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論文データベース(最新論文順)

CFR Meeting
高齢社会を前向きにとらえよ
―― 危機を機会に変えるには

2012年4月号

ジョセフ・F・カフリン/MIT エイジラボ所長
ケリー・ミッチェル/エイゴンUSA 上席副会長
マイケル・W・ホーディン/米外交問題評議会グローバルヘルス担当シニア・フェロー

「高齢化をとらえる上で重要なポイントは、長生きすることよりも、より幸せに生きるという視点を持つことだ。・・・隔離された高齢者の世界を形作るのは魅力的な選択ではない。・・・生涯で60-70年におよぶかもしれない勤労期間において3つか4つの異なる職種に就けるような制度が必要だろう」。(J・カフリン)

「すでにアメリカでは老後は(公的支援だけではなく)自助で支えるべきで、引退後に備えておくべきだとみなす文化へと向かっている。・・・現在の仕事に、引退年齢を超えてさらに10-15年働けるかどうかは、どのような企業や産業で働いているか、その企業や産業が、(引退年齢に達した)従業員がそれまでの経験から身につけている知的資本を評価するかどうかに左右される」。(K・ミッチェル)

「90歳の老人の面倒をどのようにみるかという視点も大切だが、経済成長を実現し、財政の持続性の問題を解決することにもっと焦点を合わせる必要がある。・・・20世紀に入ってから現在までに平均寿命は約30年延びている。われわれが90歳まで生きるのなら、引退年齢やそれに伴う政策も変化させなければならない」。(M・ホーディン)

貧困から経済開発への困難な道のり
――なぜ人は間違った選択をするのか

2012年3月号

ティモシー・ベスレー ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス 経済学教授

途上国に広がるスラムをみて、胸が痛まない人はいないだろう。飛行機を使えば数時間で往来できる二つの地点で、極端な貧富の差が存在するという現実が、まるで合理性、効率性、公平性を模索する経済学の無力さを象徴するかのように存在する。先進国は莫大な援助を提供することで、こうした脆弱な国家を助けようと試みてきた。だが結果的には経済開発の推進などほとんど気に懸けない政府を強化しただけだった。いまや、現場での経済的必要性を分析することで、貧困層の削減を試みる現場主義のアプローチがとられるようになった。これには応分のメリットがあるし、すでに成果も出ている。だが、それでもエコノミストは、どうすれば政府が経済開発を育んでいけるか、その政治要因を理解しようと試みるべきだ。中国がこれまでのところは実現しているように、貧困層を削減するための重要なポイントは、政治構造と経済構造をいかに連動させるかにあるからだ。

対中関係をめぐる 台湾コンセンサスの形成を

2012年3月号

ダニエル・リンチ 南カリフォルニア大学准教授(国際関係論)

1月の総統選挙で、台湾の有権者たちが民進党政権では両岸関係が悪化し、台湾経済が深刻なダメージを受ける危険があると心配したのはおそらく間違いない。経済格差、雇用減少、住宅コストの高騰を含む社会経済問題が選挙の争点だったが、有権者は、これらの争点と中台関係が不可分の関係にあることを理解していた。台湾企業の中国進出によって、いまや、台湾の人口2300万のうち100万人以上が中国で生活している。だが、中国との友好的関係を心がける馬英九が総統に再選されたとはいえ、北京が台湾の事実上の独立状態を永遠に許容することはあり得ないだろう。今後、北京での指導層の交代を終えれば、中国は台湾に対する要求を強め、不安定な新時代の幕開けを迎えることになるかもしれない。実際、北京は台湾に対してアメリカからの武器購入を停止し、ワシントンとの軍事的つながりを弱めて「92年合意」を法制化することを要求してくるかもしれない。今後、馬英九は台湾の国内的分裂を修復し、中国との関係をめぐる「台湾コンセンサス」を形作る必要に迫られるだろう。

