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論文データベース(最新論文順)

「競争的権威主義」国家は帝政ドイツと同じ道を歩むのか
―― ビスマルクの遺産と教訓

2012年1月号

マイケル・バーンハード フロリダ大学政治学教授

異なる社会集団が権力を競い合うことは許容されるが、公正な選挙という概念は踏みにじられ、支配エリートによって野党勢力は抑え込まれ、リベラルな規範などほとんど気にとめられることはない。ロシアからペルー、カンボジアからカメルーンにいたるまで、帝政ドイツにルーツを持つこの「競争的権威主義」体制をとる国はいまも世界のあらゆる地域に存在する。かつてのドイツ同様に、現在の競争的権威主義国家も世界を揺るがす衝撃を作り出すことになるのか、それとも、民主化への道をたどっていくのか。これを理解するには、ビスマルクが育んだ政治文化が、なぜ彼の没後数十年でドイツを壊滅的なコースへと向かわせたのかを考える必要がある。結局、「支配エリートたちが完全に自由な政治制度がもたらす政治的不透明さに対処していく気概を持つかどうか」が、競争主義的権威主義体制を民主化へと向かわせるか、それとも独裁者の聖域を作り出すことになるのかを分けるようだ。

CFRインタビュー
イランはすでに核弾頭を搭載できるミサイルを保有している

2012年1月号

マイケル・エルマン 英国際戦略研究所シニアフェロー

イランは、アメリカ(やイスラエル)と湾岸諸国に対して、自国が攻撃されれば相手に大きなダメージを強いる能力を持っていることをアピールしたいと考えている。これが、ホルムズ海峡封鎖の警告を含む、最近におけるイランの一連の行動と過激な発言の真意だと思う。2003年以降もイランが核兵器の開発を試みているか?その動かぬ証拠を公的文書に見いだすことはできないが、イランが湾岸地域の都市やイスラエルを脅かせる弾道ミサイル領域でかなりの進展を遂げているのは間違いない。そうしたミサイルには、これまでイランが独自に開発に取り組んできた2段式固体燃料型のセッジール2ミサイルも含まれ、このミサイルはいまや配備できる状態にある。セッジール・ミサイルを設計した当時からイランが核弾頭の搭載を想定していたかどうかはわからない。だが、状況からみれば、セッジール・ミサイルの開発は核兵器の獲得を前提に進められたと考えてもおかしくはない。

イランへの軍事攻撃か、 核武装と核戦争のリスクを受け入れるか

2011年12月号

エリック・S・エデルマン 元米国防次官
アンドリュー・F・クレピネビッチ 米戦略予算分析センター会長
エヴァン・ブラデン・モントゴメリー 米戦略予算分析センター リサーチフェ

核分裂の連鎖を引き起こす中性子発生装置など、核兵器生産に必要な、さまざまなパーツの生産をイランが試みていたことが今回のIAEAリポートで明らかになった。すでにテヘランはウラン濃縮を進め、兵器級ウランを生産できる低濃縮ウランの備蓄を増やしている。つまり、IAEAの分析が正しいとすれば、イランは数カ月で核兵器を生産できるようになる。仮にイランが核武装して中東が核時代に突入すれば、そこに出現する核秩序は非常に不安定なものになる。(イランが数発の核弾頭を獲得しても、イスラエルは100―200の核弾頭をすでに保有しており)こうした核戦力の規模の違いゆえに、何らかの危機が起きれば、双方は相手に先制攻撃をかける大きなインセンティブをもつようになるからだ。・・・アメリカは程なく、イランの核武装化を阻むために軍事力を行使すべきか、それとも、核武装したイランと地域的核戦争というリスクを受け入れるかという困難な選択に直面することになる。

ユーロゾーンの将来を左右する ヨーロッパの政治
――ECBは最後の貸し手になれるか

2011年12月号

トーマス・フィリポン  ニューヨーク大学ビジネススクール准教授
ベン・ステイル  米経済問題評議会国際経済ディレクター

自己資本比率を9%に引き上げるように求められた銀行は、結局、資本を増強するよりも、資産を減らしているようだ。これによって、イタリア国債が犠牲になっている。・・・・最終的には、欧州中央銀行(ECB)の資本が間違いなく再構築されると市場が考えるようにならない限り、ユーロ離れは加速し、ユーロは崩壊することになる。問題は、投資家がドイツ政府と有権者がECBを最終的に支えるとは考えていないことだ。(B・ステイル)

イタリアが債務を返済できるかどうかは、新政府が構造改革を実施できるかどうかがポイントになる。・・・短期的、つまり、今後2―3年については重要になるのは政治だ。経済的解決策そのものはきわめてシンプルだ。ECBが行動を起こせば、イタリアの債務危機は簡単に解決できる。だが、ECBが動けるかどうかを左右するのが、ドイツの政治とイタリアの政治だ。(T・フィリポン)

米軍事予算の削減と沖縄
――「海兵隊の機能は日本の政治を 不安定化させることでしかない」

2011年12月号

バーニー・フランク  米下院議員(民主党 マサチューセッツ州選出)

