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論文データベース(最新論文順)

アジアにおけるアメリカと中国
―― 相互イメージと米中関係の未来

2012年3月号

ヘンリー・キッシンジャー キッシンジャーアソシエーツ会長

中国のアジアでの覇権確立に対するアメリカの懸念、そして、包囲網を築かれてしまうのではないかという中国の警戒感をともに緩和させることはできるだろうか。必要なのは冷静な相互理解だ。中国がその周辺地域において大きな影響力をもつようになるのは避けられないが、その影響力の限界は中国がどのような地域政策をとるかで左右される。アジア諸国はアメリカが地域的な役割を果たすことを望んでいるが、それは(中国に対する)均衡を保つためであり、十字軍としての役割や中国との対決は望んでいないことも理解しなければならない。強固な中国が経済、文化、政治、軍事領域で大きな影響力をもつのは、北京にとっては、世界秩序に対する不自然な挑戦ではなく、正常への復帰なのだ。むしろアメリカは、現状の問題を想像上の敵のせいにしてはならない。米中はともに相手の行動を、国際関係における日常として受け入れるだけの懐の深さをもつ必要がある。

「アラブの春」とその後

2012年3月号

フォアド・アジャミー
スタンフォード大学フーバー研究所シニアフェロー

表面的な安定の下に垣間見えるアラブ世界の政治的現実は悲惨で不毛だった。忌まわしい支配者、ふさぎ込んだ大衆、そして、いかなる正統性もない秩序に対する不満から身を投げ打つテロリストたち。そこに同意という言葉は存在せず、支配者と支配される側をつなぐ唯一の感情は疑いと恐れだった。だが、モハメド・ブアジジが、その死をもって、新しい仲間を団結させた。中東のあらゆる地域で非常に多くの若者が彼の叫びに心を打たれ、行動を起こした。だが、ローマの歴史家タキトゥスは、「悪い皇帝を倒した後の最善の日は、彼を倒したその日だった」と書き残している。たしかにアラブ世界の第三の政治的覚醒は歴史的な流れをもっている。だが、そこには、危険も約束も潜んでいる。自由を手にできる可能性もあるが、監獄に舞い戻る可能性もある。

CFR Interview
シリア内戦はもう避けられない
――シリアの混迷とアラブ諸国の思惑

2012年3月号

アンドリュー・タブラー 近東政策ワシントン研究所次世代フェロー

地域諸国が(宗派その他の思惑から)それぞれシリアの国内勢力に関与し、現地で代理戦争が展開されかねない事態へと陥りつつある。いまや事態はこの方向へと急速に向かいつつある。シリア社会は分裂している。自由シリア軍を中心に反政府運動が拡大する一方で、政権が倒れた後に何が起きるかわからないために、一部には、現状に不満を感じつつも、少なくとも表向きはアサド政権の立場を支持する人々もいる。そして(スンニ派)アラブ諸国は、民衆を殺害する手法をアサド政権が際限なく続け、流血の事態を積み重ねていることに対する怒りだけでなく、イランを中核とするシーア派三日月地帯、イラン枢軸を切り崩すには、(アラウィ派ながらも、イランとの緊密な同盟関係にある)アサド政権を倒すのが最善であると判断し、シリアの政権が倒れることを願っている。

石油も石炭も原子力も必要としない世界
―― 超素材と「インテグレーティブ・デザイン」の力

2012年3月号

アモリー・B・ロビンス ロッキーマウンテン研究所議長

2050年までには、石油も石炭も原子力も必要とせず、天然ガスの消費量も現在の3分の2程度で済む時代が実現する。・・・自動車、建物、そして電力生産の効率をいかに高めていくかがこの変化の鍵を握る。このエネルギーシフトに必要なテクノロジーはすでに存在する。第1に自動車を、炭素繊維を用いたボディに、そのエンジンを電気稼動型に切り替え、カーシェアリング、ライドシェアリングなど車をもっと生産的に利用するようにする。第2に、ビルや工場の設計と素材を変えるだけで、エネルギーの使用効率を現在よりも数倍高めることができる。第3に、電力供給システムをより多様で分散した再生可能エネルギーを中心としたものへと近代化していけば、電力供給をよりクリーンかつ安全で信頼できるものにできる。この概念は現実離れしているように思えるかもしれない。だが、困難な問題に対処するには、(既成概念を捨てて)境界を広げて問題をとらえ直す必要がある。つまり、エネルギー消費の多い交通・運輸、ビル、産業、電力生産部門を、個別にとらえるのではなく、一つとみなすのだ。・・・

