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論文データベース(最新論文順)

北東アジアにおける歴史戦争
―― アメリカの関与がなぜ必要か

2014年5月号

ギウク・シン
スタンフォード大学教授(社会学)
ダニエル・C・シュナイダー
スタンフォード大学アジア太平洋研究センター
アソシエート・ディレクター

第二次世界大戦に由来する未解決の歴史問題が、北東アジアの地域的緊張の背景に存在する。歴史問題が日本と韓国というアメリカの主要な同盟国を反目させ、日本と中国のライバル関係を再燃させている。だが、この現状をめぐって、東アジアの戦後秩序を形作ったアメリカにも責任があることを認識する必要がある。アメリカは、冷戦という特有の環境のなかで戦後処理を行い、以来、状況を放置してきた。日本は「ドイツがいまも謝罪の必要性を認識し、自己検証の試みを続けていること」から教訓を学ぶ必要があるし、アメリカも戦争と過去に正面から向き合い、米大統領はヒロシマあるいはナガサキを訪問し、日本に原子爆弾を投下した結果、非常に多くの人命が奪われたことに対する自らの考えを示すべきだ。そうしない限り、北東アジアの歴史問題にアメリカが介入することは正当化できない。・・・・

プーチンの思想的メンター
―― A・ドゥーギンとロシアの新ユーラシア主義

2014年5月号

アントン・バーバシン 在モスクワ国際関係研究者
ハンナ・ソバーン 米フォーリン・ポリシー・イニシアティブ (ユーラシア分析担当)

2000年代初頭以降、ロシアではアレクサンドル・ドゥーギンのユーラシア主義思想が注目されるようになり、2011年にプーチン大統領が「ユーラシア連合構想」を表明したことで、ドゥーギンの思想と発言はますます多くの関心を集めるようになった。プーチンの思想的保守化は、ドゥーギンが「政府の政策を歴史的、地政学的、そして文化的に説明する理論」を提供する完璧なチャンスを作りだした。ドゥーギンはリベラルな秩序や商業文化の破壊を唱え、むしろ、国家統制型経済や宗教を基盤とする世界観を前提とする伝統的な価値を標榜している。ユーラシア国家(ロシア)は、すべての旧ソビエト諸国、社会主義圏を統合するだけでなく、EU加盟国のすべてを保護国にする必要があると彼は考えている。プーチンの保守路線を社会的に擁護し、政策を理論的に支えるドゥーギンの新ユーラシア主義思想は、いまやロシアの主要なイデオロギーとして位置づけられつつある。・・・・

アジア重視戦略の本質

2014年5月号

カート・M・キャンベル
前米国務省国務次官補
(東アジア・太平洋担当)イーライ・ラトナー
新アメリカ安全保障センター シニアフェロー

東シナ海での問題を超えて、日本の安倍晋三首相は、日本を数十年に及ぶ経済停滞から解き放ち、市民に国にもっと新たなプライドと、影響力ある国としての自覚をもたせたいと考えている。安倍首相は、第二次世界大戦の戦犯を含む戦没者を称える靖国神社を2013年末に参拝した。その国際的コストは高かった。日本と韓国の関係はさらに険悪になり、中国は安倍首相が権力ポストにある限り、日本との直接交渉には応じないという路線をさらに固めた。・・・・外交的緊張が高まっているとはいえ、アメリカは、日本がもっと地域的にも世界的にも積極的な安全保障上の役割を担えるように、自衛隊との協力関係を強化していくだろう。実際には完全に合理的な措置であり、むしろもっと早く手をつけてもおかしくなかった「日本憲法の再解釈と軍事的の近代化」を「反動的で軍国主義的だ」と批判する中国のプロパガンダに対抗していくことも必要だ。一方で、アメリカは日本と韓国の関係を改善するためにかなりの政治資源を投入する必要がある。・・・

変化した日本の政治とナショナリズム

2014年5月号

マルガリータ・エステベズ・アベ
シラキュース大学政治学部准教授

安倍首相の人気の高さと政治的影響力のどの程度が、ナショナリスティックな外交政策を求めるようになった日本の大衆の立場の変化を映し出しているのかは分からない。たしかに、尖閣問題もあって、2012年には、日本人の81%が中国には親近感がないか、どちらかといえばそうした感情を覚えないと答えている。安倍首相がこれまでの政治キャリアを保守主義や国家主義に即して積み上げてきたのも事実だ。だが、ナショナリスト路線を検証するには選挙制度改革が作り出した政治環境、普通の国への道筋をめぐる論争、そして中国の台頭が与えている影響も考える必要がある。選挙制度改革の結果、野心的な政治家が重要な国家アジェンダに特化できる環境が作り出され、国家安全保障とそれに付随するナショナリズムが有権者への訴求力を持っていることにいち早く気づいたのが自民党の政治家たちだった。・・・・

CFR Meeting
地政学的戦略リスクを検証する
―― ウクライナと日中対立

2014年5月号

◎スピーカー
ローレンス・D・フリードマン
キングス・カレッジ教授
リチャード・ハース
米外交問題評議会会長
◎モデレーター
ウォルター・ラッセル・ミード
バード・カレッジ教授

この一年というもの、人々は大国間紛争が起きるリスク、それも、これまでのように必ず しもヨーロッパかではなく、1930年代のようにアジアで紛争が起きる可能性を真剣に考 えるようになった。大国間紛争については、日本と中国の対立ゆえにアジアで大国間紛 争が起きる可能性がもっとも高いと私は考えている。(L・フリードマン)

