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論文データベース(最新論文順)

トルコ国境とシリア内戦
―― なぜトルコはシリア政策を見直しているか

2014年8月号

カレン・レイ シリア・ディープリー編集長

シリアが内戦に陥って以降、トルコ政府はシリアの反政府勢力がトルコ南部を兵士や物資の調達ルートとして利用することを認めてきた。問題は、穏健派集団とヌスラ戦線やイラク・シリア・イスラム国(ISIS)などのジハード主義集団を区別しなかったことだ。これによって、トルコと欧米との関係も悪化した。ここにきてアンカラがヌスラ戦線をテロ組織と認定したことで、欧米との関係は少しばかり改善するかもしれない。だが、ヌスラ戦線をこの段階で切り捨てても、もはや、シリアにおけるイスラム過激派の拡大を抑え込むのは難しいだろう。一方では、シリア難民の大規模な流入によって、トルコは大きなコスト負担を余儀なくされており、トルコ市民の苛立ちは高まっている。・・・・

なぜ国は分裂するのか
―― 国境線と民族分布の不均衡

2014年8月号

ベンジャミン・ミラー ハイファ大学教授(国際関係論)

「戦争か平和か」が問われる事態となると、民族集団は、国内のライバル集団よりも、他国における宗教・民族的な同胞と共闘しようとする。ウクライナ市民の多くは、自分たちにとって「異質なロシア」の支配から独立することを望んでいるが、一方でクリミアやウクライナ東部に暮らす人々は、(欧米志向の)「異質なウクライナ」による支配からの解放を望み、ロシアの一部となるか、ロシアと深く結びついた国を作る必要があると考えている。中東でも同じストーリーが展開している。すべてのレバント諸国は、シリアの内戦をめぐって内に分裂を抱えている。スンニ派国家はスンニ派率いる武装勢力に戦士、武器、資金を供給し、シーア派国家は、(シーア派の分派とみなせる)アラウィ派のアサド政権に同様の支援を提供している。こうした国と民族の間の不均衡を解決するには、さまざまな方法があるものの、厄介なのはそのすべてが問題を伴うことだ。

ウクライナにおけるロシアの戦争
―― 撃墜事件が明らかにしたロシアの軍事介入

2014年8月号

アレクサンダー・J・モティル ラトガース大学教授(政治学)

マレーシアの民間航空機撃墜事件によって、アメリカとヨーロッパは不快な現実を直視せざるを得なくなった。それはロシアが実質的にウクライナとの戦争に関与していることだ。もはやウクライナ軍が戦っている相手は、国内の武装勢力・分離主義勢力ではない。そこにいるのはロシア軍の指揮統制下にあるロシアの兵器で武装したロシア兵だ。これまでヨーロッパ人が長く想定していなかった本当の戦争が、現にヨーロッパ大陸の東端で起きている。

ガザ侵攻とイスラエルの戦略的敗北
―― ハマスはすでに勝利を手にしている

アリエル・イラン・ロス イスラエル・インスティチュート エグゼクティブ・ディレクター

ハマスとイスラエルの紛争がいつどのような形で決着しようと、イスラエルが戦術的な勝利を収めること、そして戦略的に敗北を喫することはすでに明らかだ。イスラエル側は、「今回の紛争の終結時に有利な政治状況は作り出せないかもしれないが、少なくともハマスが戦略目的を達成することはない」と考えているようだ。「イスラエル人の犠牲者が少ない以上、それはハマスの敗北を意味する」と。だが、この見方は間違っている。ハマスの戦略目的は「イスラエル人の日常を揺るがすこと」にある。「パレスチナ問題が政治的膠着状態に陥っても、大きなコストを抱え込むことはない」というイスラエル市民の幻想はすでに突き崩されている。しかも、ハマスのロケット攻撃の被害者としてのイスラエルは、侵攻策をとったことでいまや加害者とみなされている。・・・・

ロシアと民間航空機撃墜事件

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会シニアフェロー

ロシアの指導者、政策決定者、外交官たちは、おそらくこの数十年、あるいは半世紀というスパンでみても、もっとも困難な事態に直面している。プーチンは身動きのとれない状況に追い込まれている。(民間航空機撃墜)事件との関わりを否定したが、前言を覆さざるを得ない状況に追い込まれつつある。これは、血気盛んな軍事要員が軍事ターゲットと民間航空機を誤認して撃墜してしまったとして片付けられる問題ではない。致命的な間違いは、クリミアのケースを前提に、親ロシア派の軍事能力を強化し続けても、代価を支払わされることはないとプーチンが考えてしまったことだろう。結局、今回の事件で、ロシアがウクライナにおける内戦を煽り立てていたことが白日の下にさらされてしまった。(聞き手はバーナード・ガーズマン、consulting editor, cfer.org)

