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論文データベース(最新論文順)

日本は、外部の国際環境を所与のものとみなすことで、日本人が「時流」とよぶ国際的な流れに乗るために、現実的な調整を試みてきた歴史を持っている。そしていまや、中国の台頭、北朝鮮の核開発、アメリカの経済的苦境という国際環境の変化を前に、「東アジアにおけるアメリカの軍事的優位はどの程度続くのか」という疑問を抱いた日本人は、これまでの計算を見直しつつある。米中が対立しても、それによって必ずしも日米関係が強化されるわけではなく、現実には、自立的な安全保障政策を求める声が日本国内で高まるはずだ。鍵を握るのはアメリカがどのような行動をみせるかだ。日本の防衛に対するアメリカのコミットメントは信頼できると日本人が確信すれば、東京の外交政策が現在のトラックから大きく外れていくことはない。だが、アメリカの決意を疑いだせば、日本人は独自路線を描く大きな誘惑に駆られるかもしれない。

先進民主国家体制の危機
―― 改革と投資を阻む硬直化した政治

2013年2月号

ファリード・ザカリア  国際政治分析者

先進民主世界を悲観主義が覆い尽くしている。ヨーロッパでは、ユーロ圏だけでなく、欧州連合(EU)そのものが解体するのではないかという声も聞かれる。日本の経済も停滞したままだ。だが、もっとも危機的な状況にあるのはアメリカだろう。停滞する先進国が本当に必要としているのは、競争力を高めるための構造改革、そして、将来の成長のための投資に他ならない。問題は政治領域にある。政治が、効率的な改革と投資を阻んでいる。その結果、われわれが直面しているのが民主主義体制の危機だ。予算圧力、政治的膠着、そして人口動態が作り出す圧力という、気の萎えるほどに大きな課題が指し示す未来は低成長と停滞に他ならない。相対的な豊かさは維持できるかもしれないが、先進国はゆっくりとそして着実に世界の周辺へと追いやられていくだろう。今回ばかりは、民主主義の危機を唱える悲観論者が未来を言い当てることになるのかもしれない。

米軍撤退論にメリットはない
―― アメリカの対外エンゲージメントを維持せよ

2013年2月号

スティーブン・G・ブルックス ダートマス・カレッジ准教授 G・ジョン・アイケンベリー   プリンストン大学教授 ウィリアム・C・ウォールフォース ダートマス・カレッジ教授

米軍はヨーロッパと東アジアから撤退し、本国へと帰還すべきなのか? 国際関係の著名な研究者の多くがこの問いにイエスと答えている。イラクでの壊滅的な失敗とグレートリセッションを経験しているだけに、この立場も賢明に思えるかもしれない。だが、より控えめなグローバル戦略で資金を節約できるわけでも、現状で対米対抗バランス形成の動きがあるわけでもない。現在の戦略によってアメリカが経済的衰退に追い込まれたわけでも、将来、この戦略が無謀な戦争へとアメリカを駆り立てるわけでもない。現在の戦略は世界の重要地域における紛争の発生を防ぎ、グローバル経済をうまく先に進め、国際協調をまとめやすくしている。グローバルなリーダーシップのための対外関与から手を引けば、これら立証されている恩恵は消失し、世界はかつてない不安定化に翻弄されることになる。

CFR Meeting
民主国家同盟D10を立ち上げよ
――なぜ民主国家によるフォーラムが必要か

2013年2月号

◎スピーカー
アッシュ・ジェイン / ユーラシアグループ・コンサルタント
◎プレサイダー
スチュアート・パトリック / 米外交問題評議会シニアフェロー

経済領域ではグローバルな規範に向けたコンバージェンス(収斂)が進んでいるが、民主的秩序の中核である政治や安全保障領域では、民主国家とそうでない国の間に依然として大きな立場の違いがある。問題は民主国家間の戦略調整メカニズムが希薄になってきていることだ。NATO(北大西洋条約機構)やG8ではこの現実を克服できない。脅威が多様化しているために、任務を安全保障領域に限定しているNATO(北大西洋条約機構)が果たせる役割には限界があるし、ロシアをメンバーに迎え入れたことでG8は空虚な声明を発表するだけのフォーラムと化している。必要なのは民主的価値を共有する諸国によるフォーラムを立ち上げることlだ。このフォーラムのメンバーを構成すべきは、ヨーロッパのイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、アジア・太平洋の日本、オーストラリア、韓国、そして北米のカナダとアメリカだろう。これにEU(欧州連合)を加えればD10になる。民主的価値を共有する民主諸国連合(D10)は、現在の世界の課題に対処していくもっとも適切な枠組みとして機能するポテンシャルを秘めている。

米軍の大規模な撤退を
―― 控えめな大戦略への転換を図れ

2013年2月号

バリー・R・ポーゼン マサチューセッツ工科大学教授

米財政の健全さを取り戻すために、社会保障支出の大幅な削減を検討せざるを得ない状況にあるというのに、ワシントンは依然としてドイツや日本の安全保障に事実上の補助金を出している。これでは富裕層(国)に社会保障給付を提供しているようなものだ。アメリカが覇権的で拡大的な大戦略を維持してきたために、同盟国の安全保障をアメリカが肩代わりする事態が続き、同盟国は応分の負担をするのさえ嫌がるようになった。それだけではない。敵を倒すたびに新しい敵が作り出され、中ロなどの他の大国は連帯してアメリカの路線に反対するソフトバランシング路線をとるようになった。状況を正し、現実的な安全保障戦略へと立ち返るには、現在の大戦略をより抑制的な戦略へと見直し、アメリカは前方展開基地から部隊の多くを撤退させ、同盟国が自国の安全保障にもっと責任をもつようにする必要がある。

