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論文データベース(最新論文順)

トルコ経済の成長は幻か ―― 成長基盤を安定化させるには

2014年2月号

ダニエル・ドンビー フィナンシャル・タイムズ紙トルコ特派員

2013年5月にアンカラは巨大な建設プロジェクトを進める一方で、国際通貨基金への残りの債務を返済し、トルコ人の多くにとって、(2001年の銀行危機以降の)長い屈辱の時代にも終止符が打たれた。2005年にEU加盟交渉が開始され、また先進国が量的緩和政策をとったことで、トルコに大きな資金が流れ込み、2010年の成長率は9・2%、2011年の成長率は8・8%に達した。だが、このために見えなくなっている構造的な問題をトルコは抱えこんでいる。外資への過剰な依存体質、そして、経済領域への政治の行き過ぎた介入という二つの課題をトルコは克服していかなければならない。政府にとって好ましくないニュースを流す放送局に今後も政府がペナルティを課し、大きな決定がエルドアン首相の気分で左右され、そして、企業が略奪的な罰金に怯えるようになれば、トルコがこれまでのような経済成長を続けるのは難しくなる。・・・

自由貿易協定、20年後の現実 ―― NAFTAとメキシコ

2014年2月号

ホルヘ・G・カスタニェーダ 元メキシコ外相

NAFTA(北米自由貿易協定)が発効してから20年後の現在、おそらくあらゆる人が唯一同意できるのは、「あらゆる議論・主張が誇張されていたこと」だろう。貿易合意としては、NAFTAはメキシコにとって否定しようのないサクセスストーリーであり、輸出の劇的な増大をもたらすきっかけとなった。しかし、NAFTAの目的が経済成長を刺激し、雇用を創出し、生産性を改善し、所得水準を引き上げ、移民流出を減らすことだったとすればどうだろうか。判断は分かれるはずだ。一人当たりGDPもこの20年で2倍になった程度で、年平均成長率でみれば1・2%にすぎない。この時期にNAFTAに参加していないブラジル、チリ、コロンビア、ペルー、ウルグアイは、メキシコよりもはるかに高い一人当たりGDPの成長を実現している。しかし、だからといって、NAFTAは失敗だったと決めつけることもできない。むしろ、メキシコは、エネルギー、移民、インフラ、教育、安全保障など、1994年の交渉テーブルに置き去りにしてきたアジェンダに今後取り組んでいくべきだろう。NAFTAは失望を禁じ得ない結果しか残せていないが、メキシコは、さらなるNAFTA的な路線、つまり、地域的経済統合路線を必要としている。

イラン攻撃論の再浮上という迷走

2014年2月号

ジョージ・パーコビッチ カーネギー国際平和財団副会長(研究担当)

米上院のタカ派集団が、イランにウラン濃縮の能力や施設を維持することを認めるようないかなる最終合意も認めないという内容の法案(イラン非核法案)を提出したことをきっかけに、軍事攻撃論が再浮上している。だが、軍事攻撃を含む、いかなる手段を通じても、イランのウラン濃縮を完全に止めさせるのは不可能だ。むしろ、イスラエルがイランに対する軍事攻撃を実施すれば、イスラエルの国際的正統性は地に落ち、イスラエルの核解体を求める圧力が大きくなるだけでなく、対イラン経済制裁への国際的支持は解体していく。交渉の最終目的はイランのウラン濃縮を完全に止めさせることではない。短期間で核兵器を生産できる能力をイランに与えないようにその能力を枠にはめることだ。オバマ政権の戦略が、イスラエルやうまく考案されていない米議会の冒険主義で損なわれるのを放置すべきではない。

Foreign Affairs Update
中国の誤算と日米韓の対応

2014年2月号

デビッド・A・ウェルチ
国際ガバナンス・イノベーションセンター(CIGI)シニアフェロー

ADIZ(防空識別圏)は、設定された空域に進入した側、された側の双方に対して「いつ、どこで、どのように強制措置がとられるのか、とるのか」についての不確実性を低下させることで(航空管制運用上の)透明性、予見性、戦略的安定性を高めることができる。とはいえ、ADIZのいかなる側面も国際条約では承認されていない。各国は、ADIZを設定する権利を明白に認められてもいなければ、禁じられてもいない。もちろん、ADIZの設定が主権を意味することはあり得ない。中国は明らかに誤算を犯した。中国は、尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権をめぐる日本との対立を有利にしようと、ADIZの設定を宣言したと考えられている。だが、結局、中国の面子を失わせただけだった。誰かが面目を失うことをしでかしたとき、「気が付かないふりをすること」が一番気の利いた対応であることも多い。

Review Essay
移民を受け入れるべきか規制すべきか
―― 移民と経済と財政

2014年2月号

マイケル・クレメンズ
世界開発センターシニアフェロー
ジャスティン・サンドファー
世界開発センター研究員

移民は基本的に社会モデルが機能しなくなった国から逃れてくる。この事実を踏まえて、その影響をよく考えるべきで、「移民を無制限に受け入れれば、ある時点で受入国と移民出身国の双方にマイナスの影響が出るようになる」と考える研究者もいる。一方、労働市場を移民に開放すると、労働力の供給が拡大するだけでなく、投下資本利益率が上昇して経済成長を加速し、労働需要が高まり、移民だけでなく受入国の住民の生活水準も改善すると考える研究者もいる。実際、移民が受入国の財政にプラスの影響をもたらすことを示す研究は数多くある。経済協力開発機構(OECD)が2013年に27カ国を対象に実施した調査によると、移民が受入国の国庫にもたらす金額は、彼らが受け取る社会保障給付よりも一世帯当たり平均4400ドルも多い。問題は、移民論争がとかく感情的で十分な裏付けが示されないまま、過熱してしまうことだ。

