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論文データベース(最新論文順)

NATOの将来は 「域外」での活動にある
―問われる特権と義務のバランス

2010年7月号

スピーカー
マドレーン・オルブライト  元米国務長官、NATO新戦略概念・専門家グループ議長
司会
リチャード・ハース 米外交問題評議会会長

現在のNATO同盟国の多くは、有意義な対応策をとる意志も能力も持っていない。危機に対応しようとするのは、NATOに加盟する数カ国と非加盟の数カ国だ。むしろ、NATOを現状に適応させようと試みるよりも、21世紀型の同盟を新たに考えた方がいいのではないか。(R・ハース)

NATOのことを、各国が参加したいと望む類い稀な同盟関係と言うこともできる。この意味では、同盟はまだ死んでいない。改革は必要だが、非常に有意義な構造を持っている。NATOを21世紀型の同盟構造に改革していく必要がある。(M・オルブライト)

アフガンの安定を左右する部族文化の本質

2010年7月号

セス・ジョーンズ ランド・コーポレーション 上席政治学者

いまもアフガンの地方の村落では伝統的なジルガ(会議)とシュラ(協議)が重要な意思決定枠組みとして機能している。国の法律はまったく及んでいない。もちろん、アフガンの民衆は、問題を解決するのに、カブールの官僚ではなく、コミュニティの指導者を依然として頼りにしている。そして、タリバーンは、こうした部族、既存の現地ネットワークをいかに取り込むかを心得ているし、相手が協力しない場合には、力でこれを強制するという戦略をとっている。実際には、この戦略だけで、タリバーンのこれまでの成功の多くを説明できる。かたや欧米は、強固な中央集権体制を構築し、これが定着すれば長期的な安定を実現する助けになると考えているが、アフガンでは、それだけでは十分ではない。都市部には中央政府のトップダウンモデルを、そして地方では、部族、その他のコミュニティを取り込むためにボトムアップモデルをとり、二つをうまく組み合わせていく必要がある。

企業と女性が世界経済を変える
―― なぜGEとナイキは途上国の女性の権利擁護に動いたか

2010年7月号

イソベル・コールマン 米外交問題評議会(CFR)シニア・フェロー

性差別は、世界の底辺の20億人が生活する社会に特徴的な現象であり、世界でもっとも困窮した人々とそうでない人々の間の格差を埋めるのを阻む大きな要因だ。幸い、途上国でビジネスチャンスを探る多国籍企業は、女性の能力がまったく生かされていないために、現地における生産性、経済活動、人的資本が大きく損なわれていることにすでに気付き始めている。環境に配慮した取引慣行が、企業PRになるだけでなく、ビジネスにもプラスに作用するという考えが広がりをみせるにつれて、いまや先進国の企業は、女性のエンパワーメントを推進することが、労働生産性を向上させ、世界的なサプライチェーン(生産・流通過程)の効率を高め、顧客基盤を拡大できることを理解しつつある。この意味では、企業が途上国、そして世界における21世紀最大の文化的変革の担い手になる可能性もある。

21世紀は新興市場国の世紀に
― G20、世銀、IMFの未来

2010年7月号

スピーカー
スチュワート・M・パトリック 米外交問題評議会シニアフェロー国際機関およびグローバル統治プログラム責任者
司会
デビッド・E・サンガー  ニューヨーク・タイムズ ワシントン支局長
パネリスト
ホイットニー・デベボイス 元世界銀行 理事
アルビンド・サブラマニアン ピーター・ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー
アントニー・フォン・アットマール 新興市場マネジメントLLC会長兼チーフ・インベストメントオフィサー

最終的には、アメリカ、ヨーロッパ、日本のような、すでに確立されたパワー、中国、インド、ブラジルのような新興大国、さらには新興のミドルパワーの間でタフな取引と交渉が行われ、その結果、新しい秩序が形成されていくことになる(S・パトリック)

G20は新しいG7に至る通過点にすぎない。新しいG7は、アメリカ、EU、日本、BRICs諸国で構成されることになるだろう(アットマール)

信用格付け会社の功罪

2010年7月号

ロヤ・ウォルバーソン(Staff Writer, www.cf.r.org)

格付け各社がギリシャ、ポルトガル、スペインはデフォルトに陥る公算が高いと示唆する評価を示したことで、世界の金融市場は長期的な混乱に陥っている。一部のアナリストは、格付け会社が国債の価格下落に先んじてではなく、トレンドに追随して国債の格付けを引き下げており、その結果、さらなる市場の下落を招いていると批判している。要するに、アナリストたちは、そうした格付けは金融市場の変動幅を大きくしてしまっていると批判している。すでに、ヨーロッパもアメリカも格付け会社に対する規制策を検討している。しかし、批判にさらされているとはいえ、格付け会社が依然として頼りにされているのも事実だ。「かつて誤った格付けをしたのと同じような様々な証券や債券を格付けするために」依然として格付け会社は頼りとされている。・・・

ロシアのNATO加盟を
―― 汎ヨーロッパ安全保障秩序の確立を

2010年7月号

チャールズ・クプチャン ジョージタウン大学教授(国際関係論)

