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論文データベース(最新論文順)

ハイチの悲惨な現実

2011年2月号

ローリー・ギャレット 米外交問題評議会グローバルヘルス担当シニア・フェロー

2010年1月に大地震に見舞われたハイチの復旧・再建活動はうまく進展していない。地震で家をなくした人は、いまもそのままだし、ほとんどの政府施設やインフラも依然として再建されていない。しかも、2010年10月にはコレラが発生して猛威を振るいだし、いまも感染を広げ、犠牲者が増えている。クリスマス以降、犠牲者数は1日平均100人に達し、2011年1月1日までの犠牲者総数は3651人に達している。最大の問題は清潔な飲料水を提供するインフラが存在しないことだ。いまや水田に入ればコレラに感染するのではないかと恐れて、農家が稲を水田に植えることさえ嫌がるようになった。ハイチが必要としているのはインフラと統治だが、それが短期的に満たされる可能性は低い。

パキスタンに対する強硬路線を
―― 懐柔策ではもはや協調は引き出せない

2012年2月号

スティーブン・D・クラズナー  元国務省政策企画部長

パキスタンは対米協調を装いながらも、それが対インド戦略に抵触する領域についてはアメリカの利益を公然と無視し、それに反する行動をとってきた。それにも関わらず、ワシントンはパキスタンを切り捨てるのを躊躇している。「対テロ作戦へのパキスタンの協調を得られなくなれば、アメリカのアフガンでの作戦は失敗する」と決めつけ、「外からの支援がなければ、パキスタンは破綻国家と化し、その結果、イスラム過激派が国を制圧し、悪くすると、インドとの核戦争が起きかねない」と心配しているからだ。だが、別のアングルから問題をとらえるべきだ。アメリカが対パキスタン援助と関与によって得た利益よりも、パキスタンによる核拡散やイスラム過激派支援路線がもたらすダメージのほうがはるかに大きい。パキスタンが具体的に行動を起こさなければ、パキスタンを孤立させる政策をとると、はっきりとイスラマバードに伝えるべきだ。いまや、パキスタン強硬路線へと舵を切り、パキスタンを敵国として扱ったほうが、アメリカも、パキスタンを含む地域諸国もより大きな恩恵を手にできるようになるだろう。

2012年、 われわれは何を心配すべきか
――世界のマクロ政治・経済リスクを検証する

2012年2月号

デビッド・ゴードン  ユーラシアグループ・グローバルマクロ分析部門ディレクター

・ ヨーロッパがソブリン債務危機を克服することはあり得ないが、ユーロゾーンの崩壊も、ヨーロッパ主要国が2012年に信用危機に陥っていくこともない。だが、ギリシャは非常に深刻な事態に直面する。
・ アメリカ(とドル)が安全地帯とみなされる限りは、ワシントンは経済を前に進めることができる。
・ 中東地域では歴史的なスンニ派とシーア派の対立が再燃しつつある。シリア、イラク、そしてイランもこの宗派対立にとらわれている。
・ インドは今後大きな危険にさらされることになる。インドのことを南アジアにおける欧米の前哨基地とみなすテロ集団の標的にされる恐れがある。
・ 急速に北朝鮮が崩壊へと向かった場合に何が起きるか。米軍と韓国軍は核施設の安全を確保するために北へ向かい、一方で、中国軍も自国への難民流入を阻止するために、鴨緑江を越えて現地に入り、秩序を確立しようとするかもしれない。・・・

リベラルな民主主義の奇妙な勝利そして停滞

2012年2月号

シュロモ・アヴィネリ ヘブライ大学政治学教授

なぜ20世紀に民主主義が生き残り、ファシズムも共産主義も淘汰されてしまったのか。1930年代から21世紀初頭にいたるまで、ヨーロッパ全域が民主化すると考えるのは現実離れしていたし、リベラルな民主主義が勝利を収める必然性はどこにもなかった。なぜ、社会に提示できるものをもち、圧倒的な力をもっていたマルクス主義がリベラルな民主主義に敗れ去ったのか。そしていまや、多くの人が(民主主義を支える経済制度である)資本主義が経済利益を広く社会に行き渡らせる永続的な流れをもっているかどうか、疑問に感じ始めている。ヨーロッパとアメリカの昨今の現実をみると、民主的政府は危機に適切に対応できず、大衆の要望を満たす行動がとれなくなっている。現在、世界が直面する危機によって、市場原理主義、急激な民営化、新自由主義では、「近代的でグローバル化した経済秩序をどうすれば持続できるか」という問いの完全な答えにはなり得ないことがすでに明らかになりつつある。・・・

シビリアンパワーで米外交を刷新する

2011年2月号

ヒラリー・ロドハム・クリントン 米国務長官

アメリカのエンゲージメント政策は政府間関係を超えたものでなければならない。情報化時代にあっては、権威主義国家でも世論が大きな力を持ち、非国家アクターの影響力が大きくなっている。いまやアメリカの外交官は、駐在国の政府だけでなく、相手国との市民とも交流し関係を築いている。・・・対話集会やメディアとのインタビュー、地方の町や小さなコミュニティーでのイベント、交換留学生プログラム、そして人々と市民組織をつなぐバーチャルな関係を通じて市民とエンゲージメントしていくことを、すべての外交官の責務としてすでにわれわれは規定している。21世紀の外交官は、相手国政府の外交官だけでなく、地方の部族長老とも同じように対話することになるだろう。・・・アメリカはシビリアンパワーと軍事力の適切なバランスを取ることで、国益と価値を促進し、グローバルな問題を解決するために他の国々をリードするとともに、伝統的な同盟国や新興国との間でも外交と開発をめぐるパートナーシップを構築していくだろう。

