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論文データベース(最新論文順)

ウクライナを ヤヌコビッチ大統領から救うには

2010年8月号

アレクサンダー・モティル ラトガーズ大学政治学教授

最終的に「ドタバタ劇場」と揶揄(やゆ)され、人々の期待を裏切る結果に終わった「オレンジ革命」を経て、ウクライナに誕生した新しい指導者は誰だったか。それは、皮肉にも、一度は手にしたかにみえた大統領ポストをオレンジ革命によって奪い取られたビクトル・ヤヌコビッチだった。ヤヌコビッチは、過去のマイナス・イメージを払拭する「民衆のための国、ウクライナ」という絶妙なスローガンを唱えて2010年2月の選挙でついに勝利を手にした。しかし、ヤヌコビッチは、まるでロシアへの忠誠を示すかのようなウクライナに不利な協定を結び、いまや国を裏切った指導者という烙印を押されている。しかも、適材適所とはかけ離れた政治的任命で組織されたヤヌコビッチ政権には、現在のウクライナに必要な経済改革を実行する能力も意思もない。人々の怒りと不満が行き所を失う前に、欧米、そしてロシアは、ヤヌコビッチに対して路線変更を迫り、混乱への道からウクライナを救い出さなければならない。

オバマ外交の正念場
―アフガンとイラン

2010年8月号

リチャード・ハース 米外交問題評議会(CFR)会長

ロシア、中国との大国間関係を巧みに管理しつつも、オバマ政権は、成功する見込みの乏しいアフガンに大きすぎる投資をしているし、中東和平プロセスにも打開の兆しはない。それどころか、ガザ地区のハマス、レバノンのヒズボラはロケットの調達を強化しており、「過去のケースから言えば、ここから情勢はさらに悪化していった」とリチャード・ハースCFR会長は中東情勢の今後に警鐘を鳴らす。アフガン同様に、オバマ政権にとって最大の課題の一つであるイラン問題については、アメリカとイスラエルが「イランが核兵器の開発に向けてどの程度まで歩を進めるのを許容するか、・・・(許容ラインを超えた場合に)それに対してどのような対策をとるかに関する決定をいつ下すか」が問われており、もはや、ポイントは「そうした決定を下すかどうかではない」とハースは言う。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティングエディター)。

新たな核拡散潮流を阻止するには
――北朝鮮、イランよりも、周辺国への核開発の連鎖を封じ込めよ

2010年8月号

グレゴリー・シュルテ 前国際原子力機関・ ウィーン国際機関米政府代表部大使

核拡散を阻止しようとする国際的な試みは、多くの場合、北朝鮮やイランの核の野望を封じ込めることに焦点が合わせられている。だが、このやり方を続けてもおそらくうまくはいかない。制裁や交渉をさらに試みても、北朝鮮やイランの現在の指導者たちの計算を変えることはできないからだ。むしろ、今後、核開発を試みかねない諸国に対する監視と説得を重視し、北朝鮮とイランに対しては、外交、制裁措置を、内からの変革を促すように戦略を再設計する必要がある。認識すべきは、いまや、特定国による核開発だけでなく、多国間による核開発の試みに備えていく必要があることだ。これ以上の核拡散を阻止するには、核施設の有無を突き止めるだけでなく、核開発の動機、核武装の模索の決断を促した計算についても解明を試みなければならない。核兵器を保有することによって得られると一般に考えられている恩恵と価値を引き下げ、新たな核の脅威に直接的にさらされている国が安心できるような安全保障環境を提供すれば、拡散のリスクを低下させることができるだろう。

