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論文データベース(最新論文順)

Review Essay
インドの将来を「思い描く」
―― 弱点を優位に変えた国の将来は

2009年8月号

エドワード・ルース
フィナンシャル・タイムズ紙 ワシントン支局長

「とてつもなく大きな課題を前にして萎縮しつつも、そうした課題に正面から取り組めば大きな機会を手にできると期待している。インドはこの二つの思いの間で揺れている」とニレカニは言う。彼は、お粗末な公衆衛生政策、エネルギー供給の欠陥、環境対策への無関心をそうした課題として指摘する。「長期的にみて、潜在力を開花できずに失望にくれるか、期待を上回る成果を挙げるか。インドの行き着く先は、そのどちらかだ」とみる彼は、かつては短所や欠陥とみられていたものが、むしろ長所、強みとなっていると彼は言う。人口の多さ、混沌とした民主主義、植民地時代の屈辱を思い出させる英語、これらの短所がいまや大きな資産となっている。だが、今後の多くは、環境悪化とエネルギー問題にどう取り組んでいくか、そして有能な人材を海外から呼び戻せるように国内の体制を整備できるかによって決まる。

米ロ関係の歴史的転換は実現するか
―― 戦略的パートナーシップを実現させるには

2009年8月号

ロバート・レグボルド  コロンビア大学名誉教授(政治学)

下手をすると、アメリカ、ロシア、中国間のせめぎ合いが今後の世界を規定することになりかねない。そんな事態にならないようにすることがアメリカの現大統領、そして次期大統領の重大な外交課題だ。オバマ大統領は、摩擦と対立という局面を繰り返した米ロ関係の不毛な10年に終止符を打ち、両国を前途有望な未来へと向かわせる大きなチャンスを手にしている。ワシントンは、対ロ政策を小手先でいじるのではなく、新しいページをめくるべきだし、そのためには戦略的ビジョンが必要になる。そうしたビジョンを基にロシアとの協力関係を実現できれば、アメリカとロシアは、広大な旧ソビエト圏内外の動揺を緩和し、一方で中国やインドなどの新興国を新しい国際秩序に取り込んでいくことに向けて協調できるはずだ。米ロの戦略的パートナーシップの本質はこうした目的を実現することにある。

国際レジームの未来形、 「拡散に対する安全保障構想」に注目せよ

2009年7月号

アミタイ・エツィオーニ ジョージ・ワシントン大学教授(国際関係)

新時代の問題に対処するために、民主国家連盟の創設、あるいは、国連の強化やグローバル連邦の形成など、包括的な新多国間機構の創設を求める声もある。だが、より見込みのある枠組みとは、各国間のさまざまな合意や連携を組み合わせたPSI(拡散に対する安全保障構想)のようなモデルだろう。PSIには本部も事務局も、憲章もルールもない。そこにいるのは「加盟国」ではなく「参加国」で、米国務省はPSIを「活動」と呼んでいる。だが様々な事前合意をつうじて「常にスタンバイしていて、すぐに行動を起こせる」のがPSIの強みだ。たしかに、PSIモデルの場合、さまざまな合意や連携を複雑に重ね合わせる必要がある。だが将来に向けた国際的枠組みを考えていく上でPSIの先例を無視するのは大きな誤りだろう。

途上国への農業援助を見直せ
―― 飢えに苦しむ人々を救うには

2009年7月号

キャサリン・ベルティニ 元国連食糧計画 エグゼクティブ・ディレクター
ダン・グリックマン 元米農務長官

(経済成長に伴う)アジアの食糧需要増、長期に及んだオーストラリアでの干ばつ、一次産品を対象とする投機、エネルギー価格の高騰および穀物がバイオ燃料の原料として転用されたことなど、2008年に穀物価格がこの数十年でもっとも上昇した背景にはさまざまな要因が重なり合っていた。その後、多くの穀物や食糧価格は低下したが、世界の貧困地域ではいまも多くの人々が十分な食糧を確保できずにいる。……国際社会は、飢えや栄養失調に派生する疾病が世界の公衆衛生にとっていまや最大の脅威であり、AIDS、マラリア、結核の犠牲者総数を上回る規模の人々を死に追いやっていることを忘れている。……金融危機のなか、この問題に目を背けることは簡単だが、その帰結は甚大なものになる。

