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イスラエルはトルコの仲介でシリアと交渉し、レバノンとの和平にも前向きになっている。シリア、レバノンとの和平に集中するためか、ガザ地区のハマスとは休戦合意を成立させている。シリアとレバノンの双方との交渉を試みているイスラエルの意図について、「シリアと交渉している以上、イスラエルがレバノンとの直接交渉するのを望んでいることには不思議はない。
 ……双方と交渉しない限り、紛争は決着させられない」と説明する米平和研究所の中東専門家モナ・ヤコービアンは、一方でシリアは「欧米の政策が作り出した孤立状況から脱して、グローバル経済への統合」を果たすことを最優先に考え、「もはやイスラエルと軍事的対決路線をとるつもりはない」とみる。
「イスラエルは、フランスが7月にパリで主催する欧州・中東諸国を交えた首脳会議の場で、シリアのアサド大統領とイスラエルのオルメルト首相の直接交渉をセットアップしたいと考えて」おり、これが実現すれば、中東情勢は大きく動くかもしれない。
 聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

新しい中東戦略を提言する
 ――イラン封じ込め戦略は間違っている

2008年6月号

バリ・ナサル  フレッチャースクール法律外交大学院国際政治学教授
レイ・タキー  米外交問題評議会シニア・フェロー

1980年代にアメリカは(シーア派の)イランを封じ込めようとアラブ諸国政府を動員したが、その結果、スンニ派の政治文化を急進化させ、ついにはアルカイダを誕生させてしまった。今回も、同様に忌まわしい結末に直面する危険がある。
  イラン封じ込め戦略は、シーア派のイランに対抗する思想的な防波堤としてスンニ派過激主義思想を助長するだけに終わるかもしれない。これまでのように中東のパワーバランスを回復することを目指すのではなく、地域の統合を働きかけ、すべての関係勢力が現状を維持することに利益を見いだすような新たな枠組みをつくり上げることを目指すことこそ、ワシントンにとって賢明な選択のはずだ。

「私はアメリカの相対的地位が低下する一方で、ヨーロッパやアジアが台頭するといったとらえ方はしていない。アメリカの相対的な立場が低下し、他の多くの諸国が混乱のなかで競い合うようになる。これが現実に起きていることだ」。むしろ、国がパワーを独占した時代は終わっていることを認識する必要があるとR・ハース米外交問題評議会(CFR)会長は強調している。「ドルの流れという点ではシティ・グループやメリルリンチなどがより大きな役割を果たしていくようになるし、政府系ファンド領域ではアブダビ投資庁(ADIA)、グローバルな公衆衛生領域ではゲイツ財団などのプレーヤーが台頭している。中東の武装集団も、パキスタン西部に隠れているテロ集団も無視できない存在になる」。もはや、脅威やアジェンダがかつてのようにはっきりとしたものでない以上、国だけでは問題に対処できないし、京都合意のような包括的な国際合意の形成も、もはや期待できないとハースはみる。必要なのは、かつてのような同盟関係ではなく、是々非々の多国間主義であり、これまでの多国間主義とは異なる協調のスタイルを考えていく必要があると指摘した。邦訳文は5月にワシントンで開かれたCFRミーティングの質疑応答からの抜粋。

「私はアメリカの相対的地位が低下する一方で、ヨーロッパやアジアが台頭するといったとらえ方はしていない。アメリカの相対的な立場が低下し、他の多くの諸国が混乱のなかで競い合うようになる。これが現実に起きていることだ」。むしろ、国がパワーを独占した時代は終わっていることを認識する必要があるとR・ハース米外交問題評議会(CFR)会長は強調している。「ドルの流れという点ではシティ・グループやメリルリンチなどがより大きな役割を果たしていくようになるし、政府系ファンド領域ではアブダビ投資庁(ADIA)、グローバルな公衆衛生領域ではゲイツ財団などのプレーヤーが台頭している。中東の武装集団も、パキスタン西部に隠れているテロ集団も無視できない存在になる」。もはや、脅威やアジェンダがかつてのようにはっきりとしたものでない以上、国だけでは問題に対処できないし、京都合意のような包括的な国際合意の形成も、もはや期待できないとハースはみる。必要なのは、かつてのような同盟関係ではなく、是々非々の多国間主義であり、これまでの多国間主義とは異なる協調のスタイルを考えていく必要があると指摘した。邦訳文は5月にワシントンで開かれたCFRミーティングの質疑応答からの抜粋。

