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論文データベース(最新論文順)

CFR Interview
プーチンの意図とアメリカの対応

2014年3月号

リチャード・ハース
米外交問題評議会会長

プーチンが今後をどう読んでいるのかはっきりしない。ロシア軍によるクリミア掌握という現実を、プーチンは今後の交渉カードにするつもりなのか、それとも、ウクライナ全土への影響力拡大の布石とするつもりなのか。一方で、この曖昧な現状でNATOをウクライナに関与させれば、それこそ、多くの人が懸念する新冷戦という事態に陥っていく。だが、G8サミットをボイコットしたり、国務長官をキエフに派遣したりする以外にも、アメリカにはできることがある。それは、ウクライナのロシアへの経済依存を軽減するためにもアメリカからウクライナへの天然ガス輸出を拡大し、ポーランドなどの近隣諸国への軍事援助を拡大することだ。もちろん、最悪のシナリオにも備えておくべきだが、ロシアの面目を保つ形で部隊をウクライナから撤退させ、EU、アメリカ、IMFがウクライナへの経済援助をロシアとともに実施することへの合意をまとめることを、まだ断念すべき段階ではない。(聞き手はバーナード・ガーズマン コンサルティングエディター@cfr.org)

ウクライナのジレンマ

2014年3月号

エイドリアン・カラトニッキー
アトランティックカウンシル シニアフェロー

プーチンは、ヤヌコビッチ大統領に経済的支援を与えることで、EU(欧州連合)との連合協定の調印を見送らせ、ウクライナにおけるロシアの影響力を取り戻そうとした。だが、プーチンの意向に応じたヤヌコビッチにウクライナ市民は強く反発し、これが大規模な反政府運動へとつながっていった。いまやウクライナは「内戦に陥りかねない危機的な状況にある」。・・・ウクライナが直面しているのは、オレンジ革命時のように、政権崩壊後の権力の空白を野党勢力が埋めるといった簡単な流れではない。ヤヌコビッチを支持してきた現在の既得権益層には有力な財界指導者も含まれている。(訳注 2014年2月22日、デモ隊がキエフを掌握し、議会はヤヌコビッチ大統領の解任と大統領選挙を5月25日に行うことを決議した)  (聞き手はロバート・マクマホン Editor@cfr.org)

CFR Meeting
ウクライナ危機の外交・経済・軍事的衝撃を検証する

2014年3月号

◎スピーカー
チャールズ・クプチャン/ヨーロッパ担当シニアフェロー
ロバート・カーン/国際経済担当シニアフェロー
ジャニン・デビッドソン/国家安全保障担当シニアフェロー
◎モデレーター
アニヤ・シュメマン/アメリカン大学国際関係大学院/アシスタント・ディーン

ロシアのナショナリストたちは、スラブ民族と東方(ロシア)正教系諸国の連帯を求めるユーラシア連合を通じてロシアを再建したいと考えている。・・・だが、ウクライナはヤヌコビッチ政権を倒すことで「われわれにはスラブ民族、東方正教会のつながりを基盤するユーラシアブロックに入るつもりはなく、ヨーロッパの一部になりたい」というメッセージをプーチンに送ったことになる。今回の事態は、これに対するプーチンのウクライナへのメッセージとみなせる(C・クプチャン)

IMFによる融資をまとめるには時間がかかるし、ウクライナの暫定政権はIMFが求めるような改革を遂行していく政治的基盤をもっていない。「当面の措置として、第2ステージに進むためのつなぎ融資を多くの条件をつけずに提供する必要がある」(R・カーン)

プーチンが大きな野心を露わにしてクリミアだけでなく、他のウクライナ地域に侵攻すれば、制圧地域を維持する一方で、親欧米派の激しい抵抗に直面する。彼が制圧しようとする地域で、抵抗運動だけでなく、ゲリラ戦が起きる。(J・デビッドソン)

