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論文データベース(最新論文順)

CFRインタビュー
メドベージェフのロシアからプーチンのロシアへ

2011年9月号

スティーブン・セスタノビッチ 外交問題評議会ロシア・ユーラシア担当シニア・フェロー

2000年から2008年まで大統領を務めたプーチンのロシアでの人気は依然として高い。だが、多くの人は、彼が大統領に返り咲けば「時代からの逆行になる」と考えている。メドベージェフが近代国家の建設にコミットしているのに対して、プーチンは「過去の人」とみなされており、今後、メドベージェフは自らの改革アジェンダをめぐって、どのように首相としての権限を利用していくか先の読めない状況に直面する。さらに、メドベージェフと対立して財務相を辞任したアレクセイ・クドリンが野党勢力の指導者に転じれば、非常に重要な政治的台風の目になる可能性がある。この場合、プーチンがこれまでうまく束ねてきたエリート層に亀裂が生じることを意味するからだ。プーチンもメドベージェフも、いったいどの程度の政治家が今後クドリンに続くかを考えざるをえなくなるだろう。

CFRインタビュー
市場ボラティリティの政治ファクター

2011年9月号

マイケル・スペンス 米外交問題評議会特別客員フェローノーベル経済学賞受賞エコノミスト

市場がボラタイルなのは、経済の成長率が鈍化すると考えられ、しかも、政治的不作為と膠着状態が存在するためだ。政策面での不確実性もリスク認識とボラティリティを高めている。欧米経済が停滞している程度なら、新興国は高い成長率を維持できるだろう。だが、欧米経済が深刻な不況に陥った場合には、新興国もその余波を受ける。非常に大きな輸出需要が消失することになるからだ。・・・短期的に、準備通貨してのドルの代替策が浮上してくることはない。ユーロが安定すれば、第2の準備通貨になれる可能性はある。人民元も貿易決済通貨としての役割を拡大していくだろうが、少なくとも今後10年は準備通貨としての役割を果たすのは難しいだろう。・・・

CFRミーティング
アジアの米軍基地再編と沖縄
―― 普天間移設問題に関する米議会の立場

2011年8月号

ジム・ウェッブ 米上院外交委員会東アジア・太平洋小委員会 委員長、元米海軍省長官

何年もかけてまとめた外交合意を変更するには、具体的な代替策が必要になる。そこで、私とレビン上院議員が(普天間の移設問題に)介入した。われわれはグアム、沖縄、東京で、米軍及び相手国・現地の関係者から意見を聞いた。その後、まとめた提言では、普天間の海兵航空隊機能を嘉手納空軍基地に移して統合すれば、手詰まり状況を打開し、よりタイムリーにコスト面でもより効率的に問題に対応できると指摘した。われわれは嘉手納空軍基地の規模の削減も提言したが、この点は日本のメディアではほとんど報道されなかったようだ。嘉手納基地から削減される戦力を、日本における他の空軍基地、現状では機能の半分も使用されていないグアムのアンダーソン空軍基地に移すこともできる。(ジム・ウェッブ)

民間経済という経済を動かす主要なエンジンに力がなく、財政政策と金融政策という補助エンジンも、それぞれ、財政赤字とQE2の不調によって手足を縛られている。しかも、増税と財政赤字を減らすための歳出削減の時期が迫りつつある。財政赤字の肥大化が予測されている以上、緊縮財政路線をとるのが思慮分別のある路線のように思える。しかしそれは、需要不足に苦しんでいる現在の米経済が必要としていることではない。これに加えて、内に議会の合意を必要とする債務上限の引き上げ問題、外にユーロ圏の危機という問題を抱え、いまや二つのハードランディングシナリオが浮上しつつある。・・・

ドローン兵器と実体なき戦争

2011年8月号

ピーター・ベルゲン
ニューアメリカン・ファウンデーション ディレクター
キャサリン・タイデマン
ニューアメリカン・ファウンデーション リサーチフェロー

ワシントンの政治・軍事指導者たちは、ドローン(無人飛行機による)攻撃プログラムは対ゲリラ戦略において大きな成功を収めていると考えており、攻撃の巻き添えになって死亡した民間人も2008年5月からの2年間で30人程度だと主張している。だが、パキスタン人の多くは、ドローン攻撃によって多くの民間人が犠牲になっていると考えている。パキスタンの部族地域で暮らす人々の75%が「アメリカの軍事ターゲットに対する自爆テロは正当化される」と考えているのも、こうした現地での認識と無関係ではないだろう。一方、パキスタン政府は、ドローン攻撃によって自分たちの敵であるパキスタン・タリバーンの指導者も殺害されているために、アメリカによる攻撃を黙認している。この複雑な現状の透明性を高める必要がある。部族地域の武装勢力に対するドローン攻撃がアメリカとパキスタン双方の利益であることをアピールし、ドローン攻撃をめぐるパキスタン軍の役割を増大させるべきだ。パキスタンの空で戦争を始めたのはワシントンだったかもしれないが、イスラマバードの協力なしでは、この作戦を完了することはできないのだから。

