように求めればどうなるだろうか。アメリカが公然とダブルスタンダードを使い分けておいて、核不拡散の高い基準を維持できるはずがない。そんなやり方は通用しない。自分でたばこを吸い、酒を飲むのに、若者にそうしてはいけないと言って説得力があるだろうか。ブッシュ政権は現実に目を向けていない。米印核合意は、核拡散のドミノ倒し現象を引き起こしかねない。しかし、米議会は、まだ合意を阻む権限を持っている。(エドワード・マーキー)

経済成長と技術革新だけで、人は幸せになれるのか。リバタリアン(自由意思論)の立場をとる人々はこれにイエスと答える。市場経済のなかで、国が豊かになって技術革新が進めば、市民は健康になってよりすぐれた教育を受け、よい食事をして長生きし、環境に関心を払うようになる、と。だが、これはいかにも、規制をつくる政府を市場の敵とみなすアメリカ人特有の見方ではないか。実際、規制による適切な動機づけがあれば、経済成長と技術革新は環境にプラスに作用するが、市場のロジックだけではそうしたインセンティブは生じない。アメリカにおける環境への配慮も、力強い経済に必須の産物ではなく、激しい政治論争で環境保護派がかろうじて勝利を収め、規制が導入された結果である。富をつくりだすメカニズムとしての市場経済の作用に疑いはないが、規制緩和を進めて自由化路線をとれば、状況を先へ進められるのかどうか、その因果関係は明快ではない。

貧困対策より環境保護を
優先する理由はあるのか
 ――開発、環境、社会正義の連鎖と優先順位

2007年8月号

デビッド・G・ビクター 米外交問題評議会非常勤シニア・フェロー

経済発展を促進し、環境を保護するとともに、社会正義を実現するという三つの目標は矛盾するものではなく、相互補完的な関係にあるとした「持続可能な開発」の概念はいまや陳腐化してしまった。人権保護団体、環境保護団体、原子力発電企業が、これを、自分たちに都合のよい概念につくり変えただけでなく、国連の場で実現不可能な普遍的アジェンダとされてしまったからだ。持続可能な開発の概念を生き返らせるためには、普遍的アジェンダを掲げるのではなく、優先順位の設定と実施に関する意思決定を各地域の主体に委ねるべきだ。地域の必要性と利益がそれぞれに異なる以上、持続可能な開発を実践する場合は、必ずボトムアップ型のアプローチによる目標の再設定を繰り返していく必要がある。

CFRインタビュー
北朝鮮、イラン、インドと核拡散の行方を考える

2007年8月号

ジョージ・パーコビッチ カーネギー国際平和財団 研究担当副会長

「核兵器とプルトニウムは、平壌の指導者が経済利益を引き出し、彼らの考える安全を保障するための戦略的資産である。そうした切り札をなぜ平壌が放棄すると考えるのか、私には理解できない」。北朝鮮との合意がうまくいく保証はどこにもないと考える核不拡散問題の専門家、ジョージ・パーコビッチは、北朝鮮に続いて、イランが核武装することを現状における最大の脅威とみなし、何としても、中国とロシアを欧米の路線に同調させて、安保理、国際社会の団結をイランに対して示すことで、テヘランの自制を求める必要があると強調した。また、「いかなる国も核兵器を生産すべきではないし、核を必要としている国は存在しない」と宣言すべき歴史的節目にあるにもかかわらず、ブッシュ政権が、国際ルールを曲げて、インドとの核協力合意をとりまとめつつ、一方で核兵器の生産制限に関する約束をインドから取り付けなかったのは、ブッシュ政権内の一部に、「中国を牽制するためにはインドはもっと核を保有すべきだ」と考える者がいたからだと批判した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRヒストリーメーカー・シリーズ
ウィリアム・ペリーが語る
イラン、イラク、北朝鮮危機

2007年8月

スピーカー
ウィリアム・J・ペリー 元米国防長官
司会
ジョン・マックウェシー ABCニュース国防担当記者

「米議会にとって北朝鮮との合意は毒そのものだった。(1994年の)枠組み合意が結局は不本意な結果に終わった多くの要因は、おそらくここにあると思う。問題は合意内容を履行するかどうかよりも、政治的な側面にあった。私はいまも、合意内容を完全に履行するのに必要な議会の政治的支持を得られないと判断した大統領と国務長官の読みは間違っていなかったと考えている。枠組み合意は、北朝鮮だけでなく、われわれの手で圧殺された。政治的にきちんと合意をフォローアップできていれば、状況はいまとは全く違うものだったかもしれない」(ウィリアム・J・ペリー)

CFRインタビュー
ムシャラフ大統領の内憂外患
――選挙を控えたパキスタンの混迷

2007年8月号

テレシタ・C・シャッファー 戦略国際問題研究所南アジアプログラム・ディレクター

チョードリ最高裁長官の停職処分に端を発する民衆デモ、モスク占拠事件に対する政府の対応への反発など、ムシャラフ大統領は、パキスタン国内で非常に困難な政治状況に直面している。外交面でも、パキスタンに聖域を持つタリバーンがアフガニスタンへの越境攻撃を続けているために、アフガニスタンとの関係が不安定化し、タリバーン対策を求めるアメリカの圧力にもさらされている。米軍部隊によるタリバーンの聖域に対する攻撃計画の噂も絶えない。しかも、2007年秋には大統領選挙を控えており、ムシャラフが大統領と軍参謀長を兼務していることが大きな争点の一つとされている。国務省で長く南アジアを担当したテレシタ・C・シャッファーは「ムシャラフが、大統領と参謀長を兼務し続けた場合、裁判所には憲法違反の申し立てが行われ、おそらくこのケースについては、裁判所は起訴側の言い分を認めるかもしれない。そうなれば、事態はもっと複雑になる」と予測する。しかも、解散を間近に控えた議会が大統領を選出することの政治的正統性を疑問視する声もある。「裁判所がムシャラフに対してどの程度好意的な解釈を示すかはわからないが、このまま大統領選挙を実施し、ムシャラフが再選されても、反対派による政治的抗議の焦点とされる」とシャッファーは言う。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
イラクへの米軍増派は成果を上げつつある

