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論文データベース(最新論文順)

世俗化する社会とキリスト教一致運動
―― ベネディクト16世の遺産と新教皇

2013年7月号

ビクター・ゲタン
ナショナル・カトリック・レジスター紙記者

キリスト教は11世紀に東方教会と西方カトリック教会に分裂し、16世紀の宗教改革(プロテスタント運動)でさらに分裂した。だが21世紀の現在、キリスト教はこうした過去の亀裂を修復しつつある。2013年に教皇を退任したベネディクト16世は「キリスト教の一致」を強く模索し、2012年の司教会議に招いたゲストの中にはロシア正教会のイラリオン渉外局長、トルコ正教会のバルトロメオ1世がいた。そして、ここで演説を行ったのは英国国教会のローワン・ウィリアムズ・カンタベリー大主教だった。この流れは、先進国における世俗化と物質主義の波によってキリスト教の存続が脅かされているという危機感を各派が共有していることによって形作られている。「キリストは神であり救い主であり、隣人を愛することは信仰上の義務である」という信念に比べれば、これまでキリスト教の一致を妨げてきた教理上の違いなど取るに足らないという認識が高まりつつある。

米大企業CEO巨額報酬の謎に迫る

2013年7月号

スティーブン・N・カプラン
シカゴ大学ビジネススクール名誉教授

低所得層の収入が停滞するなかで、米大企業エグゼクティブたちへの報酬はますます高額化していると考えられている。このため、所得格差を気に病む市民も政治家も、批判の矛先を大企業のCEOと役員会に向けて、「コーポレートガバナンスがうまく機能していないから、巨額の報酬をCEOは受け取っている」と批判している。だが現実には、この10年以上にわたってアメリカ上場企業CEOの報酬は上昇するどころか低下しているし、彼らの報酬は自社の株価と連動して決定されている。当然、実績が悪いと報酬額の引き下げ、あるいは解任というペナルティが課される。CEOの報酬が経済格差を拡大させた大きな要因だったわけでも、企業統治が機能していないわけでもない。この現実を認識しない限り、(CEO報酬をめぐって)企業を規制することによって富裕層と貧困層の格差を小さくできると考える政策立案者たちは、結局は失望し、予期せぬダメージを抱え込むことになる。そうしたやり方は、アメリカ経済の重要なエンジンである優良上場企業から、有能な人材を確保する手段を奪い取ることになるからだ。

米エネルギー革命のポートフォリオバランス

2013年7月号

マイケル・レビ
米外交問題評議会シニア・フェロー

アメリカで起きているのは天然ガス開発ブームだけではない。原油生産は史上最大規模の年間生産量の伸びを示し、風力、太陽光、地熱など、先端技術を用いた再生可能エネルギーによる電力生産も2倍に増え、生産コストも低下している。しかも車やトラックの燃費の向上によって、石油需要は低下しつつある。最大の問題は、そこには環境保護派と補助金を通じたエネルギー経済への政府の介入を嫌う人々の間に厄介な対立が存在することだ。重要なのは、特定のエネルギー資源を選ぶのではなく、こうした「新展開のすべてをうまく生かしていくことで、エネルギーにとって最善の未来を切り開けること」を双方が認識することだ。ワシントンの指導者たちは、クリーンエネルギーへの移行を進めつつも、伝統的なエネルギー資源にも依存する、あらゆるタイプのエネルギーの機会を慎重に生かしていく一方で、地球温暖化を加速させ、アメリカの石油依存を持続させるような危険なエネルギー消費にはペナルティを課す必要がある。このバランスこそが、アメリカにおけるエネルギーの未来を左右することになる。

経済相互依存で日中紛争を抑え込めるか
―― ナショナリズムかそれとも貿易か

2013年7月号

リチャード・カッツ
オリエンタル・エコノミック・リポート誌編集長

尖閣問題をめぐって緊張が高まっているとはいえ、現状では日中の経済相互依存とワシントンの防衛コミットメントによって、何とか平和が保たれている。もちろん、この海域で武装した(日中の)船が偶発的に衝突すれば、意図しない紛争へとエスカレートする危険もある。だが、より重要なポイントは、日中の経済的相互依存が紛争のリスクを抑え込めるかどうかだろう。安倍晋三首相が、2012年の選挙キャンペーンで表明した強硬路線を手控えているのは、日本が経済的に中国に依存していることで、ある程度説明できる。中国も同様で、その輸出主導型経済は(日本からの)輸入に依存している。2013年3月に北京で開かれた日中経済協議の際に中国の李克強首相はメディアに対して「自分が日本の財界指導者と握手している様子を写真にとらないように」と要請したかもしれないが、それでも、日本の経済指導者たちに対中投資を要請している。雇用と歳入を求める中国各省の政府も、危機が先鋭化した後も、日本企業に中国での事業を拡大するように強く求めている。現状では、相互抑止の経済バージョンがエスカレーションを抑え込んでいる。

中国の経済成長モデル見直しとエネルギー価格の自由化

2013年7月号

ダミアン・マ
ポールソン研究所フェロー

相対的に貧困な国で経済が急拡大した場合、インフレを警戒する必要がある。外国からの原材料輸入とともにインフレも輸入してしまうリスクがあるからだ。中国政府はこのリスクを回避しようと重工業を中心とする基幹産業のために人為的にエネルギー価格を抑え込む価格統制策をとってきた。低めに抑えられたエネルギー価格は、低く抑えられた為替レート同様に輸出競争力を支え、(インフレの抑制と)輸出主導型の経済成長モデルに貢献した。だがその結果、エネルギーの利用効率の改善や環境問題への配慮は二の次とされ、深刻な環境汚染と社会不満が広がりをみせ、いまや経済モデルを見直さざるを得なくなっている。すでに北京の新体制は中国の経済モデル移行に向けた重要な一部として、エネルギーの価格改革に高い優先順位を与えているようだ。現実にそうなれば、中央統制経済のもっとも頑迷な遺産を中国が取り払おうとしていることへの明確なメッセージになる。

