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論文データベース(最新論文順)

CFRポリシーメモランダム
医薬品、ワクチン、医療サプライの安全を保つには

2012年10月号

ローリー・ギャレット 米外交問題評議会グローバルヘルス担当シニア・フェロー

この10年間で、医薬品原料(APIs)の抽出に始まり、成分の配合、製剤、パッキング、流通に至るまで、医薬品の生産・流通プロセスが高度にグローバル化された。あらゆる錠剤、注射液、軟膏が多数の国から調達した医薬品成分で生産されているが、こうした医薬品原料の多くは、規制の緩いことで知られるインドや中国などに点在するほぼ10万に達する工場で生産されている。こうした生産・流通のグローバル化によって、いまや世界各国の薬局や病院で、APIsが含まれていない偽医薬品、基準を満たしていない医薬品、汚染医薬品、あるいは、犯罪組織が巧妙に製造した偽造医薬品が見つかっており、先進国、新興国、貧困国のすべてが危険にさらされている。この問題に対処していかない限り、数百万の人々の生命が脅かされ、医薬品とワクチンの信頼性が損なわれることになる。医薬品の生産・流通チェーンが高度にグローバル化された結果、いまや、いかなる国であっても、国の規制当局が国民に医薬品の安全を保証できる状態にはない。

統合の危機とヨーロッパの衰退

2012年10月号

ティモシー・ガートン・アッシュ
オックスフォード大学歴史学教授

戦後のドイツにとって、ヨーロッパ諸国の信頼を取り戻すことが、ドイツ統一という長期的目的を実現する唯一の道筋だった。財政同盟という支えを持たない通貨同盟が構造的な問題と崩壊の火種をはらんでいることを理解した上で、西ドイツはドイツ統一のためにあえてユーロを受け入れた。そしていまやヨーロッパはユーロ危機に覆い尽くされ、漂流している。かつてこの大陸を統合へと向かわせた戦争の記憶もソビエトの脅威も希薄化するか、消失している。瓦礫のなかから統合を目指し繁栄を手にした戦後世代とは違って、現代の若者たちは繁栄から失業へ、希望から恐れへと、まったく逆の変化を経験している。統合の維持に向けた新しい源流、エリートと市民たちを統合の維持へと駆り立てる新たな流れが生じない限り、ヨーロッパは、かつての神聖ローマ帝国同様に、ゆっくりとその効率と価値を失い、衰退していくことになるだろう。

CFR Interview
2012年秋、イスラエルはイランを攻撃する?

2012年10月号

リチャード・ハース 米外交問題評議会会長

イスラエルは、イランの核開発によって危機にさらされるものは非常に大きいと考えている。このため、アメリカの説得によってイスラエルに攻撃を思いとどまらせることができるかどうかはわからない。重要なのは、米大統領選挙前の秋にイスラエルがイランに対する予防攻撃を実施する可能性をもはや誰も否定できない状況にあることだ。このシナリオが現実にならないとしても、イスラエル、あるいはアメリカが2013年に行動を起こす可能性は十分にある。問題はイスラエル、あるいはアメリカが軍事力を行使すれば、不可知の連鎖が生じ、どのような事態になるかわからないことだ。だからこそ、多くの人は経済制裁と外交を組み合わせた強硬策が成功することを期待している。だが、これまでのところ、楽観を許すような状況にはない。

CFR Update
社会道徳の衰退と中国の食品汚染危機

2012年10月号

ヤンゾン・ファン 米外交問題評議会グローバルヘルス担当シニア・フェロー

メラミン混入ミルク、成長促進剤を添加され爆発するスイカ、赤みを増すために薬剤を添加され暗闇で輝く豚肉など、中国の人々がもっとも懸念しているのは、高く売るためなら、食品に人体に有害な物質を添加することも厭わない農家や業者が引き起こす食品汚染危機が大きな広がりをみせていることだ。汚染危機は、生産・供給側が市場経済の拡大ペースに応じてビジネス倫理を確立できず、政府の規制もそのペースについていけずにいるために引き起こされている。「偽造品や汚染食品を市場に送り出す人も、一方では消費者として他の危険な汚染食品のリスクにさらされており、この社会では誰もが他人に対して毒を振りまいている」状況にある。・・・いまや中国社会の破綻というシナリオでさえも、現実離れしているとは言えない。

資源開発技術の進化とアジアの海洋資源争奪戦

2012年10月号

マイケル・クレア ハンプシャー・カレッジ教授

中国の政治・経済的影響力の拡大を憂慮する日本人にとって、尖閣諸島をめぐる中国との対立は国の将来を左右する重要な試金石だし、同様に、竹島(韓国名・独島)の主権を主張する韓国政府の立場は、日本の朝鮮半島支配に対する愛国主義的な反発として国内で評価されている。だが、領土ナショナリズムよりも、東アジアの海域に膨大な石油と天然ガス資源が存在すると考えられていることが一連の問題の中枢にある。深海でも稼働できる掘削技術が開発されたこともあって、各国は海洋資源への自分たちの権利をこれまで以上に強く主張するようになった。事実、中国が強硬路線を取り始めたのは、中国海洋石油総公司(CNOOC)が深海資源掘削装置を手に入れた時期と一致している。今後、北京とハノイ、マニラ、ソウル、東京の関係が改善していくと考える理由はほとんどない。自国の近くの海洋に存在する安価なエネルギー資源を手に入れたいという願望はますます高まり、アジア経済がさらに成長していくにつれて、各国のナショナリスティックな衝動はますます大きくなっていく。

