1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

論文データベース(最新論文順)

軋みだした中国の統治システム
―― 変化した社会に適応できる政治構造を

2014年1月号

デビッド・M・ランプトン ジョンズ・ホプキンス大学 ポールニッツスクール教授(中国研究)

中国は力強い経済、パワフルな軍隊をもっているかもしれないが、その統治システムは非常に脆い。いまや中国を統治するのは、毛沢東や鄧小平の時代と比べてはるかに難しくなっている。中国の指導者の権力は年を追うごとに弱くなり、中国社会は、経済や官僚組織同様に分裂し、多元化している。しかも、市民社会と民間が大きな力をもちつつある。問題は、政策決定に世論の立場を取り入れつつも、政治構造をそのままに放置していることだ。法の支配への強いコミットメントを示すだけでなく、社会紛争の解決に向けて、司法や立法などの政治制度への信頼性をもっと高める必要がある。優れた政府規制を整備し、より踏み込んだ情報公開を行い、もっと説明責任を果たす必要がある。そうしない限り、今後、中国は過去40数年に経験した以上の大きな政治的混乱に直面することになる。

先進国の金融引き締めと新興市場の通貨危機リスク

2014年1月号

モハンマド・アリ・セルギー  CFRオンライン・ライター/エディター

ブラジル、トルコ、インドネシアといった新興国は、この10年で国際投資家のお気に入りの投資先になった。急成長する国内産業に外資が舞い降り、世界経済の成長を刺激することにも貢献してきた。しかし、投資家は経済になんらかの問題の兆候を見いだせば、資金を引き揚げて、出口へと殺到する。このダイナミクスが、過去数十年で多くの地域で通貨危機を引き起こしてきたし、現状でも、インドネシア、南アフリカ、ブラジル、インド、トルコという「脆弱5カ国」を同様の危機に陥れる危険がある。実際、2013年5月に、ベン・バーナンキが量的緩和の縮小を示唆しただけで、新興市場通貨は下落した。主要先進国経済の量的緩和政策が見直され始めれば、リセッション時には成長のエンジンとみなされてきたダイナミックな新興市場経済の脆弱性がさらけ出される恐れがある。

CFR Briefing
教育ローンは将来への投資か、
未来を抑え込む債務か

2013年12月号

スティーブン・J・マルコビッチ contrubuting editor@cfr.org

アメリカの一流私立大学の場合、授業料と寮費で年間600万円程度の資金が必要になる。家計所得よりも大学学費の方がはるかに高いペースで上昇しているため、いまや「高等教育バブル」が起きるのではないかとさえ懸念されている。当然、教育ローンに頼る人は増えている。だが、その結果、大学卒業時に大きな債務を抱え込むことになる。2011年でみると、米大学卒業生の3分の2が教育ローンを抱えており、平均すると一人あたり2万6600ドルの債務を抱えている。これが将来に向けた良い投資なのか、それとも、未来を拘束する債務なのかをめぐって、論争が起きている。教育ローンは人的資源の育成と将来的な経済投資になり、その恩恵はコストを上回るとする考えがある一方で、その後の経済生活を大きく制約するという批判もあり、社会問題化している。

Foreign Affairs Update
グリーンランドの資源開発ブーム
―― 開発と汚染リスクに揺れる島民たち

2013年12月

アンナ・カタリナ・グラブガード フリーランスジャーナリスト

オーストラリア、カナダ、中国を含む各国の投資家が、鉱物資源開発をめぐって、グリーンランドに押し寄せている。大きな資源が存在すると長く言われながらも、これまではグリーンランドの資源開発を阻む障害が存在した。ごく最近まで氷床が資源豊かな大地を覆い尽くし、しかも、ウランの掘削が禁止されてきたからだ。潤沢なウラン資源と混在する形でレアアースその他の資源が存在するため、事実上、すべての鉱物資源開発ができなかった。だがいまや氷床は溶け出し、グリーンランド自治政府はウラン掘削を禁止する法律を撤廃している。資源開発に異を唱える人はいない。だが、ウランが掘削されることを現地の多くの人が心配している。注意深く掘削しなれば、ウラン掘削によって土地や水が数世代にわたって汚染されるリスクがあるからだ。・・・

CFR Interview
情報活動と情報収集規制改革

2014年12月号

マシュー・ワックスマン
米外交問題評議会シニアフェロー
(法律と外交政策担当)

12月18日、ホワイトハウスは、米国家安全保障局(NSA)による情報収集活動のあり方を見直すために大統領が設置した外部パネル(専門家グループ)がまとめた改革提言を公表した。パネルは、全般的に、一部の監視活動の「コストと恩恵のバランスがとれていない」と表現している。ここで言う「コスト」とは、プライバシーの侵害だけでなく、アメリカの情報技術ツールへの消費者の信頼が損なわれること、そして外交的悪影響が出ていることなどだ。・・・一方で多くの人が、「不合理な捜索および押収に対し、身体、家屋、書類および所有物の安全を保障される」と定めた米憲法修正第4条に関わる憲法ドクトリンは、デジタルコミュニケーション、クラウドコンピューティングに象徴される近代世界では、もはや合理性はないと考えている。・・・(改革に加えて)独立した監督機関の設置に向けた法制化が行われれば、市民の情報活動への信任を高められるかもしれない。・・・・(聞き手はロバート・マクマホン、Editor@cfr.org )