2007年8月号

ケニース・M・ポラック ブルッキングス研究所 セバン中東研究センター所長

イラクの重要地域の治安を確保することを目的とする米軍の作戦は予想以上にうまくいっているし、地方における政治、経済体制の整備もある程度進んでいる。これらの進展だけでも、イラクへの米軍増派策が成果を上げている兆しとみなせる。イラク問題の専門家、ケン・ポラックは、増派策が成果を上げているのは、対ゲリラ戦とイラク市民の安全を守り、生活インフラを復旧・整備することに焦点を合わせた新戦略のおかげで、米軍の士気が高まるとともに、地方の部族長や指導者たちが、イラク・アルカイダ機構やジハード組織に反発し、米軍に助けを求めてくるという幸運に恵まれたからだと示唆する。ただし、イラクの政治状況についてはまったく進展がなく、もう一度選挙を行うか、民族和解を促すような政府を誕生させるために必要なら、新たに選挙制度を導入することも考えるべきだろうとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRミーティング
サマーズ、ボルカーが語る 世界共通通貨の可能性

2007年8月号

スピーカー
ローレンス・H・サマーズ 元米財務長官
ポール・A・ボルカー 元連邦準備制度理事会議長
司会
ジェームス・D・グラント グラント金利オブザーバー誌編集者兼オーナー

まだまだ世界単一通貨の実現にはほど遠いというのが現実だが、この方向に向けた流れのなかで金融秩序は安定的に機能している。現在のようにドルが広く使われることは、金本位制だった当時は想像もできなかった。何かあれば、太陽(ドル)を離れて、月(金)に逃げ込むことができた。これがドルの限界だった。だが、金本位制からの離脱によってその限界はなくなった。ドルに対する信認さえあれば、世界が基軸通貨を持つことには大きな優位がある。(ポール・ボルカー)

私はドルの独占的な地位が永久に続くとは思っていないし、この点ではポールよりも悲観的な見方をしている。ユーロに関する限られた経験しかないとはいえ、多様な経済が、固定為替レートの共通通貨を持つことには問題があることをわれわれは知っている。世界中の国々のことを考えると、国家間の相違は(欧州連合〈EU〉内の)アイルランドとイタリアよりもはるかに大きい。(ローレンス・サマーズ)

パキスタンの混迷への正しい外交路線とは
――軍と政治の実態に目を向けよ

2007年8月号

ダニエル・マーキー/米外交問題評議会シニア・フェロー

アメリカはイスラマバードがもっと積極的にテロ対策を実行するように求めるべきだし、必要なら、ムシャラフを見限って、文民による民主的統治を要求すべきだという声もある。しかし、現状で、パキスタン軍との信頼関係をさらに傷つけるのは大きな問題だし、民主主義体制の導入をやみくもに求めても問題の解決にはならない。秋に総選挙と大統領選挙を控えたパキスタンにとって、社会の反イスラム過激派勢力を結集し、民主化への移行を少しずつ進める最善の選択肢は、パキスタン人民党(PPP)とムシャラフによる連立政権を成立させることだ。ワシントンの選択肢は「ムシャラフか民主主義か」ではないし、「ムシャラフかイスラム過激派勢力か」でもない。現在のパキスタンは軍と民主主義の双方を必要としている。アメリカがイスラム過激派と暴力との戦いに勝利を収めるには、パキスタンの文民に力を与えると同時に、パキスタン軍の信頼を勝ち取るしかない。

Classic Selection
21世紀は権威主義的資本主義大国の時代になるのか

2007年8月号

アザル・ガット テルアビブ大学教授

現在の中国とロシアは、日独が第二次世界大戦に敗れた1945年以降、姿を消していた権威主義的資本主義パワーの再来にほかならない。日独の場合、アメリカを相手にするには、人口、資源、潜在力があまりに小さすぎたが、中国とロシアは、日独よりもはるかに国家規模が大きいし、そもそも、権威主義体制下の資本主義のほうが民主体制下の資本主義よりも効率が高い。実際、日独という権威主義的資本主義国家が戦後も存続していれば、アメリカにとって、共産主義中央統制経済のソビエト以上に大きな脅威と課題をつくりだしていたかもしれない。中国とロシアに代表される権威主義的な資本主義国家が、近代性の進化をめぐってリベラルな民主主義の代替策を提示することになるかもしれないし、グローバル経済に自分のルールで関与するようになるかもしれない。リベラルな民主主義が、最終的に勝利を収めるという保証はどこにもなく、権威主義的資本主義がリベラルな民主主義に代わる魅力的な選択肢とみなされるようになる可能性もある。

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