1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

論文データベース(最新論文順)

グローバルな新世代の課題に立ち向かうには

2007年7月号

ミット・ロムニー
米共和党予備選大統領候補

「イスラム過激派の狙いはただ一つ、近代的なイスラム国家のすべてをカリフの統治に置き換え、アメリカを破壊し、人々を力ずくでもイスラム教に改宗・帰依させることだ。この計画は不合理なように思えるが、実際、彼らの運動はこれを実現することを目的に据えている。……イスラム過激派の脅威はいまそこにある実存的な脅威である。……大統領に選ばれれば、私は真っ先に、中東問題に対処していくための、サミットの開催を求める。……目的は、イスラム過激派を打倒しようと試みるイスラム穏健派を支援する世界戦略を考案することだ。私は、このサミットの結果、繁栄と進歩のためのパートナーシップ構想が誕生すると考えている」

働き口とよりよい生活を求めて、数多くのアフリカの人々が、危険を顧みずに、ヨーロッパを目指して地中海の旅へと繰り出している。アフリカからの移民・難民が殺到しているヨーロッパ諸国は、経済移民および政治・経済難民の受け入れ制度を改革し、域内で調和させる必要性に直面しつつあり、欧州連合(EU)も、これを経済、人道上の緊急課題と捉えだしている。だが、ヨーロッパ各国がこの問題をめぐって、立場を共有しているわけではない。殺到するアフリカからの難民に特に悩まされているのが、地中海沿岸に位置する南ヨーロッパ諸国だ。一方、移民、難民の増大に悩まされる一方で、ヨーロッパ社会の高齢化が進み、出生率が低下するなか、EUは、近い将来に労働力不足に陥ると考えられている。つまり、そこには、アイデンティティーを脅かすアウトサイダーとしての移民、貴重な労働力としての移民という認識上のジレンマがあるだけでなく、その受け入れをめぐって加盟国間に立場の違いがある。

米英の政府関係者は、ここにきて、「イランがタリバーンに武器を提供している証拠が出てきている」と相次いで発言している。だが、シーア派のイランが、スンニ派が主体のタリバーンを支援する必然性が本当にあるだろうかという大きな疑問がある。一方で、タリバーンを短期的に支えることはイランの利益になると指摘する専門家もいる。タリバーンを支援することで、アメリカの戦力バランスを崩すとともに、自国の核開発に寄せられている国際的関心と批判を低下させることができれば、それは、テヘランにプラスに作用する。歴史的にイランとアフガニスタンは複雑な関係にあるが、2001年のタリバーン政権崩壊以降は、少なくとも、両国間の商取引、文化的な交流は進んできたし、イランはカルザイ政権を支援してきた。米英が主張するように、イランがタリバーンに兵器を提供しているとすれば、その思惑は何なのか。米英の批判に対して、イラン政府は「根拠がない」と反論している。

アメリカ政府は人民元は不当に過小評価されており、その結果、中国製品の競争力がますます強化され、グローバル貿易に大きなねじれが生じ、欧米諸国、特にアメリカの貿易収支に(巨額の貿易赤字として)大きなしわ寄せが来ているとみている。ヘンリー・ポールソン米財務長官は最近の米外交問題評議会(CFR)インタビューで次のように語っている。「中国の人民元のレートは中国経済の実態を反映していないし、すでにグローバルな金融システムの主要な一部を担いつつある中国が、経済の実態を反映しないような通貨を持っていることは大いに問題がある。短期的には、われわれは、より大きな柔軟性(変動幅)を導入するように求めていく。中国は人民元の為替レートを切り上げる必要がある」。しかし、人民元レートをいじった程度では、アメリカの巨大な貿易赤字は減少しないし、中国における政治的反動を誘発する恐れがあると指摘する専門家もいる。

穏健派ムスリム同胞団との対話を試みよ

2007年6月号

ロバート・S・レイケン ニクソン・センター、 移民・国家安全保障プログラムディレクター
スティーブン・ブルック ニクソン・センター、リサーチアソシエート

ザワヒリのようなジハード戦士たちは、ムスリム同胞団のことを、「グローバルなジハード(世界聖戦)を拒絶して、民主主義を擁護する」団体とみなし、毛嫌いしている。そうだとすれば、同胞団はまさにアメリカがイスラム世界で必要としている味方、つまりイスラム「穏健派」ではないのか。同胞団を理解する最初のステップは二つ。まずは同胞団を、急進的イスラム主義から離して考えること。次に、異なる国々で活動する同胞団系列のグループの間には、大きな違いが存在することを知ることだ。これらの多様性は、ワシントンが「同胞団」に対して是々非々のアプローチをとる必要があることを示唆している。

