1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

論文データベース(最新論文順)

21世紀におけるサイバーテクノロジーは、かつての銃弾や爆弾同様に危険な兵器である。しかも、サイバー犯罪のための市場が誕生しつつあり、すでに地下の組織犯罪の世界では、(サイバー犯罪者が乗っ取り、自由に操れる多数のゾンビコンピュータで構成されるネットワーク)ボットネットのレンタルサービス、(サーバーを機能不全に追い込む)DoS攻撃のサービス提供価格さえもが決まっている。・・・政府系のネットワークだけでなく、民間のインフラも脅かされている。すでにシティバンク、ソニーのプレイステーションネットワーク、RSA、グーグル、NSDAQが被害にあっている。さらに、外国のネットワーク侵入者はこの数年で国防産業のネットワークから膨大な(テラバイトレベルの)データを盗み出している。3月に起きた一度の侵入で、2万4000ものファイルが国防企業のネットワークから盗み出されている。これらのネットワーク侵入で盗み出されたデータには、非常にセンシティブな情報データも含まれていた。・・・

ベルルスコーニ劇場の終わりとイタリアの未来

2011年11月号

ジャンニ・リオッタ ラ・スタンパ紙コラムニスト

ベルルスコーニにとどめを刺したのは、イタリアを率いるには彼が不適切であることを説いたエコノミスト誌のカバーストリーではなかった。その失策、オバマ大統領にどなったこと、イギリス女王の不興を買ったこと、あるいは、リビアのカダフィやロシアのプーチンとパーティをしたことの問題を問われたわけでも、アンゲラ・メルケル相手に「いないいないバー」をして彼女を驚かせたからでもない。彼は「自分は市場の申し子だ」と自負していたが、問題は、それが彼の政党、連帯相手、そして閣僚に富をもたらすだけの市場だったことだ。・・・結局、ベルルスコーニのイタリアは20年をかけて2兆6000億ドルもの債務の山を築いただけだった。モンティと欧州中央銀行(ECB)総裁に最近就任したマリオ・ドラギは今のところイタリアの英雄だが、明日には、ロビー団体、既得権益層、そして組合の要求を粉砕する戦士にならなければならない。この闘いに敗れれば、ドイツの植民地になるのでない限り、イタリアはリラの時代に舞い戻ることになる。・・・

覆されるリー・クアンユーの遺産

2011年11月号

アミタフ・アチャルヤ アメリカン大学・国際関係大学院教授

権威主義体制下で経済的繁栄と社会の安定を実現したリー・クアンユーの政策と思想は、これまでシンガポール国内でだけでなく、途上国においても高く評価され、先進諸国においてさえ大きな注目を集めてきた。だが、シンガポールの有権者は繁栄と安定だけでなく、民主化を求め始めた。この流れは、貧富の格差の増大、不動産価格の高騰、物価や生活コストの増大、そして移民流入の増大に伴う失業問題の深刻化などによって生じている。政府が抜本的な対策をとらないことに有権者は怒りを露わにし、しだいにリーの政党である人民行動党を見放しつつある。2011年の議会選挙と大統領選挙の双方において、シンガポールの有権者たちは、より大きな政治的自由を望んでいることを明確に示した。これは、「開発と安定に必ずしも民主主義が必要とは限らない」というリーの信条の一つを人々が拒絶し始めていることを意味する。すでに、選挙における人民行動党の後退を受けて、リーは政府ポストを辞し、「若い閣僚チームが若い世代とつながり、交流することで、シンガポールの未来を形作って欲しい」と表明している。

ユーロゾーンの再構築を
―― インソルベンシーと資金不足を区別した危機対策を

2011年11月号

ヒューゴ・ディクソン ロイター・ブレイキングニュース  エディター

かつてギリシャやイタリアは「競争力が低下している」と感じたときは、自国通貨を切り下げたものだ。その手段を奪われたユーロ導入後も、周辺国はユーロ建て国債の発行を通じて資金を借り入れることで、増税策をとることなく高い歳出レベルを維持した。だが、その結果、周辺国の多くが莫大な債務の山を築き、いまや破綻の危機に直面するリスクは限りなく高まっている。ここからどうユーロゾーンを守り、立て直していくか。財政統合やユーロ共通債では、目の前にある火事は消せない。それよりも、インソルベンシーによる危機と資金不足による危機を区別することだ。インソルベンシー危機に直面しているギリシャ、アイルランド、ポルトガルに管理型ディフォルトを認める一方、資金不足に派生する危機に陥っているイタリアとスペインには改革の意思を確認した上で、資金を供給する。こうすれば、経済のバランスが回復され、ヨーロッパは世界経済において再び大きな役割を果たせるようになる。

変わりゆく宗教と文化、政治の関係
―― 宗教が文化を変えるのか、文化が宗教を変えるのか

2011年10月号

カレン・バーキー コロンビア大学教授(社会学・歴史学)

