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論文データベース(最新論文順)

ベビー・ギャップ
―― 出生率を向上させる方法はあるのか

2012年5月号

スティーブン・フィリップ・クレーマー 米国防産業大学教授

少子化によって課税できる労働人口が少なくなるにつれて、政府は困難な決定を下さざるを得なくなる。社会保障手当を切り捨てて引退年齢を引き上げるか、税率を大きく引き上げるしかなくなるからだ。さらに厄介なのは、労働人口が高齢化していくにつれて、経済成長を実現するのが難しくなっていくことだ。・・・低い出生率は、先進世界の福祉国家体制だけでなく、国の存続そのものを脅かすことになる・・・男女間の差別解消に真剣に取り組まず、女性のための適切な社会サービスの提供に熱心でなかったイタリアや日本のような国は出生率を上昇させられずにいる。これに対して、GDP(国内総生産)の約4%程度を、子育ての支援プログラムにあてているフランスやスウェーデンは出生率の低下を覆すことに何とか成功している。出産奨励プログラムには大きなコストがかかるし、伝統的な家族の価値を支持する人々の怒りを買う恐れもある。だが、低出生率の罠にはまってしまえば、これまでとは不気味なまでに異なる人口減少という未知の時代へと足を踏み入れることになる。

教育と国家を考える

2012年5月号

◎スピーカー
ジョエル・I・クライン ニューズコーポレーション教育部門最高経営責任者
コンドリーザ・ライス 前米国務長官および国家安全保障問題担当大統領補佐官
◎プレサイダー
テリー・モーラン ABCニュースナイトライン アンカー

CFRミーティング
ヨーロッパ経済の危機再燃は避けられない
――世界経済アップデート

2012年5月号

スピーカー
ルイス・アレキサンダー 野村ホールディングスアメリカ担当チーフエコノミスト
ジョイス・チャン JPモルガン・チェース新興市場・債券調査担当統括責任者
ヴィンセント・ラインハルト モルガンスタンレーアメリカ担当チーフエコノミスト
モデレーター
セバスチャン・マラビー 米外交問題評議会 地政経済学研究センター所長

現状ではギリシャのプライマリーバランスは黒字ではない。この状況が続く限り、(支援をめぐる)政治的均衡が崩れれば、深刻な危機局面へと舞い戻ることになる。(L・アレキサンダー)

赤字と債務を減らそうとすれば、成長のための投資が後回しにされ、経済の持続可能性は低下する。結局、国債を通じた借入コストだけが高くなる。その結果、国内の金融機関が債務を塩づけにする貯蔵庫と化している。(V・ラインハルト)

現在から2014年までにスペインとイタリアだけでも、8000億ドル規模の資金を、国債発行を通じて調達しなければならない。これだけをみても、ヨーロッパにとって今後3年間は楽ではない。(J・チャン)

CFR Meeting
経済・貿易の世紀と伝統的外交の終わり
――TPP、知的所有権、NGO

2012年5月号

ロバート・ホーマッツ
米国務次官補(経済成長およびエネルギー・環境担当)
ティエリ・ド・モンブリアル
フランス国際関係研究所会長

かつて外交は各国の外交担当者の専権事項だったが、今日では、あらゆる政府省庁が外交を展開している。実質的に、すべての省庁は、国際経済領域に深く関与しており、いまや外交担当省庁のチャンネルを経由する必然性は消失しつつある。つまり、外交コミュニケーション、外交政策という概念そのものが変化している。・・・外交担当省庁の役目は、政府省庁の外交アジェンダの調整と優先順位を決め、それを全体的なパッケージに仕立てあげることへと変化している。統治スタイルが変化した結果、システムは大きく変化している。しかも、昨今における問題の多くはグローバル化している。だが、政治家は国内の有権者の意向にも配慮しなければならない。これが、世界に非常に大きなジレンマを作り出している。

CFR Interview
追い詰められたギリシャ

2012年5月号

ライン・ベッグ ロンドンスクール・オブ・エコノミクスユーロ研究所、専門リサーチフェロー

ギリシャの有権者が緊縮財政よりも成長を重視する政党を選び、それでもEUとIMFから支援を確保するつもりなら、相手にもっと柔軟な態度を取ることを受け入れさせなければならない。これは、言ってみれば肝試しのようなものだ。