Review Essay
都市設計を考える
―― 都市と郊外の対立と融和

2011年8月号

サンディー・ホーニック ニューヨーク市都市計画局戦略コンサルタント

歴史的に都市開発にはさまざまな思想があった。19世紀には都市の美化運動と田園都市運動が大きな流れを作り出した。建物のデザイン、彫刻に芸術的要素を取り入れることを求めた都市の美化運動は公共建築部門で大きな流れを作り出したが、住民が都市にいながら田園生活を送れるようにすることを目的とする田園都市運動は定着せず、結局、郊外という概念が形成された。ここに都市と郊外という複雑な関係が生じた。ときに対立しつつも、いまや、ほとんどの人々が郊外の好きな場所に住みながら、仕事をし、食事をし、買い物をする場所についてこれまでよりも豊かな選択肢を持てるようになり、都市の中枢と郊外は相互補完的な存在になりつつある。だが、ここにいたるまでには伝統的な都市を再開発する必要があると考えたフランク・ロイド・ライトを始めとする偉大な都市開発の理論家、また、都市は完璧ではないからこそ面白いと考える専門家など、都市計画はさまざまな思想的変遷を経験している。

CFRインタビュー
米格付け引き下げは何を引き起こすか
―― さらなる新興国の台頭か、米経済の再生か

2011年8月号

ケント・ヒューズ ウッドロー・ウィルソン・センター プログラムディレクター

一定の対策は採られたが、ヨーロッパの主要銀行が問題に関与しない限り、ギリシャのソブリン債務の解決はあり得ないと多くの専門家はみている。中国はインフレ問題を抱え、対応に追われている。一部地域では住宅バブルが生じ、生活コストが上昇している。ブラジル経済は中国と比べれば安定しているが、同様にインフレリスクを抱えている。アメリカ経済は、赤字削減をどう進めていくかについて大きな不確実性が残されているとはいえ、依然としてその金融市場は奥深く、力強いと考えられている。格付けが引き下げられても、米国債の魅力が大きく色あせることはない。最終的には、議会もアメリカが直面している長期的な財政・債務問題に対処していくだろう。むしろ、格付け引き下げによって、財政赤字・債務問題への政治的対応が刺激される可能性が高い。すでに格付け会社は米議会の関係者に対して、なぜ格付けを引き下げる可能性があるかについて話をしている。当面は、ドルが最善の投資対象とみなされるはずだ。(K・ヒューズ)

中国の意図は何か

2011年8月号

アンドリュー・ネーサン コロンビア大学政治学教授

「悲劇的な紛争を回避するには、アメリカは中国の台頭を悠然と受け入れるべきだ」。こう主張するヘンリー・キッシンジャーは、中国外交を高く評価している。アメリカが外交を取引とみなしているのに対して、中国は外交を心理学でとらえ、外国からのゲストを恐れさせ、不快にするか、あるいは、中国側の富、寛大さ、冷静さを見せつけることで、相手がすり寄ってくるように仕向けるとキッシンジャーは指摘する。一方、フリードバーグは、中国の意図は、「東アジアにおける支配的なパワーとしてのアメリカに取って代わり、おそらくは、アメリカを東アジア地域から締め出す」ことにあるとみなし、アメリカに好ましいパワーバランスを維持することで、中国の台頭に対する一定の境界線を引くべきだと主張している。二人の立場は、共和党主流派内における対中戦略の亀裂を見事に浮き彫りにしている。だが、いずれにしても、中国にはアメリカをアジアから締め出せるような力はない。そうなるとすれば、アメリカがアジアからの全面撤退を決意した場合だけだろう。・・・

「今回の危機はヨーロッパの人々に自分がヨーロッパ人となることを夢見ているのか、それとも、結局は、ドイツ人、フランス人、イタリア人に戻るのかという命題を突きつけている」。ソブリン危機が、ヨーロッパで第3の経済規模をもつイタリアにも飛び火しかねない緊迫した情勢下で、ユーロ圏首脳は対ギリシャ第2次支援策で合意し、状況は一時的に落ち着いたかにみえる。だが、問題は残されている。7月中旬にも、ベルルスコーニ首相は緊縮財政プログラムを成立させることで、市場の動揺を抑えて、かろうじて危機発生を食い止めたばかりだった。イタリアがソブリン危機に陥らずにすんだのは、ポルトガルやスペインとは違って大きな対外債務を抱えていないからだと指摘するジョン・キャボット大学のフランコ・パボンチェッロは「国債の多くはイタリア人が保有しており、今後もイタリア人は国債を買い続けるだろう」とみる。だが、イタリアの政治的な不確実性が「市場のコンフィデンスを損なっている」と同氏は語る。「危機にどう対応すべきかをめぐってイタリアの政治家が困惑していることを、市場は懸念している」と語った同氏は、結局、ユーロゾーンは、ユーロ共同債の発行を含む、共通の解決策を模索するしかないとコメントした。聞き手は、クリストファー・アレッシ(cfr.orgのアソシエート・スタッフライター)

苦しみのなかにある人を助けるのは チャリティか、責務か
―― 人道主義における義務と思いやりについて

2011年8月号

マイケル・ウォルツァー プリンストン高等研究所 社会科学名誉教授

われわれは、人道援助をフィランソロピー(利他的な奉仕活動)の一形態だと考えている。ハイチでの地震、アジアでのツナミなどの被災者を支援するのは、人々を苦しみや生命の危機から救い出そうとする慈善行為で、これは明らかに良いことだ。しかし、人道主義は、「思いやり」というだけでなく、むしろわれわれの「責務」、「義務」なのかもしれない。そうしないのが間違っているからだ。思いやりと責務は二つで一つのセットであり、困難な状況にある人々にわれわれが与えるべき贈り物なのかもしれない。人々は、数多くの選択肢のなかからどのようにチャリティを行うかを決めるが、そのためにどの程度の時間をさき、努力し、お金を寄付できるかが選択の基準とされる。だが、正義の観点から何が必要かを理解せずに、適切な判断を下すことはできない。人道支援のチャリティと責務をセットにして考え、どのような正義が必要なのかを検討しなければならない。正義へのコミットメントは個人として市民として、われわれが果たすべき義務である。

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