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論文データベース(最新論文順)

チュニジア革命とエジプト、リビア、サウジアラビア

2011年2月号

エリオット・アブラムス 米外交問題評議会中東担当シニア・フェロー

2010年12月にチュニジアで起きた民衆デモは数週間に及び、2011年1月についに政権は崩壊し、ベンアリ大統領はサウジに亡命した。このチュニジアでの展開が北アフリカ他の独裁国家でも民衆蜂起を誘発するのではないかといまや広く考えられている。中東問題の専門家であるエリオット・アブラムスは、「民衆蜂起の高まりを前に、チュニジアの軍隊は組織としての生き残りを重視し、ベンアリと彼の家族のために、数百人の市民を殺害すれば、軍に未来はないと判断し、これが、民衆が作り出した革命の流れを加速した」と指摘する。つまり、「他の中東の独裁国家でも、かりに民衆運動が起き、軍隊が独裁者の鎮圧命令を拒絶すれば、同じような展開になる」と語った同氏は、似たような展開になる可能性を秘めているのが、いずれも権力継承のタイミングにある「リビアとエジプトだ」と指摘した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティングエディター)

CFRミーティング
カダフィ後のリビア
―― 石油の富でいかに部族間のバランスをはかり、
国家建設へと結びつけるか

スピーカー
エリオット・アブラムス 米外交問題評議会中東担当シニア・フェロー
プレサイダー
バーナード・ガーツマン コンサルティング・エディター、CFR.org

リビアの社会状況は、エジプトよりも、さらに怒りを禁じ得ないものだった。一日あたり150~200万バレルの石油が輸出されてきたが、リビアの貧しい人々は、「いったい石油からの収益はどこにいってしまったのか」と考えてきた。おそらくは、カダフィ政権が倒れるのはさけられない。最大の問題はリビアに制度らしき制度が存在しないことだ。カダフィは40年をかけて、制度構築を阻止してきた。しかも、国家的な統合は実現していない。帰国して何かができるような君主もいない。来週、カダフィ政権が倒れれば、何らかの暫定政権が必要になる。問題は、一つではなく、二つか三つ暫定政権が誕生する可能性があることだ。

CFRインタビュー
アラブ世界で何が起きているのか

ロバート・ダニン 米国家安全保障会議中東担当ディレクター(代理)

わずか数週間で、チュニジアのベンアリ大統領が民衆デモを前に亡命を余儀なくされ、エジプト、イエメンその他でも民衆デモが続いている。多くの場合、デモを主導しているのは若者たちで、その行動はソーシャルメディアやアルジャジーラなどで知った近隣諸国の出来事に刺激されている。特にアルジャジーラが現在の中東の流れを左右するアクターになっている。このタイプのデモは中東ではかつてみられなかったと、CFRのロバート・ダニンは言う。これまでのように反米運動という形をとるのではなく、「現地の問題に対する不満や反発からデモが起きている。しかも、それが、近隣諸国の出来事に刺激されている」。ムバラク大統領が息子のガマル・ムバラクを後継大統領にする道はもはや閉ざされたといってよく、ムバラクが次期大統領選挙後、政治的に存続できるかどうかさえ危ぶまれる、と同氏は語り、アメリカの政策にとって大きな意味合いは、「イスラエル・パレスチナ問題を解決することこそ、中東問題を解決する鍵」とみなしてきた、アメリカの中東政策の前提の多くが間違っていたことが、国内問題を前に立ち上がった今回の民衆デモで立証されたことだ、とコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)

エジプトでの民衆の抗議行動はいまも拡大し続けている。大統領が内閣改造を行い、副大統領を新たに任命したにもかかわらず、人々はムバラクの退陣を求めている。そして、すでにエジプト軍は市民に武力は行使しないと宣言している。「ムバラクの時代は終わった」とみるリチャード・ハースは、民衆の支持(正統性)を失い、リーダーシップも発揮できずにいるムバラクは辞任し、その後を担う、暫定内閣を立ち上げて、暫定的な政治プロセスに移行していく時期にきているとみる。そのプロセスにおいて、政治改革と憲法改革を具体化していく必要がある。こう考えるハースは、「軍が軍らしくあるためには、新たな政治的権限、つまり、新しい政治指導者が必要だし、軍はムバラクのためではなく、次期政権のために、エジプトの秩序と安定を回復すべきだ」と強調した。暫定政権の指導者の候補にスレイマン副大統領、モハメド・エルバラダイの名前を挙げた同氏は、移行プロセスが安定した秩序だったものになるかどうか、そして、イスラム同胞団が移行プロセスにおいてどう動くかが今後の鍵を握るとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)

CFRミーティング グローバルな資金の流れを考える
―― ラリー・サマーズとの対話

2011年1月号

ローレンス・サマーズ 国家経済会議議長
ティム・ファーガソン フォーブス・アジア、エディター

資本管理策に眉をひそめるムードがあるが、私は、流入する資本に課税したほうがいいと特定国が判断するとしても仕方がないと思うし、資本管理策をそれほど大きな問題だとは思っていない。完全なアナロジーにはなり得ないが、資金の流れを人の流れに例えることもできる。人々が外国に移住するのを認めない国は全体主義的で問題があると考えられる。一方で、国家が慎重に移民の流入を規制するのは所与のこととして受け入れられているではないか。・・・妥当な範囲での資本の流入を制限することにそれほど問題があるとは思わない。・・・一方で、通貨の切り上げを拒み資金があふれかえる状況が続けば、バブルが形成されるかもしれない。・・・中国経済が今後どうなるかわからないという見込みが高まっているために、不透明感が増している。(L・サマーズ)