暴かれたアメリカの偽善
―― 情報漏洩とアメリカのダブルスタンダード

2013年12月号

ヘンリー・ファレル ジョージ・ワシントン大学准教授(政治学、国際関係論)
マーサ・フィネモアー ジョージ・ワシントン大学教授(政治学、国際関係論)

E・スノーデンがリークした情報によって情報源や情報収集の手法が明るみに出たとはいえ、予想外のものは何も出てきていない。専門家の多くは、かねて「アメリカは中国にサイバー攻撃をし、ヨーロッパの政府機関を盗聴し、世界のインターネット・コミュニケーションを監視している」と考えてきた。リークが引き起こしたより深刻な問題は、アメリカのダブルスタンダードが明らかになり、理念と原則の国としてのアメリカのイメージを失墜させたことだ。アメリカは、自分たちが唱道する価値を一貫して擁護し、順守してきたわけではなかった。この矛盾を前に、他の諸国は「アメリカが主導する秩序は正統性を欠いている」と判断するかもしれない。ワシントンは(米情報機関の行動に対する)厳格な監視体制を導入し、政策に関する論争をもっと民主的に進めるべきだろう。安易な偽善(とダブルスタンダード)の時代はすでに終わっている。

内戦が続くなかで、ジュネーブに紛争勢力を集めて、シリア内戦を交渉によって解決しようとするアメリカの政策は合理性を欠いている。むしろ、アラウィ派のアサドファミリーにとっても、スンニ穏健派勢力にとっても、(そしてアメリカにとっても)、最大の脅威であるシリアのジハーディスト勢力(イスラム過激派)を一掃するために、アサド政権とスンニ穏健派勢力の大同団結、共闘路線の組織化を模索すべきではないか。アラウィ派は「ジハーディストが権力を握れば自分たちを皆殺しにすること」を理解しているし、世俗的で穏健派のスンニ派も、「ジハーディストが権力を握れば、厳格なイスラム法(シャリア)を強要されること」を知っている。・・・いずれ、穏健派とアサド政権との間で将来に向けた政治的了解、例えば、「ジハーディストを相手とする戦闘が決着に近づいてきた段階で、連邦国家形成を含む、権力共有のスタイルについて政治的妥結をまとめる」こともできるはずだ。・・・・

CFR Briefing
高齢化する中国社会の社会経済・外交的意味合い

2013年12月号

ヤンゾン・ファン/ 米外交問題評議会シニアフェロー(公衆衛生担当)

中国社会は急速に高齢化している。2050年までには、65歳以上の人口が総人口のほぼ4分の1の3億3000万人に達すると考えられている。中国の高齢化は、三つのはっきりとしたトレンズによって促されている。第1は、この数十年における力強い経済成長とともに、平均余命が1981年の68歳から現在の74歳へと延びたこと。第2は、(1950―60年代に生まれた)ベビーブーマー世代が高齢者の仲間入りをしつつあること。そして第3は、1979―1980年代初頭に導入された厳格な人口管理政策によって出生率が大きく低下し、高齢人口の比率を相対的に引き上げていることだ。当然、生産的な労働力の規模が縮小し、その結果、賃金レベルが上昇し、労働集約型産業における中国の競争力は低下する。しかも、年金、医療、社会保障制度はうまく整備されていない。・・・その経済的、外交的意味合いは何か。・・

Foreign Affairs Update
日本にネオリベラリズムは似合わない

2013年12月号

トバイアス・ハリス
テネオ・インテリジェンス
アナリスト(日本の政治・経済)

小泉元首相同様に、安倍首相もネオリベラルの改革者になれる可能性はほとんどない。安倍政権の第3の矢も、経済産業省が描く国が主導する優先課題を反映しているに過ぎない。しかも、改革案が表明されても、その構想を結束して骨抜きにし、停滞させ、ブロックしようとする官僚と政治家たちがいるし、年功序列、終身雇用といった現在の経済システムを支えるさまざまな要因は、それぞれに相互を補完し、堅固さを保っている。安倍首相がネオリベラリズムに向けた日本流のショック療法を実施すると考えるのは合理性を欠いている。確かに、アベノミクスはすでに日本のマクロ経済パフォーマンスを改善しているかにみえるし、制度的改革も段階的に刺激できるかもしれない。だが、安倍首相がネオリベラルの経済体制へと日本を作り替えて、それを後任者に委ねることはあり得ないだろう。・・・

Foreign Affairs Update
シリコンバレーとプライバシーとNSA
―― 情報革命とプライバシー保護

2013年12月号

アブラハム・ニューマン
ジョージタウン大学准教授

グーグルにとって都合が良いことは、NSA(米国家安全保障局)にとっても都合が良く、NSAが、シリコンバレーが求める穏やかなプライバシー規制を利用して、好きなようにデータを収集・蓄積していたことはいまや明らかだ。ユーザーもいまやこの点を認識しており、今後、新たなテクノロジーによって収集できる個人情報の量と種類が増大していくにつれて、巨大IT企業をこれまでのようには信用しなくなるだろう。テクノロジー企業が、ユーザーの信頼を回復し、経済的成功を維持していくには、これまでのようにプライバシー保護をめぐって企業側の自主規制を重視する路線を見直す必要がある。自主規制は必要だが、それだけでは十分ではない。個人情報は、適切な管理を必要とする貴重なデータであり、IT企業は、不必要なデータ収集を制限すると同時に、そのビジネスモデルにプライバシーの保護と利害共有者としてのユーザー保護を統合していく必要がある。

Page Top