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論文データベース(最新論文順)

「ロシアか欧米か」に揺れるバルカン諸国 ―― ブリュッセルへの遠い道のり

2014年8月号

エドワード・P・ジョセフ ジョンズホプキンス大学 ポールニッツスクール シニアフェロー
ヤヌス・ブガイスキ 欧州政策分析センター シニアフェロー

シアはバルカン半島の民族対立、そしてNATOとEUへの参加を果たしていない国の脆さにつけ込める状況にある。NATOやEUへのバルカン諸国の加盟をめぐってヨーロッパが優柔不断な態度をとり続け、アメリカもリーダーシップを発揮しないままであれば、バルカンにおけるロシアの選択肢を模索するプーチン大統領を大胆にするだけだろう。ロシアが策略を用いることのできる対象はモンテネグロだけではない。すでにロシアはボスニア・ヘルツェゴビナのスルプスカ共和国(セルビア人共和国)への影響力も強化している。NATOが加盟問題を放置し続けているマケドニアでも状況は不安定化している。民族的に分裂したマケドニアで不満が高まれば、隣国のコソボにもその余波が及ぶ。・・・・

ダレス・バンディ兄弟と 東部エスタブリッシュメントの終焉

2014年8月号

ジョセフ・ナイ  ハーバード大学教授

戦後の米外交を取り仕切ったと言われるダレス兄弟そしてバンディ兄弟は純然たる名門出身のいわゆる「東部エスタブリッシュメント」を象徴する存在だった。ジョン・フォスター・ダレスは1953年にアイゼンハワー政権の国務長官に任命され、彼の弟のアレン・ダレスも同じ年にCIAの初代長官に就任した。マクジョージ(マック)バンディはケネディ政権とジョンソン政権の最初の2年間に大統領補佐官を努め、彼の兄ウィリアム(ビル)バンディは、アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン政権のCIA、ペンタゴン、国務省で高官ポストを歴任している。二組の兄弟に代表される東部エスタブリッシュメントの政策への影響力はどの程度で、米外交にどのような貢献があったのか、それとも弊害をもたらしたのか。彼らの特質そして問題は何だったのか。

国際金融システムの改革とブレトンウッズの教訓

2014年8月号

ベン・ステイル 米外交問題評議会シニアフェロー(国際経済担当)

1944年のブレトンウッズ会議の目的は米ドルを基盤とするグローバル金融の枠組みを考案することだったが、本質的に、それは債権国であるアメリカと債務国イギリスの取り決めだった。70年後の現在も、米ドルは世界の通貨・為替システムの中枢として、その屋台骨を支えている。しかし、1940年代とは違って、アメリカは世界最大の債務国となり、いまや中国が世界最大の債権国として台頭している。だが、アメリカ経済は依然として力を失ってはおらず、1940年代のイギリス経済のように助けを必要としてはいない。アメリカと中国は世界の通貨・為替システムを安定化させるための改革を進めることには必ずしも前向きではなく両国の改革がうまく調整されず、そのプロセスが対決的なものになりかねない。・・・今後、貿易摩擦はますます増えていくと考えられる。

中国の人工島造成戦略の意図は何か
―― 北京の戦略と南シナ海の混乱

2014年8月号

アンドリュー・エリクソン  米海軍大学准教授、オースチン・ストレンジ  ハーバード大学博士課程

中国はスプラトリー(南沙)諸島にあるかつては海水に隠れていたジョンソン南礁を、周辺から掘り出した海底の堆積物で埋め立て、人工島を誕生させている。他の礁や砂州でも同様の埋め立てを試みており、ファイアリー・クロス礁は言うまでもなく、クアテロン礁、ガベン礁、ジョンソン北礁でもすでに何らかの建造物の存在が確認されている。なぜ、中国はこのようなことをしているのか。自国の沿岸、あるいは島から200海里を排他的経済水域(EEZ)と規定する国際法で、自国の領有権の主張を強化するためだと考える専門家もいる。しかし、より重要なのは、アイランドビルディング(人工島造成)戦略によって、永続的なインフラを誕生させれば、軍事ネットワークを築き、スプラトリー諸島への領有権対立に対抗する戦略を多角化できるようになることだろう。いまや南シナ海の混乱のなかで新たな現実が急速に形作られつつある。

反政府勢力は武器を捨てよ
―― 武力は体制変革の効果的手段ではない

2014年8月号

エリカ・チェノウェス  デンバー大学国際研究大学院准教授、 マリア・J・スティーブン  米平和研究所上級政策研究員

抑圧体制に対して社会的・政治的変革を求めるには、ストライキやデモ、座り込み、ボイコットといった非暴力的な抵抗がもっとも効果的だ。力に訴える運動は極端な破壊や流血の惨事をもたらす上に、最終的に目標を達成できないことが多い。今もカイロからキエフまで混乱と恐怖が続いているが、平和的(非暴力的)市民運動の将来については楽観すべき理由が数多くある。たとえ体制側が武力弾圧を選んだ場合でも、非暴力運動が最終的な目標を達成する可能性は依然として50%近くに達する。これに対して暴力的な抗議行動が目標を達成する可能性は20%程度しかない。これは暴力的な抗議行動では、最終的な勝利に必要な大衆の支持や、体制側からの造反者を獲得しにくいからだ。

