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論文データベース(最新論文順)

アジアの安定と平和を維持するには
――多国間フォーラムと自由貿易構想の価値に目を向けよ

2007年11月号

ビクター・D・チャ/前米国家安全保障会議アジア部長

歴史的にみても、アメリカが中国を封じ込めようと日本との関係を強化したり、古くからの同盟諸国や小規模な地域国家に配慮せずに中国との関係強化を模索したりすると、アジアの秩序は常に緊張したものだ。だが今日の状況は、米中が協調関係にあり、日米同盟は堅固な基盤を共有し、日本と中国の関係も改善に向かっている。そこには、見事な勢力均衡が成立している。もちろん、北朝鮮問題が残されており、いかなる政権がワシントンに誕生しようと、核武装した北朝鮮との外交関係の正常化に応じたり、平和条約を結んだりすることはあり得ない。一方、平壌が本気で核を放棄するつもりなら、6者協議は2008年には核の解体という最終局面に進む。今後必要になるアジアの安全保障構造を形作るには、アメリカは、東南アジア諸国へのさらなる関与を行い、2国間関係を強化するとともに、北東アジアでの多国間安全保障フォーラムを構築し、相互に関連する2国間、3国間、多国間の制度ネットワークを形成しなければならない。

CFRディベート
原子力エネルギーは地球温暖化対策の切り札になるか

2007年11月号

マイケル・マリオット 原子力情報資源サービス所長
スティーブ・ケレケス 原子力エネルギー研究所広報部シニア・ディレクター

環境保護派の多くにとって、原子力発電という言葉はいまも呪いの言葉に等しい。彼らの多くは、原子力発電所が環境に与えるダメージをいまも心配している。だがここにきて、地球温暖化対策という新しい基準が政策領域に持ち込まれたことで、環境保護の観点からも二酸化炭素を排出しない原子力発電が見直されつつある。だが、温室効果ガスを排出しないとはいえ、原子力発電には原子炉の安全性、放射性廃棄物、核拡散リスク、コストの問題がともなうと考える専門家もいる。環境をこれ以上汚染せずに、電力の必要性をいかにして満たしていくのか。それは、原子力発電なのか、それとも、同様に温室効果ガスを排出しない風力やソーラー(太陽光)エネルギーなどの再生可能エネルギーなのか。あるいは、原子力と再生可能エネルギーの組み合わせなのか。二人の専門家が議論する、エネルギーと地球環境の将来とは。

CFRインタビュー
朝鮮半島新時代の幕開けは近い?

2007年10月号

ドン・オーバードーファー ジョンズ・ホプキンス大学ポール・ニッツスクール 米韓研究所理事長

2007年10月の南北首脳会談後の盧武鉉韓国大統領の発言からして、北朝鮮はまだ改革・開放路線をとる準備はできていないようだ。北朝鮮は長年にわたって国を閉ざし、外の世界で何が起きているか、民衆が気づかないようにすることに努めてきた。だが、「そうした状況もすでに変化している」と北朝鮮問題の専門家、ドン・オーバードーファーは言う。旧ソビエト・東欧で起きたような民主革命が北朝鮮で起きる可能性は低いとしつつも、自分たちの国が「世界で最先端をいく国ではないこと」をこの国を支配している一握りのエリート層が理解し、動揺しだせば、これが民衆にも影響を与えることになると考えられる、と。今後の北朝鮮問題の進展を左右するファクターとして、ウラン濃縮疑惑、韓国の大統領選挙、そして、北朝鮮が新たに問題を作り出さないことを挙げた同氏は、朝鮮半島に新しい時代がもたらされる日も近いかもしれないとしつつも、「北朝鮮については、何事も楽観的な立場から話をするのは危険である。箱の中から何が出てくるかわからない」と慎重な楽観主義の必要性を示唆した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

核兵器を削減し、核不拡散を強化せよ
――軍事戦略の中枢に核兵器を据えることの誤り

2007年10月号

ウォルフガング・K・H・パノフスキー /スタンフォード大学リニア・アクセラレーター研究所名誉所長(量子物理学)

現状においてアメリカが核戦力を維持することの利益は、他国による核兵器の使用を抑止することだけである。したがって、アメリカの軍事戦略の中枢に核兵器を位置づける理由はもはや存在しない。一方で、アメリカが核の役割を大幅に低下させ、核兵器の削減にコミットし、核不拡散に向けた多国間構想を強化すべき理由は数多くある。この方向での取り組みをみせれば、アメリカが内外での核の削減に本気であることをアピールできる。こうした路線をとって初めて、アメリカの国家安全保障は強化されることになる。

CFRミーティング
核戦争の危険を低下させるには
――他国と協調して脅威を抑え込むか、
それとも壊滅的事態に直面するか

2007年10月号

スピーカー
サム・ナン/元米上院議員
司会
ジェームス・ホーグ/フォーリン・アフェアーズ誌編集長

60年間、核戦争が起きなかったからといって、われわれが安心する理由はどこにもない。今後も、一度や二度、幸運に恵まれる程度では、核戦争を回避するのは難しいかもしれない。核の惨劇を回避できるとすれば、すべての核保有国が核管理をめぐってきわめて慎重な態度をとり、賢明で合理的な判断をするだけでなく、幸運に恵まれる必要がある。……われわれが現在直面する最大の脅威は、壊滅的なテロ、核保有国の数の増大、そして核の偶発使用であり、これらの脅威に対処していくには、モスクワ、北京、その他と協調していかなければならない。他国と協調して脅威を抑え込むか、それとも壊滅的事態に直面するかという選択肢にわれわれは直面している。(S・ナン)

