1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

論文データベース(最新論文順)

なぜイランは核兵器を保有すべきか
―― 核の均衡と戦略環境の安定

2012年7月号

ケネス・N・ウォルツ
カリフォルニア大学名誉教授

現在のイラン危機の多くは、テヘランが核開発を試みているからではなく、イスラエルが核を保有していることに派生している。イスラエルの核保有のケースがきわめて特有なのは、核武装から長い時間が経過しているにも関わらず、依然として中東で戦略的な対抗バランスが形成されていないことだ。イスラエルは核開発を試みて戦略バランスを形成しようとするイラクやシリアを空爆し、これらの行動ゆえに、長期的には持続不可能な戦略的不均衡が維持されている。現在の緊張の高まりは、イランの核危機の初期段階というよりは、軍事バランスが回復されることによってのみ決着する、数十年におよぶ中東における核危機の最終段階とみなすことができる。現実には、イランの核武装化は最悪ではなく、最善のシナリオだ。この場合、中東の軍事バランスが回復され、戦略的均衡を実現できる見込みが最大限に高まる。

CFR Meeting
ティモシー・ガイトナーとの対話

2012年07月

◎スピーカー
ティモシー・ガイトナー /米財務長官
◎プレサイダー
アンドレア・ミッチェル /NBCニュース アンカーパーソン

ヨーロッパは単に時間稼ぎをしているだけだとみる人もいるが、それは真実ではないし、公正な見方とは言えない。・・・ヨーロッパが大がかりな対応を試みるのは、今度で4回目だ。しかも、これまでとは違って今回は、危機を小さくするだけでなく、残された時間が多くないことをヨーロッパは認識している。・・・ドイツの今後の動きに関心が高まっているのは事実だが、すべての問題をドイツのせいにするのは公正ではない。ドイツが求めているのは通貨同盟を機能させることだ。この試みを支えるためにドイツはかなりのコミットメントをするつもりだ。しかし、通貨同盟を機能させるには、先ず財政改革が必要だというのがドイツの立場だ。これは常識的な立場だ。だが、どのよう順序で、どの改革を進めるかをめぐって対立がある。

ユーロ崩壊というドイツのオプション

2012年7月号

セバスチャン・マラビー 米外交問題評議会シニア・フェロー

ユーロゾーンの分裂が近いうちに現実になるかどうかに関わらず、一つだけたしかなことがある。それは、危機が具体化し始めてから現在まで、その気になれば、ドイツは通貨同盟を救う力を持っていたし、現在もそうであることだ。つまり、ユーロが解体するとすれば、それはドイツが解体を選択した場合ということになる。ドイツはどちらの方向に進むべきか困惑しているようだ。戦後の歴史に配慮すればヨーロッパ統合を維持することが重要だし、そうでなくても(ユーロの解体を認めて)強固なマルクを復活させれば、自国の輸出競争力は大きく抑え込まれてしまう。だが、ドイツの指導者たちは(ユーロを救うのに必要な)穏やかなインフレを認めることにアレルギーを示し、他国の債務や銀行システムを救済することを躊躇している。・・・

CFR Briefing
起業、インキュベーター、ベンチャーキャピタルのメカニズム

2012年7月号

スティーブン・J・マルコビッチ www.cfr.orgコントリビューター

「オフィスはシリコンバレーでなければならない。才能ある人材、投資家、スタートアップ企業はどうすればよいかを知る人々が集まっている。われわれのようなテクノロジー企業を立ち上げるつもりなら、ここシリコンバレーしかない」。バンプ・テクノロジーズCEO、デビッド・リーブ

CFR Interview
銀行同盟、財政同盟構想とドイツの立場

2012年7月号

ベネディクタ・マージノット リサーチフェロー、ブリューゲル*
*ブリューゲルはベルギーにある経済シンクタンク

銀行同盟が誕生すれば、銀行危機が広がっていくリスクをある程度抑え込めるわけで、銀行の倒産に対する抑止力が形成される。すでに、ギリシャだけでなくスペインからも資金が流出し始めているだけに、銀行同盟は大きなメッセージを市場に発することができる。ドイツが銀行同盟に強く反発する理由はない。一方、ドイツはメンバー国の財政を監督する必要があると考えており、各国が財政規律を維持しているかどうかを欧州委員会が確認できるようにする財政同盟にも関心を持っている。とはいえ、ユーロ共通債が導入されなければ、財政同盟という名称は不可解なものになる。政治的にみて、ドイツがユーロ共通債を支持することはあり得ない。おそらく、各国の予算案に対する欧州委員会の監督権限は強化されるだろうが、ユーロ共通債に関する具体的スケジュールがでることはないだろう。

Classic Selection 2004
起業型経済の構築を

2012年7月号

カール・シュラム ユーイング・マリオン・コーフマン財団会長

デルやシスコ・システムズなど、アメリカ経済の富と生活レベルを引き上げているのは起業によって立ち上げられた企業である。こうした新企業は経済の技術革新を誘導するだけでなく、新規雇用をつくり出し、景気循環がつくり出す困難な時期の衝撃を緩和し、経済の成長と進化を刺激する。アメリカに存在する起業と大学、大企業、政府を結ぶ「4セクターモデル」は、経済停滞に直面している先進国だけでなく、途上国も導入できる。起業にまつわる文化的な制約は取り払うことができる。