新冷戦というとらえ方には疑問がある。ロシアには、それほど大きな脅威を作り出す力は ない。むしろ厄介なのは、アメリカとソビエト間、NATOとワルシャワ条約機構間に冷戦 期に存在したような了解が、持ち越されていないことだ。実際、われわれはプーチン大 統領の考えが読めずにいる。(R・ハース)

CFR Meeting
ケビン・ラッドが語る
北朝鮮危機、日中対立、
アジア重視戦略と中国

2013年4月号

ケビン・ラッド  前オーストラリア首相、ジョナサン・テッパーマン  フォーリン・アフェアーズ誌副編集長

「中国軍の高官を含む、私の中国の友人たちと話した感触では、中国政府は、面目を保つ形で、東シナ海の状況を安定化させ、長期的な問題の管理プロセスを日本との間で見いだそうと水面下で積極的に模索している。一方で、この問題をめぐる世論の高揚を前に、一体どうすれば実際に面子を失わずに危機を安定化できるか、疑問に感じ、困惑しているのも事実だろう」

アメリカのアジア重視戦略は、東アジアサミットへのアメリカの参加、アジア・太平洋での戦略プレゼンスを維持し、米海軍戦力の60%をアジア・太平洋に投入する軍事的リバランシング戦略、そして日本を含む環太平洋パートナーシップ(TPP)の構築という三つの支柱によって支えられている。こうした「アメリカの戦略を批判する中国の友人には、次のように答えることにしている。「北朝鮮を例外にして、アメリカのアジア重視戦略を歓迎しない国があれば、その国名を言って欲しい。ほとんどの場合、彼らは黙り込んでしまう」

主要経済指標という幻
―― ビッグデータ時代の経済指標を

2014年4月号

ザチャリー・カラベル/リバートゥワイス・リサーチ会長

いまやGDPは国の成功と失敗を判断する指標とみなされ、選挙結果を左右し、政府を倒し、大衆運動を引き起こす力さえ持っている。だが、GDPでは幸福感、満足感、家計労働は計測できない。政府が発表するインフレ数値を信じる市民もほとんどいない、公的なインフレ統計数値など「信用詐欺」のようなものだと言う専門家さえいる。グローバル・サプライチェーンを特徴とする現在の世界では貿易指標もほとんど当てにならない。いかなる主要経済指標も、現実の経済の姿を適切に映し出せていない。だが「より優れた主要経済指標」をわれわれが必要としているわけでもない。必要なのは政府、企業、コミュニティ、個人の特定の必要性を満たす、それに適したテーラーメードの指標だろう。

スノーデン時代の国家機密 ―― 機密情報のリークは正当化されるか?

2014年4月

ジャック・シェーファー ロイター コラムニスト

E・スノーデンのリークが国家安全保障に与えたダメージを割り引いて捉えるのは依然として時期尚早かもしれない。だが、米下院議員のほぼ半数、そしてグーグルやマイクロソフトを含むトップインターネット企業がスノーデンファイルを紹介したメディアが暴き出した米政府のスパイ行為に対して団結して抗議する声明を出している。現実には「必要以上に多くの文書が機密扱いとされ」、そのなかには国家安全保障に関する情報だけでなく、「公開されれば政府が困惑する行動や案件も機密情報とされている」。スノーデンケースのような手続きを無視したアンオーソライズドリークの一方で、政策を説明し、政策を守って遂行するための政府高官によるオーソライズドリークはすでに日常化している。より全般的に言えば、秘密をつくり、それを管理していくことは、これまでも政治家の大きな権限の源だった。そして政治家が権力に近づくにつれて、その誘惑は大きくなる。これを監視できるのは、議会でも裁判所でもない。それはやはりジャーナリズムの役目だろう。

ウクライナ後の欧州連合

2014年4月号

キャサリン・マクナマラ ジョージタウン大学准教授(政治学)

そもそもウクライナで抗議運動が広がったのは、EUとのさらなる統合に人々が魅力を感じていたにも関わらず、ヤヌコビッチがヨーロッパとの関係を断ち切ったからだ。そのウクライナのために行動しないとすれば、EUは一体どこで積極策に出るのか。多くの人は現状を不可解に感じている。だがこれには訳がある。一つは、ヨーロッパが伝統的な地政学ではなく「人間の安全保障」を重視しているためだ。軍事的対応を重視していないし、しかもEUは内に分裂を抱えている。ポーランドとリトアニアがロシアに対する強硬策を求めているのに対して、ロシアからの天然ガスの最大の輸入国である独仏は慎重な態度を崩していない。EUがいかなる対応策をとるとしても、それは目につきにくく、アメリカやイギリスの専門家に冷笑されるような路線になるのは避けられない。しかし、対決しないことと影響力がないことを同列にみなすのは間違っている。・・・

プーチンの目的はロシア国内にある
―― クリミア侵略とロシアの国内政治

2014年4月号

ブライアン・D・テイラー シラキュース大学准教授(政治学)

プーチンは、(ヤヌコビッチ政権を倒した)ウクライナの革命を、「ロシアの地政学的な敗北」とみていただけでなく、「その背後には欧米がいる」と考えていた。プーチンにとってウクライナの革命が厄介だったのは、それが、ロシアの政治・経済システムの脆弱性への懸念が高まっていたタイミングで起きただけでなく、ウクライナ人が不満を感じ、立ち上がったのと同じ問題がロシアにも存在したからだ。支配エリートと経済オリガークたちのつながりを前提とする腐敗した略奪政治に対する不満はロシアにも存在する。しかも、今後の経済展望に明るい部分はなく、ロシア政治は対立で覆われている。プーチンはウクライナの革命がロシアへと飛び火することを警戒している。だが、そうだとすれば、出口戦略を描くのは不可能ではないだろう。・・・

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