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論文データベース(最新論文順)

中国の台頭と欧米秩序の将来

2008年1月号

G・ジョン・アイケンベリー プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン 公共・国際問題大学院教授

台頭途上にある大国は、新たに手にしたパワーを基に、自国の国益に即したものへと国際的なルールと制度を書き換え、グローバルシステムにおける、より大きな権限を手にしようと模索し、一方、衰退途上にある国は、影響力の低下を懸念し、それが、自国の安全保障にとってどのような意味合いを持つかを心配し始める。この瞬間に、大きな危険が待ち受けている。だが、新興大国が秩序に挑戦するか、それとも、自らを秩序に織り込んでいこうとするか、その選択は、目の前にある国際秩序の性格で大きく左右される。重要なポイントは、相手がアメリカだけなら、中国が(覇権国としての)アメリカに取って代わる可能性も排除できないが、相手が欧米秩序であれば、中国がそれを凌駕し、取って代わる可能性は大きく低下するということだ。ワシントンがそうした環境づくりに向けてリーダーシップを発揮するつもりなら、現在の秩序を支えているルールと制度の強化に努め、この秩序をより参加しやすく、覆しにくいものにしなければならない。

ミャンマー軍事政権への多国間アプローチを調整せよ

2008年1月号

マイケル・グリーン 戦略国際問題研究所日本部長
デレク・ミッチェル 戦略国際問題研究所上級研究員

麻薬・武器の密輸、HIVの拡散など、ミャンマーの軍事政権は国内の人権問題や抑圧だけでなく、国境地帯を不安定化させて近隣諸国も脅かしている。これまで、アメリカはミャンマーとの外交関係を制限し、ヨーロッパも政治改革の断行を強く求めてきたが、アジア諸国の多くは、軍事政権との貿易、援助、外交関係を拡大してきた。幸い、こうした国際社会の矛盾したアプローチも変化しつつある。東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本はすでにミャンマーへの建設的関与路線を見直しつつある。内政不干渉の原則を固持し、資源調達がらみの思惑からミャンマーを支援してきた中国とインドにも再考を促す必要がある。各国がそれぞれ一定の譲歩を示し、政策を調整することによって、共通の目標に向けて状況を進めていかなければならない。ミャンマー制裁を他の関与策とバランスよく組み合わせて包括的に実行しなければならない。ミャンマーがさらに孤立して自暴自棄に陥り、失われた世代が生まれるのを傍観するわけにはいかない。人道的な理由もさることながら、ミャンマーは東南アジアの安全保障と統合を阻む未解決の深刻な課題なのだから。

ロシアとの新冷戦を回避するには
―― なぜロシアは対米不信に陥ったか

2008年1月号

ディミトリ・K・サイメス ニクソンセンター所長

アメリカが犯した最大の間違いは、ロシアを「敗北したかつての敵」として扱ってしまったことだ。だが、ロシアは変貌を遂げた国ではあっても敗戦国ではなかった。ロナルド・レーガンがクレムリンへの圧力を強化することで、解体プロセスを後押ししたのは事実だが、ソビエト帝国の歴史に終止符を打ったのは、ホワイトハウスではなく、ゴルバチョフだった。この点を理解しなかったワシントンは、ロシアのことを潜在的なパートナーとしてではなく、財政力に欠け、機能不全に陥った弱体な国家とみなし、ソビエトの新生国家を可能な限りアメリカ側に取り込むことで、ソビエトの解体というトレンドをさらに間違いのないものにしようと考えてしまった。そしていまや、再生したロシアがアメリカの敵対勢力になるリスクは現実味を帯びてきている。そうした現実に直面するのを回避するには、ワシントンは何が問題だったのかを理解すべきだし、関係悪化という流れを覆すための適切な措置をとる必要がある。

CFRインタビュー
イランの核開発に関する
国家情報評価報告とイスラエルの立場

2007年12月号

ジェラルド・M・スタインバーグ バー・イラン大学政治学部長

「イランは核開発計画については2003年に停止しているが、ウラン濃縮プログラムは依然として続行している」。こう指摘した今回の国家情報評価(NIE)報告を受けて、アメリカのイラン政策が変更されるのかどうか、イランを国家安全保障上の最大の脅威とみなすイスラエルは、固唾を飲んでワシントンの動向を見守っていた。アメリカ国内では、「条件を付けずにイランと直接交渉をすべきだ」という声が聞かれる一方で、すでにNIE報告をどう解釈するかについての見直しも始まっており、イランの核開発の脅威は依然として存在するという見方も再浮上してきている。米・イスラエル安全保障関係の専門家であるジェラルド・M・スタインバーグは、「NIE報告に関するアメリカでの分析がさらに進み、それが何を言わんとしているかについての慎重な分析が進めば、イランに対する圧力行使策という点では、当初考えられたほどワシントンの路線に大きな変化はない」とみなす方向へとイスラエルでの議論は収れんしつつあると指摘しつつも、むしろアメリカはイランと交渉し、「イランにイスラエルがどのように機能しているかを理解させ、彼らの政策がイスラエルにどのような影響を与える可能性があるかを考えさせる必要がある」という指摘もあるとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRミーティング
ワールド・エネルギー・アウトルック
――石油の安定供給と地球温暖化対策

