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論文データベース(最新論文順)

なぜユーロプロジェクトは失敗したか
―― ギリシャのユーロ離脱は何を引き起こすか

2012年1月号

マーティン・フェルドシュタイン ハーバード大学教授

共通通貨を導入さえしなければ生じたはずのない緊張と対立をユーロはヨーロッパにもたらした。これは、経済的に多様な国家集団に単一通貨を強要したことの必然的な結末だ。調和に満ちたヨーロッパを形作るという政治目標にもユーロは貢献できず、そこには政治的対立と反発が渦巻いている。もはやギリシャにはユーロ離脱という選択しか残されていない。ユーロを離脱し、新ドラクマを導入すれば、通貨の切り下げができるようになるし、ディフォルトに陥っても、ユーロ圏にとどまった場合よりも痛みは軽くて済む。問題は、ギリシャのユーロからの離脱がどのような連鎖を引き起こすかだ。ギリシャが離脱し、通貨の切り下げに踏み切れば、グローバル資本市場は、他のユーロ加盟国はどう反応するだろうか。・・・

台頭するアフリカ
―― その経済ブームの秘密とは

2012年1月号

エドワード・ミゲル
カリフォルニア大学バークレー校
経済学教授

アフリカが、中国よりも多くの繊維工場を、インドよりも多くのコールセンターを持つようになるのは、おそらく時間の問題だ。人々の教育への間口が広がったこと、民主政治の台頭、技術拡散、経済政策決定の効率化などを通じて、「新しいアフリカ」が誕生している。そこにあるのは、メディアが描く「暗黒の大陸」というイメージとは別次元の明るい世界だ。大陸全体でみても、一人あたり経済成長率は1990年末以降、プラスに転じている。状況が大きく改善しているのは経済だけではない。アフリカ諸国の多くは、1960年代に植民地からの独立を果たして以降初めて、複数政党制による選挙を経験し、いまや、市民的自由、報道の自由も大きく進展している。いったいアフリカに何が起きたのか。

漂流する先進民主国家
―― なぜ日米欧は危機と問題に対応できなくなったか

2012年1月号

チャールズ・クプチャン
米外交問題評議会シニア・フェロー

グローバル化が「有権者が政府に対して望むもの」と「政府が提供できるもの」の間のギャップをますます広げ、政府は人々の要望に応えられなくなっている。これこそ、アメリカ、日本、ヨーロッパという先進民主世界が現在直面しているもっとも深刻な問題だ。先進民主諸国が統治危機に直面する一方で、台頭する「その他」の諸国が新たな政治力を発揮しているのは偶然ではない。グローバル化した世界への統合を進めていくにつれて、先進民主国家が問題への対応・管理手段の喪失という事態に直面しているのに対して、中国のような非自由主義国家の政府は、一元化された中央の政策決定、メディアに対する検閲、国家管理型の経済を通じて、社会の掌握度を高めている。必要とされているのは、民主主義、資本主義、グローバル化の相互作用が作り出している大きな緊張をいかに解決するかという設問に対する21世紀型の力強い答えを示すことだ。政府の行動を、グローバル市場の現実、恩恵をより公平に分配することを求める大衆社会の要望に適合させるとともに、痛みと犠牲を分かち合えるものへと変化させていく必要がある。

「欧米世界」をユーラシア、日韓へ拡大し、
日中和解を模索せよ

2012年1月号

ズビグニュー・ブレジンスキー
カーター政権国家安全保障問題担当
大統領補佐官

北米、ヨーロッパだけでなく、(最終的にはロシアとトルコを含む)ユーラシア、さらには、日本と韓国を内包する「拡大欧米」世界を形作れば、他の文化圏にとっての欧米世界の中核原則の魅力は高まり、ゆっくりとではあっても、普遍的な政治文化の出現を促せるようになる。一方、中国を中心とする東洋にもエンゲージしていく必要がある。だが、アジアの安定を非アジアパワーが強要するのは不可能だし、ましてやアメリカが直接的に軍事力を用いて安定を維持していくことはできない。アメリカがアジアの安定を物理的に支えようと試みれば、下手をすると、20世紀のヨーロッパにおける悲劇をアジアで再現することになる。一方アメリカが、日中間の和解、中印間のライバル関係の緊張緩和を仲介する役目を果たせば、安定化の見込みは大きく開けてくる。第二次世界大戦後のヨーロッパの政治的安定が、独仏の和解なしでは成立しなかったのと同様に、慎重に日中関係の深化を育んでいくことが、極東における安定強化の起点になる。・・・・

CFRブリーフィング
2012年の世界経済を左右する五つのトレンズ
―― 鍵を握るのは米欧の政治

2012年1月号

マイケル・スペンス CFR特別客員フェロー
ユコン・ファン カーネギー国際平和財団アジアプログラム・シニアアソシエーツ
トーマス・フィリポン ニューヨーク大学スターンビジネススクール准教授
アシュレー・レスター モルガン・スタンレーエグゼクティブ・ディレクター
ヤコブ・キルケガード ピーターソン国際経済研究所リサーチフェロー
ゲリー・バートレス ブルッキングス研究所シニアフェロー

ユーロゾーンの安定がさらに損なわれていけば、ユーロ圏は分裂し、その経済はマイナス成長に陥り、それが米経済の不安定な回復をさらに揺るがす。新興市場経済も、(米欧を中心とする)世界経済の需要の低下という逆風にさらされ、成長率は減速する。(M・スペンス)

将来の歴史家は2012年を中国経済の成長率が鈍化し始めた年として回顧することになるだろう。(ユコン・ファン)

