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論文データベース(最新論文順)

CFR Interview
シリア和平への困難な道筋
――米ロの役割とイラン、ヒズボラの存在

2013年6月号

フレデリック・ホフ
大西洋評議会シニアフェロー

アメリカはシリアの反体制派を、ロシアはアサド政権を説得して、紛争の終結に向けた交渉テーブルに着かせようとしている。だが、交渉の目的が、「平和的でうまく管理された完全な体制移行を実現すること」だとすれば、国際会議が成功する見込みはほとんどない。・・・現状では、コミュニティ、都市、町ごとにさまざまな武装集団が存在し、これらのすべてが自由シリア軍を自称している。ワシントンは反体制派、自由シリア軍を一つにまとめようと試み、シリア最高軍事評議会に指揮系統を集中させ、支援とコンタクトの一元的な窓口にしたいと考えている。・・・一方、アサド政権を交渉テーブルにつくように説得するというロシアの任務の難易度は非常に高い。しかも、この数週間という単位でみると、アサド政権の部隊は、反体制派から一部の地域を奪回している。これはイランとヒズボラの戦士が戦術を考案し、攻撃を実施した上で、攻略した地域をシリア軍に明け渡したからだと報道されている。・・・・

追い込まれたエルドアン首相
―― もはやトルコ大統領への夢は潰えたか

2013年06月

ハリル・カラベリ
ジョンズホプキンス大学ポールニッツ・スクール附属
中央アジア・カフカス研究所シニアフェロー

多くの人が指摘するとおり、トルコ政府が発表したイスタンブール中心部の再開発計画をきっかけに起きた反政府デモをイスタンブールやその他の都市で主導しているのは世俗派リベラルの中間層だ。だが、この運動の背景にはエルドアンの強引な権威主義路線、イスラム化路線の高まりに対する反発がある。こうした路線に反発しているのはリベラル派だけではない。AKPの主要な支持基盤である宗教保守派も、中道右派も彼に反発している。最近、エルドアン政権は 飲酒やアルコール飲料の販売や宣伝に関する規制を新たに強化し、その後、今回のデモが起きている。憲法を修正し、大統領により大きな権限をもたせるというエルドアンの計画は、ほぼすべての権限を、彼が手に入れたいと考えている大統領ポストに集中させ、他の政治ポジションの力を去勢するのが狙いだった。だが、数多くの大統領選挙に関する世論調査をみても、すでにギュルがエルドアンをリードしている。タクシム広場の騒ぎのなかから、最終的な勝者として姿を現すのはギュル現大統領とおそらくは再生したAKPになるだろう。

なぜアメリカの教育は失敗したか
―― 諸外国の成功例に学ぶ

2013年6月号

ジャル・メータ
ハーバード大学教育大学院アシスタントプロフェッサー

アメリカの小・中・高校生の3分の2以上は読解力や情報の暗記といった基本的スキルは身につけているが、情報の応用や分析をうまくこなせるのは、その3分の1にすぎない。世界的に見ても、高度な思考力という指標では、アメリカの生徒は中レベルの評価に甘んじている。問題は、(生徒の学力について)教師と学校の説明責任を政府が問うことで、子供の学力を高めようとしていることだ。これに対して、実際に子供の学力が高い諸国は、現場に投資することで、教育体制の「品質管理」を実現している。こうした諸国では生徒の学力が高まると、政府の教育投資への世論の支持が高まり、教師という仕事の魅力も高まるという好循環が存在する。工場労働が全盛期の時代に作られたアメリカの学校制度は、21世紀の経済が要求する複雑な学習と批判的思考を生徒たちに身につけさせる内容と体制になっていない。ゼロから新しいシステムを構築し、教師の仕事を高度な専門職として位置づけて、教職を再確立する必要がある。

Foreign Affairs Update
なぜトルコはイスラエルとの関係修復に踏み切ったか
―― 変化した安全保障認識とエネルギーの必要

2013年5月

マイケル・J・コプロー イスラエル研究所・プログラム・ディレクター

マヴィ・マルマラ号事件が2010年に起きて以降、トルコとイスラエルの関係は冷え込んできたが、2013年3月に両国政府は外交関係を正常化することに合意した。3年に及んだイスラエルとの対立状況は、アンカラにとって厄介な国内問題を切り抜ける便利な政治ツールでもあった。そのトルコがなぜイスラエルとの関係修復に応じたのだろうか。理由は二つある。シリア内戦とエネルギー安全保障という問題をめぐって、アンカラがイスラエルの協調を切実に必要とするようになったからだ。イスラエルはシリア情勢をめぐって優れた情報を持っているだけでなく、最近発見されたハイファ沖の天然ガス資源はトルコにとっても、非常に魅力的な資源だ。「イスラエルとの関係修復によって得られるトルコの経済・外交利益が、対立路線から得られる国内政治上のメリットを上回る」と判断できる環境が生まれていた。これで変化の多くを説明できる。