フォーリン・アフェアーズ・アップデート
パキスタン軍のタリバーン掃討作戦の
予期せぬ結末とは

2009年7月号

ウィリアム・ウィーラー フリーランス・ジャーナリスト

パキスタン軍によるタリバーン掃討作戦の結果、住民が巻き添えになり、パキスタンの国内避難民の数はすでに200万人を超えている。これは1947年にインドから分離独立して以降最大規模の避難民の発生だ。いまや状況はパキスタン政府の手に負えなくなりつつあるし、難民キャンプは新たな過激派戦士のリクルートの場へと変化しつつある。さらに大きな問題は、民衆に配慮しない作戦を進めたパキスタン政府が民衆の人心を失いつつあることだ。すでにザルダリの支持率は19%と2008年8月にムシャラフ前大統領が辞任したときの支持率さえも下回っている。

論争 グローバル経済危機は
いつまで続くのか
― 日米、二つの経済バブルを検証する

2009年7月号

ロバート・マッドセン……マサチューセッツ工科大学国際研究センター シニア・フェロー
リチャード・カッツ………オリエンタル・エコノミスト・レポート誌編集長

今回の金融危機の原因はアメリカででたらめな住宅ローンが組まれた結果なのか、それとも、中国その他の過剰貯蓄が米市場に流れこんでバブルを発生させたのか。犯人は行き過ぎた規制緩和なのか、それとも「グローバル・インバランス」なのか。今後のグローバル経済の中期予測、そして規制強化をめぐるグローバル金融改革の方向性は、危機を引き起こした原因を何とみなすかで大きく違ってくる。以下は、フォーリン・アフェアーズ・リポート4月号に掲載したリチャード・カッツの論文『アメリカは「日本の失われた10年」と同じ道をたどるのか』に対するロバート・マッドセンのコメントとカッツの再反論。

経済危機の長期化は避けられない
――市場経済モデルの衰退は地政学秩序をどう変えるか

2009年7月号

ロジャー・アルトマン 元米財務副長官(1993~1994)

「現在の経済危機は秩序を揺るがすグローバルな事件だ。世界経済の今後は全般的にきわめて憂鬱な状況にあり、状況を不安定化させるような深刻なリセッションが世界中を覆い尽くしている。しかも、この30年にわたって地球を席巻してきた市場経済資本主義、グローバル化、規制緩和というアングロ・サクソンモデルの時代が終わりつつある。・・・(今後を考える上で)重要なのは「深刻なグローバル・リセッションが長期化する」と考えられ、金融危機によって受けた大きなダメージゆえに世界の3大経済であるアメリカ、EU、日本が循環的な回復を遂げることはおそらくあり得ないこと、そして中国が明らかな勝者として台頭しつつあることだ」

CFRミーティング
4人の専門家が分析する
北朝鮮の核、権力継承、経済制裁、外交交渉の行方

2009年7月号

チャールズ・ファーガソン/米外交問題評議会シニア・フェロー
ポール・B・スターレス/米外交問題評議会シニア・フェロー兼予防行動センター・ディレクター
デビッド・C・カング/南カリフォルニア大学朝鮮半島研究所ディレクター
チャールズ・プリチャード/コリア経済研究所会長 北朝鮮問題担当米特使(2001~2003)

北朝鮮は、2006年10月に続いて、2009年5月25日にも核実験を行い、北東アジアの安定、そして国際的な核不拡散レジームを脅かしている。核実験が作り出した今回の危機は北朝鮮の政権の意図、核兵器の能力、権力継承プロセスが今もはっきりとせず、北朝鮮が制裁措置に対する複雑な盾をもっていること、そして、非核化に向けた多国間外交に制約があることなどの厄介な問題を再び浮上させている。以下は、4人の専門家による北朝鮮の今後に関する分析。

CFRインタビュー
イランで展開される劇的な権力ドラマの内幕
― ハメネイはムサビを受け入れるか

2009年7月号

カリム・サジャプアー カーネギー国際平和財団 アソシエーツ

「イランにおいて全ての判断を下しているのは最高指導者のハメネイだ。・・・しかしラフサンジャニが、反ハメネイの立場からコムの高位宗教指導者との連帯を組織しようとしているし、真の宗教的権威をもつモンタゼリも今回の選挙とハメネイの統治に公然と挑戦している。ハメネイは、その再選を政府が公表しているアフマディネジャド大統領を生け贄にするか、自分も船から降りるかどうかをいずれ決めなければならなくなる。ハメネイは非常に微妙な立場に立たされている。妥協しすぎれば、弱さの証しとみなされるだろうし、デモはますます拡大する。一方で、全く妥協しなければ、不正が行われたと広く考えられている選挙で再選された人気のない大統領を守るために自らも失脚してしまう危険に直面する」。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティグ・エディター)

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