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論文データベース(最新論文順)

経済予測はなぜ判断を誤るか
―― 経済成長を促す政治ファクターに目を向けよ

2014年2月号

ルチル・シャルマ/モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント
新興市場・グローバルマクロ担当ディレクター

現在のトレンドを基にそれを未来に直線的に当てはめれば、ほぼつねに予測を誤る。その典型的な例が新興市場の成長予測だった。経済成長はさまざまなファクターが複雑に絡み合った結果であるにも関わらず、経済アナリストたちは、直近の経済データに依存するか、力強い人口動態などの一つの指標ばかりを重視してしまった。彼らは社会ストーリーや政治は数値化し、予想モデルに組み入れるにはあまりにも流動的だと考え、これらを経済予測に組み込もうとしない。だが、やる気のある政治指導者が、独占企業や政治腐敗、あるいは官僚制度と闘うことで発散させるエネルギーも、非常に重要な経済成長のファクターである。国の先行きを予測する上では、政治的サイクルが景気循環と同様に重要なことをもっと意識する必要があるし、「不況はすぐれた政策を、好況は悪い政策を呼び込むこと」を忘れてはならない。

依然として重要なサウジ石油
―― 米シェール資源はライバルではない

2014年2月号

ジョン・スファキアナキス
MASIC チーフインベストメント・オフィサー

アメリカのシェール資源ブームは世界最大の産油国サウジアラビアにとって厄介な事態だと考える人もいる。だがこれは、リヤドにとってもグッドニュースなのだ。市場の先行き不透明感をひどく嫌がるリヤドにとって、シェール資源を含む多様なエネルギー生産が進めば、市場の不透明感と急激な変動を抑えることにつながるからだ。さらに、いかなる国もサウジのような大規模な余剰生産能力を提供できない以上、これまでサウジに多くを依存してきた石油市場の構図は今後も変化しないだろう。むしろ、サウジにとって厄介なのはイラク、イラン、リビアが今後石油供給を増大させていくと考えられることだ。この場合、原油価格の下落を阻むために、サウジが減産を求められる可能性もある。サウジ国内の石油消費が増えていることも問題だ。2020年代末までには、サウジの国内消費量が輸出量を上回るようになると考えられる。・・・

韓国経済のポテンシャルとリスク

2014年1月号 

マーカス・ノーランド ピーターソン国際経済研究所 上席副会長(研究部長)

韓国を新興国と呼ぶのは、もはや時代遅れかもしれない。この国は豊かだし、技術面でも洗練され、イノベーション、経済改革、健全なリーダーシップという面で見事な成果を上げている成熟した民主国家だ。しかし、それでも韓国を先進国市場とみなすのは無理がある。経済の貿易依存度が高いために、主要先進国と比べて、市場の変動に翻弄される度合いが大きく、これは韓国経済が克服すべき重要な課題の一つだ。企業部門への集中度が高く、社会の高齢化が進んでいること、政府と企業の不透明な関係、そして、北朝鮮という政治的に危険な隣国を抱えていることも大きな課題だ。北の隣国が唐突に崩壊する可能性は現に存在する。その場合、韓国が大規模な資金を北に援助するか、北朝鮮の民衆が韓国へと流れ込むかのいずれかが現実になる。・・・

銀行が破綻する国としない国
――銀行システムを左右する政治文化とは

2014年1月号

チャールズ・W・キャロミリス/コロンビア大学 ビジネススクール教授(金融制度)
スティーブン・H・ハーバー/ スタンフォード大学教授

銀行危機に直面しても、多くの人は、予見できない経済ショックが、そうでなければスムーズに運営されてきたシステムを不安定化させたと考える。だが、この認識は間違っている。これでは、何度も銀行危機を経験する国がある一方で、ほとんど、あるいはまったく銀行システムの危機が起きない国があるという現実を説明できない。実際には、銀行制度は政治によって形作られる。ここで言う政治とは、個人の一時的かつ特有な結びつきではない。政府、バンカー、銀行の株主、預金者、借り手、納税者のインセンティブを形作る社会の基本的統治システムのことだ。法律、政治、規制を、自分たちの都合が良いものへと--しかも多くの場合、他を犠牲にする形で--作り替えようとする連帯が形成される。こうして、政治権力の分配を統治する制度と一体性のある、その国に特有な銀行システムが出現する。・・・

Foreign Affairs Update
イランとの論争は続く
―― NPTとウラン濃縮の権利

2014年1月号

ゲリー・セイモア
前ホワイトハウス調整官
(軍縮・大量破壊兵器担当)

核開発交渉の中核テーマは、これまでも、そしてこれからも、「イランがウランを濃縮する権利をもっているかどうか」だ。イランは、「IAEAの保障措置を受け入れる限り、核不拡散条約(NPT)加盟国が平和目的(つまり、原子炉の核燃料生産や医療用アイソトープ生産)のためにウラン濃縮を行うことは認められている」と解釈している。一方、アメリカ、フランス、イギリスは、条約は原子力エネルギーの「平和的な利用」を認めているだけで、「それがどのような権利を内包するかは明示していない」と主張してきた。要するに、ウラン濃縮によって原子炉を動かす核燃料や医療用アイソトープだけでなく、兵器級ウランの生産に道が開かれることが問題なのだ。P5+1(アメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリスとドイツ)は、依然として「イランは核兵器開発に向けたオプションを作り出そうとしている」とみている。今後想定しておくべきシナリオは二つある。イランが合意を破棄して、唐突に核兵器生産を公言するブレイクアウトシナリオ、そして、水面下で核兵器生産を試みるスニークアウトシナリオだ。

