「アラブの春」とその後
2012年3月号
表面的な安定の下に垣間見えるアラブ世界の政治的現実は悲惨で不毛だった。忌まわしい支配者、ふさぎ込んだ大衆、そして、いかなる正統性もない秩序に対する不満から身を投げ打つテロリストたち。そこに同意という言葉は存在せず、支配者と支配される側をつなぐ唯一の感情は疑いと恐れだった。だが、モハメド・ブアジジが、その死をもって、新しい仲間を団結させた。中東のあらゆる地域で非常に多くの若者が彼の叫びに心を打たれ、行動を起こした。だが、ローマの歴史家タキトゥスは、「悪い皇帝を倒した後の最善の日は、彼を倒したその日だった」と書き残している。たしかにアラブ世界の第三の政治的覚醒は歴史的な流れをもっている。だが、そこには、危険も約束も潜んでいる。自由を手にできる可能性もあるが、監獄に舞い戻る可能性もある。