ホノルル、ハーバード、ハイドパーク
―― バラク・オバマの政治的変遷

2010年8月号

ウォルター・ラッセル・ミード 米外交問題評議会アメリカ外交担当シニア・フェロー

アメリカの教育システムは人を故郷から遠ざけるようにできている。その狙いは青年をアイオワ州から連れ出すだけでなく、アイオワ州を青年の心の中から追い出すことにある。だが、アメリカで教育を受けて政治の世界を志す者は、このプロセスを逆戻りしなければならない。・・・クリントンはアーカンソー州で、どうしたら現地の人々と心を通わせることができるのか、何を話せばいいのか、そして何を話してはいけないのかを学んだが、ホノルル、ケンブリッジ、シカゴでの経験から、オバマがこれらを学ぶのは無理があった。ニューイングランドの改革主義思想の洗礼を受けているオバマが人種問題を超えた候補者となるには、まず人種問題を正面から受け止め、黒人の文化的背景を身につける必要があったし、ニューイングランド思想に反発するポピュリストにも対処していく必要があった。・・・

中国の北朝鮮路線は一枚岩ではない

2010年8月号

共同議長 チャールズ・プリチャード 朝鮮半島経済研究所会長
エヴァンズ・リヴィア コリア・ソサエティ前会長
スコット・スナイダー 米外交問題非常勤シニア・フェロー(朝鮮半島担当)

プレサイダー
デビッド・サンガー ニューヨーク・タイムズ ワシントン支局長

北朝鮮の学者、専門家、エンジニア、技術者に別の考え方、別の世界観があることを気づかせることほど、効率的で費用対効果の高いやり方はない。そのための投資をする価値はあるし、今回のリポートのハイライトの一つは、交流を通じて、北朝鮮の認識を内から変化させることを提言したことだ。(E・リヴィア)

タスクフォースは、制裁措置の継続実施を求めつつも、特にミサイル問題についての米朝二国間交渉も検討すべきだと提言している。実際、ミサイル技術を完全にマスターすれば、北朝鮮の地域的な脅威は本物になる。(S・スナイダー)

交渉、6者協議という側面では、われわれは大きな間違いを犯してきた。どうせ、北朝鮮は交渉をひっくり返すのだから、もう交渉するのは止めて、好きにさせればいいと判断してしまった。これは完全な間違いだった。(C・プリチャード)

オンライン・ジャーナリズムとメディアの未来

2010年8月号

共同議長
ビル・ニコルス ザ・ポリティコ編集長
ビジャイ・ラビンドラン ワシントンポスト・カンパニー上席副会長(チーフ・デジタル・オフィサー)
ビビアン・シャイラー 米公共ラジオ放送(NPR)会長兼最高経営責任者

プレサイダー
アルバート・イバルゲン ナイト財団会長

今や人々は多くのソースから情報を入手できるので、「全ての人々のために全てのニュース」を提供する必要はなくなった。・・・ジャーナリズムの世界では本当に驚くべきことが現実になろうとしている。いずれ記者が書いたものにユーザーがコメントを寄せ、双方向の交流が起きるようになるだろう。政治記事についても例外ではなくなるだろう。(V・ラビンドラン)

ユーザーによるコメントの書き込みは非常に力強い。そして、記者がこのコメントに対して双方向の交流をすることは非常に大切だ。これによって、真空地帯のなかでだれかが声を上げている感覚から解放され、どこかの家で話をしているような感じになる。これがNPRの声だ。(V・シャイラー)

「われわれ(メディア)は読者よりも事情通だし、あなたが知っておく必要があることを伝えよう。それをどのように、いつ読むかについても教えよう」。そんな時代は、もう終わっている。この点を理解ししない限り、今後、メディアが成功することはあり得ない。(B・ニコルス)

CFR朝鮮半島タスクフォース・リポート Part2
外からの変革ではなく、北朝鮮の内からの変革を促せ

2010年8月号

共同議長
チャールズ・プリチャード 朝鮮半島経済研究所会長
ジョン・H・ティレリ 元在韓米軍・米韓連合軍最高司令官
ディレクター(リポート執筆者)
スコット・スナイダー 米外交問題評議会非常勤シニア・フェロー

