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論文データベース(最新論文順)

21世紀の資源争奪戦

2008年6月号

スピーカー
ポール・J・カーン
コーエングループ・シニアカウンセラー
レオン・S・ファース
ジョージ・ワシントン大学教授
デビッド・G・ビクター
スタンフォード大学教授

司会
ポール・スタレス
米外交問題評議会紛争予防センター所長

「イリノイ大学の研究によれば、現在12億人が飲料水不足に苦しみ、26億人が不衛生な環境で生活しており、しかも、状況はますます悪化している。……地球が水で覆われているにもかかわらず、地球の飲料水資源は不足している」(P・カーン)

「原材料や資源確保への不安が日本を戦争の道へと駆り立てた。現在においても、重要な資源へのアクセスをめぐる不安が、戦争を誘発する危険はある」(L・ファース)

「資源争奪をめぐる紛争のリスクを心配するのであれば、人間の行動を規定する枠組みである統治制度を是正する必要がある。ダルフール危機を資源の側面からは解決できない。暴力を抑えるようにこの国の統治体制を見直すことが不可欠だ」(D・ビクター)

北京オリンピックと政治
―― 中国は世界の懸念に耳を傾けていることを示せ

2008年5月号

ミット・ロムニー 前マサチューセッツ州知事

中国は、社会マナーキャンペーンを実施するなど、世界からよいイメージを持ってもらおうと、多くのことを試みてきたが、ダルフール紛争が起きているスーダンから大量の石油を輸入したり、チベットで騒乱を弾圧したりしたことが、これほど世界の反中国感情を掻き立てることになるとは考えていなかったようだ。
スーダンとチベットが非常に微妙で、重要な問題であること、人道性に関わる問題であることをいまや理解していると中国はアピールすべきだ。世界の意見に耳をかたむけ、状況の改善に努めていくことを示すためのシンボリックな行動をとる必要がある。
オリンピックとはホスト国の問題を問うことが目的ではない。世界の優れた運動選手が平和の祭典のために集まり、各国が競い合いつつも、協調できることを、スポーツを通じて広く世界の人々に示すことにある。

信仰の時代における外交
――宗教的自由と国家安全保障

2008年5月号

トーマス・F・ファー ジョージタウン大学外交政策学部客員教授

宗教が世界的規模で台頭し影響力を強めつつある。だが、宗教とは本来、感情的かつ不合理なものであり、近代性とは相反するという根強い思い込みが、宗教と民主主義との関係についての明瞭な思考を妨げている。その結果、宗教的迫害に反対し、宗教を理由に拘束されている人物を解放することばかりにとらわれて、宗教的自由を促進するという目的が完全に忘れられてしまっている。
 政策決定者は、宗教に対して経済や政治問題同様のアプローチをとる必要がある。つまり、宗教のことを、人間や政府の行動を駆り立てる重要なインセンティブとして認識しなければならない。政治的、経済的動機のように、宗教的動機も、破壊的、または建設的構造双方を増幅させる力を持ち、より劇的な結果を招き入れることが多いことを理解し、外交に宗教ファクター、つまり、宗教的自由の促進という要素を統合していく必要がある。

CFRディベート
アメリカは対中貿易強硬策を
とるべきなのか?

2008年5月号

ロバート・E・スコット  経済政策研究所上級国際エコノミスト
ダニエル・J・アイケンソン  ケイトー研究所貿易政策研究センター副所長

アメリカの巨大な貿易赤字、人民元の切り上げ、中国における知的所有権の保護という懸案を中心に、米中貿易関係は、アメリカの大統領選挙でも大きな争点として取りあげられている。特に、民主党の大統領候補たちは、人民元を切り上げなければ、懲罰関税の発動も辞さないと発言している。今後の米中貿易関係はどうあるべきなのか。アメリカは対中貿易強硬策をとるべきなのか。それとも……。

CFRインタビュー
環境対策技術開発に民間資金を向かわせるには

2008年5月号

イボ・デブア 国連気候変動枠組み条約事務局長

今後25年間にわたって、予測されているペースで世界経済が成長を続けるとすれば、われわれは、エネルギーインフラに20兆ドルを投資しているはずだ。だが、地球温暖化対策に配慮せずに20兆ドルをエネルギー部門に投資するとすれば、温室効果ガスの排出量は50%上昇する。
 エネルギー部門への20兆ドルの投資への補助金を出すよりも、民間市場での環境技術開発を刺激するために、各国政府が協調すべきだと思う。
 民間の資金の流れを、地球温暖化対策からみて適切な方向へと向かわせること、つまり、もっと大きな民間の資金を温暖化対策に向かわせるにはどうすればよいかを考えていかなければならない。

CFRインタビュー
ヨーロッパはイラクからの
米軍撤退など望んでいない

2008年5月号

ジョセフ・ジョフィ 独ツァイト紙編集・発行人

アメリカにとって、冷戦期における最大の戦略的重要性を持つ地域はヨーロッパだったが、いまや、それは大中東地域だ。世界のナンバーワン国家が怖じ気づいて、中東から逃げ出すとなれば、スーパーパワーとしての役割を放棄することになる。
 米民主党候補が公約しているように、イラクからの撤退を強行すれば、「非常に大きな戦略的帰結に直面することになる」と指摘するジョセフ・ジョフィは、「アメリカが中東から撤退することを望んでいるヨーロッパの指導者はいないと思う」と指摘し、「私はオバマがナイーブで理想主義的なジミー・カーターのような人物でないことを望む」とコメントした。
 聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
戦争と経済
――イラク戦争のもう一つの問題

