山登りであれ、原子力工学であれ、危険を伴う行動の安全性を左右するのは人的ファクターだ。原子力施設の概念構築、設計、建設、稼働に至るまで、それに携わる人間の姿勢を考慮に入れなければならない。だが、安全の絶対的な前提であるプロフェッショナリズムの文化が、全般的にも技術領域においても、ソビエトの原子力産業には欠落していた。安全に関する指令や手続きは存在したが、ソビエトの原子力プログラムでは、この人的な側面における安全基準が満たされていなかった。これが、チェルノブイリ事故の文化的背景だった。
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山登りであれ、原子力工学であれ、危険を伴う行動の安全性を左右するのは人的ファクターだ。原子力施設の概念構築、設計、建設、稼働に至るまで、それに携わる人間の姿勢を考慮に入れなければならない。だが、安全の絶対的な前提であるプロフェッショナリズムの文化が、全般的にも技術領域においても、ソビエトの原子力産業には欠落していた。安全に関する指令や手続きは存在したが、ソビエトの原子力プログラムでは、この人的な側面における安全基準が満たされていなかった。これが、チェルノブイリ事故の文化的背景だった。
2011年9月号
2011年9月号
イスラム・コミュニティのノルウェー国内における成長がノルウェー社会の緊張を高めていた。近年では、男児の割礼、イスラムの教えに従った食肉処理、女性がまとうヒジャブなど、イスラムの伝統と習慣が国内で実践されていることに対する懸念と反発が高まっていた。ノルウェー人にとって異質な、これらイスラム的習慣に対する懸念と反発に右派政党は目を付け、「ノルウェーの生活様式がイスラムによって浸食されている」と主張し、社会を反イスラムへと扇動した。しかも、イスラム批判は、次第にノルウェーの多文化主義批判へと姿を変えていった。この社会環境のなかで起きたのが、アンネシュ・ブレイビクが決行した反イスラムテロだった。・・・
チェルノブイリ事故の放射能はヨーロッパへと飛散し、大陸に大きな懸念と心理的なトラウマを作り出した。欧州経済共同体(EEC)は、チェルノブイリから半径1000キロ以内の地域・国から生鮮食料品の輸入を禁止し、公衆衛生当局は、異なる放射線量基準を用いて、チェルノブイリの周辺地域で生産された野菜やミルクが消費されるのを阻止するために様々な措置をとった。・・・低レベル放射線被曝がどのような影響を人体に与えるかについては、専門家の間でもコンセンサスはない。われわれが自然界から放射能を日常的に受けていることは誰もが知っているし、特定の放射性物質は体内でも生産される。必ずしも無害とは言えない、こうした「バックグラウンド」放射線量のレベルは一般に年間100ミリレム(=1ミリシーベルト)と考えられている。この数字が、人工放射線被曝のベースラインとされたにすぎない。・・・・
2011年9月号
もはや日米関係が未来を明確に共有しているとは言い難い。改革によって(官僚主導から政治主導への)制度上の明確な権限移譲が実現するどころか、むしろ政治家の抗争、政治家と官僚の抗争が誘発され、その結果、権力の空白が生じ、政府の政策決定能力が損なわれている。これが日米関係、日米同盟にとって何を意味するかを考えなければならない。アメリカは日本に国益を有しているし、日本が困難な状況に陥った場合には、手を差し伸べる道義的な責任も負っている。だが、日本の先行きは依然として不透明で、しかも、いまや国防予算削減の時代にある。ワシントンはアジアにおける重要な目標を定義し、それに応じて資源を振り分けていくことを考えるべきだ。日米同盟を守っていくのが最優先課題でなければならないが、ワシントンは他の地域的なパートナーとより緊密に協力していく態勢を整えておくべきだろう。
おそらく国防予算に大なたが振るわれるのは避けられない。われわれの軍事的なコミットメント、能力、資源、戦略をバランスのとれたものにしなければならない。予算を削減しなければならないのなら、バランスをとるためにコミットメントを引き下げるしかない。アメリカは常設軍を持っていなかった第二次世界大戦前の状況へ回帰していくべきだろう。訓練、研究・開発、組織構造、メンテナンスを重視し、状況が変わり、世界情勢が悪化した場合には、戦力増強のベースになるこれらの軍事インフラを用いて、戦力を迅速に動員していくやり方に切り替えていくべきだ。特に、高度な先端技術を用いた戦闘機、戦艦、大規模な兵器システムの導入には慎重でなければならない。われわれの軍事技術領域における優位を可能な限り維持するために、研究・開発は続けるべきだが、国際情勢が悪化し、先端兵器が必要になるまでは、そうした兵器を大規模に配備すべきではないだろう。
2011年9月号
北朝鮮と韓国は互いに相手を信頼していない。これが、朝鮮半島における真の和解を長く阻んできた。残されていたわずかな信頼さえも、2010年に北朝鮮が起こした一連の事件によって消失してしまった。・・・・・・とはいえ、「片手では拍手できない」ということわざが韓国にある。南北間の平和も双方が努力しなければ実現しない。この半世紀以上にわたって、北朝鮮は国際的規範を無視し続けてきた。もちろん、平壌の挑発行動にはソウルは毅然と対処しなければならないが、一方で、両国間の関係改善の新たな機会には開放的な態度をとるべきだろう。いまや南北間の信頼は地に落ちているが、逆に言えば、信頼関係を再構築していく機会を手にしていると考えることもできる。朝鮮半島を紛争ゾーンから信頼のゾーンへと変えるために、韓国は信頼構築政策(trustpolitik)をとり、グローバルな規範に基づき、ともに信頼できる期待を育んでいかなければならない。
2011年4月号
飢饉がアフリカ東部を襲い、緊急食糧支援、人道支援が必要とされているにも関わらず、必要としている人々のもとに支援がうまく届いていない。理由は多岐にわたる。2002年と現在の価格を比較すると、米の国際価格は204%、小麦は164%、トウモロコシは260%上昇していることからも明らかなように、穀物価格が軒並み上昇している。しかも、援助が通常ドル建てで行われるために、昨今におけるドル価値の低下は、同じドルで調達できる穀物の量が小さくなっていることを意味する。さらに、人道的危機に対しては大規模な援助をしてきたイタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、アイルランドなどは、国が破綻するのを避けるために対外援助を打ち切らざるを得ない状況に追い込まれている。しかも、武装勢力が人道支援活動にとって障害を作り出している。これらは、アフリカの角地域でかつてなく大規模な飢饉が起きているにも関わらず、食糧援助の対象にできる人々の数が大きく減少していることを意味する。問題は、こうした複合危機解決の糸口が見えないことだ。・・・
2011年9月号
サイバー空間でのスパイ活動、そしてサイバーセフト(経済・金融情報の窃盗)がかつてない規模で行われている。膨大な経済情報や知的財産が企業から盗み出されて、ライバル国、あるいは潜在的敵国の経済にそのまま利用されている。この状況が、過去6年、あるいはそれ以上にわたって続いている。いまやその脅威は、国家レベルの経済繁栄を脅かすほどに大きくなっている。スパイ活動やサイバーセフトは経済のすべてのセクターで横行している。・・・現状を放置すれば、国の経済の存続を左右する深刻な脅威になり、経済全体が破壊されかねない。問題は、サイバースパイやサイバーセフトの被害にあっても、企業が事件の公表をためらっていることだ。