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論文データベース(最新論文順)

重要鉱物とサプライチェーン
―― クリーンエネルギーと大国間競争

2023年2月号

モーガン・D・バジリアン コロラド鉱山大学教授(公共政策)
グレゴリー・ブリュー イェール大学ジャクソン・スクール  博士研究員

再生可能エネルギーへのシフトには、リチウム、コバルト、ニッケル、銅などの重要鉱物を確保することが不可欠だ。しかし、重要鉱物の生産はほんの一握りの国に集中している。インドネシアが世界のニッケルの30パーセントを、コンゴ民主共和国が世界のコバルトの70パーセントを生産している。しかも、重要鉱物の加工と最終製品の製造は中国に集中している。世界のリチウムの59%、その他の重要鉱物の80%近くを精製し、電気自動車用電池の先端製造能力の4分の3以上を中国が独占している。これら重要鉱物の調達がうまくいかなくなればエネルギー転換は立ちゆかなくなる。多様かつ強靭で安全なサプライチェーンを構築し、国内外の重要鉱物へのアクセスを高めるには何が必要なのか。

2023年のトレンドを考える

2023年2月号

マンジャリ・C・ミラー CFRシニアフェロー(インド、パキスタン、南アジア担当)
J・アンドレス・ギャノン CFRシャントン核安全保障フェロー
イヌ・マナク CFRフェロー(貿易政策担当)
エベニーザー・オバダレ CFRシニアフェロー(アフリカ研究)
クリストファー・M・タトル CFRシニアフェロー、ディレクター(リニューイング・アメリカ・イニシアティブ)

グローバルな食糧不安、今後の地政学的変数の一つであるインドとロシアの関係はどう推移するのか。中国の軍事的脅威にアジアの地域諸国は適切に対処しているか、アフリカの経済成長を妨げている頭脳流出の原因は何か。そしてアメリカにおける政治的分裂状況は、今後さらに激化していくのか。地域、イッシューの専門家が分析する2023年のトレンズ。

クリミアを取り戻すべき理由
―― ウクライナの立場

2023年2月号

アンドリー・ザゴロドニュク ウクライナの政治家で企業家。現在はウクライナ国防戦略センター会長。2019–2020年にウクライナ国防相を務めた。

これまでの軍事的成功をみれば、ウクライナにクリミアを解放する力があるのは明らかだろう。クリミアにはロシアの一部にとどまることを希望する人もいるが、それ以上に、モスクワの支配から逃れたいと考える人が多い。ロシアは、国土を奪い、勢力圏を拡大し、帝国を復活させることに夢中だ。相手に弱さを感じとれば、飛びかかってくる。欧米の一部の専門家が言うように、和平と引き換えにクリミアを差し出してはならない。そんなことをすれば、プーチンの侵略行為に報い、さらなる侵略のインセンティブを与えるだけだ。クリミアがロシアの支配から解放されるまで、ウクライナの安全は期待できず、経済再建もできないだろう。当然、ウクライナは、クリミアを奪還するまで戦いをやめない。

体制変革を求めるイラン民衆
―― 社会的連帯を助けるには

2023年2月号

エリック・エデルマン 元米国防次官
レイ・タキー 米外交問題評議会 シニアフェロー(中東担当)

これまでのイランの民衆蜂起には社会的まとまりがなかったが、今回は違う。民衆は広く連帯している。農民たちは水不足に、学生たちは自由の欠如に、教員たちは報酬の不足に、そして退職者たちは社会保障の乏しさに不満を抱いてきた。蓄積されてきた人々の怒りと苛立ちを発散する抗議運動に火をつけたのが、ヒジャブの着用方法が不適切だという理由で警察に連行されたマフサ・アムニの死だった。最高指導者ハメネイが創刊した日刊紙でさえ、「インフレ、失業、少雨、環境破壊などの問題が、退職者から教育者、学生に至るまでの人々を抗議に駆り立てている」と指摘している。バイデン政権は、変革を起こすために命を危険にさらしているイランの人々が国を取り戻せるように、できる限りの手を尽くすべきだ。・・・

高まる社会不満と政治不信
―― ゼロコロナ政策の深刻な帰結

2023年2月号

リネッテ・H・オング トロント大学教授(政治学)

薬局の棚は空で、病院での診療は受けられず、火葬場は長蛇の列だ。国からの信頼できる情報もない。突然解除された規制に対する民衆の不満は高まっている。今や、中国におけるコロナウイルスの新規感染者数は1日あたり約100万人で、ウイルスは制御不能な状態にある。習近平が固執してきたゼロコロナ政策からの大転換によって、不穏な雰囲気と政府に対する反発はむしろ高まっている。共産党に対する市民の信頼も失墜しつつある。社会的不満の高まりは、やがて党内エリートの結束も弱めるかもしれない。この間違いが引き起こす政治コストがどのようなものになるか、今のところわからない。しかし、共産党が自ら作り出したこの危機を無傷で乗り切れるとは考えにくい。

