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論文データベース(最新論文順)

CFRインタビュー
カシミール問題を考える
――パキスタンの対テロ戦争を左右する
インド・パキスタン関係の試金石

2008年10月号

ハワード・B・シェーファー 元南アジア問題担当米国務次官補

 カシミール問題をめぐってインドとの関係が緊張すれば、パキスタンはタリバーンやアルカイダよりも、むしろインドを主要な敵対勢力とみなすようになり、対テロ戦争にはますます本腰を入れなくなる。この意味において、カシミール問題は、今後のアメリカの政策にとっても重要なファクターとなる。状況をこう分析する南アジアの専門家、ハワード・B・シェーファーは、次期大統領は、インド、パキスタン双方にカシミール問題への自制を求めて、対話の継続を促すとともに、ワシントンはより多くの関心をこの問題に寄せていく必要があると指摘した。ただし、カシミール問題は、インドとパキスタンの国家アイデンティティーに関わってくる微妙な問題であるため、問題を解決しようとするよりも、それをうまく管理していくことを心がけるべきだと示唆した。
 聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRミーティング
米次期政権はイランに政策的に
どう関与していくべきか

2008年10月号

スピーカー
バリ・R・ナサル 米外交問題評議会中東担当非常勤シニア・フェロー
レイ・タキー 米外交問題評議会中東担当シニア・フェロー
司会
リチャード・N・ハース 米外交問題評議会会長

この5年間におけるアメリカの拡大中東地域における主要な目的は、まず、2002年当時へと現状を引き戻すこと、つまり、イラク戦争が始まる前の現実へと状況を改善していくことにあった。(R・タキー)

 われわれがイランに提供できる最大の安心材料は、外交関係を正常化すること、つまり、テヘランにアメリカの大使館を再び置くことだ。他国とのノーマルな外交関係を持っていれば、より安心感を得ることができる。そうなれば、イランは核開発をついに断念するかもしれない。(V・ナシル)

 アメリカの次期政権は、イランの一定の影響力を「条件付き」で受け入れるという路線を表明するかもしれない。……別の言い方をすれば、核開発問題をめぐって進展がみられないなかで、どうすれば、よりましなアメリカとイランの関係を想定できるかが政策的に議論されることになるだろう。(R・ハース)

イラクの安定の継続か、内戦への回帰か、
その鍵を握る米軍撤退のタイミング
 ――米軍の迅速かつ大規模な撤退を回避せよ

2008年10月号

スティーブン・ビドル   米外交問題評議会シニア・フェロー
マイケル・E・オハンロン   ブルッキングス研究所シニア・フェロー
ケネス・M・ポラック ブルッキングス研究所   セバン中東研究センター所長。

もうしばらく辛抱すれば、現在のイラクの安定が定着し、2010~2011年には大規模な米軍撤退を実施しても、イラクの安定が維持される現実的な見込みが出てきている。スンニ派武装勢力、シーア派武装勢力の力が弱まり、イラク・アルカイダの影響力が低下する一方で、イラク治安部隊が強化され、その結果、政治面でも新しいダイナミクスとインセンティブが作り出されているからだ。民族・宗派間抗争が激しかった過去数年間、イラクの政治勢力の影響力の基盤は、「保護を必要とする者を保護し、保護を必要としていない者を脅迫するための武装勢力を持っていた」ことにあった。しかし、これらの武装勢力は力を失ってきているし、その結果、政治勢力も歩み寄りを模索するようになってきている。この安定を維持し、定着させなければならない。少なくとも、2008年末と2009年末にそれぞれ予定されている地方、国政レベルでの選挙が終わるまでは、相当規模の米軍を維持する必要がある。ある程度の忍耐を持ち、現在のイラクにおける前向きな変化をうまく育んでいけば、永続的なイラクの安定という望みを捨てることなく、近いうちに米軍を撤退させられるようになるかもしれない。

地球温暖化をいかに封じ込めるか
 ――途上国を取り込んだ「キャップ・アンド・インベスト」枠組みの導入を

2008年10月号

カーター・F・ベールズ ウィックス・グループ名誉マネージング・パートナー
リチャード・D・デューク 天然資源保護協議会・市場改革センター・ディレクター

ワシントンは、温室効果ガス排出権取引システムを導入し、そこから得た歳入をエネルギー使用効率やクリーンな電力生産領域での技術革新に利用していくことを目指す「キャップ・アンド・インベスト」戦略を実施すべきだ。キャップ・アンド・インベスト戦略が導入されれば、アメリカはごくわずかな経済コストでクリーンエネルギー経済へとシフトできるようになる。事実、コンサルティング企業のマッキンゼーの最近の報告は、政府がエネルギー使用効率改善と技術革新による可能性を最大限に促進すれば、2030年までにアメリカの温室効果ガス排出量を30%近く削減するのに必要なコストをほぼゼロへと圧縮できると指摘している。

