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論文データベース(最新論文順)

CFR Interview
サウジのトリレンマ
―― 地政学と宗派対立と対米関係

2013年11月号

グレゴリー・ゴース
バーモント大学政治学教授

サウジにとっての地域的・宗派的ライバルであるイランとの関係改善へとワシントンが舵をとりつつあること、そして、シリア内戦に対する軍事関与路線からオバマ政権が遠ざかりつつある現実を前に、リヤドは苛立ちを強めている。国連総会での演説を拒否したり、(国連安全保障理事会の非常任理事国への就任を拒否したりと)サウジが不可解な行動を見せているのは、この苛立ちゆえのことだ。だが、アメリカへの反発を強めれば強めるほど、地域的なライバルであるイランパワーの拡大への危機意識も高まり、結局、サウジはますますアメリカを必要とするようになる。・・・シリア内戦への関与を含めて、サウジの対外行動の目的は、イランの影響力拡大を封じ込めることにある。だからこそ、イランに核を放棄させる代わりに、アメリカはイランの地域的優位を認めるつもりではないか、と神経をとがらせ、警戒している。だが、アメリカがそうした譲歩をすることはあり得ない。アメリカの湾岸政策は、この産油地域で、特定の国が支配的な優位を確立するのを阻止することを目的にしている。―― 聞き手はバーナード・ガーズマン(Consulting Editor@cfr.org)

CFR Interview
上海自由貿易区は第2の改革開放路線になるか

2013年11月号

ダニエル・H・ローゼン
ローディアムグループ ファウンディングパートナー

多くの意味で、上海自由貿易区構想を鄧小平の改革開放路線と重ね合わせて考えてもおかしくはない。1970年代末、鄧小平はルールと条件を変えない限り、中国沿海部の経済成長を加速できないこと、そして、改革を適用する地域を広げていく必要があることを理解していた。さらに彼は、国内の政治・経済領域の既得権益層が、そうしたルールの変更を中国の利益を損なうと批判することも事前に織り込んでいた。改革の価値を特定の経済特区で立証した上で、全土へと広げていく必要があると彼が考えたのはこのためだ。・・・1980年代の経済特別区では製造業投資の自由化が重視されたが、上海自由貿易区では金融の自由化が重視されている。今回も、国レベルでの改革を一か八かで実行するのではなく、地域的に改革を導入して、自由化への流れを作り出すという手法がとられている。いまや中国は、市場経済に準じた制度ではなく、効率的な市場経済そのものを完全に導入したいと考えている。

米原油輸出の自由化を

2013年11月号

ブレイク・クレイトン
米外交問題評議会エネルギー担当非常勤フェロー

過去5年間を見ると、アメリカ国内の石油消費量は大きく減少し、一方でアメリカの石油産出量は世界のいかなる産油国と比べても大きく増大している。IEA(国際エネルギ機関)は2020年までに、アメリカはサウジを抜いて世界最大の産油国になるとさえ予測している。さらに(ガソリンやディーゼルなどの)石油製品という側面では、すでにアメリカは世界有数の輸出国の一つになっている。問題は、1970年代に米議会が、ライセンスを得ることなく国内で産出された原油を輸出することを違法とする法律を成立させ、現行の連邦法のもとでは、例外的な状況に陥ったときを除けば、企業が原油を輸出することが認められていないことだ。この輸出規制の目的は国内の石油資源を温存し、外国からの輸入を少なくすることにあった。しかし実際には、原油輸出規制は、この二つの目的の実現には寄与しなかったし、いまでは寄与するどころか邪魔な存在となっている。原油輸出を自由化すれば、米経済が刺激されるだけでなく、アメリカの外交政策を促進することもできる。アメリカから原油を輸入したいと考えている同盟国との関係が紛糾するのを回避できるし、貿易パートナーとしてのアメリカの存在感をさらに高めることもできる。

