日本衰退論の虚構
――みえない日本の等身大の姿
2013年1月号
1970―1980年代、われわれは、資本主義の魔法の道筋をみつけた日本はいずれアメリカを経済的に追い抜き、世界的優位を確立するだろうとみていた。だがバブル崩壊とともに認識面での大きな揺り戻しが起き、いまや分析者たちは、日本は末期的な衰退基調にあるとみている。これらはいずれも実像から離れた極端なとらえ方だ。安全保障領域についても、専門家の多くは、日本の抑制的安全保障路線にばかり目を向け、この国が見事な軍事力を整備していることを無視してきた。こうして、「日本は非武装の平和主義国家」とみなされるようになった。そしていまや、対中関係の悪化によって日本の平和主義は終わり、ナショナリズムが台頭していると言われている。問題は、これらの見方が、いずれも日本の実像を見落としていることだ。極端なレンズで日本をとらえようとする人々は間違っているだけでなく、東アジアのパワーバランスを維持する上で日本が果たせる重要な役割を見落としている。アメリカ(そしておそらくは中国を)例外とすれば、日本ほどパワーと影響力をうまく形作れる国もない。