CFR Meeting
世界エネルギーアウトルック
―― 中東原油の重要性は変化しない

2014年1月号

ファティ・ビロル 国際エネルギー機関チーフエコノミスト、セオドア・ルーズベルト バークレーキャピタル・クリーンテク・イニシアティブ マネジングディレクター

エネルギー市場における各国の役割が変化しつつある以上、急速な変化のなかで市場の流れを読み、自国を適切な場所に位置づける必要がある。そうしない限り、敗者になる。アメリカは天然ガスの輸出国に姿を変え、中東諸国は石油消費国への道を歩みつつある。ヨーロッパ、アメリカという輸出市場を失いつつあるロシアとカナダは、天然ガス輸出のターゲットを次第に中国や日本などのアジアに向け始めている。そして、シェールガス革命が進展しても、世界の天然ガス価格の地域格差は、今後20年はなくならない。もっとも重要なのは、アメリカ国内における原油生産の増大を前に、「もはや中東に石油の増産を求める必要はない」と考えるのは、政治的にも分析上も完全に間違っていることだ。生産コストが低くて済む、中東石油へ投資しておかなければ、アメリカの石油増産トレンドが終わる2020年頃には、世界は大きな問題に直面する。中東石油の投資を止めれば、原油価格の高騰は避けられなくなる。

政治的正統性の危機

2014年1月号

イアン・ブレマー ユーラシアグループ代表

政治エリートたちは大きな課題に直面している。市民たちが新しいツールを用いて新たな要求をし、抗議行動を組織化し、集団としてのパワーを培いつつあるからだ。各国政府が次の景気のサイクル、次の選挙、次の政治的移行期までの短期的な問題にばかり目を向けているために、グローバル規模での政府の正統性の危機という事態にわれわれは直面している。アメリカ政治は党派対立に縛られて身動きできず、ヨーロッパでは反EU感情が高まっている。新興国政府も経済成長率が鈍化する一方で、市民の要求が高まり、政府は追い込まれている。政府の指導者たちが適切と考える以上の情報公開を求める市民の圧力が、政府の正統性をさらに脅かしている。しかも、情報を共有するのがきわめて簡単になり、一方で情報漏洩を阻止するのが難しくなっている。・・・

フィリピンとインドネシア
――何が軌道を分けたのか

2014年1月号

カレン・ブルックス
米外交問題評議会非常勤シニアフェロー(アジア研究)

いまやASEANの主要5カ国は、世界のいかなる地域経済圏よりも急速な成長を遂げている。なかでも有望なのがインドネシアとフィリピンだ。巨大な市場をもつインドネシアは、この5年で大きな経済成長を遂げた。しかし、資源に依存し、構造改革を先送りしてきた経済はここに来て雲行きが怪しくなり、最近では(通貨危機リスクの高い)「脆弱5カ国」の一つへと転落してしまった。一方、フィリピン経済は多くのエコノミストの予測を上回る成長をみせ、2013年上半期も7・6%と、世界有数の成長を遂げている。フィリピンは家電輸出に加えて、いまや世界有数のアウトソースビジネスの拠点へと変貌している。出稼ぎ労働者の仕送りが貧困層の消費と通貨の安定を支え、改革志向の大統領もいる。今後のインドネシア経済は2014年の大統領選挙に、一方、フィリピンの今後は、構造改革で外資を魅了できるかどうかに左右されることになるだろう。・・・

中国の台頭で変化した日ロ関係
―― 和解を模索しつつも、不透明な未来

2014年1月号

フィオナ・ヒル
ブルッキングス研究所 シニアフェロー

いまや中国の台頭が、あらゆる地域関係を緊張させている。ロシアはオホーツク海、北極海での中国の活動に神経をとがらせ、一方の日本は尖閣問題を憂慮している。東京は、尖閣問題をめぐって軍事衝突が起きるのではないかと憂慮している。中国だけでなく、韓国との関係も不安定化しているために、東京はアメリカとの同盟関係を補完するために、北東アジアでもう一つの友好関係を確立したいと考えているようだ。中国の台頭を前に変化する地域環境のなかで、2013年に開かれた日ロ「2プラス2」会合は、両国の関係を先に進める大きなステップだった。日ロ間の懸案である北方領土問題にも変化の兆しがある。・・・ソチオリンピック後に、プーチンは日本を訪問する予定であり、2014年に大きな展開があるかもしれない。だが、この変化が直線的に進むとは考えにくい。・・・

CFR Briefing
WTOと地域貿易構想
―― TPPとTTIPの可能性

2014年1月号

ジェイミー・ザブルドフスキー・クーパー
メキシコ国際問題評議会(COMEXI)代表
セルジオ・ゴメス・ローラ
IQOM、CEO

多国間貿易ラウンドが大きな危機に瀕しているため、その空白を地域およびサブ地域レベルでの貿易交渉が埋めつつある。少なくとも短・中期的には、国際貿易の未来はこれら地域レベルでの交渉の結果にかかっていると言えよう。なかでも環太平洋パートナーシップ(TPP)は、その経済的・戦略的な重要性において際立っている。仮にTPPで国際規格(TBT)や規制の標準化、反政治腐敗、Eコマース、環境などの「WTOプラス」に該当する交渉アジェンダに合意されれば、そのアレンジメントは、今後環太平洋および環大西洋の市場統合に関するプラットフォームとしての役割を果たすことになる。TPPと環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)という二つの重要な貿易交渉が成功すれば、WTOプラスに積極的に取り組む国、現行のWTOルール以上の自由化を受入れる準備ができていない国の二つへ分かれていくだろう。この段階で、WTOの役割を再検証する必要がある。・・・

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