「モノのインターネット」が切り開く未来

2014年3月号

ニール・ガーシェンフェルド
マサチューセッツ工科大学教授、 JP・バッサー シスコシステムズ チーフアーキテクト

いまやネットワークの進化を上回る勢いで、さまざまなデバイスのオンライン化が進んでおり、その一部が「モノのインターネット」と呼ばれている。指先に収まるほどの小型コンピュータをさまざまな日用品に組み込めば、インターネットを経由してあらゆることができるようになる。例えば、所有者のカレンダー、ベッド、車にアクセスして、その人物がどこにいるかを判断し、家の温度を調節するサーモスタットも実用化できる。モノのインターネットで生活は大きく変化していく。インターネット同様に、モノのインターネットの世界でも、「閉鎖性と集権制」ではなく、永続的な技術革新と進化を刺激する「開放性と分散性」が規範になれば、テクノロジーが日常生活のより細部にまで入り込みつつも、それを意識せずに生活できる時代がやってくるだろう。

タイの政治的解体
―― 崩壊した密約と終わらない混迷

2014年3月号

ダンカン・マッカーゴ
英リード大学政治学教授

2011年7月の総選挙で、タクシン元首相の妹インラック・チナワットが首相に選ばれると、反タクシン派とタクシン派の対立は一時的に後退した。現実的で物腰の柔らかなインラックは、妥協を受け入れる柔軟な路線をとって批判者を当惑させ、旧敵である王室と軍のいずれともうまくやっていけることを立証した。特に軍は国防大臣ポストに人材を提供してインラック政権を支えてきた。インラックの働きかけで、政府と既得権益層は政治取引を交わした。インラックが王室の権威や軍事予算などのデリケートな問題をめぐって強引な行動をとらない限り、既得権益層は、彼女が政権を維持することを認めた。ドバイで逃亡生活を送っているタクシンがタイに帰国するのを認めないことも暗黙の了解とされた。取引が公にされることはなく、野党の民主党、黄シャツ隊・赤シャツ隊の指導者もこの取引の存在は知らなかった。2013年後半までは、すべてがうまくいっているかにみえた。少なくとも表面的にはタイは平常を取り戻していた。だが、それを揺るがす二つの展開があった。・・・

CFR Meeting
ウクライナ危機とロシア
―― プーチンはどう動くか

2014年3月号

◎スピーカー
スティーブ・セスタノビッチ
米外交問題評議会ロシア担当シニアフェロー
アレクサンダー・モティル
米ラトガース大学教授
◎モデレーター
ロバート・マクマホン
エディター CFR・ORG

東部のルハーンシク、ヤヌコビッチの地元のドネツィク、そしてクリミアは、全般的には親ロシアの政治が今後も続くこと望んでいると考えることもできる。だが、ルハーンシク、ドネツィクでもっとも大きな影響力をもつ人物は富豪のリナ・アクメトフ。彼は欧米とのつながりに大きな利益を有している。つまり、この二つの地域の人口の一部は分離独立を望んでいるが、経済エリートたちは分離独立には反対している。・・・クリミアも一般に言われるほど親ロシア的ではない。・・・ウクライナの分裂は起きないだろう。(A・モティル)

ウクライナ経済は昨年の11月の時点ですでに危機的な状態にあったし、その後、3カ月に及んでいる革命が、この国の国債の格付けとGDP(国内総生産)にプラスに作用しているはずはない(すでにS&Pはウクライナのディフォルトリスクを警告している)。政治的打開策だけでなく、経済的解決策を考案する必要がある。(S・セスタノビッチ)

CFR Update
衝突する日韓の自画像
―― 未来志向の日韓共同宣言を

2014年3月号

スコット・スナイダー
米外交問題評議会シニアフェロー(朝鮮半島担当)

