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論文データベース(最新論文順)

中国の台頭で変化した日ロ関係
―― 和解を模索しつつも、不透明な未来

2014年1月号

フィオナ・ヒル
ブルッキングス研究所 シニアフェロー

いまや中国の台頭が、あらゆる地域関係を緊張させている。ロシアはオホーツク海、北極海での中国の活動に神経をとがらせ、一方の日本は尖閣問題を憂慮している。東京は、尖閣問題をめぐって軍事衝突が起きるのではないかと憂慮している。中国だけでなく、韓国との関係も不安定化しているために、東京はアメリカとの同盟関係を補完するために、北東アジアでもう一つの友好関係を確立したいと考えているようだ。中国の台頭を前に変化する地域環境のなかで、2013年に開かれた日ロ「2プラス2」会合は、両国の関係を先に進める大きなステップだった。日ロ間の懸案である北方領土問題にも変化の兆しがある。・・・ソチオリンピック後に、プーチンは日本を訪問する予定であり、2014年に大きな展開があるかもしれない。だが、この変化が直線的に進むとは考えにくい。・・・

CFR Briefing
WTOと地域貿易構想
―― TPPとTTIPの可能性

2014年1月号

ジェイミー・ザブルドフスキー・クーパー
メキシコ国際問題評議会(COMEXI)代表
セルジオ・ゴメス・ローラ
IQOM、CEO

多国間貿易ラウンドが大きな危機に瀕しているため、その空白を地域およびサブ地域レベルでの貿易交渉が埋めつつある。少なくとも短・中期的には、国際貿易の未来はこれら地域レベルでの交渉の結果にかかっていると言えよう。なかでも環太平洋パートナーシップ(TPP)は、その経済的・戦略的な重要性において際立っている。仮にTPPで国際規格(TBT)や規制の標準化、反政治腐敗、Eコマース、環境などの「WTOプラス」に該当する交渉アジェンダに合意されれば、そのアレンジメントは、今後環太平洋および環大西洋の市場統合に関するプラットフォームとしての役割を果たすことになる。TPPと環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)という二つの重要な貿易交渉が成功すれば、WTOプラスに積極的に取り組む国、現行のWTOルール以上の自由化を受入れる準備ができていない国の二つへ分かれていくだろう。この段階で、WTOの役割を再検証する必要がある。・・・

CFR Interview
今後、M・ホドルコフスキーはどう動くか
―― ロシア政治と元オリガーク

2014年1月号

ディミトリ・サイメス
センター・フォー・ナショナルインタレスト 代表

莫大な富を築いただけでは満足せず、「大きな野心をもち、ロシアのための壮大なビジョンをもっていたホドルコフスキーは、政治に身を投じたいという思いを制御できなくなり、結局は投獄された」。2013年12月20日、プーチン政権の恩赦によって釈放され、ドイツのベルリンで記者会見を行ったホドルコフスキーは「もう政治には関与しない」と述べつつも「政治犯として投獄されている人々を支援する社会活動に関与する」と含みをもたせる発言をしている。今回の恩赦措置は、ウクライナでロシアの圧力を受けて欧州連合(EU)との連合協定調印を棚上げしたヤヌコビッチ・ウクライナ大統領を糾弾する大規模デモが起きたことと無関係ではない。さらに、ソチオリンピックの開催を間近に控えるロシア政府は、恩赦を通じて流れを変え、ロシア政府へのイメージを改善することを願ったようだ。ホドルコフスキーがロシア政治に再び身を投じた場合、彼を支える潜在的政治基盤は存在する。しかし、・・・

世界に汚染を拡散する中国の環境破壊
―― 中国による大気・海洋汚染の実態

2013年5月号

トーマス・N・トンプソン
アナレティックInc 代表取締役

環境汚染は中国経済にコストを強い、中国市民を苦しめているだけでなく、世界に汚染を拡散している。問題はPM2・5だけではない。ディーゼルトラックが排出する硫黄酸化物その他の大気汚染が引き起こす酸性雨は、中国の耕作地の三分の一にダメージを与えているだけでなく、朝鮮半島や日本の森林や河川にも悪影響を与えている。水資源の汚染も深刻な状態にあり、中国の都市の90%が汚染された地下水に依存している。世界最大の漁場の一つである東シナ海の80%はいまや漁獲に適さない海域とみなされている。中国の沿海都市部の多くの工場が廃棄物のほぼ半分を海へと流している。国際コミュニティは北京に対して、今後も環境を破壊し続ければ、市民の健康と中国の経済的繁栄に深刻なダメージが出ることを理解させなければならない。そうしない限り、中国の汚染問題は世界規模で壊滅的事態を引き起こすことになる。

途上国経済は比較的高成長を遂げ、アメリカ経済は実質プラス成長を維持し、ヨーロッパ経済は低成長に甘んじる。2014年の世界経済も金融危機後のこのパターンが続くと考えられる。先進諸国は、貿易部門を中心に経済成長のポテンシャルを一部で回復するかもしれないが、ヨーロッパ市場が依然として不安定なために、そのタイミングは2014年ではなさそうだ。・・・(一方)いわゆるアフリカの「フロンティア」市場が、規模はそれほど大きくないが、柔軟性に富む世界のスター経済として浮上しつつある。(M・スペンス)

緊迫した危機局面は去り、成長の兆しも見え始め、資本も戻ってきている。だが、依然として困難な局面を脱したわけではない。再び危機へと舞い戻る危険は一般に考えられている以上に高い。・・・2014年のヨーロッパにとって、もっとも深刻な課題はおそらく政治領域に存在する。・・・(R・カーン)