日本の新安全保障戦略の真意はどこに

2014年2月号

J・バークシャー・ミラー
戦略国際問題研究所 パシフィックフォーラム日本担当フェロー

前回防衛大綱がまとめられて数年しか経っていない現状で、新たに防衛大綱が慌ただしく改訂されたことをもって「安倍晋三首相は、東シナ海の問題をめぐって、一か八かの瀬戸際政策を北京に挑むつもりだ」と結論づける専門家もいるし、中国国防部は日本の防衛大綱について「地域の緊張を高め、地域情勢を混乱させようとしている」と強く非難している。だが、日本の国家安全保障戦略が右傾化していると騒ぎ立てるのは間違っている。安倍首相の挑発的な靖国神社参拝は問題があるが、政府が試みている安全保障改革と首相の個人的な見解を混同すべきではない。新戦略や日本版NSCは、中国問題だけでなく、幅広い分野において迅速に重大な国家安全保障上の決定を下すために不可欠なツールだ。日本の新しい安全保障戦略についてバランスのとれた解釈をするには、中国にばかり焦点を合わせるのではなく、日本を取り巻く安全保障環境、アメリカの主要な地域同盟国としての日本の役割、そして、日本がアジア・太平洋地域の安全保障を促進する有資格国であるという全ての点を考慮する必要がある。

カスピ海資源をめぐるロシアとの攻防
―― シャーデニス・ガス田の地政学

2014年2月号

ブレンダ・シャファー
ジョージタウン大学ユーラシア大陸・ロシア・東ヨーロッパセンター(CERES)客員研究員

EU(欧州連合)とウクライナの連合協定の締結はロシアの圧力によって先送りされたが、その直後に、EUは、シャーデニス・ガス田からヨーロッパへと天然ガスを輸送するパイプライン敷設に関する協定をアゼルバイジャン政府と締結している。ロシアは旧ソビエト諸国がヨーロッパとの貿易関係を拡大するのを阻止したいと考えているだけに、EUとアゼルバイジャンが締結した合意の政治的意味合いは深い。ロシア、イラン、トルコに囲まれた小国のアゼルバイジャンは、その独立を守るために、おそらくウクライナ以上に欧米を必要としている。そして、ヨーロッパは2012年に起きたような、需要のピーク時に深刻な天然ガス供給不足に陥るといった事態を回避するためにも、新たな天然ガスの供給を確保したいと考えている。アメリカの中央アジアへの関心が希薄になっているとしても、ヨーロッパは旧ソビエト圏での影響力を形作ることを諦めるべきではない。

経済予測はなぜ判断を誤るか
―― 経済成長を促す政治ファクターに目を向けよ

2014年2月号

ルチル・シャルマ/モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント
新興市場・グローバルマクロ担当ディレクター

現在のトレンドを基にそれを未来に直線的に当てはめれば、ほぼつねに予測を誤る。その典型的な例が新興市場の成長予測だった。経済成長はさまざまなファクターが複雑に絡み合った結果であるにも関わらず、経済アナリストたちは、直近の経済データに依存するか、力強い人口動態などの一つの指標ばかりを重視してしまった。彼らは社会ストーリーや政治は数値化し、予想モデルに組み入れるにはあまりにも流動的だと考え、これらを経済予測に組み込もうとしない。だが、やる気のある政治指導者が、独占企業や政治腐敗、あるいは官僚制度と闘うことで発散させるエネルギーも、非常に重要な経済成長のファクターである。国の先行きを予測する上では、政治的サイクルが景気循環と同様に重要なことをもっと意識する必要があるし、「不況はすぐれた政策を、好況は悪い政策を呼び込むこと」を忘れてはならない。

依然として重要なサウジ石油
―― 米シェール資源はライバルではない

2014年2月号

ジョン・スファキアナキス
MASIC チーフインベストメント・オフィサー

アメリカのシェール資源ブームは世界最大の産油国サウジアラビアにとって厄介な事態だと考える人もいる。だがこれは、リヤドにとってもグッドニュースなのだ。市場の先行き不透明感をひどく嫌がるリヤドにとって、シェール資源を含む多様なエネルギー生産が進めば、市場の不透明感と急激な変動を抑えることにつながるからだ。さらに、いかなる国もサウジのような大規模な余剰生産能力を提供できない以上、これまでサウジに多くを依存してきた石油市場の構図は今後も変化しないだろう。むしろ、サウジにとって厄介なのはイラク、イラン、リビアが今後石油供給を増大させていくと考えられることだ。この場合、原油価格の下落を阻むために、サウジが減産を求められる可能性もある。サウジ国内の石油消費が増えていることも問題だ。2020年代末までには、サウジの国内消費量が輸出量を上回るようになると考えられる。・・・

韓国経済のポテンシャルとリスク

2014年1月号 

マーカス・ノーランド ピーターソン国際経済研究所 上席副会長(研究部長)

韓国を新興国と呼ぶのは、もはや時代遅れかもしれない。この国は豊かだし、技術面でも洗練され、イノベーション、経済改革、健全なリーダーシップという面で見事な成果を上げている成熟した民主国家だ。しかし、それでも韓国を先進国市場とみなすのは無理がある。経済の貿易依存度が高いために、主要先進国と比べて、市場の変動に翻弄される度合いが大きく、これは韓国経済が克服すべき重要な課題の一つだ。企業部門への集中度が高く、社会の高齢化が進んでいること、政府と企業の不透明な関係、そして、北朝鮮という政治的に危険な隣国を抱えていることも大きな課題だ。北の隣国が唐突に崩壊する可能性は現に存在する。その場合、韓国が大規模な資金を北に援助するか、北朝鮮の民衆が韓国へと流れ込むかのいずれかが現実になる。・・・

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