この60年で韓国は近代化と民主化を見事に実現したが、20世紀初頭の40年間にわたって堪え忍ばざるを得なかった日本による植民地支配の記憶が、韓国の国家アイデンティティの中枢にいまも位置づけられている。この歴史的経験ゆえに、韓国のアイデンティティは反日という枠組みで長く規定されてきた。日本も被害者意識をもっている。第二次世界大戦における敗戦と原爆投下、そして(東京裁判に象徴される)戦時の行動に関する戦後の解釈をめぐって差別されてきたと考えている。こうした自画像が日本人のアイデンティティを複雑にし、侵略者として自らを認識できずにいる。・・・二つの自画像が重なり合うことで政治が動き、その相互作用によって自らが好む歴史解釈が強化され、領土問題への対応は硬直化していく。・・・この状況で欠落しているのは両国の政治家のリーダーシップに他ならない。

オンライン個人情報とプライバシー
―― ビッグデータの恩恵とプライバシー侵害の間

2014年3月号

クレイグ・マンディ 米マイクロソフト・最高研究戦略責任者

もはや、個人データがオンライン上で収集され、蓄積されるのは避けようがない。しかも、一体どのくらいのデータがオンライン上に存在し、それがどこに蓄積されているかを正確に知ることはできない。一方で、ますますパワフルになったプロセッサーとサーバーで、オンライン上の個人データのすべてを分析できるし、その結果、個人の嗜好と行動に関する新しい洞察と推定を得ることができる。これが「ビッグデータ」時代の現実であり、個人のプライバシーと市民的自由を守る現在のアプローチはすでに時代遅れとなっている。現在の法律と規制は「個人データの収集と保有を管理すること」を重視しているが、実際には、多くの人は「個人情報がどのように用いられているか、その結果何が起きるか」を心配している。ビッグデータのポテンシャルを抑え込む「データ収集と保有を制限する」これまでのやり方から、「データ使用の管理」へと法と規制の焦点をシフトさせることが、ビッグデータ時代のプライバシーを守る対策の第一歩になる。

習近平の政治改革路線は本物か
―― 労働教養の廃止と政治改革の行方

2014年2月号

ジョン・デルーリー 延世大学国際関係大学院 アシスタント・プロフェッサー

1949年に毛沢東(マオ・ツォートン)が中華人民共和国を建国した直後に導入された反体制派を対象とする「労教(強制労働制度)」は、革命に邁進する国の社会・政治秩序の維持を目的とする、きわめて毛沢東主義的な制度だった。だが、この労働教養政策の廃止がついに決定された。これをもって習近平が政治改革に踏み出した証拠とみなす専門家もいる。「国のために個人を強制的に働かせれば社会問題は解決する」とした、毛沢東主義の時代遅れな考えを、共産党が公に拒絶したことは称賛に値する。だが、最終的に「労教」廃止が、中国で法の支配を推し進める真の転機になるかどうかは、予断を許さない。それを見極める最大の試金石は、主権を市民と分かち合い、党を批判し、政治的代替集団を組織する権利を認める心づもりが習近平(シー・ジンピン)にあるかどうかだろう。

中国は第2の経済改革・開放路線へ
―― 管理・統制国家からルールに基づく規制国家へ

2014年2月号

エヴァン・フェイゲンバーム シカゴ大学ポールソン研究所副所長、ダミアン・マ シカゴ大学ポールソン研究所フェロー 

習近平体制は、市場経済の確立に向けた経済改革へとすでに踏み出している。エネルギー価格の統制、金利や為替の管理策は今後弱められ、その多くが市場メカニズムに委ねられるようになる。民間企業を交えた、新たな社会保障制度も整備され、財産権の保障も強化されるだろう。たしかに、国有企業が経済における支配的優位をもつ状況で、国が経済構造を変革できるのかと疑問に感じる人もいるだろう。だが、国内外からの激しい競争に直面すれば、国有企業も、もっと市場規律に則した行動をとるようになるだろう。もちろん、9兆ドル規模の経済を構造的に改革していくのは容易ではないし、しかも、金融、労働、産業市場の改革は相互に密接に関連している。改革を成功させるには、国の形を作り替える必要がある。最終的に改革は経済というよりも政治領域の問題になる

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