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論文データベース(最新論文順)

新疆ウイグルで何が起きているのか
―― 中国のワイルドウエスト

2014年7月号

ケンドリック・クオ ジョンズホプキンス大学大学院生

新疆ウイグル自治区には中国で最大規模の石油、天然ガス、石炭資源が存在し、例えば、中国の石炭資源の40%がこの地域に集中している。北京は、この地域での資源開発をスムーズに進めることに最大限の配慮をしてきた。ウイグル族の不満を抑え込む一方で、漢民族の移住者たちのことを、教育を受けた労働力、新疆ウイグルにおける中央政府に忠実な市民として優遇してきた。こうして、1949年には22万程度だった新疆ウイグルにおける漢民族の人口はいまや840万へとふくれあがった。ウイグル族は漢民族の文化帝国主義に反発し、これが二つの民族の衝突を引き起こしている。だが多くの場合、見落とされているのは、いまや自治政府と漢民族コミュニティの間の緊張も高まっていることだ。漢民族の要望を政治的に追認し、政府が便宜を図るという漢民族コミュニティとの暗黙の了解は、すでに持続不可能になっている。

イラク内戦とイランの立場
――イランが宗派間紛争という言葉を使わない理由

2014年7月号

モフセン・ミラニ 南フロリダ大学戦略外交センター所長

テヘランの目的はバグダッドのシーア派政権を存続させることで、一方、イラク・シリア・イスラム国(ISIS)は純然たるスンニ派国家を樹立したいと考えている。とはいえ、イランは今回の戦闘を「宗派間紛争である」と明確に認めるつもりはなく、ISISのことを外国の支援に依存するタクフィリ(他の宗派を不信心とみなすスンニ派)、あるいはインフィダル(背教徒)と位置づけている。一方で、イランはすでにイラク内戦に深く関与している。イランの革命防衛隊(IRGC)はイラク治安部隊と協力して軍事作戦を主導し、テヘランはシーア派武装集団にも戦闘への参加を促している。長くシリア内戦にも関与してきたイラン軍と武装勢力は、ISISを含むスンニ派武装勢力との十分な戦闘経験をもっている。それでも、テヘランはイラクでの戦闘を「テロとの戦い」として位置づけ、ISISの資金源がサウジであるとも公言していない。その理由は・・・

CFR Briefing
欧州における反移民感情の台頭

2014年7月号

ジェーン・パーク cfr.org Deputy Director

依然として経済的停滞から十分に立ち直れずにいるにも関わらず、ヨーロッパは、アフリカや中東から流入する移民、難民の急増という事態に直面している。欧州連合(EU)の対応は場当たり的で、「移民や難民の権利よりも国の安全保障を守ることを重視している」との批判も聞かれる。一方で、財政難に苦しむ多くのEU加盟国は、社会サービスを切り捨てざるを得ない状況に追い込まれ、反移民の立場をとる極右政党が急速に台頭している。いまや、人権の尊重、自由な人の移動というEUの中核理念が脅かされかねない状況にある。ほとんどのEU加盟国は難民対策として地中海の海上警備の強化・拡大や取り締まりめぐる情報共有には前向きだが、難民や移民の権利を守るための枠組み合意は形成されていない。移民排斥を唱える極右政党が今後も支持を集め、彼らが政治スキルを高めていけば、経済が回復しても、ヨーロッパに反移民感情が定着する恐れがある。・・・

北朝鮮の崩壊を恐れるな
―― リスクを上回る半島統一の恩恵に目を向けよ

2014年7月号

スー・ミ・テリー 元米中央情報局(CIA)上席分析官

朝鮮半島の統一が韓国を経済的・社会的に押しつぶすわけでも、アメリカ、中国、日本に受け入れがたいリスクを作り出すわけでもない。たしかに、朝鮮半島の統一はドイツ統一以上にコストがかかり、多くの課題を伴うだろう。例えば、北の崩壊シナリオとしてもっとも現実味があるのは北朝鮮が内破し、体制が崩れていくことで、この場合、核兵器の安全な管理をいかに確保し、人道的悲劇を回避して大規模な難民が発生しないようにすることが大きな課題となる。だからといって、半島の統一を回避すべきだと考えるのは間違っている。崩壊を経た半島統一の最大の恩恵は、北東アジアにおける主要な不安定化要因が消失することだが、特に韓国は大きな経済的恩恵を手にできる。これまで各国は、平壌が挑発的行動を前にしても、北朝鮮を不安定化させることを懸念して、経済制裁の強化や、対抗策をとることを躊躇ってきたが、今後はそのような配慮をすべきではない。統一の恩恵はリスクやコストを遙かに上回るのだから。

CFR Meeting
世界経済の現状をどうみるか ―― アラン・グリーンスパンとの対話

2014年6月号

スピーカー アラン・グリーンスパン 元連邦準備制度理事会議長
モデレーター ダイアナ・ファレル マッキンゼー&カンパニー ディレクター

金融危機後の5年にわたって資金の流れが停滞してきたが、いまやアメリカの金融システムのもっともセンシティブで重要な部分、つまり、企業融資部門で資金の流れが生じている。これは好ましい兆候だ。・・・だが長期資本投資がうまくいっていないし、この部門には回復の兆しがない。・・・中国経済は技術革新領域で大きな問題を抱えている。何を考え、語るかに制約がある社会のイノベーションには限界がある。イノベーションにとって重要なのは、常識的な思考の外側へと出ていくことだが、権威主義国家で、このような発想をするのは難しいだろう。・・・人口が高齢化していけば、消費は増え、貯蓄の規模は小さくなっていく。この段階になると、日本はグローバル市場でグローバルな金利で資金を調達するしかなくなる。しかも、日本の公的債務残高は膨大な規模に達している。・・・日本で何が起きるか、私も心配している。

