1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

論文データベース(最新論文順)

CFR ミーティング
グローバル経済の危機と機会
――今は新秩序に向けた創造のとき

2009年1月号

スピーカー
ゴードン・ブラウン/イギリス首相
司会
ロバート・ルービン/ 米外交問題評議会副理事長

「イランにおいて全ての判断を下しているのは最高指導者のハメネイだ。・・・しかしラフサンジャニが、反ハメネイの立場からコムの高位宗教指導者との連帯を組織しようとしているし、真の宗教的権威をもつモンタゼリも今回の選挙とハメネイの統治に公然と挑戦している。ハメネイは、その再選を政府が公表しているアフマディネジャド大統領を生け贄にするか、自分も船から降りるかどうかをいずれ決めなければならなくなる。ハメネイは非常に微妙な立場に立たされている。妥協しすぎれば、弱さの証しとみなされるだろうし、デモはますます拡大する。一方で、全く妥協しなければ、不正が行われたと広く考えられている選挙で再選された人気のない大統領を守るために自らも失脚してしまう危険に直面する」。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティグ・エディター)

金融危機を前に、世界の多くの国は歴史的な転換点にさしかかりつつある。これまでとは逆に、国の役割が大きく、民間の役割が小さくなる時代へと向かいつつあり、アメリカのグローバルなパワーも、アメリカ流の民主主義の訴求力も弱まりつつある。こうした危機の一方で、バラク・オバマが大統領になり、広く希望が持たれていることは幸運だが、それでも、「歴史の流れ」と「2008年の危機」の双方が、世界をアメリカの一極支配構造から遠ざけていくことは避けられないだろう。今回の金融危機が、世界の中枢がアメリカから離れていくという歴史的な潮流と重なり合っているからだ。中期的には、アメリカの世界における影響力は低下し、中国を中心とする他の諸国がより早いペースで台頭するチャンスを手にすることになる。

アメリカ流市場経済モデルの崩壊?
――何が金融危機を引き起こし、今後、どうするのか

2009年1月

ハロルド・ジェームズ/プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン・スクール教授

「2008年3月、アメリカ政府が米証券会社のベアー・スターンズを救済しようと努力していた当時は、事態はすぐにでも収束すると多くの人は軽く考えていた。だが、(この書評で取り上げる書の筆者である)マーチン・ウォルフはフィナンシャル・タイムズ紙のコラムで、ベアー・スターンズに救済策がとられた『2008年3月14日の金曜日を「グローバルな市場経済・資本主義の夢が潰えた日」と記憶に留めよう』と書いている。そのわずか6カ月後には、アメリカ政府は金融問題の悪化を食い止めるために、中国式の解決法を採用した。資本の流れを制限するための大規模な政府介入に踏み切ったのだ。奇しくも、これは、アメリカ政府がアジア各国の政府にアメリカ・モデルの優位を説いてから10年後の出来事だった」

「いまや戦争のカテゴリーは曖昧化し、特定の枠に当てはめるのが難しくなってきている。軍事専門家、マイケル・エバンスが描写するように、現在の戦略では『マイクロソフト(に象徴されるハイテク技術)と(伝統的な)刀が共存し、ステルス技術に対抗して自爆攻撃が用いられる』。敵対勢力の力、そして紛争のタイプがこれほど多様になってきている以上、われわれは戦闘能力に関するバランスのとれたポートフォリオを持つべきだし、戦線に送り込む部隊、調達する兵器、訓練に関してもっと幅を広げなければならない」。必要なのは、今後の不測の事態に備え、対ゲリラ戦争を遂行・実施していく能力を制度化し、複雑な戦争に備えた戦力を重視することで、現在の重厚長大型の軍事路線とのバランスをとっていくことだ。