CFR Interview
イラン・シリア問題に揺れるロシア外交
――なぜプーチンは中東を歴訪したか

2012年7月号

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会シニアフェロー

(シリア問題をめぐって)「欧米とアラブ世界が連帯し、その一方にロシアとイランがいる」という構図ができあがってしまっている。これまでシリアのバッシャール・アサドを支持してきたために、ロシアは非常に厄介な状況に追い込まれている。プーチンが最近中東を歴訪したのは、まさしく、ロシアの中東外交が手詰まり状況にあるからだ。彼はロシアの立場を中東の指導者に説明する必要があったし、なぜ中東諸国の批判に耳を貸そうとしないかについて弁明を試みる必要があった。いまや、シリアへの路線ゆえに、中東におけるロシアのイメージは大きく失墜し、アラブ諸国は「ロシア政府は経済的、地政学的思惑絡みでアサド政権を支持しており、中東地域の政府と民衆が気に懸けている人道問題を無視している」と批判している。

米経済を左右する連邦準備制度理事会のパワー

2012年7月号

シルベスター・エイジィフィンガー
ティルブルグ大学教授(金融経済学)エディン・ムジャジク
ティルブルグ大学博士課程、金融エコノミスト

今後、米経済のインフレは高まり、成長は停滞し、失業率も高止まりすると考えられる。これらの問題へどう対応するかがすでにワシントンにおける党派対立と論争の中心に位置づけられている。オバマは現在のゼロ金利路線の継続を望んでいるが、共和党はあからさまにFRBとその議長を攻撃している。FRBの金融緩和策が将来のインフレをもたらすと確信している共和党議員もいる。共和党の予備選挙でミット・ロムニーは「私は(バーナンキではなく)自分でFRB議長を選ぶ」と発言している。しかし、大統領に選ばれても彼にその権限はない。・・・ロムニーも、多くのアメリカ人同様に、最高裁判所と同じようにFRBに対しては長期間にわたって手を出せないという事実に気づいていない。仮に共和党の大統領が誕生しても、オバマが2012年に選ぶFRBと対峙していくしかないのだ。

イスラムのモデル国家はトルコかイランか

2012年7月号

ムスタファ・アキョル
ネーバル・ポストグラジュエートスクール教授

「アラブの春」をきっかけにトルコとイラン間の緊張が高まり、いまや「アメリカやイスラエルから攻撃を受ければ、トルコを攻撃する」とテヘランが表明するほどに両国の関係は悪化している。根底には、イスラム原理主義を重視する「イランモデル」と、民主主義とプラグマティズムを重視する「トルコモデル」のせめぎ合いがある。だが、「欧米支配に立ち向かうイスラム世界のヒーロー」としてのイランの影響力も、現在のトルコの地域的影響力を前にすれば影が薄い。「より平和で民主的、しかも自由な中東の未来」を夢みる人々が取り入れたいと考えているのは、イランモデルではなく、リベラルなトルコモデルだからだ。すでにアラブ人の多くが、イスラム国家ながらも、民主的で開放的な社会を持ち、繁栄を手にしているトルコのことを自分たちの「モデル国家」とみなし始めている。イランはイラクのシーア派の、サウジはスンニ派のパトロンを自認しているが、トルコは、キリスト教徒や世俗派に加えて、シーア派、スンニ派の双方に関わっている。トルコは、イスラムと「民主主義、市場経済、近代性」との統合が必要だと考えている。

ヨーロッパ経済の近未来
――債務危機と銀行危機の悪循環

2012年7月号

◎スピーカー
ウィレム・ブイター
シティグループ チーフエコノミスト
◎プレサイダー
ラナ・フォローオハール
タイム誌マネージングエディター

ギリシャは、ユーロからは離脱しても、おそらくEUには留まるだろう。条約には一部抵触するとはいえ、ギリシャがユーロを離脱する前段階で資本規制策、為替管理策、金融機関の閉鎖措置をとれば、無秩序な離脱リスクをある程度抑えることができる。いずれにしても、ギリシャの債務帳消しに応じる必要がある。だが現状でもっとも警戒すべきなのは、ユーロ圏の銀行危機だ。ヨーロッパの銀行はわれわれがまだ知らない損失を抱え込んでおり、これがシステマティックに隠蔽されている。銀行部門が巨大な債務を作り出し、結局は政府も共倒れになったアイルランドのケースがスペインで再現されるかもしれない。たしかに、ECBにはまだできることがある。だが、ECBが紙幣を刷り増すとすれば、国債市場の無秩序な崩壊、金融システムにとって重要な金融機関の無秩序な破綻、そして、ユーロ離脱の連鎖など、そうせざるを得ない状況に追い込まれた場合だけだろう。・・・一方、フランス国債の格下げによって、次の危機が誘発される可能性もあるし、あらゆるものが次の危機のトリガーになり得る状況にある。

Page Top