日米同盟の古くて新しい試金石
――中国の脅威をいかに抑え込むか

2014年8月号

ジェニファー・リンド ダートマス大学准教授

「日本が管轄する地域を防衛する」とワシントンが表明するだけでは、日米が直面する戦略的中核問題には対処できない。中国はこれまで通り日本をいたぶり、挑発するためのサラミ戦術を続行できる。ワシントンでは中国による日本の領空や領海の侵犯は厄介な行動とみなされている程度だが、東京では主権の侵害として深刻に受け止められている。このために、「アメリカはいざというときに守ってくれないかもしれない」という懸念が払拭されず、日米同盟は揺らいでいる。重要なのは、同盟関係を強化する一方で、同盟の分断を試みる中国の試みを押し返すことだ。そのためには、重要な利益とそうでない利益を区別する必要がある。尖閣をめぐる重要な利益とそうでない利益をいかに切り分けるか。そのヒントは冷戦期のベルリン危機へのケネディ政権の対応に求めることができる。・・・・

不満と反発が規定する世界

2014年8月号

マイケル・マザー 米国防大学教授

いまや世界の主要な安全保障リスクは、怒りや反発に支配された国や社会、あるいは、社会に疎外され、取り残されて不満を募らせる集団によって作り出されている。今後、安全保障上の脅威は、傷つけられたと感じ屈辱を抱く人々が、それを克服し、自分の価値を取り戻そうと試みるプロセスのなかで出現するようになるだろう。イラク、シリア、パキスタン、そしてヨーロッパ東部における最近の展開には、このトレンドが共通して認められる。ウラジーミル・プーチン大統領のウクライナにおけるパワープレイも、これまでロシアを軽くあしらってきた欧米に対する積年の恨みを映し出している。中国も例外ではない。不満や反発が中国社会に充満していることは、メディアの報道や大衆文化、さらには教科書の記述やラディカルなネチズンによる過激な書き込みからも明らかだ。さらに日本やインド、そして西ヨーロッパでもナショナリズムが台頭している・・・

トルコ国境とシリア内戦
―― なぜトルコはシリア政策を見直しているか

2014年8月号

カレン・レイ シリア・ディープリー編集長

シリアが内戦に陥って以降、トルコ政府はシリアの反政府勢力がトルコ南部を兵士や物資の調達ルートとして利用することを認めてきた。問題は、穏健派集団とヌスラ戦線やイラク・シリア・イスラム国(ISIS)などのジハード主義集団を区別しなかったことだ。これによって、トルコと欧米との関係も悪化した。ここにきてアンカラがヌスラ戦線をテロ組織と認定したことで、欧米との関係は少しばかり改善するかもしれない。だが、ヌスラ戦線をこの段階で切り捨てても、もはや、シリアにおけるイスラム過激派の拡大を抑え込むのは難しいだろう。一方では、シリア難民の大規模な流入によって、トルコは大きなコスト負担を余儀なくされており、トルコ市民の苛立ちは高まっている。・・・・

なぜ国は分裂するのか
―― 国境線と民族分布の不均衡

2014年8月号

ベンジャミン・ミラー ハイファ大学教授(国際関係論)

「戦争か平和か」が問われる事態となると、民族集団は、国内のライバル集団よりも、他国における宗教・民族的な同胞と共闘しようとする。ウクライナ市民の多くは、自分たちにとって「異質なロシア」の支配から独立することを望んでいるが、一方でクリミアやウクライナ東部に暮らす人々は、(欧米志向の)「異質なウクライナ」による支配からの解放を望み、ロシアの一部となるか、ロシアと深く結びついた国を作る必要があると考えている。中東でも同じストーリーが展開している。すべてのレバント諸国は、シリアの内戦をめぐって内に分裂を抱えている。スンニ派国家はスンニ派率いる武装勢力に戦士、武器、資金を供給し、シーア派国家は、(シーア派の分派とみなせる)アラウィ派のアサド政権に同様の支援を提供している。こうした国と民族の間の不均衡を解決するには、さまざまな方法があるものの、厄介なのはそのすべてが問題を伴うことだ。

ウクライナにおけるロシアの戦争
―― 撃墜事件が明らかにしたロシアの軍事介入

2014年8月号

アレクサンダー・J・モティル ラトガース大学教授(政治学)

マレーシアの民間航空機撃墜事件によって、アメリカとヨーロッパは不快な現実を直視せざるを得なくなった。それはロシアが実質的にウクライナとの戦争に関与していることだ。もはやウクライナ軍が戦っている相手は、国内の武装勢力・分離主義勢力ではない。そこにいるのはロシア軍の指揮統制下にあるロシアの兵器で武装したロシア兵だ。これまでヨーロッパ人が長く想定していなかった本当の戦争が、現にヨーロッパ大陸の東端で起きている。

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