非国家アクターとしての宗教の台頭
―― グローバル化時代の宗教

2011年1月号

スコット・M・トーマス バース大学上席講師(国際関係)

新しい世界が形成されつつあり、そのおもな担い手は途上世界を構成する国と人々、そして宗教コミュニティだ。そして、昨今の宗教の興隆の大きな特徴は、イスラムの台頭だけではなく、ペンテコステ派と福音主義プロテスタント(福音派)が中国やインド、途上国で大きな広がりをみせていることだ。また宗教系非国家アクターの台頭にも注目する必要がある。世界最大のイスラム組織「タブリギ・ジャマート」、中国の法輪功なども、カトリック教会や東方正教会のように、国際関係に影響を与えるグローバルな宗教プレイヤーの仲間入りを果たしている。しかも、途上世界では社会奉仕ネットワークとテロネットワークの多くが重なり合っている。また、途上国の人々がわれわれと同じ宗教を受け入れても、欧米における(保守やリベラルといった)政治志向をそのまま映し出すことにはならない。グローバル化がいかに宗教を変貌させるかは、テロや宗教紛争といった安全保障上の脅威が今後どう推移するかさえも左右することになるだろう。

(私の両親は)普通の人々だった。だが、(アラバマ州)バーミンガムの生活環境はおよそ普通とは言えなかった。私たちは、(人種差別ゆえに)レストランにも行けず、ホテルにも泊まれなかった。それでも、両親は「その気になれば、あなたはこの国の大統領にもなれるのよ」と諭した。二人は、コミュティの子供たちに、「自分たちの環境は変えられないかもしれないが、その環境にどう反応するかはあなたが決められるし、そこが大切だ」と私たちに教えた。この教えが、私に外交アプローチを理解させ、原則を持つことの重要性を教えてくれたと思う。(C・ライス)

CFRミーティング
世界エネルギー・アウトルック ――
ゲームチェンジャーとしての電気自動車と二酸化炭素回収・貯蔵技術

2011年1月号

スピーカー
ファティ・ビロル 国際エネルギー機関・経済分析部 チーフエコノミスト
司会
ピーター・ゴールドマーク 環境防衛ファンド ディレクター

原油価格は今後も高いレベルを維持し、一方、天然ガスの価格は供給過剰で今後も安値が続く。天然ガスは環境面でも悪い選択肢ではなく、逆に再生可能エネルギーの開発にはマイナスに作用している部分がある。・・・既存のエネルギーに比べてコストが高いために、クリーンテクノロジーは市場に浸透しないという問題を抱えている。鍵を握るのは中国だ。中国が、クリーンテクノロジーを大々的に市場に導入すれば、コストは引き下げられ、これは世界のすべてにとっての利益になる。だがもう一つの側面もある。電気自動車を例にとると、中国は自動車メーカー、部品メーカーその他すべてをひとまとめにして、資金と補助金を与えるという戦略をとっている。つまり、今後20~25年もすれば、中国が電気自動車産業の覇者になっていてもおかしくはない。・・・いずれにしても、エネルギー問題、地球環境、石油市場についてわれわれが持続不可能な未来へと向かっているという基本的な流れに変化はみられない。(F・ビロル)

CFRミーティング
通貨戦争、資本管理、
そして国際通貨システムの未来

2011年11月号

スピーカー
アジャイ・シャー  インド国立財政政策研究所教授
ベン・ステイル   米外交問題評議会 国際経済担当シニア・フェロー
アラン・テイラー  モルガン・スタンレー シニアアドバイザー
プレサイダー
セバスチャン・マラビー  米外交問題評議会・地政経済学センター所長

ロバート・トリフィンが指摘したように、ドルが国際的な準備通貨とされる限り、ドルの世界への供給量が少なすぎても、多すぎても危機が作り出される。つまり、現在の通貨レジームそのものを変えない限り、二つの危機の間を揺れ動くことになる。残された選択肢は二つしかない。・・・・・(B・ステイル)

新興国が変動相場制を懸念し、大規模な外貨準備を積み増したのは、自国通貨建てで債券を発行する力がなかったからだ。・・・だが、いまや多くの新興国はそうした力を持つようになった。これは新興国が次第に途上国を卒業しつつあることを意味する。(A・テイラー)

新興国の外貨準備は危機に対処できるレベルを十分に超えている。特に2002年以降、外貨準備は(輸出に有利な為替を維持するための)重商主義路線の一部と化した。・・・現在われわれは、為替重商主義の時代にある。(A・シャー)

地政学の中枢は軍事から経済へ ―― 経済の時代の新安全保障戦略を

2011年1月号

レスリー・ゲルブ 米外交問題評議会名誉会長

主要国は経済を成長させるために、これまでになくお互いを必要としており、伝統的な軍事的、戦略的ライバル関係が紛争へとエスカレートしていくのがもっとも厄介だと考えている。多くの指導者がもっとも気にかけているのは、貿易、投資、市場アクセス、為替であり、富裕層をさらに豊かにし、その他の社会層により良い生活を提供することだ。新興国の多くにとっても、経済成長は、国内の反体制派を抑え込むためのもっとも強力な手段だ。アメリカも「いまや地政学の中枢が(軍事ではなく)経済であること」を認識したアプローチへと移行する必要がある。この意味で、アメリカは、利益と価値を共有するヨーロッパや日本と21世紀型の連帯を組織し、この連帯に他の多くの諸国を参加させていく必要がある。現在のアメリカのパワーは「アメリカの助けがなければ自国の問題を解決できないと考え、共通の目的を達成するにはアメリカの利益にも配慮しなければならないと考える」諸国に依存している。

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