自由貿易は雇用創出に貢献できる

2008年10月号

ジョン・B・テイラー ジョン・マケイン米大統領候補・経済政策上級顧問

共和党大統領候補ジョン・マケインの経済政策上級アドバイザーを務めるジョン・B・テイラーは、雇用を創出し、アメリカ経済を復活させるには力強い貿易政策が必要だとしつつも、一方で、「マケイン候補は失業者対策を見直し、競争環境、技術革新、生産体制の変化のあおりを受けて、雇用を失った人々に救いの手を差し伸べるつもりだ」とコメントした。
アメリカの競争力を強化するには、法人税率の引き下げ、自由貿易合意、金融改革が不可欠だと指摘した同氏は、エネルギー資源については、マケインは国内の石油生産の増強を試みるとともに、原子力、バイオ燃料、環境保護も重視していると語った。
 聞き手は、ロバート・マクマホン(www.cfr.orgのデピュティー・エディター)。

グルジア紛争後の米ロ関係

2008年9月号

スピーカー
スティーブン・セスタノビッチ/米外交問題評議会ロシア・ユーラシア担当シニア・フェロー
司会
チャールズ・A・クプチャン/米外交問題評議会ヨーロッパ担当シニア・フェロー

ロシアの行動を認めないという観点から連帯が組織されようとしているが、これは主要な問題ではない。「そこで起きたのが何であるか、侵略戦争なのか、民族紛争なのか」をまずはっきりとさせる必要がある。(S・セスタノビッチ)

ロシア人は当時から、コソボを独立させれば、アブハジアや南オセチアでの問題を煽ることで報復すると語っていた。ワシントンはこれを口先だけの脅しにすぎないと考えていた。だが、ロシアは実際に言葉どおりの報復策をとってしまった。これは、欧米がロシアのコソボ問題への思い入れを無視し、NATO拡大策をとり、中央ヨーロッパへのミサイル防衛の配備を進めてきたことに対するモスクワの不満がいかに大きいかを軽く見ていたことを意味する。(C・クプチャン)

1990年代は中央・東ヨーロッパに民主主義を定着させることが課題とみなされていた。だが現在は、さらに東側のヨーロッパとアジアが出会うユーラシアを安定化させるというさらにむずかしい課題にわれわれは直面している。トルコ、ウクライナ、グルジア、アルメニア、アゼルバイジャンなど、バルカン半島から黒海、南コーカサスにいたる地域の安定化が問われている。南北を不安定な中東と敵対的なロシアに囲まれているこれらの国々が、ヨーロッパ大西洋コミュニティーの南方における新たな「側壁」を形成しつつあることを認識すべきだ。現在の西バルカン地域、グルジア、ウクライナなどの黒海周辺地域は、10年前の中央ヨーロッパや東ヨーロッパよりもさらに不安定で大きな危険にさらされている。

次期大統領が直面する遠大な課題

2008年9月号

リチャード・ホルブルック  元米国連大使

「マケインは自分のことを『リアリスト』、また最近では『理想主義的なリアリスト』と呼ぶことを好むが、彼の各問題に対する立場をみると、マケインといわゆるネオコンの立場が似ていることを無視することはできない。(一方)オバマの政策の特徴は、あらゆる課題を前向きに進化させていくとしている点にある。彼は、変化し続ける新しい現実に適応できるように、古い、硬直化した政策を調整していくとし、アメリカのパワーと影響力を強化する手段としては外交が最善であると強調している。……二人の立場の違いに目を向ければ、オバマとマケインが、……『世界におけるアメリカの役割』についての二つのビジョン、そして外交に対する異なる二つの態度を示していることがわかるはずだ」

なぜアメリカのキリスト教徒は ユダヤ国家を支持するのか
――旧約聖書がつなぐアメリカとイスラエル

2008年9月号

ウォルター・ラッセル・ミード 米外交問題評議会シニア・フェロー(米外交政策担当)

アメリカのユダヤ系コミュニティーがまだ大きくも強くもなく、イスラエルロビーなど存在もしなかった19世紀末に、アメリカにおけるキリスト教系の各界指導者たちは、すでに、「聖書の地」にユダヤ人国家を建設する外交努力を支持する態度を明確にしていた。……孤立し疎外された民であり国であるユダヤ人とイスラエルを支援することが、しばしばアメリカの評判を落とし、別の問題をつくることになっても、アメリカ人は気にしない。アメリカがイスラエルの保護者、ユダヤ人の友人という役割を引き受けたのは、神が特有の運命を与えられた国という自らの地位を正当化するためでもあった。……アメリカの親イスラエル路線は、小規模なロビイストが世論の意図に反して勝ち取ったものではない。むしろこれは、専門家の懸念にもかかわらず、外交政策を形成する世論のパワーを物語っている

米中戦略経済対話の継続を

2008年9月号

ヘンリー・M・ポールソン
米財務長官

「意思決定権を持つ指導者との直接交渉ほど関係を深化させるうえで有効な手立てはないし、特に、敬意と友情を重視する中国の場合、そうした高官レベルでの接触が大きな意味を持つ。……中国がアメリカに取って代わるのではないかと心配する声もあるが、それは杞憂というものだ。真に懸念すべきは、北京が重要な改革をしないかもしれないこと、そして、北京が改革の途上で重大な経済的困難に直面するかもしれないことだ。中国経済が大きなトラブルに見舞われれば、アメリカとグローバル経済の安定も脅かされる。……米中戦略経済対話は、グローバル経済の成長を維持する戦略原則から、米中関係を再定義へと向かわせた。(この対話枠組みは)両国の政策立案者に前向きなインセンティブを与え、両国関係の基盤をたんなる協調から共同運営へと進化させ、最終的には純粋なパートナーシップとして開花させていく機会を提供している」

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