イラクの混乱と石油市場

2014年8月号

ジョン・スファキアナキス MASIC チーフインベストメントストラテジスト

スンニ派武装勢力の攻勢がイラク原油の供給を混乱させ、原油価格は大きく変動することになるのか。すでに原油価格は過去10カ月で最高のレベルへと上昇している。しかし、パニックに陥る必要はない。仮にイラクからの輸出が今後長期的に大きく混乱しても、需給ギャップを埋めるためにできることは数多くある。その最大のツールがサウジの生産調整能力だ。しかも、産油国の財政を均衡させるために必要とされる原油産出(輸出)レベルは上昇し続けている。リヤドは、イラク危機が供給の混乱を生じさせるかどうかに関係なく、自国の財政上の理由から生産を強化せざるを得ない状況にある。・・・

中韓は戦略的パートナーになれるか
――北朝鮮、日本、アメリカと中韓関係

スコット・スナイダー 米外交問題評議会シニアフェロー

東京では、「韓国はアメリカや日本との関係よりも中国との関係を優先させるのではないか」と考えられている。だが、両国の経済関係の深化をバックに、習近平と朴槿恵が今後の中韓関係をどのように形作っていくつもりなのか、そしてその目的をどこに据えているのかは、依然としてはっきりない。韓国は半島統一に向けた主導権をとりたいと考え、一方、中国は北朝鮮を完全に見捨てるのを躊躇っている。日本の歴史問題をめぐっても、中国は韓国との共闘路線に前向きだが、韓国はむしろ日本との問題はアメリカを交えて対処したいと考えている。・・・

米金融政策の国際的衝撃
―― 量的緩和縮小と新興国経済

2014年8月号

ベン・ステイル 米外交問題評議会シニアフェロー

ユーロ圏以外の世界の貿易決済の大部分、そして外貨準備の60%には依然として米ドルが利用されており、当然、FRBの金融政策の変更は、グローバル市場に瞬時に大きな影響を与え、途上国へのキャピタルフローを極端に変化させ、途上国通貨の米ドルに対する価値は激しく変動する。この意味において、途上国の金融政策上の主権は事実上形骸化している。実際、連邦準備制度が資産の買い入れを縮小していくと示唆しただけで、投資家が資金を途上国から引き揚げて米国内の安全な投資先へと移動させたために、途上国の債券・通貨市場は大きな混乱に陥った。問題は、連邦準備制度が政策の判断にその国際的余波を考慮することは法的に想定されていないこと。そして、IMFを別にすれば、その余波を防ぐためのチェンマイ・イニシアティブやBRICS開発銀行構想が依然として実体を伴っていないことだ。・・・

CFR インタビュー
イラクの混迷と流動化
― 分裂か統合の維持か

グレゴリー・ゴース ブルッキングス研究所ドーハセンター シニアフェロー

バグダッドを攻略し、多くの石油資源が存在する南部を支配し、新たに政府を樹立することがイラク・シリア・イスラム国(ISIS)にとっての勝利の定義だとすれば、彼らが勝利を収めることはあり得ない。そうした目的を実現するにはISISの組織規模は小さすぎるし、すでに多数派であるシーア派は対抗戦略をまとめている。問題は、マリキ首相がスンニ派の政治家だけでなく、一部のシーア派の同盟勢力も切り捨て、影響力を抑え込み、権力を一元的に管理していることだ。マリキ個人の問題だけでなく、サダム・フセイン時代に遡るイラクの民族・宗派間の対立が根深いことも考慮する必要がある。要するに、イラクの政治階級は国をうまくまとめられずにいる。今回の危機をきっかけに、互いに対する反感を克服し、ISISの脅威に対抗できる政府を形作れる可能性は低いだろう。(報道によれば、ISISは6月下旬に「カリフ」を指導者とするイスラム国家を樹立すると一方的に宣言し、クルド自治政府も6月下旬に、今後の政治状況を見極めた上で、独立を目指す考えを示している)。・・・・(聞き手はMohammed Aly Sergie、Online Writer/Editor)

漂流するロシアの自画像
―― プーチンとソビエトの遺産

2014年8月号

キース・ゲッセン n+1誌共同編集長

「何が普通の国なのか」について、ロシアにはいまもコンセンサスが存在しない。ゴルバチョフはロシアを普通の国にすることを目標に掲げ、反ゴルバチョフクーデターを試みたゲンナジー・ヤナーエフもロシアを「普通の国に戻すこと」を主張した。ヤナーエフは過去に回帰することを普通の生活を取り戻す道筋と考え、ボリス・エリツィンは「西ヨーロッパの規範」を普通とみなした。しかしエリツィンがその構想の詳細を明らかにすることはなかった。結局のところ、多くのロシア人はスターリン時代に郷愁を感じている。だが、大多数のロシア人がプーチンを支持しているとはいえ、支持者の半分はスターリンを嫌い、残りの約半分はスターリンに心酔している。これはスターリンとは違うからプーチンを支持する人もいれば、スターリンと似ているからプーチンを支持する人もいることを意味する。・・・

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