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論文データベース(最新論文順)

CFRインタビュー
動き出したイラクの
政治プロセスと米軍撤退の行方

2008年3月号

ダニエル・P・サーワー 米平和研究所紛争後平和構築・安定化センター副所長

イラクの治安情勢が改善しつつあるのに、政治プロセスが完全に麻痺していると長く言われてきた。だが、イラク研究グループの統括議長を務めたダニエル・サーワーは、「これまで完全な膠着状態にあったイラクの政治状況がしだいに動き出している」と指摘する。「イラク議会は政治的に妥協することを学びつつあるし、しかも、妥協プロセスにおいて各派は憲法を幾度となく引き合いにだして自分の立場を主張するようになった」と。
 政治プロセスが動き出した理由として、サーワーは「スンニ派、シーア派といった宗派主義では民衆は救えない」ことが認識されだし、2008年に選挙が予定されている州評議会が政治的に機能しだしたこと」を挙げている。
 米軍の撤退については「2009年1月の時点で、駐留米軍の兵力は13万前後のはずだし、米軍のプレゼンスを維持せざるを得ないという現実におそらく新大統領は直面する」と今後を予測するサーワーは、「秩序だった形で撤退を進めるには、数年という時間枠が必要になる。この数年間のどこかの段階で、残留戦力をどのくらいにし、米軍にどのような任務を課すかを見直さなければならない」とコメントした。
 聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
馬英九総統の誕生で
中台関係はどう変わるか

2008年3月号

アラン・D・ロンバーグ
ヘンリー・スティムソセンター東アジア研究ディレクター

次期台湾総統に選ばれた馬英九は、かなり早い段階で、中国との経済合意を結びたいと考えているし、すでに運行されている中台間のチャーター便の数を増やし、定期便も就航させたいと考えている。そして時間をかけて、彼が「生活様式」と呼ぶ和平協定に向けた了解をとりまとめ、台湾の国際社会への参加に向けた道を開きたいと考えている。
 馬英九の対中路線をこう予測するアジア問題の専門家、アラン・ロンバーグは、「一つの中国」の解釈をめぐって馬と北京の間には意見の違いがあるが、馬も北京も、それはそれで現状として受け止め、状況を先へと進めようとするだろうとみる。「中国はこれまでの台湾との対決的ムードを早く変えたいと望んでおり、「一つの中国」という概念を箱に押し込んで、台湾民衆の人心を勝ち取れるような関係を築き、経済開発に専念したいと考えている」。

内からの崩壊を恐れる平壌
―― なぜ平壌は経済改革路線の導入を拒絶するのか

2008年3月号

アンドレイ・ランコフ 韓国国民大学准教授

北朝鮮のエリートたちは、彼らが直面している最大の脅威が、国の外ではなく、内側にあることを理解しており、改革を拒絶することが、民衆を管理するうえでもっとも好ましい政策であることを理解している。中国や韓国による改革導入の要請に平壌が耳をかさないのもこのためだ。たしかに、国境の南にいる同胞たちが北朝鮮では考えられないような物質的な豊かさと社会的自由のなかで暮らしていることを次第に理解するようになれば、早晩、北朝鮮民衆の多くは、韓国市民同様に繁栄を手にしたいと考えるようになり、そのためには、でたらめな政策をとっている政府を排除したいと考えるようになる可能性はある。しかし、これを回避するために北朝鮮の指導者は改革の導入を拒絶し、情報統制を強化するとともに、自国の国益からみて北朝鮮の不安定化を望まない中韓からの支援を引き出すことに成功している。この構図が短期的に変化するとは思えない。