宗教と文化に相関性がないのなら、宗教原理主義はよりグローバルな広がりをみせるが、原理主義を支える文化は世俗化されていく。一方、宗教と文化が切り離せないのなら、宗教原理主義が他の文化圏の社会に浸透し、世俗的・民主的慣行を侵食していくはずだ。だが現実には、宗教と文化と政治は常に相互作用している。「アラブの春」後のエジプトが具体例だ。ムスリム同胞団は、エジプト政治に食い込む「正しい」方法を探っている。彼らは選挙で議席を増やすことだけでなく、タハリール広場で若者たちが展開した民主化運動に共鳴するようなアプローチを模索している。宗教が政治に近づくことで、宗教運動も合理化、世俗化される。トルコのAKPも宗教を表舞台に再登場させることに成功し、宗教的慣行を公然と復活させたが、社会と政治的権利については現代的な民主路線を支持している。ほとんどの場合、宗教、文化、そして政治は依然として重なり合っている。

エジプトはどこへ向かっているのか

2011年10月号

フランク・G・ウィズナー   AIG 渉外担当副会長

エジプト軍は政治から一定の距離をとり、選挙を経て組織される議会が支える代議政府にバトンを渡し、憲法の起草を委ねたいと考えている。「今後も行政上の権限を維持したいとは軍は考えていない」と私は確信している。もちろん、国家安全保障領域については、軍の意見が尊重されることを望んでいるはずだ。・・・私は、エジプトでの論争がどのように展開し、選挙プロセス、移行期のリーダーシップがどのようになろうとも、エジプトは独自の判断を下し、時間はかかるとしても再び安定すると考えている。もちろん、それがどのような安定になるかは今後をみなければわからない。だが、エジプトは本質的に安定した国家であり、数千年におよぶ社会の安定という歴史的な支えを持っている。

カダフィ後のリビア
―― 選挙を急げば再び内戦になる

2011年10月号

ダウン・ブランカティ   ワシントン大学セントルイス校助教授(政治学)
ジャック・スナイダー   コロンビア大学教授(国際関係論)

リビア国民評議会(NTC)のムスタファ・アブドルジャリル議長は、18カ月以内に新憲法を制定し、選挙を実施すべきだと表明している。だが、近代的国家制度の存在しないリビアでかくも早い段階で選挙を実施するのはどうみても無理がある。早期に選挙に踏み切れば、内戦へと時計の針を逆戻しにする可能性が大きい。国際社会が平和維持軍を現地に送り込み、武装勢力の動員・武装解除を進め、信頼できる権力分有合意と近代的な政治制度の構築を支援するのなら、早期の選挙実施に伴うリスクを大きく抑え込めるかもしれない。だが、国際社会が積極的に現地に介入するとは考えにくいし、制度が整備されておらず、武装勢力が数多く存在し、政治腐敗が蔓延するリビアでこの条件を満たすのは容易ではない。

アラブの春の進展を阻む石油の呪縛

2011年10月号

マイケル・L・ロス カリフォルニア大学ロサンゼルス校 政治学教授

石油資源の国有化によって産油国政府は資金力を持つようになり、かつてなく強大なパワーを手に入れた。圧倒的な資産と経済パワーが政治家の手に移り、中東地域の支配者たちは公共サービスを向上させ、民衆をなだめるための社会プログラムのために石油資産の一部を使用するとともに、その多くを自らの富と権力のために用いた。リビアのカダフィはその具体例だ。仮に豊富な石油資源を持つ中東の独裁者が選挙で選出された指導者に置き換えられたとしても、権威主義が復活する不安はぬぐいきれない。中東諸国の独裁者と王族は石油マネーを利用して体制の支援者だけでなく、潜在的な反体制派もカバーする巨大なパトロンネットワークを形成しているからだ。その結果、独立系の市民社会集団が社会に根を張るのが構造的に難しくなっている。

世界はアフリカ東部の人道的悲劇を救えるか

2011年10月号

デビッド・バックマン ブレッド・フォー・ワールド会長、 ステファニー・バーゴス オックスファム・アメリカ上席政策アドバイザー、 リサ・メドークロフト アフリカ医療研究・教育基金エグゼクティブ・ディレクター

地球上で暮らす、すべての人々が消費できる十分な食糧が生産されているにも関わらず、10億もの人々が飢えに苦しんでいる。現在の食糧システムは崩壊しつつある・・・・一方でより奥深い危機が進行している。われわれは食糧価格の高騰、石油価格の高騰、気候変動問題が重なりあう複合危機の時代にある。(S・バーゴス)

遊牧民が多いケニア北部は干ばつに見舞われ、牛やらくだなどの動物に与える草が入手できなくなっている。かりに牧草がある地域を見つけたとしても、水がない。こうして水がある場所と牧草がある場所を数日かけて移動しなければならない状況にある。(L・メドークロフト)

Page Top