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論文データベース(最新論文順)

戦争を終わらせるには
―― ロシアのリアリストに和平の条件を示せ

2023年1月号

タチアナ・スタノバヤ カーネギー国際平和財団スカラー

戦争を終わらせるには、ロシアにおけるリアリストの台頭が必要になる。現在ロシアが破滅の道にあること、このまま残虐行為や資源の浪費を続ければ、すでに追い込まれているロシアの立場がさらに悪化することをリアリストたちは理解している。欧米が、ロシアのリアリストが平和主義者へと立場を変えることを望むのなら、「和平がロシアの体制や国家の崩壊につながらないこと」を明確にモスクワに対して示さなければならない。そうしない限り、国内政治の流れは戦争継続へ向かう。ロシアのリアリストにウクライナとの和平がロシアの崩壊に直結しないと理解させることが、モスクワに壊滅的な侵略戦争を止めさせる唯一の方法だろう。

紛争が長期化する理由
―― 理想主義対現実主義

2023年1月号

クリストファー・ブラットマン シカゴ大学教授(国際関係論)

なぜウクライナ戦争は長期化しているのか。「敗北すれば自分の政権が終わるかもしれないと考えれば、それがロシアにとってどんな結果をもたらすとしても、プーチンは戦い続けるインセンティブをもつはずだ」。しかし、この他にも重要な理由がある。ウクライナがロシアに抵抗し、戦争を速やかに終わらせるための不快な妥協を拒絶していることは、地政学対立において理念と原則が作り出す不変のメカニズムの作用を示している。ウクライナの指導者と市民は「いかなるコストを支払おうとも、ロシアの侵略に屈して、自由や主権を犠牲にすることはない」と決意している。ロシアにとっても、これはイデオロギー戦争でもある。ウクライナ戦争は、戦略的ジレンマだけでなく、双方が妥結という考えを嫌悪しているために、戦いが長期化している。

権威主義体制のレジリエンス
―― その強さのルーツを検証する

2023年1月号

シェリ・バーマン バーナード大学教授(政治学)

反対運動を分裂させて弱体化し、結束したエリート層をもち、強力だが政治的に従順な軍と警察を組織できれば、独裁体制はレジリエントになる。ロシアや中国といった権威主義国家が「自分たちの体制は欧米の民主主義体制よりも優れている」と主張しているだけでなく、対外的な強硬姿勢を強めているだけに、独裁体制の強さ、耐久力の理由を知ることは重要だろう。その強さを革命体験に求める考えもある。だが実際には、権威主義の政府は、歪んだ選挙を実施し、言論の自由や市民社会を制限し、独立した司法などの抑制と均衡のシステムを抑え込むことで体制を強化している。・・・

変化したグローバルな潮流
―― 多極化時代の新冷戦を回避するには

2023年1月号

オラフ・ショルツ ドイツ連邦共和国首相

ツァイテンヴェンデ(時代の転換、分水嶺)は、ウクライナ戦争や欧州安全保障問題を超えた流れをもっている。ドイツとヨーロッパは、世界が再び競合するブロック圏に分裂していく運命にあるとみなす宿命論に屈することなく、ルールに基づく国際秩序を守る上で貢献していかなければならない。われわれは民主国家と権威主義国家の対立は模索していない。それでは世界的分断を助長するだけだ。その歴史ゆえに、私の国はファシズム、権威主義、帝国主義の流れと闘う特別な責任を負っている。同時に、イデオロギー的・地政学的な対立のなかで分断された経験ゆえに、新たな冷戦の危険を直接的に知っている。多極化した世界では、対話と協力を民主主義世界のコンフォートゾーンを越えて広げていかなければならない。・・・

覚醒した中国民衆
―― 激動の時代の幕開け

2023年1月号

イアン・ジョンソン 米外交問題評議会 シニアフェロー(中国担当)

ゼロコロナ政策が刺激した今回の抗議行動を通じて、中国民衆は北京の政策に明確に異を唱えた。普段は(政治に)無関心な人々の間で大きな変化が起きていることは間違いない。習近平は今後5―10年あるいはそれ以上の期間にわたって、市民の不安の高まりだけでなく、危機が促す抗議行動に直面することになるだろう。最高指導者になって以降の10年間、習近平が前向きの改革ではなく、統制策の強化に血道を上げてきたために、いまや普通の人々もこの国が抱える大きな問題に気づき始めている。これが反ゼロコロナデモの意味合いに他ならない。民衆デモは、人々が個人の自由を求めていることだけでなく、中国政治が激動の時代を迎えることを告げている。・・・

