貿易財部門の空洞化は避けられない
―― 雇用なき成長への対策はあるか
2011年7月号
新興市場国が付加価値連鎖の階段を上っていくにつれて、先進諸国の貿易財部門が国内で必要とする労働力は小さくなり、この部門の労働集約型雇用は新興国へと流出していく。事実、米国内での貿易財部門の雇用はほとんど伸びていない。貿易財部門の高付加価値領域における雇用機会と所得レベルは高いが、ローアーエンドへと向かうにつれて、雇用機会も所得レベルも低下している。しかも、アメリカの場合、新規雇用のほとんどが、賃金がほとんど上昇していない非貿易財部門でしか創出されていないために、所得分配の不均衡(所得格差)はさらに顕著になっている。「経済が成長すれば雇用も増大する」と考えられてきたし、実際、これまではその通りだったが、いまや、グローバル経済の構造的進化とそれが国民経済に与える影響によって、経済成長と雇用創出は連動しなくなった。将来に向けた技術・インフラ投資、教育や税制の改革を含む政策の見直しなど、経済の競争力と成長を回復するための長期的で多層的な政策を導入する必要がある。