CFRインタビュー
ブッシュ大統領の
歴史的評価は平均以下となる

2008年3月号

ジェームズ・M・リンゼー テキサス大学国際安全保障・法律研究所ディレクター

ジョージ・ブッシュは平均以下の大統領としかみなされないだろう。イラクでの困難な戦争を決着させられなかったし、国内でも、社会保障プログラム、移民問題などに結論を出せなかった。ひとことで言えば、機会を生かせなかった大統領とみなされるはずだ。
 ジョージ・ブッシュの大統領としての評価についてこう語るアメリカの内政と外交の専門家、ジェームズ・リンゼーは、「ブッシュ大統領はアメリカのパワーで何が達成できるかを過大視し、……結局『誰もついてこなくても自分はやる』と言い出した。だが、2003年にはアメリカだけでは手に負えないアジェンダを抱え込んでいたし、すでにこの時には孤立していた」と指摘し、北朝鮮、イラン、そして国際協調についても、「機会をうまく生かせなかった大統領」として記憶されることになると示唆した。
 聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgの副編集長)。

CFRインタビュー
民族・宗教で読み解く米大統領選挙

2008年3月号

ウォルター・ラッセル・ミード 米外交問題評議会シニア・フェロー

一般的に言えば、現在のアメリカの政治状況では、2人の責任ある候補たちが大統領選挙を戦うとして、有利なのはよりタカ派の候補だろう。民主党候補も、イラク戦争の全体像、本質、現地情勢からみれば、早期撤退を明言できない。とりわけ、軍の最高指揮官である大統領になるのなら、そうは断言できない。逆にマケインはこの点をうまく追い風にしたいと考えている。もちろん、マケインがこの賭けにうまく成功するかどうかはわからない。
 こう指摘する歴史家のウォルター・ラッセル・ミードは、マケインが南部キリスト教右派を取り込むには、ハッカビーよりもサム・ブラウンバックを副大統領候補に指名すべきだと述べ、一方、民主党の場合、黒人票とヒスパニック票の重要性の高まりに加えて、ビル・クリントンの政策に反発を感じ、彼のことを嫌っている民主党左派の反乱が起きていることに注目すべきだとコメントした。
 聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgの副編集長)。

「うまく経営されている企業が利害を有し、その本質を理解しているアジェンダに莫大な資源、専門知識、技能、マネジメントのスキルを投入すれば、他の組織や慈善団体よりもはるかに大きな社会的利益を導き出すことができる」。気候変動や水不足、感染症その他の地球の将来に大きな影響を与える問題に対処するうえで企業が応分の役割を果たすこと。これがグローバル・コーポレート・シチズンシップと呼ばれる概念の本質だ。たしかにグローバルアジェンダに対処するおもな責任は今も政府や国際機関にある。だが企業は、政府や市民社会グループと適切なバランスのパートナーシップを組んで、問題解決に大いに貢献できるはずだ。…グローバル・コーポレート・シチズンシップは社会における企業の前向きな役割を強化し、長期的な利益を高める企業の社会的関与の一形態であり、いずれ、企業をおもなステークホルダーに組み込んだ、新しいグローバル統治のモデルを示すこともできるようになる可能性を秘めている。

独裁体制と経済成長に因果関係はあるのか
――ロシア権威主義経済モデルの虚構

2008年3月号

マイケル・マクフォール   スタンフォード大学民主主義・開発・法治センター所長
キャサリン・ストーナー=ウェイス  スタンフォード大学民主主義・開発・法治センター副所長

1990年代のロシアでは民主化が進められたものの経済が低迷し、逆にこの10年は独裁体制が強化されたのに経済は大きく改善している。 しかし、現在のロシア政府のパフォーマンスはきわめて低く、治安、公衆衛生、腐敗、財産権の保障という面でみれば、現在のロシアの暮らし向きは、10年前よりも相対的に悪くなっている。ロシアの国際的な経済競争力、進出先あるいは取引先としての経済環境も悪化し、情報公開は進まず、政治的腐敗も深刻になっている。原油、天然ガスなど、原材料価格の高騰がロシア経済の大きな追い風となっているのは事実だが、それだけの話だ。ロシアの独裁体制と経済成長の間に何らかの因果関係があるとすれば、独裁制が成長に悪影響を及ぼしているということだ。

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