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論文データベース(最新論文順)

インド太平洋経済枠組みの試金石
―― いかに同盟国の同意をとりつけるか

2023年3月号

メアリー・E・ラブリー ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー

アメリカが自由貿易合意への抵抗感をもっているために、インド太平洋経済枠組み(IPEF)は一般的な貿易協定とは違って、参加国に米市場への特恵的アクセスをオファーしていない。もちろん、米市場の開放という具体的な見返りがない限り、交渉参加国が、IPEFが求める労働政策や環境政策の見直しへの国内の反発を克服するのは難しくなる。「中国抜き」という条件を満たした国に米市場への特恵的アクセスを認めれば、生産コストを上昇させるような新たな義務を負うとしても、経済的には合理的かもしれない。だが、そうしない限り、ワシントンは急成長するインド太平洋地域の発展に影響を与えるチャンスを再び潰してしまう恐れがある。・・・

台湾の安全と平和を守るには
―― 最善の対策は軍事領域にはない

2023年3月号

ジュード・ブランシェット 戦略国際問題研究所  フリーマンチェア(中国研究)
ライアン・ハス ブルッキングス研究所 シニアフェロー

多くのアナリストや政策立案者が提言している軍事領域の決定で、アメリカの全般的台湾アプローチを規定してはならない。今後5年間に配備可能な米軍の追加戦力では、台湾海峡の軍事バランスを根本的に変えることはできない。ワシントンの政策の最終目標は台湾の平和と安定の維持であり、平和を維持するには、中国の不安の原因を理解し、習近平を追い込まないようにして、統一が遠い将来の課題であると認識させる必要がある。ときには、難題の解決をあえて目指さず、先送りすることが最善の政策になる。・・・

民主主義を脅かすスパイウェアの脅威
―― 標的は野党と反政府勢力

2023年3月号

ロナルド・J・デイバート トロント大学教授(政治学)

イスラエルに拠点を置く「NSOグループ」がプログラミングしたスパイウェア「ペガサス」が、各国の著名な野党政治家、ジャーナリスト、人権活動家のデジタル機器から発見されている。ペガサスは、最新のスマートフォンに気づかれずに侵入でき、オペレーターはターゲットの個人情報にほぼ完全にアクセスできる。こうしたスパイウェアを利用しているのは、世界の独裁者だけではない。多くの民主国家も、人権と説明責任についての確立された規範を侵害する形で、スパイウェアを利用し始めている。しかも、この産業はほとんど規制されていない。

中国の経済強制策を抑止せよ
―― 集団的レジリアンスの形成を

2023年3月号

ビクター・チャ ジョージタウン大学教授

北京はこの十数年にわたって、「台湾と交流し、香港の民主化を支持した貿易相手国、新疆ウイグル自治区でのジェノサイド(民族大量虐殺)やチベットにおける抑圧を批判した国や企業」に禁輸措置をとり、大衆の不買運動を焚きつけて報復してきた。北京が貿易パートナーに対して経済的な無理強いをする理由の一つは、「相手国が自国に報復措置をとることはない」と自信をもっているからだ。だが、単独では劣勢でも、オーストラリア、日本、韓国、アメリカがまとまれば、中国に対抗できる。この4カ国の連帯に北京の無理強いに遭ったことがある諸国を参加させれば、集団的レジリアンスはさらに強力になり、中国の高圧的行動、経済的無理強いを抑止できるようになる。

東アジアの新戦略環境と同盟関係
―― 同盟国の不安にどう対処するか

2023年3月号

カテリン・フレーザー・カッツ 元米国家安全保障会議ディレクター
クリストファー・ジョンストン 前米国家安全保障会議ディレクター
ビクター・チャ 元米国家安全保障会議ディレクター

「アメリカは、核兵器を含む、あらゆるパワーを用いて、同盟国の領土と主権に対する外からの攻撃を抑止し、必要なら、相手を打倒する」。ワシントンはこの安全保障コミットメントを守れるのか。東京やソウルを守るために(北朝鮮を攻撃して)、アメリカの都市が核攻撃の対象にされるリスクをワシントンは本当に引き受けるのか。同盟諸国は疑念を払拭できずにいる。いまや韓国人の70%以上が核武装を支持し、50%以上が米軍の戦術核の再配備を求めている。日本でも80%以上が中国、北朝鮮、ロシアを軍事的脅威とみなしている。不安を募らす東京とソウルを安心させるために、ワシントンはどのように対処すべきなのか。

