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論文データベース(最新論文順)

次期大統領が直面する遠大な課題

2008年9月号

リチャード・ホルブルック  元米国連大使

「マケインは自分のことを『リアリスト』、また最近では『理想主義的なリアリスト』と呼ぶことを好むが、彼の各問題に対する立場をみると、マケインといわゆるネオコンの立場が似ていることを無視することはできない。(一方)オバマの政策の特徴は、あらゆる課題を前向きに進化させていくとしている点にある。彼は、変化し続ける新しい現実に適応できるように、古い、硬直化した政策を調整していくとし、アメリカのパワーと影響力を強化する手段としては外交が最善であると強調している。……二人の立場の違いに目を向ければ、オバマとマケインが、……『世界におけるアメリカの役割』についての二つのビジョン、そして外交に対する異なる二つの態度を示していることがわかるはずだ」

なぜアメリカのキリスト教徒は ユダヤ国家を支持するのか
――旧約聖書がつなぐアメリカとイスラエル

2008年9月号

ウォルター・ラッセル・ミード 米外交問題評議会シニア・フェロー(米外交政策担当)

アメリカのユダヤ系コミュニティーがまだ大きくも強くもなく、イスラエルロビーなど存在もしなかった19世紀末に、アメリカにおけるキリスト教系の各界指導者たちは、すでに、「聖書の地」にユダヤ人国家を建設する外交努力を支持する態度を明確にしていた。……孤立し疎外された民であり国であるユダヤ人とイスラエルを支援することが、しばしばアメリカの評判を落とし、別の問題をつくることになっても、アメリカ人は気にしない。アメリカがイスラエルの保護者、ユダヤ人の友人という役割を引き受けたのは、神が特有の運命を与えられた国という自らの地位を正当化するためでもあった。……アメリカの親イスラエル路線は、小規模なロビイストが世論の意図に反して勝ち取ったものではない。むしろこれは、専門家の懸念にもかかわらず、外交政策を形成する世論のパワーを物語っている

米中戦略経済対話の継続を

2008年9月号

ヘンリー・M・ポールソン
米財務長官

「意思決定権を持つ指導者との直接交渉ほど関係を深化させるうえで有効な手立てはないし、特に、敬意と友情を重視する中国の場合、そうした高官レベルでの接触が大きな意味を持つ。……中国がアメリカに取って代わるのではないかと心配する声もあるが、それは杞憂というものだ。真に懸念すべきは、北京が重要な改革をしないかもしれないこと、そして、北京が改革の途上で重大な経済的困難に直面するかもしれないことだ。中国経済が大きなトラブルに見舞われれば、アメリカとグローバル経済の安定も脅かされる。……米中戦略経済対話は、グローバル経済の成長を維持する戦略原則から、米中関係を再定義へと向かわせた。(この対話枠組みは)両国の政策立案者に前向きなインセンティブを与え、両国関係の基盤をたんなる協調から共同運営へと進化させ、最終的には純粋なパートナーシップとして開花させていく機会を提供している」

宗教と中国の将来
――宗教と市民社会、経済を考える

2008年9月号

スピーカー:アダム・ユエット・チャウ ロンドン大学社会人類学教授、リチャード・マッドセン カリフォルニア大学社会学教授、ロバート・ウェラー ボストン大学人類学教授、司会:スーザン・R・ウェルド ハーバード大学リサーチ・フェロー

世界各地では宗教が社会に悪影響を及ぼし、民族間の対立意識や地方の不満に火をつけることにもなりかねないが、……台湾では世界の他の地域とは正反対のことが起きている。台湾の宗教は、特定民族間の対立を和らげ、中国本土との懸け橋の役目も果たしている。(R・マッドセン)

 中国では、現地のカルト宗教と地方当局との間で共生関係が生まれつつあり、北京の宗教に関する指令が、地方において文字通りに実施されることはほとんどない。(A・チャウ)

 台湾の場合、宗教的な経験によって民衆レベルでの民主的資源がすでに存在したことが、上からの民主主義を開花させていくうえで貢献した。したがって、中国がこの種の(民主的資源としての)宗教の存在を容認するかどうかが、重要になってくる。だが、それを認めたとしても、民主的な変化が必然になるわけではないだろう。(R・ウェラー)

NATOの東方拡大に反発したロシア

2008年9月号

F・スティーブン・ララビー ランド研究所ヨーロッパ安全保障問題担当議長

ロシアはかねて旧ソビエト地域における影響力の低下に頭を悩ませてきた。今回のロシアのグルジア侵略は、近隣地域での民主化潮流の台頭に対するロシアの回答だったとみなすこともできる。今回のロシアの動きは、旧ソビエト地域に欧米の影響力、とりわけNATOの影響力が入り込んでくるのを押し返そうとする試みだった。とはいえ、NATOの一部メンバーは、(NATOへの加盟を望んでいる)グルジアやウクライナがヨーロッパの一部なのかどうかについて確信が持てずにおり、われわれは防衛上の確約を旧ソビエト諸国に与えることには慎重でなければならない。現在われわれにできることは、ロシアに対してグルジアからロシア軍を撤退させるように求め、それに応じるまでは、ロシアのWTO加盟を支持しないという路線をとることだ。また、今回のグルジアに対するロシアの行動は、グルジアよりも、むしろウクライナを意識した行動だったことも見落としてはならない。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