権力と精神病理
――政治権力と自信過剰症候群

2009年1月

シャーウィン・B・ヌーランド
イエール大学医学部臨床外科教授

政治指導者を苦しめるのはいわゆる病気だけではない。権力の座にあるがゆえに国の最高指導者が精神的な変調をきたし、誇大妄想やナルシシズムに陥り、無責任な行動をとるようになることも少なくない。こうした「政治的自信過剰症候群」を患うリーダーは、自分が偉業を成し遂げる能力を持つとともに、それを期待されていると考え、自分にはあらゆる状況下で何が最善かを見抜く力があり、通常の道徳の範囲を超えて行動できると思い込んでいる。毛沢東やフィデル・カストロ、ロバート・ムガベなどの例からも明らかなように、政権の座にある期間が長ければ長いほど、こうした傾向は強くなり、その結果、「政策遂行能力の完全な欠落」という事態に陥る。

CFRコラム
中国の景気刺激策が 今後のアメリカ、
世界経済を左右する
――中国が米国債の購入をやめることはない

2008年12月号

ブラッド・セッツァー 米外交問題評議会(CFR)の地政経済学担当フェロー。

中国による2007年の米国債月間平均購入額が約150億ドルなのに対して、ここ数カ月間、中国は米政府機関債の購入を見合わせつつも、財務省証券の購入規模を大幅に拡大しており、結果的に、月平均の購入額は150億ドルを優に超えていると考えられる。
大枠でとらえれば、中国の財政出動は、国内投資の落ち込みを埋め合わせる効果はあっても、米国債の購入を減少させることにはならないと思う
中国がアメリカからの製品の輸入が増えていない状態で、米国債の購入を突然停止するとすれば、これは恐ろしいシナリオになる……しかし、そのような事態になるとすれば、それは中国の経常黒字が急激に落ち込むか、あるいはドルの購入をやめ、他の通貨を購入し始めた場合だが、どちらにも潜在的なリスクはあっても、ただちに現実になるとは思えない。
アメリカの経常収支の調整が世界の経済成長とともに進んでいくには、(中国など)慢性的な経常黒字を抱える国の需要が大きく増えることが前提になる。新政権は、大規模な経常黒字を恒常的に計上している国の存在は(世界の貿易と経済にとって)問題であるというジョン・メイナード・ケインズの認識を世界に定着させるように試みる必要がある。相手国の経常黒字ゆえに特定国が経常赤字を長期的に抱え込めば、ほぼ確実に金融危機へとつながっていく。このシナリオを回避するには経常黒字国が内需を拡大しなければならない。中国政府が今週初め(2008年11月9日)に発表した財政出動プログラムは、たんなる始まりにすぎない。オバマ政権は、保護主義をもてあそぶのではなく、「グローバルなインバランス」の是正に力を入れていく必要がある。この課題に取り組むための当面の政策は、各国政府、特に経常黒字国による大規模な財政出動を促すことだ。
十分な規模の多国間外貨準備の蓄積がないという問題に関して何の手も打たないとなれば、将来に深刻な問題を残すことになる。この金融危機から抜け出したとき、多くの国が、輸出を重視し、為替レートを管理するために外貨準備を蓄積しようとすれば、現在の金融危機の核心である需要の不均衡がさらに悪化することになるだろう。

