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論文データベース(最新論文順)

ミャンマー軍事政権への
多国間アプローチを調整せよ

2008年1月号

マイケル・グリーン 戦略国際問題研究所日本部長
デレク・ミッチェル 戦略国際問題研究所上級研究員

麻薬・武器の密輸、HIVの拡散など、ミャンマーの軍事政権は国内の人権問題や抑圧だけでなく、国境地帯を不安定化させて近隣諸国も脅かしている。これまで、アメリカはミャンマーとの外交関係を制限し、ヨーロッパも政治改革の断行を強く求めてきたが、アジア諸国の多くは、軍事政権との貿易、援助、外交関係を拡大してきた。幸い、こうした国際社会の矛盾したアプローチも変化しつつある。東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本はすでにミャンマーへの建設的関与路線を見直しつつある。内政不干渉の原則を固持し、資源調達がらみの思惑からミャンマーを支援してきた中国とインドにも再考を促す必要がある。各国がそれぞれ一定の譲歩を示し、政策を調整することによって、共通の目標に向けて状況を進めていかなければならない。ミャンマー制裁を他の関与策とバランスよく組み合わせて包括的に実行しなければならない。ミャンマーがさらに孤立して自暴自棄に陥り、失われた世代が生まれるのを傍観するわけにはいかない。人道的な理由もさることながら、ミャンマーは東南アジアの安全保障と統合を阻む未解決の深刻な課題なのだから。

CFRインタビュー
先の見えないイラクとアフガニスタン

2008年1月号

アンソニー・H・コーデスマン 戦略問題国際研究所戦略問題担当議長

「勝利を収め、治安を確保し、再建する」というのは簡単な手続きに思えるかもしれないが、歴史的にみて、軍事的に勝利を収めても、援助を与え、現地政府がプレゼンスを確立し、サービスを提供できる程度に治安を安定させ、国を再建できるようにならない限り、軍事的な勝利も瞬く間に陳腐化する。イラクもパキスタンもこのリスクに直面しているとみる軍事問題の専門家アンソニー・コーデスマンによれば、イラク南部では二つの武装勢力が権力抗争に向けた準備を整えつつあり、一触即発の状態にあるし、アフガニスタンにおいても2008年の春にタリバーンが再攻勢に転じ、深刻な危機をつくりだす恐れがある。そうでなくても、2月に予定されているパキスタンの議会選挙が実施されるかどうかを含めて、このタイミングで危機が生じる恐れがあり、その結果、パキスタンがタリバーンやアルカイダが好きにできるような混乱に陥っていく危険がある。「パキスタンの選挙からアメリカの大統領選挙が終わるまでの間に、われわれは、突如として愕然とするような事態に直面する危険がある」と同氏は語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRミーティング
戦火のもとでも成長するイスラエル経済の強さとは
 ――錯綜する環境のもとでの繁栄の秘密

2008年1月号

スピーカー
スタンレー・フィッシャー イスラエル銀行総裁
司会
ヤコブ・A・フランケル 元イスラエル銀行総裁

「平和がなければ成長することはできないと言われながらも、われわれの経済は成長している……戦争が起こり、軍事支出が重なった2006年でも、財政赤字は国内総生産(GDP)の1%以下だった。……戦時下においても、どのように行動するべきなのかを経済人が理解している。……和平合意がなくともイスラエル経済は成長できると私は考えているが、合意があれば成長はもっと速くなるだろう。イスラエル経済が10年にわたって6、7%で成長することは不可能だと断定できる材料はどこにもない。それどころかイスラエルは、経済成長に必要な要素をすべて備えている。所得レベルはアメリカの約半分で一人当たりGDPは2万3千ドル程度。まだまだ上昇の余地が残されている。労働力の質も高く、1990年代にソビエトからのユダヤ系移民によって熟練労働力が拡充された。経済成長に必要な要素がすべてそろっていることを考えると、安全保障の問題が解決されれば、経済成長はさらに加速するはずだ」

中国の台頭と欧米秩序の将来

2008年1月号

G・ジョン・アイケンベリー プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン 公共・国際問題大学院教授

台頭途上にある大国は、新たに手にしたパワーを基に、自国の国益に即したものへと国際的なルールと制度を書き換え、グローバルシステムにおける、より大きな権限を手にしようと模索し、一方、衰退途上にある国は、影響力の低下を懸念し、それが、自国の安全保障にとってどのような意味合いを持つかを心配し始める。この瞬間に、大きな危険が待ち受けている。だが、新興大国が秩序に挑戦するか、それとも、自らを秩序に織り込んでいこうとするか、その選択は、目の前にある国際秩序の性格で大きく左右される。重要なポイントは、相手がアメリカだけなら、中国が(覇権国としての)アメリカに取って代わる可能性も排除できないが、相手が欧米秩序であれば、中国がそれを凌駕し、取って代わる可能性は大きく低下するということだ。ワシントンがそうした環境づくりに向けてリーダーシップを発揮するつもりなら、現在の秩序を支えているルールと制度の強化に努め、この秩序をより参加しやすく、覆しにくいものにしなければならない。

