論争 ブラジル経済の将来
2014年9月号
<論争の背景>
モルガン・スタンレーのルチール・シャルマがフォーリン・アフェアーズ誌で発表した「ブラジル経済の奇跡の終わり ―― 社会保障か経済成長か」(フォーリン・アフェアーズ・リポート2012年6月号)は世界的に大きな話題となった。誰もが、先進国経済が停滞するなか、今後、グローバル経済を牽引していくのは、ブラジルを含む新興国だと考えていたからだ。 だが、シャルマは「急成長を遂げる中国の資源需要に牽引されてきたブラジル経済は、中国経済の停滞とともに、下降線をたどる」と予測した。 ブラジル経済の成長軌道は、国内の石油、銅、鉄鉱石など、世界の原材料市場における需要の拡大軌道とほぼ重なりあっていると指摘したシャルマは、「経済の停滞を回避するために、ブラジル政府がリスクをとり、経済を開放し、社会的安定と経済拡大のバランスをとる方法を見つけださない限り、未来は切り開けない」と主張し、「新興市場諸国が簡単に成長できた時代、原材料価格の高騰が支えた経済成長の時代、そして社会保障を優先してもブラジルがかろうじて4%の成長を実現できた時代は終わろうとしている」と分析した。「開放と改革を進めない限りブラジルの経済成長も社会的安定も損なわれていくことになる」と。 以下は、シャルマの論文に対する4人の専門家による反論と、シャルマの再反論。(FAJ編集部)