ミャンマーの軍事政権はなぜ改革を認めたのか。その理由は今もはっきりしない。将軍たちは、自分たちが信用するテインセインに段階的な改革を進めさせれば、報復を伴う民衆蜂起を回避できると考えたのかもしれない。あるいは、中国との関係を強化したことが、逆に中国に依存することへの警戒感を高め、欧米へのアクセスを求めてミャンマーを変革路線へと向かわせた可能性もある。政府はいまも問題を抱えているが、アウンサンスーチーは、今回が国のために貢献できる最後のチャンスであることを理解しているためか、政府に積極的に協力している。いずれにしてもアウンサンスーチーを変革プロセスの中心の据えることが不可欠だ。困難な現状を乗り切るのに必要な道義的正統性をもっているのは彼女だけだ。一方、現状で、過去の犯罪を暴いて高齢の将軍たちを政治の道具にすれば、ミャンマーのチャンスは潰され、改革の流れは潰えることになるだろう。
