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論文データベース(最新論文順)

CFR Meeting
朝鮮半島で何が起きているか
――もう韓国が挑発行為に耐えることはない

2012年8月号

◎スピーカー
玄仁沢/高麗大学一民国際関係研究院
金泰栄/前韓国国防相
◎プレサイダー
チャールズ・プリチャード/コリア経済研究所所長

これまで北朝鮮による数多くの挑発行為に直面してきた韓国市民の多くは、いまや、挑発行為に対する反撃だけでは十分ではなく、より強硬な報復策が必要だと考えるようになっている。・・・こうした堅固な社会コンセンサスを基盤に、反撃だけでなく、対抗策、報復策をとる必要が出てきている。(金泰栄)

北朝鮮にとっての選択肢は二つしかない。核開発プログラムの放棄に応じるか、社会・経済の改革・開放路線を取ることだ。北朝鮮が生き延びるにはこの二つのいずれかを選ぶしかない。だが、彼らは一体何をしているだろうか。3度目の独裁体制の確立を試みている。(玄仁沢)

戦略的ビジネス外交の薦め
―― 途上国経済を支配する中国企業への対抗策を

2012年8月号

アレキサンダー・バーナード
グリフォン・パートナーズマネージング・ディレクター

中国政府は途上国政府に低利の融資その他の支援を提供し、多くの場合、その見返りに、相手国に中国国有企業の資源開発へのアクセスを与え、インフラ整備プロジェクトを受注させることを求める。このやり方を通じて、中国企業は途上国の経済に食い込み、いまや新興市場国は自国の経済的生存を中国に依存するようにさえなっている。だが、巻き返しのチャンスはある。途上国の多くが「自国の経済を中国に支配されている現実」に反発しているからだ。「中国国有企業は相手国の労働者を雇うのではなく、自国から労働者を呼び寄せ、環境的配慮をせず、開発に古い技術を用いて(資源にダメージを与える)」というネガティブなイメージが定着しつつある。一部の途上国は中国にばかり依存するのではなく、経済関係の多様化を図りたいと考えている。途上国における中国国有企業に対する不満が高まっているだけに、この重要な市場で、アメリカがイニシアティブを取り戻すチャンスが生まれている。今こそ、戦略的ビジネス外交を展開すべきタイミングだ。

Foreign Affairs Update
偽造医薬品の恐怖

2012年8月号

ティム・マッケイ カリフォルニア大学博士課程(グローバルヘルス専攻)
ブライアン・A・リャン 患者を守るサンジェゴセンター
トマス・T・キュービック 医薬品安全研究所所長

これまで世界保健機関(WHO)は「市場に流通している医薬品の15%程度が偽造品である危険がある」と公表してきたが、アフリカや東南アジアでは医薬品の実に50%程度が偽造品だ。医薬品市場には相当規模の偽造品が入り込んでおり、その種類も多岐におよんでいる。もちろん、その品質も信頼できない。おもに中国やインドで生産されている偽造医薬品は、いまや貿易を通じて世界へと拡散している。2005年から2010年という時間枠でみると、アジアでの偽造医薬品の流通は246%増、ヨーロッパは131%増、中近東は105%増、そして北米が77%増という具合だ。インターネットを利用すれば、どの国にいても外国で販売されている偽造医薬品を購入できる。問題は、オンラインで販売されている9600を超える医薬品を検査したところ、その97%が「推奨に値しない」ことがわかっており、しかも、これが医療の現場にまで入り込んでしまっていることだ。

Foreign Affairs Update
ハイテク企業の政治的・外交的影響力強化を
――シリコンバレーと外交政策

2012年8月号

アーネスト・J・ウィルソン 南カルフォルニア大学教授(クリントン政権国家安全保障会議スタッフ)

農業やエネルギー部門のように、産業利益を戦略的に定義している産業は、その利益を的確に見極めた上で、特定アジェンダの実現に向けてロビイングを展開する。だが、ハイテク部門は、政治的中枢から遠く離れ、業績の浮き沈みが激しく、集団的行動よりも個人の好みを優先する文化を持っている。このため、産業単位で政治的集団行動をとるのが決してうまいとはいえない。・・・だが、アメリカ経済の中枢はすでに製造業からハイテク・フロンティアへと移動している。ハイテク産業の指導者たちは、自分たちにとって好ましい外交政策がどのようなものであるべきかについての枠組みを定義し、シンクタンク、大学、政府のあらゆるレベルに接触し、自分たちが好ましいと考える政策の具体像を伝え、政策として具体化していく必要がある。・・・政府も農業や製造業の利益ばかり考えていればよかった時代がすでに終わっていることを認識する必要がある。

