効率に欠ける企業、流動性に乏しい硬直的労働市場、低い失業率、相対的に公平な所得分配、女性に不利な雇用市場など、日本経済の特質の多くは文化によって説明されることが多い。だが、こうした特質は、他の先進諸国が1970年代末から1980年代初頭にかけて導入したネオリベラルの経済改革を日本が実施せずに、近代経済を運営してきた結果に他ならない。そして現在、ネオリベラリズム路線に即して、日本経済を未来へと向かわせようとしているのがTPP(規制緩和)と労働市場改革を中核とするアベノミクスの第3の矢だ。だが、第3の矢が折れれば、生産性の低い会社本位主義を中核とする日本の社会モデルが温存され、結局、日本は経済的にさらに取り残されていく。日本は、1980年代にとらなかった選択を下す、2度目のそして最後のチャンスを手にしている。