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論文データベース(最新論文順)

資源と環境は本当に脅かされているのか
―― 環境・資源保護か、経済成長か

2012年7月号

ビョルン・ロンボルグ コペンハーゲン・ビジネススクール准教授

「人類のあくなき欲求と世界の限られた資源は衝突コースにあり、そう遠くない将来に人類社会は運命の時を迎える」。経済成長を模索するのを止める以外に破滅を回避する方法はない。1970年代初頭にこう警鐘をならした『成長の限界』は、世界的大ベストセラーとなり、その後長期にわたって、この報告で示された議論と未来シナリオに人々は呪縛された。その結果、「貴重な時間と努力が、価値あるものではなく、根拠が疑わしく、時に有害な目的のために投入されてきた」。周辺的な問題に過剰反応し、より大きな問題への慎重な対応を妨げてしまった。この報告が示した未来シナリオはどうみても間違っていた。それでもその思想が今も生き続けていることは、(貿易促進のための)ドーハラウンドよりも、(環境問題を重視する)京都議定書が重視されていることからも明らかだ。だが、結局のところ、人を死に追い込む最大の要因が何であるかを考えるべきだ。それは貧困であり、経済成長がそれを阻止する最大の防衛策だ。

シリア内戦と近隣諸国の立場
――バッシャール後のシリアは国の統合を維持できるか

2012年08月

マイケル・ヤング デイリースター紙 論説ページエディター

アサド体制の命運はすでに尽きている。いまや最大の疑問は、今後、どのような政府がシリアに登場するかだ。ポスト・アサドのシリアが統合を維持できなければ、イランが介入してくるのは避けられない。一方、イランとは違って、トルコもイラクも、シリアが解体していけば、自国社会、特にシリアとの国境を接する地域に大きな余波がおよぶことになると懸念している。トルコはアラウィ派の国家内国家が出現することを嫌がっている。イラクがもっとも警戒しているのは、シリアがイラク政府を攻撃するスンニ派過激勢力の拠点と化してしまうことだ。そして、イスラエルはシリアが保有する化学兵器のこと、特に、化学兵器をヒズボラが手に入れることを警戒している。・・・シリアのダイナミクスを規定しているのは、シリア人、トルコ、サウジ、カタール、そしておらくはイラクだ。アメリカの役割は周辺的なものでしかないし、ヨーロッパはアメリカの前に出て影響力を行使するつもりはない。

北朝鮮、中国、イランに対する毅然たる対応を
―― キューバミサイル危機の教訓

2012年8月号

グレアム・アリソン
ハーバード大学ケネディスクール教授

ケネディは、ソビエトがキューバに核ミサイルを配備しているという事実を前に、「長期的な戦争のリスクを低下させるには、短期的に戦争リスクを高める必要がある」と考えた。キューバ危機の教訓の一つは、戦争、そして核戦争のリスクでさえも引き受ける覚悟がなければ、巧妙な敵に対立局面において何度も裏をかかれてしまうということだ。イラン、中国、北朝鮮と相手が誰であれ、その一線を越えれば戦争も辞さないという「レッドライン」を設定しているのなら、その事実を敵対勢力に認識させ、実際に行動する決意をみせるべきだ。そうしない限り、警告は相手にされなくなる。

インド経済の政治不況

2012年8月号

プラタップ・バーヌ・メータ
インド政策研究センター理事長

2010年に2桁の経済成長を遂げたにもかかわらず、いまやインドの経済成長は鈍化し、財政赤字が拡大し、インフレも上昇している。民族と宗教を超えた国づくりも行き詰まり、所得格差が拡大している。わずか2年前には「輝かしい未来が待っているのは間違いないと思われたインドの空の半分には、いまや暗雲が立ちこめている」。実際には、2009年当時と同様に、インドは今も世界の経済大国の仲間入りを果たす力を持っている。問題は政治が経済成長を邪魔していることだ。最近のインドで頻発している社会騒乱の多くは、インドの台頭によって民衆の期待が高まったにもかかわらず、ニューデリーがその期待に応えることができずにいることが原因だ。人々は政治家が経済運営に失敗し、社会保障システムを機能させられずにいることにあきれ果てている。しかも、政治家たちは失敗を認めて政治倫理の回復に努めるどころか、責任逃れに終始している。現在の「インド病」の原因はここにある。

CFR Meeting
北米エネルギー安全保障の衝撃
――中東石油への依存度が半減すれば

2012年8月号

スピーカー
レックス・W・ティラーソン /エクソンモービルCEO
プレサイダー
アラン・マレイ /ウォールストリート・ジャーナル

いずれも大きな資源をもつカナダ、アメリカ、メキシコからなる北アメリカという枠組みでエネルギー政策、エネルギー安全保障をとらえればどうなるだろうか。資源の規模、使用できるテクノロジー、そして共通点の多い政策という点からみて、地域的な「エネルギー安全保障」の確立も視野に入ってくる。・・・仮にアメリカがペルシャ湾岸から原油を輸入する必要がなくなれば、国家安全保障政策も変化する。・・・アメリカが中東での軍事資源をどこか別の場所に移すと言い出せば、おそらく、大規模な石油消費国(中国)がその空白を埋めようとするだろう。・・・だが、重要なポイントは、中東石油がグローバル経済の安定の鍵を握っていることだ。この点では、中東石油への依存度を減らしていくとしても、アメリカはこの地域に今後も大きな関心を向けざるを得ないはずだ。・・・(R・W・ティラーソン)