銀行同盟でユーロゾーンを救えるか

2012年08月

ドメニコ・ロンバルディ
ブルッキングス研究所シニアフェロー

通貨同盟が存在するのに、ユーロ危機以降、資金は投資国へと舞い戻り、資金が国境を越えて動かなくなってしまった。「単一の銀行監督機関があり、しかも、窮地に追い込まれた銀行を、政府を経由せずに直接的に支える制度があれば、ユーロゾーン内での資金の流れを取り戻すことができる」。これが銀行同盟の基本的アイディアだ。・・・だが、完全な銀行同盟を立ち上げるには、かなり踏み込んだ財政同盟が必要になる。

金融危機で揺るがされるEUの政治的未来

2012年8月号

チャールズ・クプチャン
米外交問題評議会ヨーロッパ担当シニア・フェロー

本来であれば、通貨統合の進展に併せて政治領域での統合も深化させるべきだった。具体的には、財政統合、銀行同盟を制度化するとともに、アメリカの連邦準備制度(FRB)並の大きな能力と権限を持つ欧州中央銀行を作り上げるべきだった。だが、ヨーロッパはこれらの監督機関が必要であることを理解していたにも関わらず、ユーロ導入へと見切り発車をした。適切な監督機関がなく、しかも、北ヨーロッパと南ヨーロッパの経済体質に大きな違いが存在したことが、ユーロの命運を脅かし続け、今日に至っている。そしていまや、危機に対応するためにも、EUの統合をさらに深化させるべきかどうかが問われている。だが、イギリスがEUから脱退する可能性も排除できないし、金融危機が長期化するなか、ヨーロッパ市民の間ではEUに対する反発が高まっている。

労働組合の衰退と中間層の未来

2012年7月号

ブルース・ウエスタン ハーバード大学ケネディスクール教授(社会学) / ジェーク・ローゼンフィールド ワシントン大学准教授

1950―60年代まで、アメリカの労働組合は政治的にも経済的にも非常に大きな影響力を持っていた。政治領域では、組合に参加していない者を含む労働者の利益擁護に広く努め、経済領域でも労働生産性の向上に応じて賃金の引き上げを求め、社会生活の向上に貢献した。このやり方を通じて、労働組合はアメリカの労働者階級と中間層を支えてきた。だが、1980年代までに組合の力は大きく衰退し、いまやアメリカは深刻な経済格差の時代に突入している。ここで、労働組合が格差と不正義の問題を正面から取り上げ、広範な経済層の利益を擁護し、賃金の停滞と政治からの隔絶に苦しむ数多くの家庭に訴えかければ、人々の支持を取り戻すことができるかもしれない。

アジアシフト、アラブの春、北朝鮮とイラン
―― オバマ外交の功罪を検証する

2012年7月号

マーチン・インディク ブルッキングス研究所副会長 / ケニス・G・リーバーサル ブルッキングス研究所中国センターディレクター / マイケル・オハンロン ブルッキングス研究所外交政策研究ディレクター

オバマ政権が2011年末に表明したアジアシフト(リバランシング)戦略はアメリカのリーダーシップを変化させていくための試金石だ。アジアシフト戦略を成功させれば、貿易促進と投資の枠組みが形成されるだけでなく、現地の部隊と緊密に連携するより小規模で柔軟な戦力へと米軍を再編することもできる。だが、オバマがそのような新しい秩序への移行をうまく模索していけるかは、イランの核開発問題をうまく決着させられるかどうか、そして、アメリカの政治・経済力を再生できるかどうかに左右される。イラン問題が制御不能になり、再び中東の安全保障がアメリカ外交の最優先課題にされるような事態になれば、他の重要な問題が再び後回しにされてしまう。また、アメリカの経済基盤がこのまま劣化していけば、長期的な国力、そして賢明な外交政策は維持できなくなる。国内的衰退を食い止めなければ、現状を大きく上回る厄介な事態にアメリカと世界は直面することになる。

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