イスラエルは「イランが手を出せない状況=zone of immunity」をつくることを許さないと表明している。もちろん、イスラエルもアメリカの利害、立場にも配慮すると思う。しかし、何が国益を守る上で不可欠かについての結論を出せば、イスラエルの指導者が、アメリカの立場を拒否権として受け入れることはなく(自分の判断で行動するだろう)。だが、私は、イランとの交渉を試みるべきだと考えている。制裁やその他のオプションの代替策としてではなく、(あらゆる選択肢を排除しない)包括的なアプローチの一環として外交交渉を試みるべきだ。・・・軍事攻撃の準備をしつつ、制裁を強化し、その一方で交渉上の立場を示すべきだ。交渉を制裁強化策や軍事攻撃の代替策としてではなく、これらを補完するものとして位置づけるべきだ。

人民元の国際化路線を検証する
――中国のドル・ジレンマと経済モデル改革論争

2012年2月号

セバスチャン・マラビー
外交問題評議会地政経済学センター所長
オリン・ウェシングトン
元米財務省国際関係担当次官補

中国は人民元の国際化路線を促進しているが、人民元がドルに取って代わるには程遠い状態にある。経済規模やその他の指標で中国はアメリカに近づいているが、中国が金融覇権を握るとは現段階では考えにくい。むしろ注目すべきは、人民元の国際化路線が、中国の経済モデル変革の水面下に潜む深刻な内部抗争を映し出していることだ。改革派は、過剰な輸出依存は危険であり、中国は国内消費を増大させることで経済成長のバランスをとる必要があると考え、保守派は頑迷に現状維持を主張してきた。だが、金融危機によって中国の脆弱性が浮き彫りにされた結果、「ドルの罠」論への対策として人民元の国際化が公的目標に据えられている。こうして中国政府は現実には両立し得ない道を歩んでいる。輸出を促進しながらドル建て外貨準備を減らし、預金者の犠牲のもとに低金利融資を特定の企業に提供しながら、国内消費を増大させることを目指している。矛盾する路線は中国をどこへ導くのか。

歴史の未来
―― 中間層を支える思想・イデオロギーの構築を

2012年2月号

フランシス・フクヤマ
スタンフォード大学シニアフェロー

社会格差の増大に象徴される現在の厄介な経済、社会トレンズが今後も続くようであれば、現代のリベラルな民主社会の安定も、リベラルな民主主義の優位も損なわれていく。マルキストが共産主義ユートピアを実現できなかったのは、成熟した資本主義社会が、労働者階級ではなく、中産階級を作り出したからだ。しかし、技術的進化とグローバル化が中産階級の基盤をさらに蝕み、先進国社会の中産階級の規模が少数派を下回るレベルへと小さくなっていけば、民主主義の未来はどうなるだろうか。問題は、社会民主主義モデルがすでに破綻しているにも関わらず、左派が新たな思想を打ち出せずにいることだ。先進国社会が高齢化しているために、富を再分配するための福祉国家モデルはもはや財政的に維持できない。古い社会主義がいまも健在であるかのように状況を誤認して、資本主義批判をしても進化は期待できない。問われているのは、資本主義の形態であり、社会が変化に適応していくのを政府がどの程度助けるかという点にある。

国際通貨システムの未来
―― 再現されるのは1930年代か1970年代か

2012年2月号

バリー・エイケングリーン
カリフォルニア大学経済学教授

米欧経済がともに深刻な危機に直面しているために、ドルとユーロへの信任が揺らぎ始め、国際通貨システムそのものが動揺し始めている。1930年代の国際通貨システムの崩壊は、経済活動を抑え込み、政治的過激主義を台頭させて、世界を壊滅的な事態へと導いた。対象的に1970年代のブレトンウッズ体制の崩壊はグローバル経済にダメージを強いたが、致命傷を与えることはなかった。金、小国の通貨、人民元、SDRと、現状におけるドルやユーロの代替策はどれも問題があり、結局、現在の国際取引を支えられるのはドルとユーロだけだ。しかし、この二つの通貨の安定に対する懸念がさらに高まり、各国の中央銀行が保有するドルとユーロを手放していけばどうなるだろうか。1930年代に外貨準備を清算したときと同様に、資本規制策をとって資本の流れを制限するしかなくなる。1930年代、1970年代、われわれは今後どちらのシナリオを目にすることになるのか。グローバル経済の運命は生死の縁をさまよっている。

いまこそイランを軍事攻撃するタイミングだ
―― 封じ込めは最悪の事態を出現させる

2012年2月号

マシュー・クローニッグ
前米国防長官室ストラテジスト

アフガンとイラクでの戦争がやっと幕引きへと向かい始め、米財政が苦しい状況に追い込まれるなか、アメリカ人はさらなる紛争など望んではない。しかし、イランの核開発が成功した場合に何が起きるかを考えれば、状況を傍観することは許されない。イランの核施設に対する慎重に管理された空爆作戦をいま実施した方が、核武装したイランを数十年にわたって封じ込めるよりも、はるかにリスクは小さくて済む。実際、現状を放置して核武装を許し、核を持つイランを封じ込めていくのは最悪の選択肢だ。イランが核開発に向けた進展を遂げている以上、「通常兵器による攻撃か、将来における核戦争の可能性か」のいずれかを選ばざるを得ない状況にある。ワシントンは、イランの核施設に対する空爆を実施し、イランの報復攻撃を受け止めた後、危機を安定化へと向かわせる戦略をとるべきだ。現在、危機に正面から対処すれば、将来においてはるかに危険な事態に直面するのを回避できるだろう。

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