CFR Expert Brief
アウンサンスーチーと軍の現実主義が支える
ミャンマーの変化

2012年3月号

ジョシュア・クランジック /CFR東南アジア担当フェロー

ミャンマーの軍事政権はなぜ改革を認めたのか。その理由は今もはっきりしない。将軍たちは、自分たちが信用するテインセインに段階的な改革を進めさせれば、報復を伴う民衆蜂起を回避できると考えたのかもしれない。あるいは、中国との関係を強化したことが、逆に中国に依存することへの警戒感を高め、欧米へのアクセスを求めてミャンマーを変革路線へと向かわせた可能性もある。政府はいまも問題を抱えているが、アウンサンスーチーは、今回が国のために貢献できる最後のチャンスであることを理解しているためか、政府に積極的に協力している。いずれにしてもアウンサンスーチーを変革プロセスの中心の据えることが不可欠だ。困難な現状を乗り切るのに必要な道義的正統性をもっているのは彼女だけだ。一方、現状で、過去の犯罪を暴いて高齢の将軍たちを政治の道具にすれば、ミャンマーのチャンスは潰され、改革の流れは潰えることになるだろう。

The Clash of Ideas
アジアのナショナリズムと革命思想(1950年)

2012年3月号

ジョン・K・フェアバンク ハーバード大学教授(中国史)

1930年代初頭、毛が引き継いだ共産党は衰退途上にあった。事実、1937年に日本が中国を侵略するまで、共産党は中国政治ではまったく目立たない存在だった。しかしその後共産党は、中国北方における愛国主義運動の指導的役割を担うようになった。外国の専門家が彼らを愛国主義者と呼んだのは間違いではなかった。外国の侵略者が家屋に火を放ち、虐殺行為を行っているさなかに、農民を組織するのは簡単ではなかったが、日本軍の行動が、結果的には中国北部の農民を中国共産党の懐へと送り込んだ。共産党側は準備万端調えて、農民が自分たちのところへ転がり込んでくるのを待っていればよかった。重要なポイントは、あえて地主階級への反対を前面に出すより、むしろ抗日戦への愛国主義を訴えるほうが、国内の青年知識層が呼びかけに応じる可能性が高いことを共産主義勢力が理解していたことだ。

日本はこれまで最先端の原子力技術の開発を試み、この領域のリーダーになることを目指してきたが、フクシマを経たいまや、原発施設の再稼働に向けて社会の支持を得られるかどうか、先の見えない状況に追い込まれている。・・・現在日本は、(原発停止による電力生産の低下を火力発電で埋め合わせようと)より多くの液化天然ガス(LNG)を輸入しているが、LNG価格はかつての3倍のレベルへと上昇している。しかも、(日本の現実を考えると)原子力による電力生産の多くを再生可能エネルギーに置き換えていけるとも思えない。原子力による電力生産の多くを再生可能エネルギーに置き換えていこうにも、日本は風力、ソーラー、地熱など再生可能エネルギーの促進を阻む構造的な障害を持っているからだ。電力会社も関係省庁も大規模な電力生産施設を好む文化的体質を持っており、風力やソーラーなどの基本的に「分散型」の技術導入には難色を示す傾向がある。この文化を政治的な意思とリーダーシップで変化させていくには、かなりの時間がかかるかだろう。

アジアにおけるアメリカと中国
―― 相互イメージと米中関係の未来

2012年3月号

ヘンリー・キッシンジャー キッシンジャーアソシエーツ会長

中国のアジアでの覇権確立に対するアメリカの懸念、そして、包囲網を築かれてしまうのではないかという中国の警戒感をともに緩和させることはできるだろうか。必要なのは冷静な相互理解だ。中国がその周辺地域において大きな影響力をもつようになるのは避けられないが、その影響力の限界は中国がどのような地域政策をとるかで左右される。アジア諸国はアメリカが地域的な役割を果たすことを望んでいるが、それは(中国に対する)均衡を保つためであり、十字軍としての役割や中国との対決は望んでいないことも理解しなければならない。強固な中国が経済、文化、政治、軍事領域で大きな影響力をもつのは、北京にとっては、世界秩序に対する不自然な挑戦ではなく、正常への復帰なのだ。むしろアメリカは、現状の問題を想像上の敵のせいにしてはならない。米中はともに相手の行動を、国際関係における日常として受け入れるだけの懐の深さをもつ必要がある。

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