中国の環境破壊はなぜとまらないか

2007年10月号

エリザベス・C・エコノミー
米外交問題評議会アジア研究担当ディレクター

中国の指導者は大胆な環境対策の目標を設定し、環境保護に向けた投資を増やすと表明し、企業や地方政府にそれぞれ環境浄化に努めるよう強く求めだしている。国際社会も「北京も環境保護に向けた新たな路線をとりだした」と思い込んでいるようだ。しかし、こうした国際的反応は、「北京が号令をかければ物事が進む」という誤った思い込みを前提にしている。北京は国としての目標は設定できても、政策の実施面を管理しているわけではない。現実には、地方政府が北京の環境保護指令に注意を払うことはめったにない。むしろ、地方政府はもっぱら経済成長のさらなる推進にエネルギーと資源を注ぎ込んでいる。中国の環境保護政策の方向転換を図るには、環境保護に向けた目標を設定したり投資したりするよりもはるかに困難な、抜本的な政治経済制度の改革が最終的には必要になる。

いまこそイランとの緊張緩和を

2007年9月号

レイ・タキー 米外交問題評議会 中東担当シニア・フェロー

この30年近く、双方の敵意に満ちた感情と無責任なレトリックゆえに、アメリカとイランが合理的関係を構築するのは不可能な環境にあった。イランの現実主義者は常にイデオロギー的強硬派に敗れ去り、アメリカとイランの共通の利益も、歴史的対立のなかで見えなくなっていた。しかし、現在、イランには新保守派のなかに力強い現実主義者の集団が誕生し、しかも彼らは、ワシントンとの協調路線を積極的に唱えている。これに呼応して、ワシントンが緊張緩和路線にそった包括的戦略を考案し、実施していけば、両国が相互の敵対感情を克服できる瞬間がいずれ訪れる。……アメリカが国交を正常化させ、両国が抱え込んでいるすべての懸案について話し合いを始めれば、イランは正統な必要性を満たすことを優先させるのか、それとも、自己欺瞞の妄想にとらわれ続けるのかを選ばざるを得なくなる。

米議会は米印核合意を阻止する

2007年9月号

エドワード・J・マーキー

インドがアメリカに対して、友人であることの証に核不拡散政策を曲げるように求め、それをアメリカが受け入れればどうなるだろうか。パキスタンは中国に対して同じことをしてほしいと求めるかもしれない。仮に核供給国グループ(NSG)や国際原子力機関(IAEA)が、インドとアメリカの核合意を成立させるためにルールからの逸脱を例外措置として認め、その後、パキスタンの要請を受けた中国が同様の例外措置をパキスタンに適用するように求めればどうなるだろうか。アメリカが公然とダブルスタンダードを使い分けておいて、核不拡散の高い基準を維持できるはずがない。そんなやり方は通用しない。自分でたばこを吸い、酒を飲むのに、若者にそうしてはいけないと言って説得力があるだろうか。ブッシュ政権は現実に目を向けていない。米印核合意は、核拡散のドミノ倒し現象を引き起こしかねない。しかし、米議会は、まだ合意を阻む権限を持っている。(エドワード・マーキー)

経済成長と技術革新だけで、人は幸せになれるのか。リバタリアン(自由意思論)の立場をとる人々はこれにイエスと答える。市場経済のなかで、国が豊かになって技術革新が進めば、市民は健康になってよりすぐれた教育を受け、よい食事をして長生きし、環境に関心を払うようになる、と。だが、これはいかにも、規制をつくる政府を市場の敵とみなすアメリカ人特有の見方ではないか。実際、規制による適切な動機づけがあれば、経済成長と技術革新は環境にプラスに作用するが、市場のロジックだけではそうしたインセンティブは生じない。アメリカにおける環境への配慮も、力強い経済に必須の産物ではなく、激しい政治論争で環境保護派がかろうじて勝利を収め、規制が導入された結果である。富をつくりだすメカニズムとしての市場経済の作用に疑いはないが、規制緩和を進めて自由化路線をとれば、状況を先へ進められるのかどうか、その因果関係は明快ではない。

貧困対策より環境保護を
優先する理由はあるのか
 ――開発、環境、社会正義の連鎖と優先順位

2007年8月号

デビッド・G・ビクター 米外交問題評議会非常勤シニア・フェロー

経済発展を促進し、環境を保護するとともに、社会正義を実現するという三つの目標は矛盾するものではなく、相互補完的な関係にあるとした「持続可能な開発」の概念はいまや陳腐化してしまった。人権保護団体、環境保護団体、原子力発電企業が、これを、自分たちに都合のよい概念につくり変えただけでなく、国連の場で実現不可能な普遍的アジェンダとされてしまったからだ。持続可能な開発の概念を生き返らせるためには、普遍的アジェンダを掲げるのではなく、優先順位の設定と実施に関する意思決定を各地域の主体に委ねるべきだ。地域の必要性と利益がそれぞれに異なる以上、持続可能な開発を実践する場合は、必ずボトムアップ型のアプローチによる目標の再設定を繰り返していく必要がある。

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