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論文データベース(最新論文順)

中露、イランの政治的強さの秘密
――革命が授ける独裁体制のレジリアンス

2023年9月号

ルーカン・アフマド・ウェイ トロント大学教授(政治学)

10年以上にわたって「悪漢たち」が勝利した時代を経て、世界はいまや独裁体制に背を向けつつあるようだ。ロシア、中国、イランという世界の3大悪党は、その権威に対する前例のない脅威に直面している。とはいえ、その脅威は、多くの人が期待するほど大きくはない。中国、イラン、ロシアは、革命を経験していることに深く根ざすレジリエンスをもっているからだ。実際、革命というルーツが、これら三つの体制が景気低迷や失政、支持率の急落を乗り切り、今後も長年にわたって強さを維持していく支えを提供している。これに対抗する効果的な戦略を考案するには、その本質と、ユニークなレジリエンスのルーツを理解する必要がある。

米中対立とドイツの立場
―― 微妙なバランスを維持できるか

2023年9月号

リアナ・フィックス 米外交問題評議会フェロー(ヨーロッパ担当)
ゾンユアン・リュー 米外交問題評議会フェロー(中国研究担当)

貿易上の比較優位を中国が戦略ツールとして利用することへの懸念を共有したことで、アメリカとヨーロッパは「ディリスキング・アジェンダ」の下、緊密な協調関係を築いている。それでも、欧米間の大きな立場の違いは依然として存在する。ドイツは、地政学リスクを慎重に回避しながら、中国との貿易を通じて繁栄を維持することを望んでいる。当然、ベルリンは反中国「ブロック」のメンバーになることは望んでいない。だが、より強硬になった中国が作り出す地政学的リスクの回避に努めずに、ベルリンが、もっぱら、経済利益を優先し続ければ、おそらく台湾をめぐる安全保障危機でも(中国に)経済的強制策で手足を縛られる恐れがある。・・・

大国間競争という幻想
―― 曖昧で変動する世界

2023年9月号

ジュード・ブランシェット 戦略国際問題研究所 フリーマンチェア(中国研究)
クリストファー・ジョンストン 戦略国際問題研究所  シニアアドバイザー

アメリカが直面しているのは、はっきりとした米中競争ではないし、二つの政治ブロックが対立しているわけでもない。緊密なパートナーや同盟国だけでなく、便宜的な二国間関係、不安定で暫定的な連合が織りなす国際環境で大戦略を展開していくには、ワシントンは、相互依存と自立、多極化とブロック化の間に位置する曖昧な世界でうまく流れを制御していく必要がある。はっきりとした反中国の立場で協調しようとする国がほとんどない以上、アメリカはパートナーにゼロサムの選択を求めることには慎重でなければならない。様々な連合を迅速に組織しなければならない世界では、パートナーの立場に配慮して、微妙な部分は口に出さない方が賢明な場合も多い。

欧米の所得二極化と社会混乱
―― ラテンアメリカ化する欧米社会

2023年9月号

ブランコ・ミラノヴィッチ ニューヨーク市立大学 シニアスカラー

産業革命から20世紀半ばまでは、世界の富は欧米先進国に集中した。このために世界的な不平等が拡大し、冷戦期にそれはピークに達した。その後、中国の経済的台頭のおかげもあって、世界レベルでの格差は低下し始めたが、いまや世界的な平等の進展はもはや必然ではなくなっている。中国はすでにかなり豊かな国になっているし、インドやアフリカにかつての中国の役割を期待するのは無理がある。しかも、世界的な不平等が縮小しても、各国の社会的・政治的混乱が緩和されるわけではない。実際、米英、日独などの世界の富裕層は世界トップレベルの所得を維持しているが、非欧米諸国の所得レベルが上昇し、欧米の貧困層や中間層に取って代われば、豊かな国々における富裕層とそうでない人々との二極化、格差はさらに大きくなる。・・・

民主国家インドという幻想
―― 利益は共有しても、価値は共有していない

2023年9月号

ダニエル・マーキー 米平和研究所 シニアアドバイザー(南アジアプログラム)

アメリカと利益は共有しても、価値は共有していない。いまや、インドは異論をほとんど許容しない民族主義者によって統治されている。「非自由主義的で非民主的な政党」に支配され、その政治力は高まる一方だ。この状況が変わらない限り、アメリカは、日本や韓国、ヨーロッパの北大西洋条約機構(NATO)同盟国と同じようにインドを扱うことはできない。そうではなく、アメリカは、ヨルダン、ベトナム、その他多くの非自由主義的なパートナーのようにインドに接しなければならない。米政府高官は「インドは同盟国ではないこと」を理解しなければならない。