CFR Meeting
朝鮮半島で何が起きているか
――もう韓国が挑発行為に耐えることはない

2012年8月号

◎スピーカー
玄仁沢/高麗大学一民国際関係研究院
金泰栄/前韓国国防相
◎プレサイダー
チャールズ・プリチャード/コリア経済研究所所長

これまで北朝鮮による数多くの挑発行為に直面してきた韓国市民の多くは、いまや、挑発行為に対する反撃だけでは十分ではなく、より強硬な報復策が必要だと考えるようになっている。・・・こうした堅固な社会コンセンサスを基盤に、反撃だけでなく、対抗策、報復策をとる必要が出てきている。(金泰栄)

北朝鮮にとっての選択肢は二つしかない。核開発プログラムの放棄に応じるか、社会・経済の改革・開放路線を取ることだ。北朝鮮が生き延びるにはこの二つのいずれかを選ぶしかない。だが、彼らは一体何をしているだろうか。3度目の独裁体制の確立を試みている。(玄仁沢)

戦略的ビジネス外交の薦め
―― 途上国経済を支配する中国企業への対抗策を

2012年8月号

アレキサンダー・バーナード
グリフォン・パートナーズマネージング・ディレクター

中国政府は途上国政府に低利の融資その他の支援を提供し、多くの場合、その見返りに、相手国に中国国有企業の資源開発へのアクセスを与え、インフラ整備プロジェクトを受注させることを求める。このやり方を通じて、中国企業は途上国の経済に食い込み、いまや新興市場国は自国の経済的生存を中国に依存するようにさえなっている。だが、巻き返しのチャンスはある。途上国の多くが「自国の経済を中国に支配されている現実」に反発しているからだ。「中国国有企業は相手国の労働者を雇うのではなく、自国から労働者を呼び寄せ、環境的配慮をせず、開発に古い技術を用いて(資源にダメージを与える)」というネガティブなイメージが定着しつつある。一部の途上国は中国にばかり依存するのではなく、経済関係の多様化を図りたいと考えている。途上国における中国国有企業に対する不満が高まっているだけに、この重要な市場で、アメリカがイニシアティブを取り戻すチャンスが生まれている。今こそ、戦略的ビジネス外交を展開すべきタイミングだ。

Foreign Affairs Update
偽造医薬品の恐怖

2012年8月号

ティム・マッケイ カリフォルニア大学博士課程(グローバルヘルス専攻)
ブライアン・A・リャン 患者を守るサンジェゴセンター
トマス・T・キュービック 医薬品安全研究所所長

これまで世界保健機関(WHO)は「市場に流通している医薬品の15%程度が偽造品である危険がある」と公表してきたが、アフリカや東南アジアでは医薬品の実に50%程度が偽造品だ。医薬品市場には相当規模の偽造品が入り込んでおり、その種類も多岐におよんでいる。もちろん、その品質も信頼できない。おもに中国やインドで生産されている偽造医薬品は、いまや貿易を通じて世界へと拡散している。2005年から2010年という時間枠でみると、アジアでの偽造医薬品の流通は246%増、ヨーロッパは131%増、中近東は105%増、そして北米が77%増という具合だ。インターネットを利用すれば、どの国にいても外国で販売されている偽造医薬品を購入できる。問題は、オンラインで販売されている9600を超える医薬品を検査したところ、その97%が「推奨に値しない」ことがわかっており、しかも、これが医療の現場にまで入り込んでしまっていることだ。

Foreign Affairs Update
ハイテク企業の政治的・外交的影響力強化を
――シリコンバレーと外交政策

2012年8月号

アーネスト・J・ウィルソン 南カルフォルニア大学教授(クリントン政権国家安全保障会議スタッフ)

農業やエネルギー部門のように、産業利益を戦略的に定義している産業は、その利益を的確に見極めた上で、特定アジェンダの実現に向けてロビイングを展開する。だが、ハイテク部門は、政治的中枢から遠く離れ、業績の浮き沈みが激しく、集団的行動よりも個人の好みを優先する文化を持っている。このため、産業単位で政治的集団行動をとるのが決してうまいとはいえない。・・・だが、アメリカ経済の中枢はすでに製造業からハイテク・フロンティアへと移動している。ハイテク産業の指導者たちは、自分たちにとって好ましい外交政策がどのようなものであるべきかについての枠組みを定義し、シンクタンク、大学、政府のあらゆるレベルに接触し、自分たちが好ましいと考える政策の具体像を伝え、政策として具体化していく必要がある。・・・政府も農業や製造業の利益ばかり考えていればよかった時代がすでに終わっていることを認識する必要がある。

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