Foreign Affairs Update
グローバル貿易を蝕む
――政治腐敗と知的財産の盗用

2013年5月号

パメラ・パスマン/CREATe・org代表

多くの国で政治腐敗と知的財産の盗用がビジネスにつきまとう隠れたコストを作り出し、そのダメージは膨大な規模に達している。2010年に国連が発表した推定によると、政治腐敗によって毎年世界のGDPの5%以上が失われている。別の言い方をすれば、賄賂に1・5兆ドル以上が費やされていることになる。知的財産の盗用も同じく大きな問題となっている。2008年当時6500億ドル規模だった偽造品や著作権侵害被害による経済損失は、2015年には1兆7700億ドルに達すると予測されている。偽造と著作権侵害が犯罪ネットワークの大きな資金源となっていることも問題だ。しかも、偽造医薬品や自動車部品・航空機部品の偽造品はうまく作用・作動しないだけでなく、大きな物理的危険を伴う。これらの問題をめぐって、国際機関にできることは限られており、いまこそグローバル・サプライチェーンにおける「責任あるビジネスプラクティス」を促進する民間主導のプログラムを真剣に検討するタイミングだろう。

米・パキスタン同盟の創造的破壊を
―― 同床異夢同盟の歴史と破綻

2013年5月号

フセイン・ハッカニ / 前駐米パキスタン大使

アメリカとパキスタンの関係はすでに修復不能な状態にある。パキスタン人の80%がアメリカを嫌っており、74%が敵だと考えている。米政府はパキスタンへの援助打ち切りを示唆し、一方、パキスタン軍は米軍のドローンによる領空侵犯から主権を守ると反発している。だが、考えてみれば、アメリカとパキスタンの関係が良好だったことはこれまでも一度もない。アメリカは冷戦期にはソビエトと中国に対する拠点として、9・11以降はタリバーンとアルカイダを叩くために、パキスタンとの同盟関係を望み、一方のパキスタンはインドに対するライバル意識から、ワシントンの軍事援助を確保しようと、アメリカとの連帯と同盟関係に応じてきた。結局のところ、共にその価値を信じていない同盟関係に双方がしがみついているにすぎない。いまや「同盟ではない新しい関係」の構築を模索すべきタイミングだろう。関係を前進させる最善の機会が、その関係が終わったことを認めることで始まる場合もあるのだから。

ラデク・シコルスキはポーランドのビドゴシュチで育ち、1981年春に共産党政権に反対する学生ストライキ委員会を主導した経験がある。その年の後半にヤルゼルスキ政権が戒厳令を敷いたとき、彼はイギリスに留学していた。シコルスキは、1982年から1989年までイギリスで政治亡命者として生活している。オックスフォードを卒業した彼は、ジャーナリストになり、1989年の民主革命後にポーランドに帰国し、政界に身を転じた。1992年にポーランドの国防副大臣に就任した後、1998―2001年に外務副大臣、2005―2007年に国防大臣を務めている。2007年末以降は、ポーランドの外相として活動している。聞き手はギデオン・ローズ(フォーリン・アフェアーズ誌編集長)

パキスタン軍と最高裁と政治
―― 軍事クーデターからソフトクーデターへ

2013年5月号

C・クリスティーン・フェアー
ジョージタウン大学講師

パキスタンにおけるクーデターはいつも同じ筋書きになっている。軍が権力を奪取する場合、先ず社会的支持を確保するために、政治危機を喧伝し、軍の政治介入(クーデター)に正統性があるかのような演出をする。クーデターに成功すると、陸軍参謀総長が大統領に就任し、戒厳令を敷いて法の執行を停止し、議会を解散する。この段階で、最高裁の判事たちは、新大統領としての陸軍参謀総長への忠誠を誓う。忠誠を誓うのを拒んだまともな判事たちは、引退するか、退職させられ、このポストは軍に忠誠な人物に委ねられる。・・・だがここにきてパキスタン軍も、軍事クーデターを民衆がもはや支持しないことに気づき始めたようだ。しかし、軍と裁判所が対立したチョードリー事件以降も、依然として軍と裁判所は手を組んでいる。そしていまや軍は自分たちの名代として私人を使った「ソフトクーデター」という手法を取り始めている。

モンゴルにとって史上最大の資本が投下されているオユトルゴイ鉱山の開発が危機にさらされている。モンゴル政府がプロフィットシェア(利益分配率)をめぐる再交渉を求めたことで、欧米資本による開発プロジェクトの先行きに暗雲が立ちこめている。だが、過度に悲観的になる必要はない。モンゴルは、中ロ以外のパートナーを切実に求めているからだ。ロシアはモンゴルに対する石油輸出を政治ツールとして用い、北京も鉱物資源の輸出先が中国に限定されていることにつけ込んできた。こうしてモンゴルは、中ロ以外のパートナーを求める「第3の隣国政策」を制度化し、外資誘致策もこの枠組みのなかに位置づけられている。モンゴルは社会問題を解決し、経済開発を進めるために外資、とくに中ロ以外の外資を望んでいる。必要とされるのは、より明確な投資に関わる法環境の整備だ。これを実現できれば、モンゴルは資源開発の最後のフロンティアとしてのポテンシャルを十分に生かせるようになる。

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