新時代の米台関係
―― 中国にどう対処するか

2023年9月号

スーザン・ゴードン 共同議長
マイケル・マレン 共同議長
デビッド・サックス プロジェクト・ディレクター

アメリカの台湾政策を、「現状に不満を募らせ、能力を高め、強硬になり、リスクを許容する中国」に対処できるように進化させなければならない。世界で経済的にもっとも重要な地域の未来は、アメリカが中国を抑止し、台湾海峡の平和を維持することに成功できるかにかかっている。中国が台湾を併合し、水中監視装置、潜水艦、対空防衛部隊などの軍事資産を現地に配備すれば、この地域における米軍の活動は制限されるし、アジアの同盟国を防衛する能力も制約される。つまり、アメリカの政策立案者は、中国が台湾を攻略すれば、台湾だけでなく、第一列島線の未来や、西太平洋全域へのアメリカのアクセスと影響力を維持する能力が危機にさらされることを理解する必要がある。

「中国経済の奇跡」の終わり
―― アメリカが門戸開放策をとるべき理由

2023年9月号

アダム・S・ポーゼン ピーターソン国際経済研究所所長

中国では家計貯蓄が急増し、民間の耐久消費財消費が大きく減少している。この現象を「経済領域におけるコロナ後遺症」とみなすこともできる。特定の政策がある日突然拡大され、次の日には撤回される事態を経験した人々は、景気刺激策を含む政府の経済対策に反応しにくくなる。専門家の多くは、現状を説明する上で、不安定化する不動産市場や不良債権の問題などを重視するが、経済成長を持続的に抑え込む「経済領域で長期化するコロナの余波」の方がはるかに深刻な問題だ。すでに、不安定な状況に直面した富裕層は、外への退出を試みており、時とともに、こうした出口戦略はより多くの中国人にとって魅力的になるだろう。アメリカはこのタイミングで、現在の対中政策を全面的に見直し、中国の人と資本への門戸開放政策をとる必要がある。

未来ビジョンを巡る米中衝突
―― どちらの見方が正しいのか

2023年8月号

マーク・レナード ヨーロッパ外交問題評議会 ディレクター

冷戦の歴史が再現されていると考えるアメリカは、ソビエトに対して成功した戦略を(中国に対して)復活させようとし、世界を分断し、同盟国を動員している。北京は、各国は、イデオロギー紛争よりも、自己判断と多層的連携へ向かっているという予測に即した戦略をとっている。中国の戦略家は、現状は冷戦型のブロック形成とは相容れず、そのなかで中国は大国の地位を確立できると考えている。こうした北京の未来ビジョンの方が、ワシントンの理解よりも正確で、世界有数の人口を抱える国々の期待により適合しているのかもしれない。アメリカの戦略が、かつての均衡と安定へのノスタルジーに突き動かされ、消えゆく秩序をアップデートするという無益な努力にすぎないのなら、うまくいくはずはない。

戦後も続くゼレンスキーの闘い
―― ウクライナの民主主義を考える

2023年8月号

ヘンリー・E・ヘール ジョージ・ワシントン大学 教授(政治学)
オルガ・オヌッチ マンチェスター大学 教授(比較政治)

俳優やコメディアンとしてのキャリアゆえに、政治指導者としては未知数とみなされていたゼレンスキーも、ウクライナ戦争以降、そのリーダーシップは高く評価されるようになった。しかし、戦争が終われば、別の大きな試練に直面する。平時には、戦時とは大きく異なるリーダーシップ、まったく別のスキルと能力が求められるからだ。都市やインフラだけでなく、民主主義も再建し、強化しなければならない。政治腐敗の温床となりやすい、個人的後援ネットワークを中心とする、これまでの政治スタイルを終わらせなければならない。これらの課題を彼がクリアできるかが、ウクライナの運命と民主主義の未来を左右することになるだろう。

ミャンマーは米中冷戦の最前線なのか
―― 内戦と米中の立場

2023年8月号

イェミャオ・ヘイン 米平和研究所 客員研究員
ルーカス・マイヤース ウィルソン・センター シニア・アソシエイト(東南アジア担当)

アメリカと同盟諸国は、ミャンマーの民主化勢力への支持を表明しているが、地政学的な考慮から、軍事政権に対して強硬路線をとることは控えている。北京は軍事独裁政権に当初は様子見を決め込んでいたが、いまや構図は変化しつつある。反政府派をアメリカの手先と誤解した中国は、軍事政権を支える決意を固めつつある。内戦は、大国のライバルたちによる外部からの干渉を招き入れつつある。米中はともに、行動を起こさなければ相手を利することになると懸念し、いわば、紛争の「冷戦化」が進みつつある。実際には米中も東南アジア諸国連合(ASEAN)も地域の不安定は望んでいない。・・・。

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