2008年5月号

ロバート・D・ホーマッツ ゴールドマン・サックス副会長

歴史的にみて、大がかりな戦争を始める前には、戦費のどの程度を税金でまかなえるか、どの程度の債務を背負い込むことになるかについての熱い論争が展開されてきた。南北戦争前には、25%を税金で支払い、75%を借金でまかなうことが合意されていた。
 第二次世界大戦期にも、税金と借金の比率を半々とすることで合意が形成されていた。だが、イラク戦争の場合、そうした戦費調達の議論は一切行われなかったし、同世代で大半の重荷を担うという話もなかった。それどころか、減税の話がでているし、通常、戦期には抑え込まれるはずの国内支出もイラク戦争期には増大している。
 イラク戦争の戦費の多くは透明性に欠けるし、いかにして戦費を調達するかについての議論も事前には行われなかった。今後、われわれはイラク戦争をめぐってこの点を問題として取り上げていく必要がある。

ジョン・マケイン上院議員(共和党、アリゾナ州選出)は、これまでの選挙キャンペーンで「自分は外交領域での多種多彩な経験を持っている」と強くアピールしてきた。彼は、イラク増派策を強く支持し、議会共和党の指導者、ブッシュ政権の高官同様に、イラクでの戦争を、アメリカの安全を脅かすイスラム過激派との対テロ戦争の一環とみなしている。
 一方でマケインは、地球温暖化対策、核軍縮、移民対策、拷問と描写されることもある(テロ容疑者への)尋問スタイルなどをめぐっては、共和党の主流派とははっきりと異なる立場を示している。
 マケインの外交アドバイザーには多様な考えの持ち主が多く、大枠でとらえても、そこには「リアリスト」対「ネオコンサーバティブ、強硬派」という図式がみてとれる。すでにこうした構図のなかでアドバイザー集団間の影響力をめぐる派閥抗争が起きていると伝える報道もある。だが、「そのようなとらえ方では彼の顧問たちの多様な思想の詳細を把握できないし、マケイン自身の外交知識を過小評価することになる」と考える専門家もいる。
 現在のところ、共和党の指導者トレント・ロット、ボブ・ドールにも仕えた経験を持つ元議会スタッフ、ランディ・シューヌマンが外交政策を、元議会予算局長のダグラス・ホルツイーキンが経済政策を取り仕切っている。
 マケインがアドバイスを得ている専門家には、いわゆるリアリストとして知られるヘンリー・キッシンジャー、リチャード・アーミテージ、一方では、ネオコンサーバティブの論客であるウィリアム・クリストル、ロバート・ケーガンなども含まれている。
 選挙キャンペーンにおいては、ケーガンを始め、元国務省のリチャード・S・ウィリアムソン、国防・安全保障問題の専門家ピーター・W・ロドマン、そして、国家安全保障とエネルギー問題のアドバイスをしている元中央情報局(CIA)長官のR・ジェームズ・ウールジーが主要な外交顧問とみなされている。
 メディアは顧問集団同士が影響力を競い合っていると報道している。ニューヨーク・タイムズ紙は2008年4月に、マケインの顧問を務めるリアリスト集団は、共和党保守派、あるいは、ネオコンサーバティブの影響力が高まりをみせていることに懸念を強めていると伝えたが、そうした対立は誇張されているとみる専門家もいる。

石油の富と呪縛
 ――なぜ資源保有国は貧困から抜け出せないのか

2008年5月号

マイケル・L・ロス カリフォルニア大学政治学部准教授

途上世界の資源保有国のほとんどは貧しく、非民主的だし、まともな統治体制を持っていない。そこに石油資源からの富が流れ込めば、往々にして紛争が誘発されるか、すでに起きている紛争を長期化させ、資源がもたらす富が建設的投資にまわされることはなく、結果的に貧困が続く。
 史上例のない原油価格の高騰は、棚ぼたの経済利益を資源保有国にもたらし、これが逆に紛争を助長してしまう危険がある。必要なのは、こうした資源国に輸出の対価として政治腐敗と紛争を助長するキャッシュを与えるのではなく、インフラ整備や社会サービスなどを提供し、成長の基盤を整えることではないか。

CFRミーティング
ワールド・エコノミック・アップデート
――「サブプライム後」のアメリカ経済、世界経済を分析する

2008年5月号

スピーカー
ジョイス・チャン  JPモルガン・チェース クライアントビジネス担当マネージング・ディレクター
イーサン・ハリス   リーマン・ブラザーズ アメリカ経済担当エコノミスト兼マネージング・ディレクター
ヌリエル・ルービニ  ニューヨーク大学 スターン・ビジネススクール教授
司会
ダニエル・K・タルーロ

まず金融部門が実体経済に影響を及ぼし、今度は実体経済の収縮が金融部門に悪影響を及ぼすという悪循環が今後始まることになる。(ヌリエル・ルービニ)

 ポイントは、さらに深刻な事態になれば、政府が大胆に動くと考えられることだ。この点が過小評価されている。(イーサン・ハリス)

 私はデカップリング論を支持しない。むしろ、「グローバル経済は一つのエンジンで刺激されているが、新興市場が世界経済に占めるシェアと役割も拡大している」と考えるべきだ。……大きな特徴は、新興市場経済が成長した結果、さまざまな形で経済的クッションが誕生していることだ。(ジョイス・チャン)

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