CFR Meeting
R・フェルドマンが語る
安倍政権の経済思想と構造改革

2013年11月号

ロバート・フェルドマン
モルガン・スタンレーMUFG証券
チーフエコノミスト 兼 債券調査部長

選挙改革が重要なのは、社会保障支出の問題を解決しないことには財政問題が解決できないからだ。選挙制度によって高齢者の利益が一方的に重視されている状況に対処しない限り、問題は解決できない。・・・必要なのは社会保障関連支出を引き下げることだ。一方で、経済成長を加速するには、研究開発、教育、インフラなど、社会保障関連以外のその他の分野への支出を引き上げる必要がある。現状では、これらの非社会保障関連支出はそれほど大きくない。・・・経済情勢が悪化したときに、いかにして高い支持率を保つかは、アベノミクスの今後にとって非常に重要だ。賃金レベルは重要な要因だが、株価や雇用も重要だ。安倍政権にとって重要なのは、とにかく、支持率を高く保つことだ。

アメリカのアジア重視戦略は安全保障領域を重視しすぎており、外交・経済領域を軽視している。TPP(環太平洋パートナーシップ)がこのギャップの一部を埋めてくれるかもしれないが、中国に対してもっと積極策をとるべきで、二国間投資協定(BIT)を交渉していくべきだろう。今後の中国における改革の試金石とみなされる上海自由貿易区を開設したことからも明らかなように、中国はこれまでの投資主導型の輸出経済モデルを見直す必要があることを理解している。BITは米中の通商関係を加速する大きな触媒の役割を果たし、両国の経済バランスに二つの大きな変化をもたらす助けになる。一つは、人民元が市場価値に即したレベルへと引き上げられていけば、アメリカの対中輸出が増大する。そして、もう一つは中国から相当規模の対米投資が行われるようになることだ。すでに2013年9月、上海インターナショナルは米豚肉加工大手のスミスフィールドフーズを71億ドルで買収し、これは、至上最大の中国企業による米企業の買収となった。・・・

メルケルもオランドも「友人が友人を対象にスパイをしていること」は知っていた。一方、市民たちが色をなして怒ったのは無理もない。欧米という家族内で盗聴が行われていたことは一般には知られていなかったからだ。この事態を前に、ヨーロッパの指導者たちは、強硬な姿勢をとらざるをえなくなった。もちろん、指導者たちの個人的な怒りもある。自分の携帯電話の通話が緊密な同盟国によって盗聴されていたメルケルが「自分は冒涜された」と感じているとしても無理はない。政治的反応と感情的怒りが重なり合って、アメリカ政府にもっと明確な対応を示すように求める圧力が生じている。・・・必要なのは行動ルールを協議すること、大西洋同盟内部での情報収集の枠組みを定める新しいルールを導入することだ。非常に微妙なバランスが必要になる。ヨーロッパが政治的にかなり苛立っている以上、アメリカは、「これまでもやってきたことだ」と言う以外に、何か別の対策を示す必要がある。

Foreign Affairs Update
米LNG輸出がエネルギー市場を変える

2013年10月号

エイミー・マイヤース・ジャッフェ カリフォルニア大学デービス校
エネルギー&持続可能性研究所 所長
エドワード・モース
シティ・グループ コモディティリサーチ部門
グローバル・マネージングディレクター

2020年までに、アメリカは年間6170万トンの液化天然ガス(LNG)を輸出し、カタールに次ぐ、世界第2のLNG輸出国に浮上していると予測される。アメリカがLNG輸出を増やし、世界市場からの石油輸入を減少させれば、この半世紀に及ぶOPEC(石油輸出国機構)による原油価格の管理能力は否応なく低下する。つまり、アメリカのエネルギー輸出が、石油や天然ガスに関する世界のゲームルールにどのような衝撃を与えるかが重要なポイントになる。1973年のOPECによる価格引き上げと禁輸以降の40年にわたって、石油と天然ガス市場は高度に政治化されてきた。だが、アメリカが主要なエネルギー輸出国になれば、グローバル経済における最大の産業であるエネルギー部門で突然、自由貿易が実現する。アメリカのLNG輸出は、世界の炭化水素資源貿易から政治を排除する最初のステップにすぎない。グローバルな天然ガス市場で起きていることは、いずれグローバルな石油市場でも必ず起きる。