Foreign Affairs Update
シリアを擁護するロシアの立場
――宗派間抗争と中東の地政学

2012年3月号

ドミトリ・トレーニン カーネギー・モスクワセンター所長

ロシア政府の高官や政府に近い専門家の多くは、昨今における欧米の行動を非常にシニカルにみている。「ワシントンは、エジプトでの影響力を確保しようと古くからの同盟パートナーであるムバラクを見限り、石油契約を維持するためにリビアとの戦争に関与し、アメリカの第五艦隊の基地が存在するという理由でバーレーンへのサウジ介入に見て見ぬふりをした。そしていまや、イランからアラブ世界における唯一の同盟国をとりあげようと、シリアのアサド政権を倒そうとしている」。ロシアはこれらの戦争に直接的な利害は持っていない。だが少なくとも、危険で根拠を失いつつあるかにみえるアメリカの地域戦略の尻馬に乗りたいとは考えていない。・・・モスクワのシリアへの態度は、最近におけるリビアの運命、シリアの反体制派に対する不信、そして、アメリカの意図に対する懸念によって規定されている。

CFR Meeting
サウジはアラブの春とイラン問題をどうとらえているか

2012年3月号

グレゴリー・ゴース/ バーモント大学教授

国内の反体制派がイデオロギー、宗派、民族などの社会集団の垣根を越えて、体制を倒すという目的にむけて連帯を組織できたかどうか。これが、アラブの春によって中東で体制が倒された国とそうでない国を分けた重要なポイントだ。サウジはどの集団をどの皇太子が担当するかを決めることで、ビジネスコミュニティ、部族社会その他とのネットワークを巧みに築き、これらの集団を政治的に去勢してきた。これが、サウジが嵐を乗り切れた理由だろう。一方、中東での宗派対立が高まれば、アルカイダのような、スンニ派の過激勢力が勢いづくだけで、サウジのためにもならない。だが、すでに宗派対立の構図で中東政治が動きだし、アラブ対ペルシャの対立図式が描かれつつある。イランが明確に核兵器の開発に乗り出すのなら、サウジも核を獲得すべきだという立場がすでにリヤドでは主流になっている。・・・

The Clash of Ideas
ヒトラーのドイツ(1933年)

2012年3月号

ハミルトン・F・アームストロング フォーリン・アフェアーズ誌初代編集長

人々は忽然と姿を消した。この14年間、ワイマール共和国の政府要人、あるいはビジネスの指導者として世界が見聞きしてきた人々は忽然と表舞台から姿を消した。例外はあるが、この波は大きなうねりとともに社会を飲み込み、連日のように、一人ずつ、昔日の指導者や仲間たちがナチスという暗黒の海にさらわれていく。

あまりにワイマール共和国の面影がなくなってしまったために、ナチス党員には、ここにかつて共和国が存在したことさえ信じられないかもしれない。このうねりは、命令を下す叫び声や行進の足音で途切れた悪夢よりも、めまぐるしいペースで社会を飲み込んでいる。・・・

Foreign Affairs Update
フクシマ危機を前にホワイトハウスはどう動いたか
―米市民の保護か日米関係への配慮か

2012年3月号

ジェフリー・A・ベーダー 前米国家情報会議東アジア担当シニアディレクター

われわれはフクシマ第1原発で何が起きているかの情報収集に奔走した。「日本政府は分かっていることのすべてをわれわれに伝えるつもりはなく、状況を取り繕っているのではないか」と考える者もいた。だが、大統領の科学技術担当顧問を務めるジョン・ホルドレンは、「原子炉内の状態を把握するための装置がどれも機能していない以上、大枠の情報しか入手できないのは無理もない」と日本側の対応に一定の理解を示した。・・・だが、フクシマの事態が容易ならざるものであることは明らかだった。・・・われわれは、日本からの避難を求める米大使館や軍関係者のアメリカ人家族(配偶者や子供)の意向を尊重したかった。しかし、われわれは日本の社会をパニックに陥れることは望んでいなかったし・・・将来の日米関係にダメージが出ないようにする必要もあった。・・・

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