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論文データベース(最新論文順)

核不拡散と原子力の平和利用を両立させる道はあるか

2010年3月号

チャールズ・ファーガソン 米科学者連盟会長

非核保有国が原子力発電用の原子炉を調達すれば、その分、核不拡散のリスクは高まっていく。原子力発電に切り替えるだけでは、有効な地球温暖化対策とはなり得ないが、原子力発電を新たに試みるに適した国が、厳格な安全基準、管理体制、核不拡散のガイドラインを受け入れるのであれば、核拡散のリスクを伴うとしても、原子力の平和利用を認めざるを得ない。また、核拡散を防ぐには、核能力を獲得することが自国の安全保障問題への解決策だと考えている国の安全保障上の不安を取り除き、核兵器を保有すれば国際関係において大国と同等の立場を手に入れられるとする間違った認識を正していく必要もある。この観点から、国連安保理の常任理事国に日本のような核を保有していない地域大国を迎え入れることも考えるべきだ。国際コミュニティは地域大国が抱く不安を取り除き、核を保有することで得られる過大な名声を剥ぎ取り、原子力エネルギーに非核保有国が抱く不合理な期待を引き下げていくように努力すべきだろう。そうすることで、核廃絶のビジョンを支えていくことができる。

「北京コンセンサス」の終わり

2010年3月号

姚洋(ヤン・ヤオ)
北京大学国家発展研究院 副所長

一般に途上国の一人当たりGDPが3000~8000ドルに達すると、経済成長は頭打ちになり、所得格差が拡大して社会紛争が起きがちとなる。中国はすでにこの危険水域に入っており、すでに厄介な社会兆候が現れている。要するに、国の経済は拡大しているが、多くの人々は貧しくなったと感じ、不満を募らせている。特権を持つパワフルな利益団体やまるで企業のように振る舞う地方政府が、経済成長の恩恵を再分配して、社会に行きわたらせるのを阻んでいるからだ。経済成長と引き替えに共産党の絶対支配への同意を勝ち取る中国共産党(CCP)の戦略はもはや限界にきている。CCPが経済成長を促し、社会的な安定を維持していくことを今後も望むのであれば民主化を進める以外に道はない。

オバマ政権は「金融機関によるヘッジファンドなどへの危険な投資を許してはならない」と金融機関への規制強化案を発表し、米議会でも、金融規制法案の整備が続けられている。だが、CFRのエコノミスト、マーク・レビンソンは、現在の規制案では、システミックリスクの大きな要因を取り除けないと言う。システミックリスクの根っこは「証券に組み込まれた住宅ローンのデフォルトが増えてくると、証券そのものが焦げ付き始め、債券保険会社に巨額の保険金を支払う十分な資金がないのではないかとの懸念が広がり始めた」ことにある、とレビンソンは指摘する。そして「政府の危機管理担当者が遅ればせながら債券保証会社が問題に直面していることを認識した時、別の問題が出てきた。連邦政府はこの問題に関する情報をほとんど持っておらず、対応しようにもその手段を欠いていた。債券保証会社は州政府の監督下にあり、連邦政府は権限を持っていないからだ」。当然、規制案を見直して、保険産業への米連邦政府の監督権限を明確に確立しないことには、システミックリスクを取り除けず、米政府は「今後も危機に対応できないままだろう」と同氏は警鐘を鳴らしている。

世界は再び食糧不足の時代へ
――結局、マルサスは正しかったのか

2010年3月号

チャーリスル・フォード・ランゲ ミネソタ大学教授
チャーリスル・ピエール・ランゲ イエール大学学生

2009年の穀物生産がかつてないレベルへと増大したことで、価格の高騰は一時的に抑えられているが、今後数年間のうちに再び世界は食糧不足に陥り、市場価格が高騰し始めるようになる。緑の革命を経て、多くの人が、これで食糧の安定供給は確保されたと考えるようになったが、実際にはそうではなかったことはすでに最近の食糧価格高騰によって実証されている。ますます多くの穀物がバイオ燃料の原料として用いられ始め、中国や南アジアでの人口や所得が上昇するにつれて食糧需要はさらに高まっている。途上国、とくに最貧国は絶望的な状態に追い込まれている。すでに食料価格を高騰させるメカニズムは動き出している。