追い込まれた金正恩
―― 出口のない窮状

2013年2月号

ビクター・チャ
ジョージタウン大学教授
元米国家安全保障会議(NSC)アジア担当部長

軍務に服することなく、20代後半の若さで権力構造のトップに君臨している金正恩は、現在の体制基盤を強化できるかどうか。それは、彼が権力者としての価値と手腕をもっていることをエリート層に立証できるかに左右される。一連の軍高官の解任劇は、金正恩が、彼らからビジネスの既得権益を奪い取ることで、自らのパトロンネットワークを強化しようとした結果だと考えられる。だがその結果、軍高官の不満は高まっている。韓国に対して強硬策をとって国内的に手腕を示そうにも、すでに、ソウルは北朝鮮の強硬策には大規模な報復攻撃も辞さないと表明しており、軽々に火遊びはできない。中国にさえも見限られた部分がある。しかも、携帯電話の普及とインターネットユーザーの拡大によって北朝鮮社会は変化しつつある。金正恩はいずれ身動きのできない状況へと追い込まれ、アメリカは、北朝鮮の核管理体制の弛緩という悪夢のシナリオに直面する恐れがある。・・・

2013年にわれわれが直面する大きな課題は三つあると考えられる。第1はシリア紛争とその余波、そしてイランの核開発問題。第2は、東シナ海、南シナ海の領有権論争が新たな展開をみせることになるかもしれないこと。そして、第3は不安定なグローバル経済だ。・・・東シナ海、南シナ海での領有権問題をめぐって緊張が高まっている環境で、(日中韓に)新指導者が誕生したことの意味合いを考える必要がある。・・・東アジアの新指導者たちは、いずれも権力基盤を固め、支持層に対して問題を処理し、国益を守っていく力があることを示そうと試みるはずだ。当然、各国の指導者が相手国に妥協をするのは非常に難しい情勢にある。・・・しかも、領有権問題にはナショナリズム要因だけでなく、石油、天然ガス、鉱物資源などの経済資源問題も関わっている。・・・グローバル経済も依然として不安定だ。ユーロゾーン経済は失速し、中国経済の成長も減速している。ブラジル経済もインド経済も同様だ。アメリカ経済も非常にゆっくりとしたペースでしか回復していないし、政治対立に足をとられている。・・・

2013年、米経済の先行きは、わずかながらも明るくなると予測できる。より持続性のある経済成長パターンへと、ゆっくりとながらも構造的適応を遂げつつあるからだ。デレバレッジプロセスもかなり進み、その結果、国内需要が刺激され始めている。とはいえ、失業と格差が、今後も力強い経済への回帰を阻む、足かせであり続けるだろう。(マイケル・スペンス)

ヨーロッパ経済の成長がさらに減速し、周辺諸国における改革路線が圧力にさらされ続け、通貨同盟を強化しようとする試みがほとんど先に進まないようであれば、市場はより厳格なシグナルを発することになるかもしれない。(ロバート・カーン)

マクロ経済政策に関する重要な新トレンドとは、中央銀行が、リセッション下の深刻な失業問題により積極的に対処するために、インフレを一時的に許容するような態度をとり始めたことだ。(マーク・トーマ)

2013年には、中国経済の8%の成長が、失望としてではなく、新しい規範とみなされるようになるだろう。(ユコン・ファン)

2012年末に復活の兆しをみせていた米住宅市場は、2013年には完全な離陸を果たすだろう。(マーク・ザンディ)

北朝鮮の核実験に中国はどう対処するか

2013年02月

ビクター・チャ
ジョージタウン大学教授

北朝鮮が核実験を実施するのは、金正日生誕の日である2月16日、あるいは、韓国で新政権が誕生する2月25日前後と言われている。なぜ、国際社会の批判にも関わらず、平壌は核実験を強行しようとしているのか。ブッシュ政権の米国家安全保障会議(NSC)でアジア部長を務めたビクター・チャは、北朝鮮は核実験を通じて国内の権力継承プロセスを進展させ、「核武装国家としての地位を確立したいと考えている」と指摘する。だが、そうした動きは北京との関係も不安定化させている。「平壌は中国国内の貧しい省の一つであるかのように北京に扱われることに反発し」、一方、北京は、「北朝鮮が挑発路線を続け、それを中国は阻止しようとしない」と国際社会から批判されることに困惑している。中国が北朝鮮への支援をすべて打ち切れば、北朝鮮の命運は尽きる。だが、北京は朝鮮半島の統一国家がアメリカの同盟国になるのを望んでいないために、現状で、中国が支援を打ち切るとは考えられない。・・・

イギリスのEUジレンマ
――脱退すべきか、踏みとどまるべきか

2013年2月号

ロビン・ニブレット
チャタムハウス ディレクター

「あなたはEUのことが好きですか」とイギリス人に聞けば、「嫌いだ」という答えが返ってくる。「EUから脱退するチャンスがあれば、脱退を支持するか」と聞けば、一部の人は「支持すると思う」と答えるだろう。だが、「イギリスの国内雇用と経済成長をリスクにさらしてもEUから脱退すべきか」と聞けば、人々から明確な答えは返ってこなくなる。つまり、開放的なヨーロッパそして貿易をめぐって、イギリスは主要プレイヤーであり続けたいと考えているが、ユーロのメンバーではないイギリスが、銀行同盟や財政同盟などの経済同盟の深化が必要とするルールに、手足を縛られるのは避けたいと考えている。これが脱退論の背景にある。・・・私はイギリスがEUから脱退する可能性は低いとみている。問題は、仮に国民投票でEU脱退が否決されても、ヨーロッパは「イギリスが本当にヨーロッパにコミットしている」とはもう考えなくなることだ。この場合、イギリスはヨーロッパ政治の傍流に追いやられることになる。(R・ニブレット)

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