CFR Interview
出口のないシリア紛争
――何がバッシャール・アサドを変えたのか

2012年10月号 

デビッド・W・レッシュ トリニティ大学教授(中東史)

政府側にも反政府勢力側にも相手に屈服する意図はなく、双方とも長期戦を覚悟している。加えて、ともに相手に致命的な打撃を与える力を持っていない。このために、シリア紛争は明確に定義できる戦線の存在しない内戦と化している。・・・しかも、反政府勢力が一枚岩でないために、政府が掌握していない地域が軍閥に支配されたり、特定勢力の拠点にされたりしていく危険もある。外部勢力の介入によってこの均衡が崩れない限り、この状況が変化することは当面あり得ないし、現状では外部勢力の介入があるとは想定できない。・・・介入しても、より大きなダメージと混乱、そして不安定化がもたらされるだけだろう。最終的には不可能になるかもしれないが、レバノン、イラクその他へと紛争が飛び火しないように、あるいは、イスラエルやトルコは引きずり込まれないように、誰もがシリア紛争を国境内に封じ込めようと試みている。

米国債の最大の引き受け手でもある中国とアメリカの複雑な政治・経済関係を、バラク・オバマもミット・ロムニーも11月の大統領選挙の大きな争点の一つに据えている。米中関係はグローバル・インバランスに象徴される米中関係の不均衡に加えて、中国による為替操作、不公正な貿易慣行によって、いまやアメリカ国内では感情的な政治問題と化している。一方で、中国が南シナ海や東シナ海の領有権問題をめぐって、攻撃的な外交路線に転じているという問題もある。オバマ政権は、これまで中国の貿易慣行上の問題については、WTO(世界貿易機関)に提訴する路線をとる一方で、中国の台頭に対するバランスを形成しようとアメリカのアジアにおける外交的、軍事的プレゼンスを強化する「アジアシフト」路線をとってきた。だが、ミット・ロムニー候補は、オバマ政権は中国に対して手ぬるすぎたと批判し、とくに人民元の切り上げや貿易問題をめぐってもっと強硬策をとるべきだと主張している。ロムニーは、就任後直ちに、中国の為替操作問題への対策をとると表明し、アジア・太平洋地域でのアメリカの軍事プレゼンスを強化していくと表明している。

慎重なミャンマー投資を
―― 急成長の弊害に目を向けよ

2012年9月号

ブライアン・P・クレイン 前米通商代表部東南アジア担当ディレクター

コカコーラ、GE、石油企業、天然ガス企業はすでにミャンマーへの進出に強い関心を示し、すでに2011年には、中国、香港、タイを中心とする諸国が、約200億ドル規模のミャンマー投資を行っている。大きな人口と豊かな資源、そして資本流入の増大によって、いまやミャンマーは、経済ルネッサンスに必要な環境を手にしつつある。だが、急速な開放政策は大きな富をもたらすだけでなく、社会を不安定化させる。ミャンマーは「急成長」と「バランスのとれた成長」の岐路にさしかかっている。指導者たちは短期的な富を模索するのではなく、力強い中間層を育んでいくやり方を選択すべきだろう。必要なのは、国全体の必要性をバランス良く満たし、広範な経済成長を実現するのに不可欠な司法、徴税、国境管理、情報公開をささえる制度を構築することだ。制度を構築して民主的な体制を整備していかない限り、これまで同様に、恩恵のすべてを権力者が横取りし、民衆は放置されることになる。

北京はアメリカと世界をどうみているか

2012年9月号

アンドリュー・J・ネーサン コロンビア大学教授 / アンドリュー・スコベル ランド研究所 シニア・ポリティカルサイエンティスト

「アメリカの行動には裏がある。アメリカは、中国がアメリカに挑戦できるほど強大化するのを阻止する意図をもっている」。中国の軍や安全保障組織の分析官たちは「ワシントンは自分の条件での協調を望み、北京が自国の利益を守るのに必要な軍事能力を整備するのを牽制し、中国の政治体制の変革を促進することを意図している」とみている。彼らは「アメリカは中国の政治的影響力と中国の利益を抑え込むリビジョニスト国家だ」と本気で考え、「軍事的に対米対抗路線をとるべきだ」と主張する者もいる。とはいえ、長期的にみれば中国と欧米の双方にとってのより優れた代替策は、現行の世界システムを維持するために中国がこれまでよりも大きな役割を担う、新しい力の均衡を作り上げることだろう。中国が世界最大の経済国家になっても、その繁栄は、日本とアメリカを含む、グローバルなライバル国家の繁栄に左右される。ライバルが繁栄しない限り、中国も先には進めないのだから。

強大化する中国への対抗策を

2012年9月号

アーロン・フリードバーグ プリンストン大学教授

米中が今日まで真の和解を達成できていないのは、努力が足りなかったからではない。根本的に米中の利害認識が異なるからだ。米中が安定した行動様式を維持しようにも、イデオロギーギャップと相互不信があまりに大きすぎる。アメリカの働きかけにもかかわらず、中国は現状維持を受け入れるどころか、近隣海域の資源を手に入れようと強硬な対外路線をとっている。だが対抗バランスを形成するとしても、中国が軍事力の増強を続ける一方で、アメリカは軍事予算を削減せざるを得ない状況にある。こうして、東アジアの地域バランスは、急速に中国に有利なものへと変化しつつある。中国は「接近阻止・領域拒否(A2AD)」と呼ばれる軍事能力の整備に力を入れ、これらの兵器で西太平洋におけるすべての空軍基地と港をターゲットにし、米軍の空母を含む戦艦を威嚇することもできる。北京は地域的覇権の確立を思い描いている。

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