衰退する独仏協調
――政治統合から危機対応へ変化した 欧州のメカニズム
2012年12月号
これまでヨーロッパ統合のプロセスと制度は、「統合ヨーロッパという政治ビジョン」を前提に組み立てられ、その中枢が独仏の妥協によって形作られる統合プロセスだった。しかし、現在のヨーロッパのプロセスは政治ビジョンを前提とする統合ではない。それは、(危機に対応するための)政治、経済、金融上の必要性に突き動かされた対応プロセスにすぎない。「ユーロゾーンを存続させるには、ユーロゾーンの基本制度を改革する必要がある」という危機対応認識に根ざしている。だが、この対応プロセスにおいて、何かを実現するために、独仏が必ず合意する必要があるかどうか、はっきりしない。別の言い方をすれば、このプロセスにおけるフランスの影響力は、これまでに比べて非常に小さい。オランドが、どのようなヨーロッパをフランスが望むかについての一貫性のあるビジョンを描き、それをどのように実現していくか考案するまでは、かつての欧州統合の時代と比べて、独仏協調の重要性は間違いなく低下していくだろう。