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論文データベース(最新論文順)

CFR Update インド経済とインフラプロジェクト

2014年5月号

ベイナ・シュウ オンラインライター・エディター

新興経済としてのインドの経済パワーは、中国経済同様に、過去数十年間の大きな経済成長によって支えられてきた。しかし、インフラ投資が十分ではない状況が長期的に続いたために、交通システムと送電網がうまく機能しなくなり、いまやインフラの不備が経済を停滞させかねない状況にある。効率に欠けるインドの港湾施設は急拡大する貿易取引にうまく対処できず、信頼性の低い送電網と水道ネットワークも急激に進展する都市化に対応できずにいる。交通・輸送インラフも大きな不備を抱え込んでいる。しかも、規制と政治腐敗がインフラ投資には不可欠な外資を遠ざけている。・・・・多くの制約と障害を克服し、インドはインフラの修復と整備を進めることができるか。これが21世紀のインド経済を大きく左右することになる。

幻と化したアラブの春 ―― 過去へと回帰した抑圧体制

2014年5月号

ネイサン・J・ブラウン ジョージワシントン大学教授、ミッシェル・ダン カーネギー国際平和財団 シニアアソシエート

2013年7月のモルシ大統領の解任劇以降、ムスリム同胞団のメンバーを中心に約1万9000人が投獄され、抗議デモの混乱のなかで民間人2500人以上が死亡し、1万7000人が負傷している。現在のエジプトは、その最悪の暗黒時代と同じ類の暴力のなかにある。現在の弾圧は、1952年から1955年にかけてリベラル派、極左勢力、同胞団メンバー2万人が投獄されたナセル時代を想起させる。だが、これまでと違うのは、政争を超えた存在として敬意を集めていた裁判所、軍というエジプトの政府機関が、いまや積極的に弾圧に加担しているようにみえることだ。この変化は、エジプトの裁判所と軍への国際的評価を傷つけるだけでなく、国内でもこれら機関への信頼を損なうことになる。つまり、今後、大規模な蜂起が起こるとすれば、それは、国のあらゆる機関に対する全面的な反乱になりかねない。 ・・・

「歴史の終わり」と地政学の復活
―― リビジョニストパワーの復活

2014年5月号

ウォルター・ラッセル・ミード バードカレッジ教授(歴史・外交)

政治学者フランシス・フクヤマは、「冷戦の終わり」をイデオロギー領域での「歴史の終わり」と位置づけたが、多くの人は、ソビエトの崩壊はイデオロギー抗争の終わりだけでなく、「地政学時代の終わり」を意味すると考えてしまった。現実には、ウクライナをめぐるロシアとEUの対立、東アジアにおける中国と日本の対立、そして中東における宗派間抗争が国際的な紛争や内戦へとエスカレートするリスクなど、いまや歴史は終わるどころか、再び動き出している。中国、イラン、ロシアは冷戦後の秩序を力で覆そうとしており、このプロセスが平和的なものになることはあり得ない。その試みは、すでにパワーバランスを揺るがし、国際政治のダイナミクスを変化させつつある。いまや、リベラルな秩序内に地政学の基盤が築かれつつあるのを憂慮せざるを得ない状況にある。・・・・

シェール革命で変化するエネルギー市場と価格

2014年5月号

エドワード・L・モース シティグループ原材料担当グローバル統括者

ロシアを抜いて世界最大の天然ガス生産国の地位を手に入れたアメリカは、2015年までには、サウジアラビアを抜いて最大の原油生産国になると考えられている。2011年に3540億ドルの赤字だったアメリカの石油貿易収支も、2020年には50億ドルの黒字へと転じる。一方、シェール資源の開発技術は外国にも移転可能であり、今後、シェール資源開発は世界的に広がっていくだろう。実際、シェール資源は世界各地で発見されており、多くの国がこの分野でアメリカに続きたいと考えている。アメリカの開発可能なシェール資源が世界全体の資源の15%程度である以上、世界的な開発が進めば、これまでになく安いコストでエネルギー資源が供給されるようになる。40年にわたって市場を支配してきたOPECが恣意的に原油価格を設定し、世界経済を苦しめてきた時代にもいずれ終止符が打たれ、世界経済は大きな成長を遂げることになるだろう。・・・・

北東アジアにおける歴史戦争
―― アメリカの関与がなぜ必要か

2014年5月号

ギウク・シン
スタンフォード大学教授(社会学)
ダニエル・C・シュナイダー
スタンフォード大学アジア太平洋研究センター
アソシエート・ディレクター

第二次世界大戦に由来する未解決の歴史問題が、北東アジアの地域的緊張の背景に存在する。歴史問題が日本と韓国というアメリカの主要な同盟国を反目させ、日本と中国のライバル関係を再燃させている。だが、この現状をめぐって、東アジアの戦後秩序を形作ったアメリカにも責任があることを認識する必要がある。アメリカは、冷戦という特有の環境のなかで戦後処理を行い、以来、状況を放置してきた。日本は「ドイツがいまも謝罪の必要性を認識し、自己検証の試みを続けていること」から教訓を学ぶ必要があるし、アメリカも戦争と過去に正面から向き合い、米大統領はヒロシマあるいはナガサキを訪問し、日本に原子爆弾を投下した結果、非常に多くの人命が奪われたことに対する自らの考えを示すべきだ。そうしない限り、北東アジアの歴史問題にアメリカが介入することは正当化できない。・・・・

