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論文データベース(最新論文順)

米中露・新戦略トライアングルで 何が変わるか

2014年7月号

デビッド・ゴードン  ユーラシアグループ・ グローバルマクロ分析ディレクター
ジョーダン・シュナイダー  ユーラシアグループ リサーチャー

冷戦期を思わせる戦略トライアングルが再び復活しつつある。冷戦期の米中ロ戦略トライアングルを巧みに利用したのはアメリカだったが、今回のトライアングルで強い立場を手にしているのは中国だ。北京は、ウクライナ危機に派生する米ロ対立をうまく利用できる立場にある。中国はロシアからのエネルギー供給を確保するだけでなく、ロシア市場へのアクセスの強化、ロシアからの軍事技術の供与を望んでいる。もちろん、戦略トライアングル内部の対立構図をはっきりと区分できるわけではない。中国にとってアメリカは依然として重要な経済パートナーだし、住民投票で国境線を変えたロシアのやり方を、国内に大きな火種を抱える中国が認めることもあり得ない。だがそれでも、この新環境のなかで大胆になった中国が、現在の東アジアにおける地域バランサーとしての役割をアメリカが遂行していくのを難しくするのは避けられないだろう。・・・

ロシア、中国と新しい外交課題

2014年7月号

ロバート・ゲーツ 元米国防長官、 ファリード・ザカリア CNNファリード・ザカリアGPS ホスト

プーチンにとって、ウクライナにおける最終目的はキエフに親ロシアの政権を誕生させることだ。ヤヌコビッチほど、はっきりとした親ロ派である必要はない。東部がモスクワに目を向け、独立に近い大きな自治権を確保し、しかもウクライナがNATOやEUにこれ以上近づいていかなければ、おそらくプーチンはその状況で満足するのではないかと思う。すくなとも、当面はそうした状況で十分のはずだ。

そこに戦略的空白が存在すれば、(台頭する国家は)自分たちのナショナリスティックなアジェンダを模索するチャンスがあると考える。そしてひとたび行動を起こせば、それは自律的にエスカレートしていく。防空識別圏の設定、単なる監視船ではなく、戦闘機まで投入し始めた尖閣諸島をめぐる対日アプローチの激化、さらには南シナ海における石油掘削プラットホームの設置に象徴される、この18カ月から2年間の中国の攻撃的なアプローチを、私はこの文脈で捉えている。

黒海をめぐるロシアとトルコの歴史的攻防
―― ロシアのクリミア編入とトルコの立場

2014年7月号

アキン・アンバー カディルハス大学准教授

クリミアは歴史的にみても、ロシアとトルコのパワーバランスを左右する戦略的要地だった。18世紀のクリミア・ハン国併合によってクリミアを手に入れたロシアは、海軍の活動範囲を黒海からエーゲ海、地中海へと急速に拡大していった。一方、ヨーロッパ諸国は、ロシアの拡大主義の動きをボスポラス海峡、ダーダネルス海峡へと押し返そうとした。このせめぎ合いが、1853―56年のクリミア戦争につながっていく。トルコの視点でみれば、今回のロシアのクリミア編入はロシアの歴史的拡大主義のパターンに合致している。今後、ロシアがともに資源地帯である黒海から地中海へと活動範囲を増強していく可能性は十分にある。トルコが生き残るための唯一の選択肢は、今も昔も同盟国と協調することであり、そのためには、欧米から信頼できるコミットメントを引き出す必要がある。

欧米の偽善とロシアの立場
―― ユーラシア連合と思想の衝突

2014年7月号

アレクサンドル・ルーキン ロシア外務省外交アカデミー副学長

冷戦が終わると、欧米の指導者たちは「ロシアは欧米と内政・外交上の目的を共有している」と考えるようになり、何度対立局面に陥っても「ロシアが欧米の影響下にある期間がまだ短いせいだ」と状況を楽観してきた。だが、ウクライナ危機がこの幻想を打ち砕いた。クリミアをロシアに編入することでモスクワは欧米のルールをはっきりと拒絶した、しかし、現状を招き入れたのは欧米の指導者たちだ。北大西洋条約機構(NATO)を東方に拡大しないと約束していながら、欧米はNATOそして欧州連合を東方へと拡大した。ロシアが、欧米の囲い込み戦略に対する対抗策をとるのは時間の問題だった。もはやウクライナを「フィンランド化」する以外、問題を解決する方法はないだろう。ウクライナに中立の立場を認め、親ロシア派の保護に関して国際的な保証を提供しない限り、ウクライナは分裂し、ロシアと欧米は長期的な対立の時代を迎えることになるだろう。

CFR Meeting
イラクと中東の宗派間紛争
―― イラク分裂の意味合い

2014年7月号

◎スピーカー
  スティーブン・ビドル ジョージワシントン大学教授
マックス・ブート 米外交問題シニアフェロー(国家安全保障担当)
ミーガン・オサリバン ハーバード大学教授
◎プレサイダー
リチャード・ハース 米外交問題評議会会長

イラクの混乱は中東におけるより大きな危機の一部であり、最終的にはこれによって中東の地図が書き換えられることになるかもしれない。(R・ハース)