中国が「中所得国の罠」に陥るのを避け、今後10年にわたって7%の成長を維持するつもりなら、肥大化する債務問題に対処し、生産性を強化していかなければならない。そのためには、都市化プロセスの効率を高めるとともに、国有企業の2倍の配当を出せる民間企業の役割を高めていくことだ。(Y・ファン)

Foreign Affairs Update
東シナ海における中国の現状変革路線
―― 同盟関係とアメリカの立場

2014年1月号

マイケル・グリーン
戦略国際問題研究所アジア担当上席副会長

中国は地域的現状を少しずつ変革し、東シナ海と南シナ海におけるより大きな影響圏を確立しようと試みている。(日本の尖閣諸島の国有化が緊張を高めたと中国側は主張しているが)尖閣問題を棚上げするとした了解を何度も破って、日本に危機感を抱かせたのは中国の方だ。両国の路線の大きな違いは、尖閣諸島を施政下に置く日本が現状を維持しようと試みているのに対して、中国は強制的圧力を行使して、現状を変革しようと試みていることだ。すでに中国は、フィリピンのスカボロー礁を、強制力を通じて事実上管理下においている。専門家の多くは、中国は同じ戦略を日本に対してもゆっくりと行使するつもりだと考えている。・・・オバマ政権は状況に対するアメリカの決意と同盟国を安心させる秩序だったメッセージを今後も表明していくべきだし、そのためにも、北京の戦略的意図を的確に分析しなければならない。

タイの最終局面とは
―― 軍と民衆の事実上のクーデター?

2014年1月号

ジョシュア・クランジック/ 米外交問題評議会フェロー(東南アジア担当)

タイの政治危機は、反政府勢力が社会と政府双方を完全に掌握するという最終局面に近づきつつある。バンコクや南部の一部地域ではデモ参加者たちが投票所を封鎖しようと試み、民衆の怒りと暴力が激化している。いまや事態が制御不能な状態に急速に陥りつつあるのは間違いない。状況は「事実上のクーデター」であり、クーデターはすでに進行している。「軍は中立を保つ」と主張しているかもしれないが、デモを前にしても行動を控えていること自体、デモ隊の立場を支持しているという軍の明確な政治的メッセージだ。政府はますます弱くなり、そこに政治的空白が生じる。そして(デモ隊が設置を求める)「人民評議会」、軍部、あるいはこの二つの組み合わせによってこの空白は埋められていくことになるだろう。

Foreign Affairs Update
国際政治と謝罪のリスク

2014年1月号

ジェニファー・リンド
ダートマスカレッジ准教授

日本を批判する人々は、公式に何度も謝罪し、かなりの規模の賠償を行い、第二次世界大戦の残虐行為に関する実直な歴史教科書を出版したドイツと比べて、日本のやり方は十分ではないと考えている。だが、謝罪は和解の前提ではないし、日本だけが例外的な行動をとっているわけではない。ドイツではなく、日本のスタイルが世界の規範なのだ。多くの国は、過去の残虐行為を取り繕い、自国の戦没者を弔ってきた。そして東京だけでなく、ワシントン、ロンドン、テヘラン、テルアビブを含む、世界各国の保守派は、謝罪を求める声に強い反発を示してきた。だが謝罪が必要でもなければ、関係改善の助けにならないことが多いとしても、国際的な和解を実現するには、相手国に大きなダメージを与え、苦しみを強いたことを認めなければならない。・・・

ロウハニはイランのゴルバチョフになれるか

2014年1月号

スティーブン・コトキン プリンストン大学歴史学教授

当時のミハイル・ゴルバチョフは、ソビエトで過激な改革を実施しているとも、していないとも思わせる曖昧な発言をしていたために、専門家もソビエトで何が起きているかを理解できなかった。実際には、ゴルバチョフは「共産党独裁体制を終わらせる」という意図はもっていなかった。むしろ共産党体制の終焉への流れは、彼が、市民団体の組織化を認め、検閲を緩め、自由選挙を導入したことによって作り出された。つまり、イランの穏健派指導者ロウハニが抜本的な改革ではなく、政治や社会に関わってくる名ばかりの改革を表明したときこそ、われわれは注目する必要がある。そうした改革は、改革のアジェンダが想定する以上の社会・経済的流れ、政治的変化を呼び込み、ロウハニ自身管理できないような流れを作り出す可能性がある。

LIBORスキャンダルの余波 ――LIBORは消失するのか

2014年1月号

クリストファー・アレッシ CFRオンラインライター/エディター 、モハンマド・アリ・サージー CFRオンラインライター/エディター

LIBORとは、ロンドン銀行間市場において銀行が無担保資金を相互に提供する際に利用されるベンチマーク金利のことで、これまでは15の異なる満期と10の通貨で算出されてきた。世界の多くの銀行が、個人および法人向けのローン金利を設定する基本金利としてLIBORを利用してきたことからも明らかなように、短期金利のもっとも重要なグローバル・ベンチマークとみなされてきた。問題は、この金利が、トレーダーの利益、銀行の利益のために不正操作されていたことだ。すでに、バークレイズ、UBS、ラボバンク、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド(RBS)など複数の銀行が、自行の利益のために金利を操作する大規模な共同謀議を行っていたことが明らかになっている。当局によるペナルティだけでなく、顧客と投資家が金融機関を相手取って起こしている民事訴訟が現在争われており、今後、銀行側は膨大なコスト負担を強いられると考えられている。これによって銀行の体力が弱まるだけでなく、LIBORへの信頼そのものが失われつつある。アメリカではLIBORは廃止すべきだという考えが主流になっている。・・・・

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