プーチンの思想的メンター
―― A・ドゥーギンとロシアの新ユーラシア主義

2014年5月号

アントン・バーバシン 在モスクワ国際関係研究者
ハンナ・ソバーン 米フォーリン・ポリシー・イニシアティブ (ユーラシア分析担当)

2000年代初頭以降、ロシアではアレクサンドル・ドゥーギンのユーラシア主義思想が注目されるようになり、2011年にプーチン大統領が「ユーラシア連合構想」を表明したことで、ドゥーギンの思想と発言はますます多くの関心を集めるようになった。プーチンの思想的保守化は、ドゥーギンが「政府の政策を歴史的、地政学的、そして文化的に説明する理論」を提供する完璧なチャンスを作りだした。ドゥーギンはリベラルな秩序や商業文化の破壊を唱え、むしろ、国家統制型経済や宗教を基盤とする世界観を前提とする伝統的な価値を標榜している。ユーラシア国家(ロシア)は、すべての旧ソビエト諸国、社会主義圏を統合するだけでなく、EU加盟国のすべてを保護国にする必要があると彼は考えている。プーチンの保守路線を社会的に擁護し、政策を理論的に支えるドゥーギンの新ユーラシア主義思想は、いまやロシアの主要なイデオロギーとして位置づけられつつある。・・・・

アジア重視戦略の本質

2014年5月号

カート・M・キャンベル
前米国務省国務次官補
(東アジア・太平洋担当)イーライ・ラトナー
新アメリカ安全保障センター シニアフェロー

東シナ海での問題を超えて、日本の安倍晋三首相は、日本を数十年に及ぶ経済停滞から解き放ち、市民に国にもっと新たなプライドと、影響力ある国としての自覚をもたせたいと考えている。安倍首相は、第二次世界大戦の戦犯を含む戦没者を称える靖国神社を2013年末に参拝した。その国際的コストは高かった。日本と韓国の関係はさらに険悪になり、中国は安倍首相が権力ポストにある限り、日本との直接交渉には応じないという路線をさらに固めた。・・・・外交的緊張が高まっているとはいえ、アメリカは、日本がもっと地域的にも世界的にも積極的な安全保障上の役割を担えるように、自衛隊との協力関係を強化していくだろう。実際には完全に合理的な措置であり、むしろもっと早く手をつけてもおかしくなかった「日本憲法の再解釈と軍事的の近代化」を「反動的で軍国主義的だ」と批判する中国のプロパガンダに対抗していくことも必要だ。一方で、アメリカは日本と韓国の関係を改善するためにかなりの政治資源を投入する必要がある。・・・

変化した日本の政治とナショナリズム

2014年5月号

マルガリータ・エステベズ・アベ
シラキュース大学政治学部准教授

安倍首相の人気の高さと政治的影響力のどの程度が、ナショナリスティックな外交政策を求めるようになった日本の大衆の立場の変化を映し出しているのかは分からない。たしかに、尖閣問題もあって、2012年には、日本人の81%が中国には親近感がないか、どちらかといえばそうした感情を覚えないと答えている。安倍首相がこれまでの政治キャリアを保守主義や国家主義に即して積み上げてきたのも事実だ。だが、ナショナリスト路線を検証するには選挙制度改革が作り出した政治環境、普通の国への道筋をめぐる論争、そして中国の台頭が与えている影響も考える必要がある。選挙制度改革の結果、野心的な政治家が重要な国家アジェンダに特化できる環境が作り出され、国家安全保障とそれに付随するナショナリズムが有権者への訴求力を持っていることにいち早く気づいたのが自民党の政治家たちだった。・・・・

CFR Meeting
地政学的戦略リスクを検証する
―― ウクライナと日中対立

2014年5月号

◎スピーカー
ローレンス・D・フリードマン
キングス・カレッジ教授
リチャード・ハース
米外交問題評議会会長
◎モデレーター
ウォルター・ラッセル・ミード
バード・カレッジ教授

この一年というもの、人々は大国間紛争が起きるリスク、それも、これまでのように必ず しもヨーロッパかではなく、1930年代のようにアジアで紛争が起きる可能性を真剣に考 えるようになった。大国間紛争については、日本と中国の対立ゆえにアジアで大国間紛 争が起きる可能性がもっとも高いと私は考えている。(L・フリードマン)

新冷戦というとらえ方には疑問がある。ロシアには、それほど大きな脅威を作り出す力は ない。むしろ厄介なのは、アメリカとソビエト間、NATOとワルシャワ条約機構間に冷戦 期に存在したような了解が、持ち越されていないことだ。実際、われわれはプーチン大 統領の考えが読めずにいる。(R・ハース)

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