時は1940年代のヨーロッパ。目の前には困窮したユダヤ人がいる。上司からはビザに「許可」印を押さなくて済むように手を尽くせと命令されている。ユダヤ人を本国政府は受け入れたくないと考えている。「許可」を出し過ぎれば、あなたの今後のキャリアに影響が出る。だが、本国からの指令に忠実に従えば、多くのユダヤ人を死に追いやることになる……。多くの外交官は保身に走ったが、勇気ある人々もいた。ブラジル、中国、オランダ、イタリア、ポルトガル、ルーマニア、スペイン、スイス、トルコ、バチカン、ユーゴスラビアの外交官だけでなく、日本やドイツの外交官のなかにも、窮状にある人々を救うために、自分のキャリア、名声、ときには生命さえも危険にさらした人々がいた。

石油シーレーンの安全確保と海軍力

2007年5月号

デニス・C・ブレア 元米太平洋軍司令官
ケネス・リーバーサル ミシガン大学政治学教授

ますます多くの国が中東からの輸入石油への依存を高めるなか、グローバルな石油シーレーンの安全確保が注目されるようになり、中国やインドのように、石油タンカーを守るために外洋展開型海軍の整備を検討している国もある。だが一般に考えられているのとは逆に、テロ集団の行動や紛争によって、石油シーレーンの航行が脅かされるリスクはかなり小さくなってきている。タンカーが大型化し頑丈につくられるようになったために、機雷、潜水艦、そしてミサイル攻撃に対しても打たれ強くなっているし、仮にテロリストが石油タンカーをシンガポール海峡に沈めることに成功しても、海峡を封鎖できるわけではない。唯一、海洋の交通路を完全に遮断する力を持つ米海軍も、公海上の航行の安全を守ることを心がけており、国際輸送に干渉するような行動をとることはあり得ない。

CFRディベート
パキスタンは国境地帯の
安定確保に手を尽くしているのか

2007年5月号

◆混乱の責任はパキスタンにある◆
ビル・ロッジョ ジャーナリスト
◇混乱の責任はパキスタン、アフガンの双方にある◇
キャシー・ギャノン 元AP通信アフガニスタン・ パキスタン支局長

アフガニスタンが混迷から抜け出せずにいる理由は何か。アフガニスタンと国境を接するパキスタンの国境地帯(部族地域)にタリバーンやアルカイダが聖域を持つことをパキスタンが事実上認めているからなのか、それとも、アフガン政府が統治体制を確立できていないことが、この国が無法地帯と化している根本の原因なのか。専門家の間でも意見は分かれている。アフガンに展開する北大西洋条約機構(NATO)軍がいくらアフガン国内でタリバーンやアルカイダをたたいても、武装勢力はパキスタン国内に一時的に撤退し、態勢を整えて、再度国境線を越えて攻撃してくることが問題だとみる専門家もいれば、アフガン政府が事実上軍閥たちに支配されていることを問題視する専門家もいる。「アフガンを失わないため」には何が必要か、タリバーンが攻勢を強めるなか、国際社会は大きな決断を迫られている。

イラクの内戦を終わらせるには
 ――マリキ政権への支持をやめよ

2007年5月号

ジェームズ・D・フィーロン スタンフォード大学教授

いまやシーア派主導のイラク政府はスンニ派との内戦をめぐって公然とシーア派寄りの路線をとりだしている。こうした状況下、ブッシュ政権が現イラク政府の成功に肩入れすればするほど、シーア派に味方することになり、これは道義的にも疑わしい路線であり、アメリカの利益にもならなければ、中東地域の長期的な安定と平和にも資するところがない。だが、イラク政府への絶対的なコミットメントを緩和させて、米軍を主要な戦域から撤退させれば、イラク内の各勢力も権力分有合意に前向きになるだろう。長期的にはスンニ派、シーア派、クルド人の利益をうまく代弁する政府を樹立するための妥結に向けて、アメリカは仲介役、バランサーの役割を果たせるようになる。「いかなる集団も、権力と資源を他の勢力と共有しないことには勝利を手にすることはない」という認識を定着させるために、アメリカは、外交、経済、そして必要なら軍事的手段を駆使して、イラク内の各勢力間のバランサー役を果たすべきだ。

インド経済の成長を民主主義が抑え込んでしまうのか
――改革と経済介入路線に揺れる民主政治

2007年5月号

アシュトシュ・バーシュニー/ミシガン大学政治学教授

経済成長を遂げるインドには二つの顔がある。経済は活況を呈し、活気に満ちた中産階級の規模も拡大している。しかし一方で、物乞い姿、栄養失調でやせ衰えた子供たちの顔を街角では依然として目にする。いまも人口の4分の1近くが1日1ドル以下の生活を余儀なくされている。市民の大半は「改革はおもに富裕層に恩恵をもたらしている」と感じており、しかも、投票を通じて政治的に大きな力を持っているのは、改革に反発しているこうした低所得者層だ。長期的には市場経済はすべての者に恩恵をもたらすとされているが、そうした長期的な展望を、選挙を控えた民主国家の政治家が政策の機軸とすることはあり得ない。改革の行く手を遮るこの民主的な制約を克服する道はあるのか。

Page Top