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論文データベース(最新論文順)

イスラエルではなく、パレスチナの視点で 中東和平を試みよ

2009年2月号

ウォルター・ラッセル・ミード 米外交問題評議会シニア・フェロー

これまでアメリカは、イスラエルを中心に据えた中東和平路線をとってきたが、オバマ政権は、むしろ、和平交渉の中心にパレスチナの視点を据えるべきだろう。意外かもしれないが、このやり方が、これまでの路線からの革命的な変化を意味する訳ではない。アメリカがめざす目標にも政策にもそう大きな変化は出ない。イスラエルとの強い絆は維持され、むしろ深みを増すはずだ。認識すべきは、中東和平のカギを握っているのが、「軍事力で劣り、政治的にも派閥争いが絶えないパレスチナである」ということだ。ワシントンが、イスラエルにとってより安全で安定した環境をつくりたいのなら、イスラエルの敵に和平を売り込む必要がある。イスラエルが望む安全をもたらすことができるとすれば、それは、ガザ、西岸、そして国外のパレスチナ人の安定多数が和平合意を明確に支持したときだけだからだ。

グローバル化に即した新ブレトンウッズ体制とは

2009年2月号

アディティヤ・マトー
世界銀行グループ・リードエコノミスト
アルビンド・スブラマニアン
ピーターソン国際経済研究所シニア・フェロー

ドーハ・ラウンドを蘇生させようと試みるのはもはや見当違いかもしれない。ドーハで俎上に載せられているアジェンダは、グローバル経済の統合が進むなかで生じている今日的アジェンダとの関連をもはや失いつつあるからだ。いまやコモディティ価格が激しく変動し、中産階級の生活を脅かしている。金融は不安定化し、環境問題も深刻になっている。これらはきわめてグローバルな問題であり、多国間交渉による対応が必要だ。状況を前へと進めて行くには、新たなブレトンウッズ体制に向けた仕切り直しを行い、ドーハよりも野心的なアジェンダを設定し、世界貿易機関(WTO)だけでなく、より多くの国際機関をアジェンダに関与させるようにする必要がある。重要度の低いアジェンダへの取り組みを復活させようとあがくよりも、本当に重要な新しいアジェンダへの対応を試みるべきだ。より多様なアクターの利益がいま危機にさらされている。国際協力への新しい取り組みと国際機関の間での責任分担の見直しが必要なのもこのためだ。新ブレトンウッズ体制構築の試みは、まさにこのための機会を提供している。

大統領に次ぐ重責を担う大統領補佐官の役割とは
 ――バンディからキッシンジャー、ブレジンスキー、ライス、ハドレーまで

2009年2月号

アイボ・ダールダー
ブルッキングス研究所シニア・フェロー
I・M・デスラー
メリーランド公共政策大学院教授

政権が対外政策を遂行していく上で、もっとも多くの時間を大統領と共有するのは国家安全保障問題担当大統領補佐官だ。大統領補佐官は大統領の執務室であるオーバル・オフィスのすぐ近くにオフィスを持ち、朝一番に大統領にブリーフィングをし、多くの場合、一日の最後にも大統領と会う。いまやますます複雑化し、相互の関連性を強める世界の問題に対処していくには、軍事、外交、金融、貿易、環境、国土安全保障、科学および社会政策など、あらゆる側面を統合して一貫した外交政策に結びつけることが、かつてなく重要になってきている。そうした統合的な分析ができるのはホワイトハウス、とくに国家安全保障会議(NSC)においてで、だからこそ、大統領補佐官は、おそらくは現在の政府構造のなかで、大統領に次いで重要なポストなのだ。輝かしい成功例があるとはいえ、歴代補佐官の多くはなぜ失敗を重ねてきたのか。今後の指針とできるようなモデルは存在するのか。

金融市場規制を考える

2009年1月号

スピーカー
ウィリアム・H・ドナルドソン 元米証券取引委員会委員長
スティーブン・フリードマン 元国家経済会議議長
アーネスト・パトリキス 元ニューヨーク連邦準備銀行第一副総裁
司会
ジョン・ガッパー フィナンシャル・タイムズ紙首席ビジネス・コメンテーター

必要とされているのは、リスク・テイキング(リスクを厭わない行動)と創造的な才能を金融システムから取り除くことなく、変動の度合いを大幅に和らげるような金融規制だろう。そのためには金融規制を根本的に見直す必要がある。(S・フリードマン)

投資活動はグローバル規模で行われており、アメリカ以外の国の規制システムに抜け穴があれば、アメリカの規制システムもうまく機能しなくなる。規制に関わってきた人々は、世界の主権国家が規制について合意するのがほとんど不可能なことをよく理解している。何が良い規制や会計基準なのかについて多様な考え方があるからだ。(W・ドナルドソン)

シリアとイランへの外交路線を 中東和平プロセスに結びつけよ

2009年1月号

スピーカー
リチャード・N・ハース 米外交問題評議会会長
マーチン・S・インディク ブルッキングス研究所セバン中東センター所長
司会 ゲリー・セイモア 米外交問題評議会研究部長

前提条件をつけずにイランとも直接交渉をする準備をしておくべきだが、それは二国間ではなく、多国間交渉枠組みでなければならない。また、見返りを示すとともに、一連のペナルティも準備しておくべきで、ロシアと中国を間違いなくイランとの交渉に参加させなければならない。(R・ハース)

 シリアが戦略的再編に応じるなら、ゴラン高原から撤退するという取引は、イスラエルの安全保障エスタブリッシュメントにとっては非常に魅力的なはずだ。イラン、ヒズボラ、ハマスとの連帯からシリアを離脱させれば、国境の北のイラン、そして南のガザとレバノンがイスラエルを脅かす能力を低下させられるし、このプロセスを通じてアラブ世界の対イスラエル路線を、戦争から和平へと向かわせることができるようになる可能性もあるからだ。(M・インディク)

オバマ政権の北朝鮮政策を考える

2009年1月号

スピーカー
マイケル・グリーン 戦略国際問題研究所日本部長
ゲリー・セイモア 米外交問題評議会研究部長
司会
ドン・オーバードーファー ジョンズ・ホプキンス大学ポール・ニッツスクール米韓研究所所長

交渉か戦争かという二者択一の枠組みにとらわれ続ければ、結局は、「北朝鮮問題よりも重要で切実な問題が他にあるので、戦争は選択肢にならず、とりあえず、相手が欲しがるものを与えておこう」ということになる。これによって、北朝鮮問題を解決するわれわれの能力は大きく損なわれ、北東アジアにおけるアメリカの立場も損なわれる。(M・グリーン)

 核軍縮(解体)が実現する可能性は乏しいとしても、核開発の能力を枠にはめるための現在のプロセスを続けるほうがよいと考えている。最終的には、北朝鮮の体制は力を失い、崩壊していく可能性が高いと思う。つまり、われわれのゲームは、その時が訪れるまで、現在の(核開発能力制限・無力化する)プロセスを維持し、問題を管理していくことだと思う。(G・セイモア)

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