女性を助ければ、途上世界が救われる

2010年3月号

イソベル・コールマン 元米外交問題評議会(CFR)シニア・フェロー

途上国の女子教育への投資は、経済成長を促し、貧困の悪循環を断ち切るうえで極めて有効な策だ。教育を受けた女性たちの場合、一人あたり出生数は少なく、産婦死亡率も低く、彼女たちは、家族の食事、健康、教育にも力を入れる。その結果コミュニティー全体に好循環が生まれる。こうした事実に世界銀行、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、CAREといった主要な援助機関だけでなく、企業も気づき始め、途上国の支援対象としての女性の役割に注目するようになった。女性のエンパワーメント(権利擁護と社会的解放)を大きな社会経済的成果へと結びつけた中国とルワンダという実例もある。途上国の女性への教育に援助の焦点を合わせるべき根拠は数多くある。

CFRミーティング
新たな世界経済のシステミックリスクとしての各国の財政赤字

2010年3月号

セバスチャン・マラビー 外交問題評議会シニア・フェロー(国際経済担当)

危機を前に「世界各国の政府が金融機関の救済に乗り出したが、いまや、政府に打つ手はなくなり、その結果、政府そのものが弱い立場に追い込まれ、これが新たなシステムの不安定化要因と化している恐れがある」。ギリシャのケースからも明らかなように、市場が財政赤字に対して警告を発するようになったからだ。各国政府がグローバル経済を支えていくやり方はティッピング・ポイント(限界)に近づきつつある。また、ドルの先行きも不安定だ。ユーロ安ドル高に振れているとはいえ、投資家は、アメリカの財再赤字の増大、高い失業率、禁輸緩和政策ゆえに、ドルの安定も疑問視している。「誰もがドルに代わる代替策を探しつつも、ドルに依存せざるを得ない現状に対して割り切れない思いを抱いている。だが、何か具体的にみえてきたら、誰もがそれに飛びつくだろう。問題は、そのタイミングがいつになるかだ」・・・・(聞き手は、ロヤ・ウォルバーソン、CFR.orgのStaff Writer)

2010年1月13日にハイチのポルトーフランスを直撃した大地震による犠牲者は10~20万人に達し、その災害の復旧には少なくとも100億ドルの資金と、数十年単位の時間が必要になると言われている。クリントン政権で米平和部隊のディレクターを務めたラテンアメリカとカリブ海地域の専門家、マーク・L・シュナイダーは、今回の地震災害を「西半球地域における史上最大の国家災害」と描写し、グローバル規模の支援活動が必要になると強調する。「最初に必要なのは、建物と家で、もう一度すべてをやり直さなれればならない」。ハイチの復興にはおそらく数十年はかかり、その支援にはばく大なコストがかかるが、復興の目的は過去のハイチを再現することではない。それは、新しい教育システム、公共サービス機能を持つ「新しいハイチ」を建設することでなければならない。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティングエディター)

このままでは核拡散の大潮流が起きる
―― 危機感をもって核不拡散レジームの再確立を

2010年2月号

グレアム・アリソン ハーバード大学政治学教授

北朝鮮が核を開発し、イランが核開発の道を歩んでいるにも関わらず、多くの人は世界の核秩序は安定していると考えている。たしかに、核保有国の数は9カ国に留まっているし、今後、北朝鮮とイランが核保有国と見なされるような事態にならなければ、近い将来に核拡散の潮流が生じて、数多くの国が核武装すると危機感を抱く必要はないと考えることもできるだろう。だが現実には、核不拡散レジームの形骸化が進み、一気に核が拡散してしまう、取り返しのつかない臨界点へと近づきつつある。盗み出された核によってテロが起きる危険もある。核秩序を守るための措置はすでに表明されているが、国際社会がそうした措置を現実に実行していかなければ、世界は一気に核拡散の大潮流に席巻される危険がある。今後の一年は非常に重要であり、各国が行動を起こすべきタイミングはいまだ。核不拡散レジームが崩壊したら、もはや手の打ちようはないのだから。

CFRインタビュー
トタル社CEO、ドマルジェリーが語る
エネルギーと環境のバランス

2010年2月

クリストフ・ドマルジェリー 仏トタル社CEO(最高経営責任者)

「今後がどうなるかについての予測もなしに長期投資を行うのは難しい」。したがって、「環境とエネルギーのバランス」に関する議論の結論がどのようなものになるか。「それが分かるのは早ければ早いほどよい」と考え、われわれエネルギー産業は焦りを感じている。だが一方で、「議論の結論次第では、われわれが想像さえしていないような極端な路線の修正を強いられるかもしれない以上、(長期投資の判断は)結論を待ったほうがよい」という考えももっている。「議論の結論が出るのは早いほうがいいが、・・・・環境とエネルギーの二者択一は良くない、バランスを取るべきだと考えている」。

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