いずれ、イタリアなどユーロ周辺国の経済のファンダメンタルズが注目されるようになる。そうなれば、投資家は、安全性は高いが、インフレを考慮するとマイナスになりかねないドイツ国債を見捨てて、高金利のイタリア国債、しかもかつてほどはリスクの高くないイタリア国債に関心を示し出すようになるだろう。(Y・キルケガード)

ワシントンは、政治的膠着状態によって、予算が認められず、重要な政府機能を果たせなくなってしまう恐れがある。アメリカは政策的不確実性の時代に足を踏み入れつつあり、どちらかの政党が明確な政治的勝利と優位を手にしない限り、この事態は今後も続くだろう。(G・バートレス)

イスラム主義者とエジプトの未来
――ムスリム同胞団の台頭を前に過激化する世俗派集団

2012年1月号

エド・フサイン/米外交問題評議会 中東担当シニア・フェロー

エジプトの暫定統治にあたっている軍最高評議会(SCAF)は、現在の暫定内閣が2012年7月の大統領選挙までその責務を全うしていくと表明している。だが1月に内閣を作るための議会選挙の結果がでるにもかかわらず、暫定内閣が7月まで政治を運営するというのではつじつまが合わない。・・・もちろん、選挙で大きな勝利を収めつつあるムスリム同胞団と軍の関係が今後どのように変化していくかは重要なポイントだ。だが、イスラム政権の誕生を望まない世俗派や旧体制のメンバー、タハリール広場に集結している世俗的過激派の動向にも注意が必要だ。これらの勢力は、イスラム主義者に権力を委ねるくらいなら、旧体制を復活させるか、軍事支配が続くほうがましだと考え、選挙結果をキャンセルするか、延期すべきだと主張している。仮にこれらの勢力が結集して選挙結果が反故にされるような事態になれば、エジプトは再び極端な混乱に陥っていくことになる。

Foreign Affairs Update
ドイツ社会とイスラム系移民
―― 社会的統合に苦悶する移民たち

2012年1月号

ジェームズ・アンジェロス 前アレクサンダー・フォン・フンボルト財団フェロー

1961年10月30日、ドイツはその後数十年にわたって社会を否応なく変えてしまうゲストワーカーの受け入れを認める協定をトルコと交わした。協定締結後、ヨーロッパの炭鉱や鉄工場で働こうと、非常に多くのトルコ人ゲストワーカーが堰を切ったようにドイツへ殺到した。戦後におけるドイツ経済の繁栄を安価な労働力で支えたのは、こうしたトルコ人たちだった。今日、ドイツには300万人のトルコ系移民が暮らしており、いまや彼らはドイツ最大の民族マイノリティだ。両国の協定50周年を迎えた2011年にはさまざまな記念式典が催され、労働移民とその遺産についての議論が展開された。「新生ドイツの歴史は50年前に始まった」と切り出したズードドイチェ・ツァイトゥング紙の記事は、以来、ドイツは好むと好まざるとに関わらず「多文化主義」になったと指摘した。しかし、トルコのゲストワーカーたちを受け入れてから半世紀も経っているのに、ドイツ人は移民が果たしてきた役割について、いまも分裂症気味とまでは言わないが、どこか割り切れない思いを抱いているようだ。

「競争的権威主義」国家は帝政ドイツと同じ道を歩むのか
―― ビスマルクの遺産と教訓

2012年1月号

マイケル・バーンハード フロリダ大学政治学教授

異なる社会集団が権力を競い合うことは許容されるが、公正な選挙という概念は踏みにじられ、支配エリートによって野党勢力は抑え込まれ、リベラルな規範などほとんど気にとめられることはない。ロシアからペルー、カンボジアからカメルーンにいたるまで、帝政ドイツにルーツを持つこの「競争的権威主義」体制をとる国はいまも世界のあらゆる地域に存在する。かつてのドイツ同様に、現在の競争的権威主義国家も世界を揺るがす衝撃を作り出すことになるのか、それとも、民主化への道をたどっていくのか。これを理解するには、ビスマルクが育んだ政治文化が、なぜ彼の没後数十年でドイツを壊滅的なコースへと向かわせたのかを考える必要がある。結局、「支配エリートたちが完全に自由な政治制度がもたらす政治的不透明さに対処していく気概を持つかどうか」が、競争主義的権威主義体制を民主化へと向かわせるか、それとも独裁者の聖域を作り出すことになるのかを分けるようだ。

CFRインタビュー
イランはすでに核弾頭を搭載できるミサイルを保有している

2012年1月号

マイケル・エルマン 英国際戦略研究所シニアフェロー

イランは、アメリカ(やイスラエル)と湾岸諸国に対して、自国が攻撃されれば相手に大きなダメージを強いる能力を持っていることをアピールしたいと考えている。これが、ホルムズ海峡封鎖の警告を含む、最近におけるイランの一連の行動と過激な発言の真意だと思う。2003年以降もイランが核兵器の開発を試みているか?その動かぬ証拠を公的文書に見いだすことはできないが、イランが湾岸地域の都市やイスラエルを脅かせる弾道ミサイル領域でかなりの進展を遂げているのは間違いない。そうしたミサイルには、これまでイランが独自に開発に取り組んできた2段式固体燃料型のセッジール2ミサイルも含まれ、このミサイルはいまや配備できる状態にある。セッジール・ミサイルを設計した当時からイランが核弾頭の搭載を想定していたかどうかはわからない。だが、状況からみれば、セッジール・ミサイルの開発は核兵器の獲得を前提に進められたと考えてもおかしくはない。

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