シリア政府は本当に化学兵器を使用したのか
―― 反体制派軍事支援と和平会議の行方

2013年7月号

グレゴリー・D・コブレンツ
米外交問題評議会フェロー

ワシントンは「シリアのアサド政権はサリンを国内で(複数回)使用している」との情報機関がまとめた分析結果を前提に、シリアの反体制派に軍事支援を行うと6月中旬に表明した。この情報分析は、シリアから持ち出された(犠牲者の血液、尿、毛髪などの)「生理学的サンプル」を分析してサリンによる攻撃があったと判断している。だが国連は「データ(サンプル)がどのように収集されたか、そのプロセスを示す説得力のあるエビデンスが存在しない以上、情報の有効性は損なわれる」とみている。この分析でもっとも奇妙なのは、攻撃の規模(と犠牲者)が100―150人と非常に小さいことだ。・・・化学兵器を使用して米政府のレッドラインを超えることのリスクをあえて冒してまで、化学兵器をかくも限定的な方法で使用することの戦略的利益をシリア政府がどう判断したのか、判然としない。・・・いまや和平会議が実施される見込みは大きく後退している。

Foreign Affairs Update
サイバー諜報とネットワーク破壊の垣根はない
―― バーチャル諜報から物理的破壊へ

2013年6月号

リチャード・ベイトリック/マンディアント チーフセキュリティオフィサー

それがいかなるものであれ、諜報活動は深刻な問題を伴うが、サイバー空間での諜報活動が、現実世界におけるそれとは違っていることを理解していない人もいる。侵入者が、サイバー諜報に必要とされるのと同じツールで「デジタルな破壊」をなし得ることを理解している人はほとんどいない。要するに、敵がコンピュータシステムに入り込んだ場合、そのダメージがどの程度のものになるかは、敵の意図次第なのだ。これまでのところ、サイバー戦争の具体例として広く受け入れられているのは、イランの核施設に対する「スタックスネット」による攻撃だけだが、サイバー諜報がサイバー戦争に迅速に姿を変えることを理解する必要がある。自分のネットワークへの侵入を速やかに突き止め、それが何であれ、侵入者が目的を果たす前にシステムから排除しなければならない。もはや、「それがサイバー諜報である限り、侵入者の活動は許容できる」という虚構に逃げ込むことはできない。

最近、ウィキペディアは、ブラジルのリオデジャネイロの3人の研究者が開発したプログラミング言語「ルア」をシステムとして採用した。IT技術を支える「エコシステム」を国内にもたない途上国発のIT言語が、ウィキペディアという世界的組織に採用されたのは画期的な展開だが、そこにいたる道程をみると、途上国の技術者が直面する障害が浮かび上がってくる。途上国の技術者が世界で成功するには、技術開発と市場化の「エコシステム」をもたない国内から巣立ち、まず世界で成功を収める必要がある。外国に出るのは危険な坂道に足を踏み入れるようなもので、不利な場所に住み、不利な言語を使い、不利な制度のなかで開発を続けなければならない。それでも、彼らは外国に目を向け、世界中で使われている同じテクノロジーを用いて問題を解決しようとした。そうするしか成功する方法はなかったからだ。・・・

北極圏の未来
――北極圏サークルの立ち上げを

2013年6月号

スピーカー オラフル・ラグナル・グリムソン  アイスランド大統領、 プレサイダー スコット・G・ボルガーソン  前外交問題評議会シニア・フェロー

アイスランドの氷河はヨーロッパ最大の規模をもっているが、この氷河の後退は地球温暖化がたんなる理論ではなく、現実に起きていること、それが大きな変化をもたらしていることを物語っている。海面の上昇によって、世界の都市と経済はいずれ大きなダメージを受けると思われる。中国の研究者たちは、・・・グリーンランドや南極の氷床の溶解による海面上昇によって、上海を始めとする多くの都市が水没するというシナリオを想定している。・・・われわれは北極評議会を越えたより大きなプレイヤーを内包するフォーラム、北極圏サークルも立ち上げようと試みている。これは、北極圏諸国だけでなく、アジアやヨーロッパ諸国の科学者、活動家、企業、政治指導者たちが参加するフォーラムだ。

Foreign Affairs Update
北京は近く経済改革に着手する
―― 改革の必要性が障害を克服する

2013年6月号

エバン・A・フェイゲンバーム/シカゴ大学ポールソン研究所副所長
ダミアン・マ/シカゴ大学ポールソン研究所フェロー

「経済改革に踏み切れば、パワフルな既得権益層の抵抗と反発はさけられなくなる。環境汚染問題や土地接収問題を前に民衆の不満が高まりをみせていることも改革を難しくしている。改革は短期的には経済を不安定化させ、社会不安をさらに高める危険を伴うからだ」。多くの専門家がこう考え、中国における経済改革の可能性を否定的にとらえている。だが、90年代末に中国が経済改革を実施していることを思いだすべきだ。朱鎔基が手がけた改革のケースからみても、「政治への信頼性の危機、世界の経済・金融危機に対する脆さへの認識、そして変革の必要性を認識する指導層の存在」という三つの条件が揃えば、中国は大胆な改革に踏み切る可能性があるし、いまやこれらの条件が満たされつつある。習近平と李克強は改革が必要であることをすでに明確に認めている。おそらく、2013年秋の中央委員会第3回総会で改革アジェンダが公表されることになるだろう。

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