2007年12月号

スピーカー
ファティ・ビロル/国際エネルギー機関チーフエコノミスト
司会
デビッド・G・ビクター/米外交問題評議会 科学技術担当非常勤シニア・フェロー

現在のエネルギー消費路線を各国が変えなければ、2030年の二酸化炭素排出量は42ギガトンになり、この場合、地球の気温は6度上昇する。これでは人類社会はもたない。一方で、エネルギー利用効率が改善され、再生可能エネルギーや原子力エネルギーがより多く利用されるようになれば、二酸化炭素排出量は34ギガトンへと減少するが、この場合でも地球の気温は3度上昇する。一方、世界の指導者は排出量をもっと低下させたいと考えているし、何とか気温の上昇を2度に抑えたいと考えている。この場合、排出量を23ギガトンに抑え込まなければならないが、そのためには、2012年以降に建設される発電施設のすべてを二酸化炭素を排出しない施設にし、利用効率の改善レベルを2倍に引き上げ、排出削減を実現するための政治的意思と理解を世界規模でとりまとめる必要がある。これはいずれも非常に実現するのが難しい課題だ。(ファティ・ビロル)

Review Essay
経済にいかに介入すべきか、それが問題だ
――大恐慌とニューディールの真の教訓とは

2007年12月号

チャールズ・W・カロミリス/コロンビア大学ビジネススクール教授

ニューディールが大恐慌から経済を立ち直らせたと考えるのは間違っている。それどころか、「政策の失敗、とりわけ、どのような政策が採られるかが予想不能だったことが、経済の不確実性を増幅させ、企業と消費者の投資と消費を抑制する結果となった」。大恐慌を長期化させた理由の一つは、1930年代に受け入れられ始めた経済への政府介入を肯定的にとらえる新たなイデオロギー志向だった。それは、経済を計画し、形作ることを目的とする(政府介入型の)政策実験を行っても、ダメージは軽微なものにとどまり、むしろ大きな可能性を期待できるというイデオロギーにほかならない。こうしたイデオロギーゆえに、政府の経済介入策が、特に一貫性に欠け、予測不能なやり方で実施される場合、経済に大きなダメージを与え得ることが見えなくなり、うまく機能している市場が経済的問題に自律的に対応していくメカニズムを備えていることが軽視されてしまった。

自由に基づく恒久平和を
――民主国家の連帯を軸とするパートナーシップを

2007年12月号

ジョン・マケイン/米共和党予備選大統領候補

アメリカは冷戦期に西側を団結させた民主国家の連帯を復活させなければならない。アメリカだけで、自由に基づく恒久平和を実現することはできない。民主的な同盟国の意見に耳を傾けなければならない。……民主国家を「民主国家連盟」という一つの機構のもとに連帯させ、立場を共有する諸国が平和と自由のために協力するこの連盟が、国連がうまく対応できないような案件に対処していくようにする。私が大統領になれば就任1年目に、世界の民主国家の指導者とのサミットを開き、指導者たちとの意見交換をし、このビジョンを実現するために必要な措置を模索していく。(この文脈において)G8を……市場経済と民主主義を実践する主要国だけのクラブにする必要があり、ロシアを排除して、新たにブラジルとインドを参加させるべきだ。……一方、大統領として私は、オーストラリア、インド、日本、アメリカによるアジア太平洋地域の主要な民主国家による4国間安全保障パートナーシップの制度化を模索していく。……私は、日本が国際的なパワーになることを歓迎するし、見事なビジョンである「価値外交」を支援するとともに、日本が願っている国連安保理の常任理事国入りも支持する。

なぜアメリカはインドとの関係改善を決断したか
――米印原子力協力協定の真意

2007年12月号

R・ニコラス・バーンズ/米国務省政治担当国務次官

「2001年に大統領に就任したジョージ・ブッシュは、当初から国際政治におけるインドの民主主義のパワーと重要性に注目し、アメリカのインドとの戦略関係を構築することに向けて、大きな政治資源を投入し……過去30年にわたって関係を冷え込ませてきた核拡散問題に取り組む勇気と先見性を示した。アメリカは核不拡散原則からみて問題のあるインドの核拡散(核保有)を既成事実として受け入れ、インドのエネルギー需要を満たすための原子力発電については全面的に協力することを約束した。……世界最古の民主国家が、ついに世界最大の民主国家を最も親しいパートナーと呼ぶときが来た。アメリカはインドに手を差し伸べることによって、地球の未来が不寛容、専制政治、計画経済ではなく、多元主義、民主主義、市場経済によって規定されるようになることを願っている」

Classic Selection
それでも21世紀は民主主義の時代になる
――民主化に不可欠な信頼と妥協を育む市場経済

2007年12月号

マイケル・マンデルバーム   ジョンズ・ホプキンス大学教授

市場経済を機能させるのに必要な制度、知識、価値観は、民主主義を実現するうえで必要になる制度、知識、価値観と重なりあう。こうして民主主義は市場の働きを通じて広まることになる。市場経済が民主主義を育んでいくのは、市場経済の前提となる財産権の保障が自由の一部を構成しているからだ。もっとも重要なのは、市場経済のもとで、企業、労働組合、専門家協会、有志クラブなど、政府から独立した団体が多数誕生することだ。非民主国家が経済成長を実現するために市場経済体制を導入すれば、民主化圧力は必ず高まっていくし、経済成長は、将来にわたってあらゆる国の政府が追求する目標であり続ける。しかし、アメリカの政策でそれを左右するのは難しいし、アラブ世界、ロシア、中国が今後民主化していくかどうかは、予断を許さない状態にある。

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