ミャンマー軍事政権への多国間アプローチを調整せよ

2008年1月号

マイケル・グリーン 戦略国際問題研究所日本部長
デレク・ミッチェル 戦略国際問題研究所上級研究員

麻薬・武器の密輸、HIVの拡散など、ミャンマーの軍事政権は国内の人権問題や抑圧だけでなく、国境地帯を不安定化させて近隣諸国も脅かしている。これまで、アメリカはミャンマーとの外交関係を制限し、ヨーロッパも政治改革の断行を強く求めてきたが、アジア諸国の多くは、軍事政権との貿易、援助、外交関係を拡大してきた。幸い、こうした国際社会の矛盾したアプローチも変化しつつある。東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本はすでにミャンマーへの建設的関与路線を見直しつつある。内政不干渉の原則を固持し、資源調達がらみの思惑からミャンマーを支援してきた中国とインドにも再考を促す必要がある。各国がそれぞれ一定の譲歩を示し、政策を調整することによって、共通の目標に向けて状況を進めていかなければならない。ミャンマー制裁を他の関与策とバランスよく組み合わせて包括的に実行しなければならない。ミャンマーがさらに孤立して自暴自棄に陥り、失われた世代が生まれるのを傍観するわけにはいかない。人道的な理由もさることながら、ミャンマーは東南アジアの安全保障と統合を阻む未解決の深刻な課題なのだから。

ロシアとの新冷戦を回避するには
―― なぜロシアは対米不信に陥ったか

2008年1月号

ディミトリ・K・サイメス ニクソンセンター所長

アメリカが犯した最大の間違いは、ロシアを「敗北したかつての敵」として扱ってしまったことだ。だが、ロシアは変貌を遂げた国ではあっても敗戦国ではなかった。ロナルド・レーガンがクレムリンへの圧力を強化することで、解体プロセスを後押ししたのは事実だが、ソビエト帝国の歴史に終止符を打ったのは、ホワイトハウスではなく、ゴルバチョフだった。この点を理解しなかったワシントンは、ロシアのことを潜在的なパートナーとしてではなく、財政力に欠け、機能不全に陥った弱体な国家とみなし、ソビエトの新生国家を可能な限りアメリカ側に取り込むことで、ソビエトの解体というトレンドをさらに間違いのないものにしようと考えてしまった。そしていまや、再生したロシアがアメリカの敵対勢力になるリスクは現実味を帯びてきている。そうした現実に直面するのを回避するには、ワシントンは何が問題だったのかを理解すべきだし、関係悪化という流れを覆すための適切な措置をとる必要がある。

CFRインタビュー
イランの核開発に関する
国家情報評価報告とイスラエルの立場

2007年12月号

ジェラルド・M・スタインバーグ バー・イラン大学政治学部長

「イランは核開発計画については2003年に停止しているが、ウラン濃縮プログラムは依然として続行している」。こう指摘した今回の国家情報評価(NIE)報告を受けて、アメリカのイラン政策が変更されるのかどうか、イランを国家安全保障上の最大の脅威とみなすイスラエルは、固唾を飲んでワシントンの動向を見守っていた。アメリカ国内では、「条件を付けずにイランと直接交渉をすべきだ」という声が聞かれる一方で、すでにNIE報告をどう解釈するかについての見直しも始まっており、イランの核開発の脅威は依然として存在するという見方も再浮上してきている。米・イスラエル安全保障関係の専門家であるジェラルド・M・スタインバーグは、「NIE報告に関するアメリカでの分析がさらに進み、それが何を言わんとしているかについての慎重な分析が進めば、イランに対する圧力行使策という点では、当初考えられたほどワシントンの路線に大きな変化はない」とみなす方向へとイスラエルでの議論は収れんしつつあると指摘しつつも、むしろアメリカはイランと交渉し、「イランにイスラエルがどのように機能しているかを理解させ、彼らの政策がイスラエルにどのような影響を与える可能性があるかを考えさせる必要がある」という指摘もあるとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRミーティング
ワールド・エネルギー・アウトルック
――石油の安定供給と地球温暖化対策

2007年12月号

スピーカー
ファティ・ビロル/国際エネルギー機関チーフエコノミスト
司会
デビッド・G・ビクター/米外交問題評議会 科学技術担当非常勤シニア・フェロー

現在のエネルギー消費路線を各国が変えなければ、2030年の二酸化炭素排出量は42ギガトンになり、この場合、地球の気温は6度上昇する。これでは人類社会はもたない。一方で、エネルギー利用効率が改善され、再生可能エネルギーや原子力エネルギーがより多く利用されるようになれば、二酸化炭素排出量は34ギガトンへと減少するが、この場合でも地球の気温は3度上昇する。一方、世界の指導者は排出量をもっと低下させたいと考えているし、何とか気温の上昇を2度に抑えたいと考えている。この場合、排出量を23ギガトンに抑え込まなければならないが、そのためには、2012年以降に建設される発電施設のすべてを二酸化炭素を排出しない施設にし、利用効率の改善レベルを2倍に引き上げ、排出削減を実現するための政治的意思と理解を世界規模でとりまとめる必要がある。これはいずれも非常に実現するのが難しい課題だ。(ファティ・ビロル)

Review Essay
経済にいかに介入すべきか、それが問題だ
――大恐慌とニューディールの真の教訓とは

2007年12月号

チャールズ・W・カロミリス/コロンビア大学ビジネススクール教授

ニューディールが大恐慌から経済を立ち直らせたと考えるのは間違っている。それどころか、「政策の失敗、とりわけ、どのような政策が採られるかが予想不能だったことが、経済の不確実性を増幅させ、企業と消費者の投資と消費を抑制する結果となった」。大恐慌を長期化させた理由の一つは、1930年代に受け入れられ始めた経済への政府介入を肯定的にとらえる新たなイデオロギー志向だった。それは、経済を計画し、形作ることを目的とする(政府介入型の)政策実験を行っても、ダメージは軽微なものにとどまり、むしろ大きな可能性を期待できるというイデオロギーにほかならない。こうしたイデオロギーゆえに、政府の経済介入策が、特に一貫性に欠け、予測不能なやり方で実施される場合、経済に大きなダメージを与え得ることが見えなくなり、うまく機能している市場が経済的問題に自律的に対応していくメカニズムを備えていることが軽視されてしまった。

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