欧米が、ロシアのことを「戦略的なはぐれ者」として扱い続けるのは、歴史的な間違いだ。ナポレオン戦争後や第二次世界大戦後に大国間の平和が実現したのは、かつての敵対勢力を戦後秩序に参加させたからだという歴史の教訓を思い起こす必要がある。冷戦後の現在、ロシアのNATO加盟を実現させることが、汎ヨーロッパ秩序を構築する上でも、NATOの今後に関する論理的な矛盾をなくす上でも最善の方法だろう。グローバルな課題、G20などの国際機関の改革に取り組んでいくにはロシアの協力が不可欠だし、ロシアを参加させれば、加盟国間の内なる平和を促すという、NATOのかつての機能を再確立することにもなる。平和的な汎ヨーロッパコミュニティの実現という新しい目的は、NATOの存在理由を取り戻すことにもつながる。確かに、ハードルは高い。だが、プーチン首相は、大統領になって間もない時期に「ロシアの利益が考慮され、ロシアが(欧米の)完全なパートナーになれるのなら、自分はNATOへのロシアの参加という選択肢を排除しない」と述べている。いまこそ、欧米は決意を持ってプーチンの真意を確かめるべきだろう。

金融超大国・中国の政治的ジレンマ
―― 重商主義路線か資本の自由化か

2010年7月号

ケン・ミラー 米国務省諮問委員会メンバー

圧倒的な規模の外貨準備を持つ中国は、依然として低い一人あたり所得のレベルからは到底考えられないような、金融市場における圧倒的な影響力を手にしつつある。中国の対外投資の目的は、国内の経済成長を刺激し、雇用を創出することで、共産党政府の正統性を維持していくことにあり、必然的に重商主義路線をとっている。だが、これまでのところ、中国がうまく資金を用いているとは言えない。FDI(外国直接投資)はさまざまな理由から伸び悩んでいるし、技術アクセスを得るための先進国の企業買収もうまくいってはいない。途上国のプロジェクトに資金を提供して、中国企業に発注させるやり方も、現地の反発に遭遇している。結局のところ、これまでの重商主義路線は、中国よりも取引相手国により大きな恩恵をもたらしており、いまや中国もその費用対効果が高くないことを認識しつつある。だが、中国が重商主義路線を止めて、資本の自由化に踏み切るには時間がかかる。共産党の権力維持という大きな政治問題が絡んでくるからだ。グローバル経済の安定に貢献するような形で金融パワーを行使するように北京にうまく促すには、ワシントンは中国の国内的な優先課題が何であるかにもっと配慮すべきだろう。

CFR朝鮮半島タスクフォース・リポート Part1
北朝鮮に対する巻き返し策を

2010年7月号

共同議長
チャールズ・プリチャード 朝鮮半島経済研究所会長
ジョン・H・ティレリ 元在韓米軍・米韓連合軍最高司令官
ディレクター(リポート執筆者)
スコット・スナイダー 米外交問題評議会非常勤シニア・フェロー

われわれタスクフォースは、アメリカと韓国は、一体感のある同盟の形成に向けた議論を深め、この枠組みができたら、北朝鮮の政治的不安定化に迅速に対応できる態勢を強化するために、日本、中国、ロシアを取り込んで枠組みを拡大させていくことを提言する。朝鮮半島の将来を議論するために、アメリカは中国との戦略対話を試みる必要もある。

これまで北朝鮮は、核実験を含む、アメリカが定義するレッドラインをことごとく公然と越えてきたが、それでも懲罰措置の対象とされることはなかった。・・・残された唯一のレッドラインとは、「北朝鮮がNPTの枠組みに復帰しない限り、非国家アクターによる核テロが起きた場合に、アメリカは北朝鮮のことを主要な容疑者とみなし、アメリカの即時報復攻撃の対象とする」と警告することだ。・・・オバマ政権にとっての課題は、アメリカの警告の信頼性をいかに高めるかにある。

テッド・ターナーとの対話
― HBOヒストリーメーカー・シリーズ

2010年6月号

スピーカー
テッド・ターナー ターナーエンタープライズ会長
プレサイダー
デビッド・G・ブリンクレー アトランティック・メディア・カンパニー会長

「大きな目的を持つように」と私は父から教えられた。「自分が生きている間には実現できそうにない目的を定めるんだ。そうすれば、つねに前向きでいられるぞ」。これが父の教えだった。私はこの教えを今も守っている。世界から核兵器をなくすことに努力している。世界がもっと真剣に気候変動問題に取り組み、石炭や石油の消費を段階的に減らしていくにはどうすればよいかを考えている。さらに、世界の人口を安定させ、国連がミレニアム開発目標として掲げるように世界から貧困をなくすことも目的にしている。たしかに、どこから手をつければよいか分らない手に負えない目的かもしれない。(笑い) しかし、自分にはもう何もすることがないと心配する必要だけはない。この意味では、私は幸せだと思う。(テッド・ターナー)

欧米のソフトパワーとハードパワーを融合させよ
―― EUとNATOの連携強化を

2010年6月号

ウィリアム・ドロズディアク ドイツ・アメリカ評議会会長

NATOは軍事同盟だが、EUは軍事力の行使には否定的で、むしろ、開発援助、教育その他の領域への支援、つまり、ソフトパワー路線に価値を見いだしている。これは、NATOのハードパワーにEUのソフトパワーをまとわせれば、地球温暖化、破綻国家、人道的悲劇といった今日的課題に米欧が協力して対処していけるようになることを意味する。そのためには、EUとNATOの連携を強化しなければならない。そうしない限りEU、NATOという欧米のもっとも重要な二つの機関も、今後、時代に取り残された凡庸な存在と化し、最終的には無力化していくだろう。この2つの機関の連携を強化して大西洋同盟を新たに再生することが、(中国とインドという)台頭するアジアパワーを前に、アメリカとヨーロッパがグローバルな影響力を強化していくためのもっとも効果的な方法だろう。

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