Review Essay
帝国の台頭と衰退を考える

2008年7.8月号

ポール・ケネディ/イエール大学歴史学教授

チュアは、帝国としての基盤を固めた帝国が、その後何世代あるいは数世紀にわたって繁栄し続けることができたのはなぜかというテーマに焦点を当てている。その答えは異分子の取り込み、より穏やかな言い方をすれば、帝国が内に抱える異分子への寛容を示したことにある。……次期大統領が現在の路線を変えられるかどうか、彼女は判断を下していないが、チュアが明確に指摘しているのは、政治的・宗教的な寛容と文化的な理解を持つことが、非常に重要だということだ。この点は国際社会におけるパワー、そしてアメリカというパワーの未来にとっても興味深い意味合いを持つ。

Classic Selection 2008
米中によるG2の形成を

2008年7・8月号

C・フレッド・バーグステン/ピーターソン国際経済研究所所長

現在のアメリカの対中アプローチは、既存のグローバル経済秩序に参加するように中国を促すことに焦点を当て、一方の中国は、制度構築上の役割を担う余地のないシステムに組み込まれるという構図を不愉快に感じ、一部で制度に挑戦する動きをみせている。ワシントンは、短絡的に米中間の2国間問題にばかり焦点を当てるのではなく、北京とグローバル経済システムを共同で主導していくための真のパートナーシップを構築していくべきだ。グローバルな経済超大国、正当な制度設計者、国際経済秩序の擁護者としての中国の新たな役割に向けて環境を適正化できるのは、米中によるG2構想だけだ。米中間の紛争を制度的な管理の問題に置き換えて、解決を試みていくことは極めて効率的なやり方である。

石油戦略備蓄の効果を最大化するには
――備蓄量ではなく、備蓄の管理体制に目を向けよ

2008年7・8月号

デビッド・G・ビクター 米外交問題評議会非常勤シニア・フェロー
サラ・エスクレイス・ウィンクラー 元米外交問題評議会・国家安全保障担当研究員

「石油の供給ショックに備えた石油の備蓄を準備しておけば、世界の石油供給の混乱に対する内外のショックへのバッファーにできる」。これが戦略備蓄の構築に向けたロジックだった。たしかに、カトリーナやリタなどのハリケーン災害など、短期的な危機の場合には、戦略備蓄の放出をめぐる国際協調がうまくいくこともあるが、石油供給がひどく混乱し、何としてもまず自国を救いたいと各国が考えるような切実な危機の際には、うまく協調できないことが多い。より優れたシステムをつくるには、備蓄の量ではなく、むしろ、この備蓄をどれだけうまく管理できるか、つまり、いかにタイミングよく備蓄を積み増し、あるいは放出するかを判断する、政府から独立した組織を新たに持つ必要がある。そして、資金の流動性を独自の判断で調整する中央銀行こそ、石油の戦略備蓄を管理する組織の格好のモデルとみなせる。

アメリカの国益を再考する
――新しい世界とアメリカ特有のリアリズム

2008年6月号

コンドリーザ・ライス  米国務長官

アジア・太平洋地域でも民主化が進展するとともに、同盟関係のネットワークが拡大し、われわれが共有する目的が促進されている。多くの人が中国の台頭がアジアの将来を左右すると考えているが、同様に、アジアでしだいに広がりをみせている民主国家コミュニティーの台頭も将来を左右する重要な要因だし、ともすれば、後者のほうが中国の台頭以上に、今後を左右するファクターになるかもしれない。
 われわれはオーストラリア、東南アジアの主要国、日本との強固で民主的な同盟関係を築き上げている。日本は、いまや普通の国家としても台頭しつつある経済大国で、アジア、そして広くアジアを超えてわれわれと共有する価値を守り、推進していく力を持っている。
 ……アジア・太平洋でのこうした展開は、われわれの価値と戦略利益にとって劇的なブレークスルーである。

イスラエルはトルコの仲介でシリアと交渉し、レバノンとの和平にも前向きになっている。シリア、レバノンとの和平に集中するためか、ガザ地区のハマスとは休戦合意を成立させている。シリアとレバノンの双方との交渉を試みているイスラエルの意図について、「シリアと交渉している以上、イスラエルがレバノンとの直接交渉するのを望んでいることには不思議はない。
 ……双方と交渉しない限り、紛争は決着させられない」と説明する米平和研究所の中東専門家モナ・ヤコービアンは、一方でシリアは「欧米の政策が作り出した孤立状況から脱して、グローバル経済への統合」を果たすことを最優先に考え、「もはやイスラエルと軍事的対決路線をとるつもりはない」とみる。
「イスラエルは、フランスが7月にパリで主催する欧州・中東諸国を交えた首脳会議の場で、シリアのアサド大統領とイスラエルのオルメルト首相の直接交渉をセットアップしたいと考えて」おり、これが実現すれば、中東情勢は大きく動くかもしれない。
 聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

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