われわれは沖縄から海兵隊を撤退させることができる。沖縄の海兵隊の機能は、いまや日本の政治を不安定化させることでしかない。実際、保守政権に代わって日本で民主党政権が誕生して以降、(海兵隊のプレゼンスは)日本の政治を混乱させ続けている。・・・沖縄の海兵隊を配備する戦略目標は中国を封じ込めることだと私は聞かされてきた。だが、すこしやり過ぎではないか。中国が近海のシーレーンを封鎖して、経済的自殺をするとは思わない。

外国からの米前方展開軍の撤退を
―― 軍事的後退戦略で米経済の再生を

2011年12月号

ジョセフ・M・パレント/マイアミ大学政治学准教授
ポール・K・マクドナルド/ウェルズリー大学政治学准教授

超大国にとって最大の脅威は、帝国意識から過剰な関与をしてしまうことだ。アメリカも行き過ぎた消費と対外関与、過度な楽観主義という覇権国特有の悪いパターンに陥りつつある。幸い、アメリカの有権者は対外関与をより穏やかなレベルへと引き下げていくことを望んでいる。世界におけるアメリカの軍事プレゼンスを低下させ、米軍の規模と編成を見直し、その結果もたらされる「後退戦略の配当」を経済の回復にうまく生かすべきだ。アジアでも米軍のプレゼンスを削減する余地は十分にある。日本と韓国の領土保全を維持し、中国や北朝鮮の冒険主義を封じ込めるには、日韓にそれぞれ駐留する3万の兵力ではなく、強固な予備役部隊がバックアップする緊急展開戦力で十分だ。在日米軍、在韓米軍の規模を段階的に20%削減し、一方で、他の戦力をグアムやハワイに移転しても、現在と同じ戦略機能をより効率的に果たせる。後退戦略をとっても、国際秩序が不安定化するとは限らないし、むしろ、アメリカの改革と復活に向けた基盤を作り出せる。

CFR Interview
アメリカは変化するアジアの戦略環境にどう関わるか
――経済と安全保障のバランス

2011年12月号

エヴァン・フェイゲンバーム  米外交問題評議会アジア担当シニア・フェロー

アジア諸国の経済利益と安全保障利益が次第に衝突しつつある。安全保障領域ではアメリカが依然として重要な役割を果たしているが、経済領域ではいまや中国が地域的中枢を担い始めている。アジアの経済と安全保障の間に生じているこの不均衡が、これまでとは異なる戦略環境を作り出し、これがアメリカとアジア諸国の双方に大きな課題を作り出している。問題は、中国が愚かにもこれらの諸国を往々にして不安にさせる行動をとっていることだ。このために、アジア諸国は、経済的には中国に多くを依存しつつも、安全保障領域ではアメリカへの依存を高め、経済と安全保障のバランスをいかにとっていくかに苦慮している。一方、アメリカにとっての課題は、安全保障の後見役を果たしつつも、アジアにおける経済のゲームの中枢にいかにして身を置くかだ。交渉が続けられている環太平洋パートナーシップ(TPP)のような地域的貿易合意が重視されているのは、まさにこの理由からだ。・・・重要なポイントは、アジアの安全保障が安定していなければ、アメリカがそこから経済利益を引き出すこともできなくなり、そして、アメリカ抜きでは、アジアの安全保障が成立しないことだ。

CFR Interview
せめぎ合う米中とアジア諸国の立場

2011年12月号

サイモン・タイ シンガポール国際問題研究所(SIIA)理事長

いまやアジアの現実は大きく変化している。変貌を遂げたアジアは統合度を高め、中国の経済的役割が地域的に広く受け入れられている。だが、北朝鮮をあからさまに擁護する路線にはじまり、尖閣諸島、南シナ海の領有権問題にいたるまで、北京は外交的失策を重ね、ワシントンは「同盟国としてのアメリカの価値」を相手国に認識させるような戦略を表明することで、これに対処してきた。・・・ワシントンは、アジア太平洋関与戦略の中枢であるTPPのことを、アジアにおいて中国と影響力を競い合うための試金石とみなし、一方の北京はこれを「中国を除外してアメリカがアジア経済にエンゲージするための枠組み」と警戒している。アジア地域内でも中国が主導するFTA(自由貿易協定)に参加するか、それとも、TPPに参加してアメリカを重視するかという構図ができつつある。・・・

CFRミーティング
政府債務の増大とユーロ危機

2011年12月号

アラン・グリーンスパン
前連邦準備制度理事会議長

ベアー・スターンズが救済されて以降、金融セクター全体が政府によって保証されているとみなされるようになった。・・・いまや官民の債務を明確に区別するのが難しくなってしまっている。かつては純然たる政府債務だったものと民間の債務の境界が曖昧になってしまった。・・・・ユーロシステムが今後どうなるかについては、私も楽観してはいない。・・・問題はヨーロッパの安定成長協定(SGP)が事実上崩壊していることにある。財政赤字をGDPの3%以内に、政府債務残高をGDPの60%以内に抑えるというヨーロッパのルールが無視されている。これを最初に破ったのはフランスとドイツだが、ペナルティは発動されず、協定は静かに葬り去られた。・・・ユーロ圏北部がギリシャ、ポルトガル、スペインその他に資金を注ぎ込んでいることそのものが問題だ。その資金はどのように計上されるか。ユーロ圏の債務として計上される。・・北部の国でこれが政治問題化している。

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