(イラクにおける)過酷な民族・宗派間紛争は数週間、数カ月という単位ではなく、数年という長期的なスパンで続くだろう。その途上で人道危機も起きるだろうし、この環境のなかでテロが起きる危険もある。だがもっとも厄介なのは、イラクの長期的な内戦が地域的に拡散していく危険が非常に高いことだ。(S・ビドル)

イラクの統一を保つことがわれわれの目的だと言い続けるだけで、その一方でイラクの分裂をいかに管理するかを考えないとすれば、政策決定者としての責任を放棄することになる。(M・オサリバン)

すでに事実上の分裂は始まっている。イランの革命防衛隊(IRGC)がその傘下組織を使って南部のシーア派地域を支配し、ISISと旧バース党メンバーがスンニ派地域を支配している。・・・クルド地域はうまく統治されるとしても、他のイラク地域は紛争に覆われつくすことになりかねない。(M・ブート)

デジタル経済が経済・社会構造を変える
―― オートメーション化が導くべき乗則の世界

2014年7月号

エリック・ブラインジョルフソン MIT教授(マネジメントサイエンス)
アンドリュー・マカフィー MITリサーチ・サイエンティスト(デジタルビジネス)
マイケル・スペンス ニューヨーク大学教授(経済学)

グローバル化は大きな低賃金労働力を擁し、安価な資本へのアクセスをもつ国にこれまで大きな恩恵をもたらしてきたが、すでに流れは変化している。人工知能、ロボット、3Dプリンターその他を駆使したオートメーション化というグローバル化以上に大きな潮流が生じているからだ。工場のようなシステム化された労働環境、そして単純な作業を繰り返すような仕事はロボットに代替されていく。労働者も資本家も追い込まれ、大きな追い風を背にするのは、技術革新を実現し、新しい製品、サービス、ビジネスモデルを創造する一握りの人々だろう。ネットワーク外部性も、勝者がすべてを手に入れる経済を作り出す。こうして格差はますます広がっていく。所得に格差があれば機会にも格差が生まれ、社会契約も損なわれ、・・・民主主義も損なわれていく。これまでのやり方では状況に対処できない。現実がいかに急速に奥深く進化しているかを、まず理解する必要がある。

移民と社会同化
―― 追い込まれたスウェーデンの壮大な実験

2014年7月号

イーヴァル・エクマン スウェーデン公共ラジオ
国際問題プログラムホスト

この数十年にわたって、ボスニア、イラク、ソマリアなどから逃れてきた人々は、ヨーロッパでもっとも寛大なスウェーデンの難民保護政策の恩恵に浴してきた。だがその結果、かつては同質的だったこの国の社会はいまや大きく姿を変えた。経済が停滞するなか、単純労働を中心とする雇用状況が改善せず、失業率は高止まりしている。しかも、社会保障政策が大きな圧力にさらされている。こうして反移民の立場をとるスウェーデン民主党が政治的支持を伸ばしている。「巨大な社会実験がスウェーデン社会に強制されてきたが、その実験が失敗しているのはすでに明らかだ。多文化社会のビジョン、理想郷そして夢は崩れ去った」 と民主党は主張している。一方で、移民の若者たちによる暴動も頻発している。移民国家スウェーデンは大きな岐路に立たされている。

アベノミクスの黄昏
―― スローガンに終わった構造改革

2014年7月号

リチャード・カッツ オリエンタル・エコノミスト・レポート誌編集長

3本の矢すべてが標的を射抜けば、安倍政権が強気になってもおかしくはない。だがすでに2本の矢は大きく的を外している。財政出動による景気刺激効果は、赤字・債務削減を狙った時期尚早な消費税率の引き上げによって押しつぶされ、構造改革は曖昧なスローガンが飛び交うだけで、具体策に欠ける。量的緩和も、他の2本の支えなしでは機能しないし、物価上昇の多くは円安による輸入品の価格上昇で説明できる。結局、自信を取り戻すには、有意義な構造改革を通じて停滞する日本企業の競争力を回復するしかない。そうしない限り、一時的な景気浮揚策も結局は幻想に終わる。問題は、安倍首相がもっとも重視しているのが経済の改革や再生ではなく、安全保障や歴史問題であることだ。

CFRインタビュー
ロシアの戦略とウクライナ東部
―― 流れは国家内国家へ

2014年7月号

チャールズ・キング  ジョージタウン大学教授(国際関係論)

ウクライナ東部に対するロシアの戦略は公的には関与を否定しつつ、水面下で不安定化を画策することだと言われることも多い。これは、ロシアが1990年代に「近い外国」に対してとった戦略アプローチの系譜とみなせる。ロシアは最終的な結果がどうなるかは気に懸けずに、現地情勢への影響力を確保することを重視する。この戦略をとれば、ウクライナ東部における分離独立勢力の将来の地位をめぐって影響力を確保できる。一方、ウクライナ政府が軍事的対応を試みればみるほど、より多くの敵を作り出し、親ロ派を勢いづけてしまう。これは、対ゲリラ戦争に付きまとう古典的な問題だ。国際交渉も、(国連その他の)外部プレイヤーが(分離独立勢力にとっては受け入れられない)領土保全を目的に掲げるために、結局、うまくいかないことが多い。・・・ウクライナ政府が明確な勝利を得られないまま、混乱が長期化すれば、親ロシア派が独自の統治構造を作り上げていく危険がある。 聞き手はロバート・マクマホン Editor@cfr.org)

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