不平等という幻想 ―― なぜ富裕税は機能しないか

2014年6月号

ウォジシェック・コップザック コロンビア大学教授 、アリソン・シュレージャー エコノミスト

いまや社会的不平等を問題視するのが、市民の鬱憤晴らしの新しいスタイルになり、裕福な家に生まれた人物は大きな資金を貯め込み、他の人々からみれば夢のような優雅な生活を送ると広く考えられている。たしかに、技術の進化やグローバル化などが一部の人に非常に大きな収入をもたらした結果、所得の不平等はさらに大きくなっている。だが、富の格差が拡大しているとみなす明確な証拠はない。それにも関わらず、エコノミストのトマス・ピケティは、富裕層を対象とする富裕税の導入を提言している。現状では、富の格差が広がっていたり、われわれが新しい金ぴか時代にいたりすることを示す証拠は乏しい。いつかそのような時代に遭遇するとしても、提案されているような富裕税の導入は、富の格差という病をますます深刻にするだけだろう。

依然不透明な電気自動車の未来

2014年6月号

デビッド・M・レビンソン ミネソタ大学交通研究所・所長

電気自動車の未来がどのようなものかは、依然としてはっきりしない。ホンダのインサイトやトヨタのプリウスは、環境意識や先端技術へのこだわりをもつ消費者にうまくアピールした。シェビーボルトのようなプラグイン型の電気自動車も、完全な電気自動車である日産リーフとホンダのフィットEVも市場に投入された。だが2013年にアメリカの消費者が購入した車の内訳をみると、ハイブリッドカー、電気自動車のシェアは非常に小さい。二酸化炭素排出量を大幅に削減できるほどにハイブリッドカーや電気自動車の市場シェアを高めるには、ハイテク志向と環境保護志向が強い消費者以外にもアピールするように、平均的消費者の経済感覚に訴える電気自動車を作らなければならない。・・・電気が自動車を動かすエネルギー効率の高い技術であることは分かっている。だが車を動かすエネルギーとして今後何が主流になっていくか、現状では依然としてはっきりしない。

中ロは本当に現状変革国家か? ―― 現状をどうとらえるべきか

2014年6月号

G・ジョン・アイケンベリー プリンストン大学教授

プーチンは局地的な勝利を手にしたかもしれないが、大局的には敗北を喫しつつある。ロシアは台頭しているのではなく、最大規模の後退を余儀なくされている。中国も民主国家に取り囲まれている。中国とロシアがアメリカのリーダーシップに強く反発し、それに対抗する路線をとることでより大きな地域的影響力を確立したいと望んでいるのは事実だろう。しかし、中国とロシアはせいぜいパートタイムのスポイラーに過ぎない。アメリカにときに反発しつつも、基本的には現秩序のロジックを受けいれている。両国とも国益を現秩序に依存しているからだ。たしかに、中ロは現秩序内で自国の立場を強化しようと試みているが、それを別のシステムに置き換えようとはしていない。

殺人ロボットを禁止せよ
―― 人間を殺すロボットの脅威

2014年6月号

デニス・ガルシア ノースイースタン大学政治学部准教授

殺人ロボットによる戦争はもはやフィクションの世界の話ではない。近い将来、映画の世界から抜け出して現実になる可能性は十分にある。中国、イスラエル、ロシア、イギリス、アメリカを別にしても世界の50カ国が、殺人ロボットを含むロボット兵器の開発計画をもっている。この領域でもっとも早い進化を遂げているのが中国だ。韓国も赤外線センサーで標的を感知できる安全監視ロボットを北朝鮮との非武装地帯に配備している。各国の軍部は、殺人ロボットがあれば、兵士を危険にさらすことなく、任務を遂行できると考えている。しかしそこにはソフトウエアの欠陥、あるいはサイバー攻撃による誤作動という、これまではなかった新しい問題がつきまとうし、道義的、法的問題も伴う。殺人ロボットが受け入れがたい現実を作り出す危険に今備えない限り、手遅れになる。











「変われない日本」の変化を読む
―― ナナロク世代と改革のポテンシャル

2014年6月号

デビン・スチュワート カーネギー国際問題倫理評議会 シニアフェロー

ここにきて、日本人の多くが「停滞し、変われない日本」も、もはや変わるしかないと考えるようになった。こうした変化を象徴するのがナナロク世代だ。親の世代よりずっとグローバルな感覚をもち、リベラルで個人主義的、しかも起業に前向きな、現在30―40歳代の彼らは、いまや社会的な影響力をもつほどに台頭している。これに呼応して、女性の社会進出が進み、教育制度が開放的になり、市民社会も力強さを増している。右派のナショナリストではなく、新しいエリートたちが成功すれば、日本の政治も永久的に変わるかもしれない。既成政党の指導者が年をとり、ナナロク世代がさらに社会的足場を築いていけば、彼らが今後の選挙で当選できる見込みも大きくなる。日本の政治は、新しい人材と思想を必要としており、ナナロク世代は双方において大きな貢献ができる立場にある。

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