アメリカと韓国は、民主的で市場経済志向の統一された朝鮮半島を実現していくためのそれぞれの責務を特定するための議論を深め、北朝鮮の体制が崩壊した場合に介入が必要になる基準について合意を形作っておかなければならない。両国は北朝鮮の体制、制度、国家破綻というシナリオに対してどのような対応を取り得るかについての政治的協力を模索し、米韓の政治、軍事指導者が協力する「包括的同盟」枠組みを設計する必要がある。・・・アメリカの同盟国であり、朝鮮半島の不安定化への軍事的対応をめぐって後方支援を提供する立場にある日本も、早い段階から協議に参加させる必要がある。・・・一方、朝鮮半島の未来に関する米韓の目的が何であるかに関する明確な了解を基盤に、アメリカは北朝鮮の将来について、・・・中国とのハイレベルでの戦略対話を試みるべきだ。

北朝鮮はなぜチョナン号事件への 関与を否定しているのか

2010年7月号

チャールズ・プリチャード 朝鮮半島経済研究所(KEI)会長

チョナン号沈没事件は、北朝鮮と韓国の同海域で2009年に起きた衝突事件に対する、北朝鮮の直接的な報復攻撃と考えるべきだ。・・・北朝鮮側は報復作戦を命じていた。平壌が事件への関与を否定しているのは、一つには中国との関係をうまく管理していくためだろう。また、国際社会の(不当な)批判の生け贄にされた犠牲者と自己規定することで、ナショナリズムを高揚させる意図もあるかもしれない。この戦術は国内的には成功だった。北朝鮮の後継体制への移行をスムーズにし、国内の連帯を高めるために利用されている部分もある。後継問題をめぐっては、金正日は張成沢を国防委員会副委員長に昇進させ、事実上、北朝鮮のナンバー2にした。これは、金正日が死亡するか、あるいは、表舞台から姿を消した場合に備えて、張成沢が権限を握って後継問題をスムーズに管理していくための短期的措置だが、三男が北朝鮮を支配する第3世代として自らの地位を確立するまで、彼が権力を中・長期的に管理していくことになるのかもしれない。(C・プリチャード)

NATOの将来は 「域外」での活動にある
―問われる特権と義務のバランス

2010年7月号

スピーカー
マドレーン・オルブライト  元米国務長官、NATO新戦略概念・専門家グループ議長
司会
リチャード・ハース 米外交問題評議会会長

現在のNATO同盟国の多くは、有意義な対応策をとる意志も能力も持っていない。危機に対応しようとするのは、NATOに加盟する数カ国と非加盟の数カ国だ。むしろ、NATOを現状に適応させようと試みるよりも、21世紀型の同盟を新たに考えた方がいいのではないか。(R・ハース)

NATOのことを、各国が参加したいと望む類い稀な同盟関係と言うこともできる。この意味では、同盟はまだ死んでいない。改革は必要だが、非常に有意義な構造を持っている。NATOを21世紀型の同盟構造に改革していく必要がある。(M・オルブライト)

アフガンの安定を左右する部族文化の本質

2010年7月号

セス・ジョーンズ ランド・コーポレーション 上席政治学者

いまもアフガンの地方の村落では伝統的なジルガ(会議)とシュラ(協議)が重要な意思決定枠組みとして機能している。国の法律はまったく及んでいない。もちろん、アフガンの民衆は、問題を解決するのに、カブールの官僚ではなく、コミュニティの指導者を依然として頼りにしている。そして、タリバーンは、こうした部族、既存の現地ネットワークをいかに取り込むかを心得ているし、相手が協力しない場合には、力でこれを強制するという戦略をとっている。実際には、この戦略だけで、タリバーンのこれまでの成功の多くを説明できる。かたや欧米は、強固な中央集権体制を構築し、これが定着すれば長期的な安定を実現する助けになると考えているが、アフガンでは、それだけでは十分ではない。都市部には中央政府のトップダウンモデルを、そして地方では、部族、その他のコミュニティを取り込むためにボトムアップモデルをとり、二つをうまく組み合わせていく必要がある。

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