次のアウトブレイク
―― パンデミック化を阻止するには

2023年2月号

ラリー・ブリリアント パンディフェンス・アドバイザリー社CEO
マーク・スモリンスキー 非営利団体エンディング・パンデミクス理事長
リサ・ダンツィグ パンディフェンス・アドバイザリー社顧問
W・イアン・リプキン コロンビア大学公衆衛生大学院 感染免疫センター所長

都市化、近代化が進んだことで、動物の病気が人間にも広がり、蔓延する危険が大きくなっている。ヒトと動物の間でウイルスの交換がますます増えて、いくつかの変異が起きれば、人類は、H1N1のように感染力が高く、MERSのように致死性の高い、新たなコロナウイルスかインフルエンザウイルスの襲撃を受けるかもしれない。このようなパンデミックは、種としての私たちの存続を脅かすことなるだろう。但し、スピルオーバー(ウイルスの異種間伝播)とアウトブレイク(感染症の発生)は避けられないとしても、パンデミックはそうではない。したがって、人類の最大の任務は、前者と後者の関連を断ち切るために手を尽くすことだ。

プーチンの最後の抵抗に備えよ
―― ロシアの敗戦は何をもたらすか

2023年2月号

リアナ・フィックス 米外交問題評議会フェロー(ヨーロッパ担当)
マイケル・キメージ アメリカ・カトリック大学 教授(歴史学)

ロシアの敗北は多くの恩恵をもたらすが、一方で、それが引き起こす地域的、世界的な混乱に備える必要がある。交渉による敗北を受け入れず、ロシアが過激なエスカレーション策をとり、カオスが作り出されれば、その影響はアジア、ヨーロッパ、中東にも及ぶ。世界最大の国土をもつロシアとその周辺で、分離主義や新たな紛争などの混乱が引き起こされる危険もある。一方、ロシアが内戦によって破綻国家と化せば、1991年に欧米の政策立案者が取り組むべきだった問題、例えば、ロシアの核兵器を誰が管理するのかといった問題も再燃する。ロシアの無秩序な敗北は、国際システムに危険な空白を作り出す。

中国の衰退が招き入れる危険
―― その意味あいと対策を考える

2023年2月号

ジョナサン・テッパーマン 前フォーリン・ポリシー誌編集長

中国は、アメリカのメディアや指導者たちが描写するような台頭する覇権国ではなく、いまや、よろめいて崖っぷちに立たされている。問題は、アメリカの政治家の多くが、依然として、米中間の争いを中国の台頭という視点で組み立てていること、しかも、中国が高まる危機に直面していることを認めつつも、それをアメリカにとって中立的か肯定的な展開とみていることだ。だが真実はその逆だ。よいニュースであるどころか、中国が弱体化して停滞し、崩壊へ向かえば、中国にとってだけでなく、世界にとっても、繁栄する中国以上に危険な存在になる。

注目すべき5つの外交アジェンダ
―― ウクライナ戦争、台湾、イラン

2023年2月号

ジェームズ・リンゼー 米外交問題評議会 上席副会長(研究担当)

2023年、国際政治はどのような展開をみせるのか。米外交問題評議会のジェームズ・リンゼーは、その手がかりとしてウクライナ戦争、反欧米枢軸の連帯、台湾問題、イランの不安定化、アメリカの経済単独行動主義を挙げる。ウクライナ戦争については「春になり、ロシアがベラルーシの支援を得て新たな軍事攻撃を開始するか、ウクライナがクリミアの奪還を目指せば、状況は一変するかもしれない」と指摘し、反欧米連合については、「アメリカが支配する世界秩序への反発を共有しているだけでは、強固な協調基盤は形成されないかもしれない」とみる。イランについては「2023年12月31日まで、イラン・イスラム共和国は存在しているだろうか」と問いかけている。・・・

防衛力強化に踏み込んだ日本
―― 高まる脅威と日本の新安全保障戦略

2023年2月号

ジェニファー・リンド ダートマス大学准教授(政治学)

新国家安全保障戦略に即して、軍事予算を大幅に増額し、敵への報復攻撃を可能にする「反撃」能力を整備することで、日本は、これまでの路線から大きな転換を遂げようとしている。この路線を軍国主義とみなすのは、もちろん、間違っている。日本は世界をリードする責任ある地球市民国家だし、その安全保障政策は日米同盟をその基盤に据えている。軍国主義に乗り出すどころか、地域的脅威の高まりを前に、日本は大きなためらいの末に対応している。アメリカとそのパートナーからみれば、日本の新国家安全保障戦略は称賛に値する内容だ。巨大な経済・技術資源を有する平和国家が、地域安全保障への貢献を強化しようと動き出したことを意味する。・・・

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