いつものリセッションではない
―― 世界経済は質的に変化している

2023年1月号

モハメド・A・エラリアン ケンブリッジ大学 クイーンズ・カレッジ学長

なぜ世界のほとんどの地域で経済成長率が鈍化しているのか。インフレが高止まりし、金融市場が不安定化しているのはなぜか。ドル高や高金利がなぜ多くの国で頭痛の種となっているか。大きな構造的変化が、これらの理由を説明する助けになる。世界はリセッションの瀬戸際に立たされているだけではない。経済・金融の奥深い転換期を迎えている。成長を抑え込む主要な要因が需要不足から供給不足へシフトし、中央銀行による量的緩和の時代が終わり、金融市場の脆弱性が高まっている。これらの変化が、個人、企業、政府に経済的、社会的、政治的影響を与えることになる。世界をより良い方向に向かわせるには、この変化を認識し、適切な舵取りを学んでいかなければならない。・・・

習近平の世界
―― イデオローグは何を考えているか

2023年1月号

ケビン・ラッド アジア・ソサエティ会長

習近平は、中国の政治をレーニン主義的な左寄りに、経済をマルクス主義的な左寄りに、そして外交をナショナリスト的な右寄りにシフトさせている。政策と民衆の生活のあらゆる領域で党の影響力を高め、国有企業を強化し、民間部門に新たな制約を加えている。そして、より強硬な外交姿勢をとることで、ナショナリズムを煽り立てている。アメリカとパートナー諸国は、現行の対中戦略を慎重に見直すべきだ。アメリカの戦略立案者は、(相手も自分と同じように考えるだろうとみなす)「ミラー・イメージング」を避け、北京は、ワシントンが考えるように合理的にあるいは国益のために行動すると思い込んではならない。

インフレの時代へ
―― 金融緩和策と供給ショック

2023年1月号

ケネス・S・ロゴフ ハーバード大学教授(経済学)

脱グローバル化、(貿易や経済への)政治圧力の高まり、(重要鉱物を必要とする)グリーンエネルギーへの移行などが引き起こす供給ショックを含む、数多くの要因によって、世界は、2桁代ではなくても、(かつての目標値である)2%を大きく超えてインフレが持続する時代に突入する危険がきわめて高い。2021―22年の異常な物価上昇の直接的要因の多くはいずれ解消するだろうが、低インフレの時代がすぐに戻ってくることはおそらくない。大恐慌以降、最悪の二つのリセッション(2008年と2020年)を経て、中央銀行が引き起こす深刻な経済停滞の社会的・政治的影響は非常に大きなものになるだろう。

レッドチャイナの復活
―― 習近平のマルクス主義

2022年12月号

ケビン・ラッド アジア・ソサエティ会長

習近平の中国は、鄧小平路線に象徴される改革開放路線、プラグマティズム路線と完全に決別した。改革時代の終わりの儀式を司ったのが第20回党大会だった。マルクス・レーニン主義の信奉者である習の台頭はイデオロギー的指導者の世界舞台における復活を意味する。共産党による政治・社会の統制時代へ回帰し、中国における少数意見や個人の自由のための空間は小さくなっていくだろう。経済政策も市場経済路線から国家主義的アプローチへ戻され、国際的現状を変化させることを目的とする、ますます強硬な外交・安全保障政策が模索されるようになる。考えるべきは、この計画が成功するのか、それとも、このビジョンに抵抗する政治的反動が内外で引き起こされるかだろう。

サウジの新しい世界ビジョン
―― 対米パートナーシップの終わり

2022年12月号

カレン・ヤング コロンビア大学 グローバル・エネルギーセンター 上級研究員

もはやサウジはかつてのようなアメリカのパートナーではない。むしろロシアと組んで、石油市場への影響力とサウジの未来ビジョンを守ろうとしている。リヤドとワシントンは、市場においても、経済発展モデルでも、お互いがパートナーではなく、競争相手であることに今後気づくことになるだろう。サウジは国際政治と貿易の双方において、新興国がより大きな役割を果たす、アメリカとは異なる経済ビジョンを思い描いている。世界はエネルギー不安の時代に入りつつあるが、化石燃料需要は少なくともあと20年は続く。国際システムがますます流動化するなか、サウジは国際関係でこれまで以上に大きな役割を果たすことになるのかもしれない。

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