CFR Update
世界経済を左右する中国における成長と改革の行方

2013年10月号

ロバート・カーン
米外交問題評議会シニアフェロー(国際経済担当)

市場プレイヤーの多くは、中国経済の成長率は今後急激に減速していくと考えている。2013年と2014年の成長率は6%台へと落ち込み、悪くすると5%を割り込む可能性もあると予測している。だが、こうした経済成長の減速は、中国が経済構造のリバランスを試み、現在の輸出・投資主導型経済から、消費主導型経済に移行するための改革を実施することを織り込んでいる。これを別にしても、IMF(国際通貨基金)が指摘する通り、労働力人口の減少が労働市場ダイナミクスを根本的に変化させる。つまり、中国は、労働力の過剰供給の時代が終わり、相対的な賃金が上昇する「ルイスの転換点」にさしかかりつつある。だが一方でIMFは、経済成長の停滞を理由に中国は改革(経済構造のリバランシング)を先送りするのではないかと懸念している。中国が野心的な改革を実行し、経済のリバランシングを実現して短期的な低成長のリスクを受け入れるか、あるいは、経済成長を維持しようと改革プロセスを先送りするかで、グローバルな経済成長の見通しは大きく変わってくる。

アサド勝利後のシリア
――戦後シリアの荒涼たる現実とは

2013年10月号

アンドリュー・タブラー
ワシントン近東政策研究所シニアフェロー

戦闘で敗れ去るのをアサドが回避できる可能性は高まっており、はっきりとした勝利をいずれ手にするかもしれない。もちろん、アサドが権力を維持できるとしても、彼が内戦前のような国家レベルでの統治を再確立することはなく、テロ集団を含む反政府勢力は、シリアの一部を今後も掌握し続けるだろう。アサドは(シーア派の)イラン、ヒズボラとの関係をさらに強め、一方、中東のスンニ派諸国は、反政府武装勢力による抵抗を今後も支え続けるはずだ。だが、アサドが全面的な内戦を展開し、化学兵器を民間人に対して使用したことが、民衆の支持をとりつける上で今後も大きな障害となる。内戦を経たシリア政府は、戦争前に存在した残忍ながらも安定した政府以上に、抑圧的で法を顧みなくなるだろう。シリアは今後長期的に不安定化し、人道に対する残酷な犯罪が繰り返される場所になるだろう。

イランは対話・交渉路線を模索する
―― 最高指導者ハメネイの思想

2013年10月号

アクバル・ガンジ
ジャーナリスト

イランの最高指導者、アヤトラ・ハメネイは聖職者としては、一風変わった過去を持っている。青年期に世俗派の反体制指導者たちと交流し、イスラム革命前に彼らの思想を吸収しているだけでなく、西洋の文学を耽読する文学青年でもあった。レフ・トルストイやミハイル・ショーロホフの作品を絶賛し、バルザックやゼバコの小説を愛読した。なかでもビクトル・ユーゴの『レ・ミゼラブル』が大のお気に入りだった。ムスリム同胞団の思想的指導者サイイド・クトゥブの著作からもっとも大きな影響を受けているとはいえ、ハメネイは、科学と進歩は「西洋文明の真理」であり、イランの民衆にもこの真理を学んで欲しいと考えている。彼はクレージーでも、支離滅裂でも、攻撃のチャンスを模索する狂信者でもない。核兵器の開発も望んでいない。ハメネイは「核兵器は人類に対する罪であり、生産すべきではないし、すでに存在する兵器は解体すべきだ」と考えている。ハメネイは欧米はイランの体制変革を狙っていると確信し、欧米への根深い猜疑心を持っているが、その思想にも変化がみられる。・・・・

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