国益と自由世界擁護の間
―― ウクライナとアメリカの国益

2023年3月号

ロバート・ケーガン ブルッキングス研究所シニアフェロー

オバマ大統領(当時)は、「ウクライナは、アメリカよりもロシアにとって重要であり、同じことは中国にとっての台湾についても言える」と何度も語っている。一方で、第一次世界大戦、そして第二次世界大戦から今日までの80年間、アメリカがそのパワーと影響力を行使して自由主義の覇権を擁護し、支えてきたのも事実だ。ウクライナの防衛も、アメリカではなく、自由主義の覇権を守ることが目的なのだ。「アメリカはウクライナに死活的に重要な利益をもっている」とみなす米議員たちの発言は、ウクライナが倒れれば、アメリカが直接脅威にさらされるという意味ではない。(関与しなければ)「リベラルな世界秩序が脅かされる」という意味だ。アメリカ人は、再び世界はより危険な場所になったとみなし、紛争と独裁に支配される時代に向かいつつあるとみている。

それぞれのウクライナ戦争
―― 大国、主要国、途上国

2023年3月号

シブシャンカール・メノン 元インド外務次官

世界の多くの地域では、2022年のもっとも重要な問題は、ウクライナ戦争とはほとんど関係がなかった。途上国の多くはコロナ禍の大混乱から立ち上がろうとしている局面にあり、債務危機、世界経済の成長減速、気候変動などのさまざまな難題に直面している。中国にとっても、ウクライナ戦争は大きな足かせとなった。戦争は世界経済、中国のエネルギーと食糧の輸入、そしてロシアとの事実上の同盟関係に影響を与え、世界における中国の影響力は制約された。一方、日独は新しい道を歩み始めている。世界の多くの地域にとって、ウクライナ戦争は、世界秩序を再定義するよりも一段とさまよわせ、国際的な緊急課題にどう対処するかについて、新たな疑問を浮上させている。そして、現在の大国間対立に代わる第3の道はまだ視野に入ってこない。

アジアの安定と米国の優位
―― 大国間政治と非同盟主義

2023年3月号

ヴァン・ジャクソン ビクトリア大学ウェリントン 上級講師(国際関係論)

ワシントンは、1980年代以降、アジアにおけるアメリカの優位と地域の安定は共存しているだけでなく、そこには、因果関係があるとさえ考えるようになった、いまや、支配的優位を維持することにこだわり、主要なグローバルライバルである中国を抑え込み、弱体化させることを意図している。一方、東南アジア諸国連合(ASEAN)を含むアジアの多くの国は、米中のどちらにも与しない非同盟主義を模索している。アメリカは、自らがイメージする平和への道をアジアに強要できないことを理解しなければならない。支配的優位を確立するという野心を抑え、パワーポリティクスを展開する抽象的舞台としてではなく、そのままのアジアに対応していく必要がある。アメリカは地域の平和を支援することも、地域的優位を模索することもできる。だが、二兎を追うことはできない。・・・

北朝鮮の脅威に向き合うには
―― 米韓と日本による抑止力強化を

2023年3月号

スー・ミ・テリー ウィルソンセンター アジアプログラム ディレクター

平壌の核開発はより危険な新段階に入りつつある。核弾頭の備蓄を急速に増やすと同時に、金正恩は、核使用のハードルを低くしている。核戦力を拡大し、核の先制使用ドクトリンを示し、アメリカとの非核化の話し合いには応じない姿勢をすでに明らかにしている。実際、平壌の判断ミスが戦争につながるリスクは高まっている。連携のとれた力強い対策をとるには、米韓同盟を深化・拡大するとともに、この地域のアメリカのもう一つの主要な同盟国である日本と韓国の協力を強化しなければならない。そのためには、日韓が国内における政治的な反発を克服する一方で、ワシントンが北朝鮮の動向にもっと大きな関心を寄せる必要がある。・・・

ドローン外交の夜明け
―― ドローンがパワーバランスを覆す

2023年2月号

エリック・リン=グリーンバーグ マサチューセッツ工科大学  アシスタント・プロフェッサー(政治学)

いまや、イランやトルコなどの新たな軍事サプライヤーがドローン輸出を通じて対外的影響力を強化している。かつて軍事ドローンの生産をほぼ独占していたアメリカは、ミサイル技術管理レジーム(MTCR)の輸出規制によって、緊密な同盟国への輸出さえ制限されている。この間隙をついて、MTCRに加盟していない中国やイスラエルが積極的にドローンビジネスに参入し、ほとんど規制を気にせずに取引をするようになり、イランやトルコがこれに続いた。ドローンの輸出相手国との関係を深め、ライバルに対抗し、応分の見返りと譲歩を引き出すことで、ドローン外交は、地域の安定を脅かし、アメリカのような伝統的兵器輸出国の影響力を脅かしている。・・・

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