CFRブリーフィング
F・バーグステンが分析する中国経済の脅威と機会

2008年6月号

スピーカー
C・フレッド・バーグステン/国際経済ピーターソン研究所所長
司会
セバスチャン・マラビー/米外交問題評議会・地政経済学研究センター所長

中国は、為替政策、貿易、エネルギー政策、対外援助などの一部の領域をめぐって、現在の経済秩序の規範、指針、ルール、制度的アレンジに反するような行動をとっている。中国が既存のシステムを混乱させる戦略の一環として、システムの一部に挑戦していると言うつもりはないが、そこにいるのはたんなる経済超大国ではない。おそらくは、現在のゲームルールに則して行動することに乗り気でない経済超大国だ。…だが最近では、国際経済システムが必ずしもうまく機能しなくなっていることも考えなければならない。実際、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)、主要7カ国(G7)などの伝統的な機関はこの10年にわたってうまく機能していない。つまり、中国の挑戦を別にしても、現在のシステムを改革し、変化させていく必要がある。この意味では、中国の挑戦をよい刺激とみなすこともできる。だが、どの方向に変化させて、努力していくかが問われる。

アジアの世紀の到来と 欧米秩序の運命
――秩序の進化を阻む欧米のダブルスタンダード

2008年6月号

キショール・マブバニ  国立シンガポール大学公共政策大学院長

自分たちが主導する時代が終わりつつあること、そして、アジアの時代が到来しつつあることを欧米の指導者はなかなか受け入れられずにいる。国連安保理、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、主要8カ国(G8)などの主要なグローバルフォーラムにおける特権的な立場にしがみつき、いかに自分たちがアジアの世紀に対応していくべきなのかを考えようとはしない。アジアの目標はアメリカとヨーロッパが成し遂げた成果に続くことだ。欧米の成功を自分たちが再現したいと望みこそすれ、アジアは欧米を支配したいとは望んでいない。アジア諸国が地域レベル、グローバルレベルの課題への対応能力を強めつつあることを欧米世界は歓迎し、受け入れるべきだろう。

アメリカの国益を再考する
――新しい世界とアメリカ特有のリアリズム

2008年6月号

コンドリーザ・ライス 米国務長官

イランは特有な課題を突きつけている。テヘランは、革命防衛隊やアルクッズ旅団などの国家的な軍事ツール、そしてイラクのマフディ軍団、ガザのハマス、レバノンその他でのヒズボラといったイランのパワーを拡大するための非国家型の傀儡勢力の双方を動員して、破壊的な路線を模索している。

イラン政府は他の政府の転覆工作を試み、ペルシャ湾岸、中東全域に影響力を拡大しようとしている。イスラエル国家の存続を脅かし、アメリカを不倶戴天の敵とみなし、イラクを不安定化させ、米軍を脅かし、罪のないイラク人を殺している。アメリカはこうしたイランの挑発行為に対抗している。イランが核武装するか、核開発能力を手にすれば、それが、国際的な平和と安定にとっての大きな脅威となることははっきりとしている。

だがイランにはこれとは違う側面もみられる。偉大なペルシャ文化、そして抑圧のなかで苦しむ偉大な市民を擁している。イランの人々は国際社会に参加し、自由に旅行し、世界の最高レベルの大学で教育を受ける資格を持っている。すでにアメリカは、スポーツ、復興支援、芸術などの領域では市民レベルでイランの人々と交流している。

多くの民間領域ですでにイラン人は、アメリカ人、そしてアメリカという国との交流に前向きになっており、今後、アメリカとイランの国家レベルでの関係も変化していく可能性もある。イラン政府が国連安保理の要請を受け入れ、ウラン濃縮その他の核関連活動を停止すれば、アメリカを含む国際社会は、われわれの前にあるすべての問題についてイランと話し合う用意がある。イランにとってアメリカが永遠に不倶戴天の敵というわけではない・・・

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