CFRインタビュー
グローバル金融危機のルーツを探る
――遠因は世界における ドル建て外貨準備の増大にある

2008年12月号

マーチン・ウォルフ フィナンシャル・タイムズ紙経済チーフ・コメンテーター

 「2008年の金融危機はアメリカの住宅市場から始まった」と一般に考えられている。過熱した住宅市場での安易な貸付と借入が巨大な住宅バブルを生み出し、回収困難な住宅ローンが証券化され、広く金融システムに拡散してしまったことが金融危機を引き起こした、と。しかし、マーチン・ウォルフは新著『グローバルファイナンスを是正する (“Fixing Global Finance, The Johns Hopkins University Press”) 』で、金融危機のルーツは、実はそれよりもずっと以前の出来事にまで遡ることができると指摘している。
 ウォルフによれば、その遠因は、1990年代後半に一連の通貨危機から立ち直りつつあったアジア諸国が、とかく融資に条件をつけられる国際通貨基金(IMF)の屈辱的な救済措置の世話には二度とならないと決意し、(通貨危機に備えて)巨額の外貨準備をバッファーとして積み増すようになったことにある。アジア諸国に加えて、原油価格の高騰で産油国が莫大な資金を手にするようになると、世界における外貨準備の規模はかつてないレベルに達し、その結果、根本的にゆがんだ資金の流れが誕生した。すなわち、莫大な経常黒字を貯め込んだアジアや中東の国が外貨準備をバックに先進国に大規模な投資を行うようになり、この潤沢な資金が米欧での住宅バブルの発生を助長した、とウォルフはみる。
 ウォルフは、長期的に世界経済のバランスを立て直すには、途上国が自国通貨で国内投資できるように資本市場のインフラを強化する必要があると指摘し、短期的には中国などの経常黒字国が、ダブついているキャッシュを吸収できるように内需拡大に努める必要があると提言した。聞き手は、リー・ハドソン・テスリク(www.cfr.orgのアソシエート・エディター)。

グローバル化のたそがれ?
――  アジアからアメリカへの貿易の流れは停滞する

2008年12月

マーク・レビンソン エコノミスト 元ニューズウィーク誌経済担当ライター

グローバル化の後退を促している要因は二つある。運輸コストの上昇と国際物流への信頼性の低下だ。原油価格の高騰に加えて、これまでグローバル化を支えてきたコンテナ輸送を受け入れる港湾インフラ、国内輸送インフラが逼迫し、テロ対策、環境対策もとらざるを得ない状況にある。これらのすべてがグローバルなサプライチェーンの流通・輸送コストを引き上げている。その結果、世界の反対側にある工場から部品を調達し続けることが賢明なのかどうか、企業も疑問に感じるようになり、グローバル規模でのアウトソーシングもかつてのような魅力を失いだしている。すでに先進国市場のための製品や部品を作ってきたアジアに進出している企業はこれまでのビジネスモデルを見直し、工場から商店の棚に並ぶまでのサプライチェーンの距離を短くしようと試みている。実際、アメリカのメーカーは国内、そして、メキシコ、中央アメリカなど、米市場に近い地域へと生産拠点を移そうとするかもしれない。いまや「グローバル化の黄金時代」は終わりつつある。

グローバルに統合された企業
―― アジアからアメリカへの貿易は停滞する

2008年12月

サミュエル・J・パルミサーノ IBM取締役会長

どこまでグローバル化できるかについての企業の認識が変化した結果、企業の関心は、どのような製品をつくるかよりも、いかにそれを生産するか、どのようなサービスを提供するかよりも、どのようにサービスを提供するかに移っていった。いまやアウトソーシングが一般的になり、企業は自らを、調達、生産、研究、販売、流通などの特定部門が並列するネットワークとみなしている。ここにおける真の技術革新とは、新しい製品を開発し、生産するための創造力だけに左右されるわけではない。いかにサービスを提供し、ビジネスプロセスを統合するか、いかに組織やシステムを管理し、知識を移転するかでその多くが左右されることになる。

新政権の国家安全保障チームと大統領の権限
― 流れは国務省からホワイトハウスへ

2008年12月号

デビッド・J・ロスコフ
カーネギー国際平和財団客員スカラー

「バラク・オバマは知的な指導者だし、自ら意思決定に関与し、問題に対する自分の立場をスタッフに認識させておくタイプだと私は見ている。ロナルド・レーガンのように、国家安全保障チームとは一定の距離をおいて補佐官任せにするといったやり方はとらないだろう」。オバマの意思決定スタイルをこう予測するカーネギー国際平和財団のデビッド・ロスコフは、「未曾有の経済危機のなかで誕生するオバマ政権は国家経済会議を再生し、重要な役割を与えることになると思うし、・・・エネルギー安全保障会議」を新設するという話も一部には出ている」と言う。また「外交政策立案の比重は全般的に国務長官からホワイトハウスへとシフトしている」と指摘し、その理由について「ホワイトハウスは政治的余波を伴うであろう案件には自ら関わりたいと考え、人任せにはできない」と考えるようになっているからだとコメントした。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.crf.orgのコンサルティング・エディター)。

Page Top