Foreign Affairs Update
意外にローカルなツイッター

2012年5月号

ユーリ・タクテエフ
トロント大学准教授
バリー・ウェルマン
トロント大学ネットラボ所長
アナトリー・グルーズド
ダルハウジー大学情報管理大学院准教授

ツイッターの機能は新しい関係を築くというより、むしろ、既存の関係を強めるところにあるようだ。実際、ある程度の距離を隔てた二人のツィッターユーザー間のつながりの可能性を予測する上でもっとも確度の高い判断材料となるのは、その二地域間を結ぶ航空フライト数の多さだ。言い換えれば、ツイッターはロンドンのユーザーと「遠いどこか」の誰かを結び付けるよりも、ニューヨークとロサンゼルスのユーザーを、より強く結び付けている。ツイッターのユーザー(とフォロワー)の多くは特定の地域内に集中している。現在の世界において国際的なつながりの重要性が増しているのは間違いないが、ツィッターのつながりは基本的にローカル色が強く、デジタル時代が到来するはるか前から存在するつながりを強化しているにすぎない。・・・世界はフラットではなく、いまもでこぼこしている。

Foreign Affairs Update
アノニマスの活動はテロか抗議行動か
――サイバー空間と抗議行動

2012年5月号

ヨハイ・ベンクラー ハーバード大学法律大学院教授 同大学インターネットと社会センター共同所長

アノニマスによる主な行動はDDoS攻撃、コンピュータから盗み出した公的文書の暴露、ウェブサイトの改変、そしてオフラインでの活動だ。しかし、一部の政府高官が考えるようにアノニマスの行動をテロ行為とみなしたり、メディアが示唆するように、彼らを社会悪とみなしたりするのは間違っている。もっと現実に目を向けるべきだ。彼らの目的はインターネットの自由を守り、権力者の権力乱用を告発することにある。その本質は抗議行動なのだ。アノニマスの攻撃対象の政治的な特性をみれば、彼らを純粋にサイバー空間における脅威とみなすのは明らかに間違っていることがわかる。現状追認の自己満足を揺るがして人々を覚醒させる程度の「市民的不服従」や抗議のための空間はインターネット上でも認められるべきだ。アノニマスは破壊・争乱行為と啓蒙行為の境目に身を置くことで、「大胆不敵なおとり」の役回りを演じている。この事実を認識できない政府や企業は、現代社会でもっとも活力にあふれ、血気盛んな集団を敵に回してしまうことになるだろう。

Foreign Affairs Update
アラウィ派はシリア沿海部を目指す
――内戦の長期化とアラウィ国家の誕生?

2012年5月号

ケイティ・ポール
前ニューズウィーク誌リポーター(在ベイルート)

政府軍と反政府勢力がダマスカスでの最終決戦を選ぶか、それとも政府軍がアラウィ派の伝統的な拠点である沿海近くの山間部へと撤退していくかに関わらず、内戦が長期化し、社会の亀裂がますます深くなっていくのはもはや避けられない情勢にある。二つの勢力の軍事力が拮抗してくれば、内戦は通常戦争レベルの戦闘へと激化していく。すでにアラウィ派の民間人は自分たちの伝統的生活地域であるタルタスやラタキアなどシリアの沿海地域へと移動し始め、一方でこの地域のスンニ派やキリスト教徒は、トルコへと脱出しつつある。こうして、アラウィ派の「国家内国家」が事実上形作られつつある。問題は、その後、何が起きるかだ。・・・

CFRブリーフィング
オランドとサルコジ
――選挙戦術のレトリックとリアリティ

2012年5月号

チャールズ・クプチャン 米外交問題評議会ヨーロッパ担当シニアフェロー

増税や歳出削減をきっかけにフランスで何度も騒乱や暴動が起きていることを考えれば、右派・左派に関係なく、フランスの政治家がこの二つの措置の導入に二の足を踏むのは無理もない。しかし、より大胆な経済構造改革を実施しない限り、フランスは、ユーロ圏におけるより深刻な金融危機の引き金を新たに引いてしまう可能性がある。

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