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論文データベース(最新論文順)

「イスラム国」の衝撃
―― 包括的空爆作戦の実施を

2014年9月号

バラク・マンデルソーン  ハーバーフォード大学准教授(国際政治)

「イスラム国」はイラクでの最近の軍事的成功を追い風に、シリアでも支配地域の拡大を試み、数日間だったとはいえ、レバノンの国境地帯の町アルサルさえも攻略した。自信を深めた彼らは、いまやイラク、シリア、レバノンの軍隊を相手に戦闘を繰り広げている。その目的は、支配地域を拡大し、戦費を調達するのに有用な石油施設やダムを押さえ、厳格なイスラム主義を制圧地域住民に強要し、ジハード主義集団内で自分たちの優位を確立することにある。すでにアルカイダ系のジハード組織のメンバーが「イスラム国」に参加しつつあることを米情報機関は確認しており、今後、その流れはますます大きくなっていくと考えられる。「イスラム国」の拡大をこのまま放置すべきではない。「イスラム国」と正面から対峙するタイミングを先送りすればするほど、その対応コストは大きくなる。

需要を喚起する新しい金融政策
―― キャッシュトランスファーの導入を

2014年9月号

マーク・ブリス  ブラウン大学教授 、エリック・ロナーガン  M&Gインベストメンツ マネジャー

中央銀行は21世紀の経済を1世紀前に考案された政策で管理しようと試み、思うように変化しない現実に直面している。リセッションは経済の健全性を取り戻すための必要悪であるとか、あるいは、それなりの価値があると考えるのでない限り、政府は一刻も早くリセッションを終わらせるために手を尽くすべきだし、ここで提言する中央銀行によるキャッシュトランスファーはそれを実現する非常に効果的なやり方だ。市民にキャッシュを提供すれば消費を直ちに喚起できる。しかもインフラプロジェクトや法制化を必要とする税法の改正や税率の見直しなどとは違って、中央銀行の決断だけでキャッシュトランスファーは実施できる。金利の引き下げとは違って、需要を直ちに喚起できるし、金融市場や資産価格を歪めることもない。コースを変化させる上で必要なのは、新しいものを試みる勇気、知力、そしてリーダーシップだ。

政治的期待と市場の熱狂
―― なぜ政治家への期待が市場に反映されるのか

2014年9月号

ルチル・シャルマ  モルガンスタンレー グローバル・マクロ分析統括者

これまで長く、GDP成長率、雇用、貿易などの経済統計数値を基に判断を下してきた市場プレイヤーたちも、各国の政治家のリーダーシップに目を向け、世論データと選挙動向に注目するようになった。新しいアイデアをもつ指導者、特に経済改革を推進するポテンシャルを秘めた新しい指導者が登場すれば、投資家や市場の期待は大きくなる。実際、近年の日本やメキシコ等の株式相場は、新しい政治家の登場に派生する変化への期待だけで上昇している。こうした政治指導者への期待に派生する一連の市場的熱狂のなかのどれが長期的な経済成長へとつながっていくかを予測するのは時期尚早だが、株式市場の動向が実体経済の行方を予測していることが多いのは歴史が示すとおりだ。

対ロ経済制裁と日本のジレンマ
――制裁で変化するアジアのパワーバランス

2014年9月号

イーライ・ラトナー /ニューアメリカンセキュリティ研究所シニアフェロー
エリザベス・ローゼンバーグ/ニューアメリカンセキュリティ研究所シニアフェロー

ウクライナ危機がさらに深刻化すれば、ワシントンはモスクワに対する制裁措置をさらに強化するかもしれない。しかし、ロシアを孤立させるための経済制裁は、必要以上に大きなコストをヨーロッパだけでなく、アジアの同盟国にも強いることになる。そうした対ロシア関係のバランスの崩壊にもっとも苦しんでいるのが日本だ。ワシントンは、ウクライナ危機をきっかけにロシアと中国が関係を深めていくことを懸念している。しかし、そのような事態を避けたいのなら、インド、日本、ベトナムなどの中国を潜在的敵対国とみなしている諸国が、ロシアと良好な関係を育んでいけるように配慮すべきだ。いかなる尺度でみても、「弱体化した日本」と「強固な中ロ関係」という組み合わせが、アメリカにとって好ましいものになることはあり得ないのだから。

レバノン化する中東
―― 重なり合う宗派主義と地政学の脅威

2014年9月号

バッサル・F・サルーク レバノン・アメリカ大学准教授(政治学)

2014年は中東におけるリアリストの地政学抗争に感情的な宗派対立が重なり合う新しい地域秩序が誕生した時代としていずれ記憶されることになるかもしれない。宗派対立へと中東の流れを変化させるきっかけを作り出したのは、2003年のアメリカのイラク戦争だった。その後、地政学抗争と宗派アイデンティティの重なり合いはシリア内戦によってさらに固定化され、これが紛争の破壊性と衝撃を高めている。最近のイラクにおける「イスラム国」(ISIS)の軍事攻勢と勝利も、「排他的で視野の狭い宗派、民族、宗教、部族主義の政治化」という2003年以降のトレンドを映し出している。いまや中東全域がレバノン化しつつある。

「イスラム国」の次なるターゲット
――欧米はテロに備えよ

2014年9月号

ロビン・シムコックス 英ヘンリー・ジャクソン・ソサエティ リサーチフェロー

「イスラム国」の制圧地域はヨルダンと同じ規模に達し、その後、彼らはカリフ統治領をシリア・イラク両国の制圧地域で樹立すると宣言した。軍事的攻勢を続けるなか、「イスラム国」は新たに兵士をリクルートし、武器と資金を手に入れて、短期間のうちに、テロ集団からテロ軍団へと姿を変えている。しかも、今後は欧米に矛先を向けるつもりのようだ。2014年に入って、「イスラム国」の指導者・アブバクル・バグダディは「われわれは近くアメリカとの直的対決路線をとる」と警告している。実際、ヨーロッパ人の殺害に懸賞金を出し、アメリカやヨーロッパに化学兵器を持ち込もうとしているようだ。「イスラム国」の野望がイラク・シリアの国境地帯を制圧することだけだと考えるべきではない。特に彼らのヨーロッパにおけるテロ計画を軽く見るべきではないだろう。

イギリスの暑い夏
――イギリスのEU脱退とスコットランド独立

2014年9月号

スティーブン・エランジャー ニューヨーク・タイムズ誌ロンドン支局長

キャメロン首相率いる保守党内の反ヨーロッパ派はEUからの脱退を求めており、2015年の総選挙で(欧州連合からの脱退を求め、最近の欧州議会選挙で大きな躍進を遂げた)イギリス独立党に多くの票を奪われるのではないかと警戒している。一方、親ヨーロッパの立場をとる労働党への支持率は低下している。一方でイギリスはスコットランドの分離独立問題も抱えている。イギリスからの分離・独立を問う住民投票が9月18日にスコットランドで実施される。石油と天然ガス資源を有するスコットランドは、国家として自立できる財源をもっているが、不安は尽きない。分離独立したほうが暮らし向きはこれまでよりも良くなるか、悪くなるか、通貨はどうするのか、そしてEUのメンバーシップをめぐってもさまざまな論争が展開されている。・・・(聞き手はバーナード・ガーズマン、Consulting Editor, cfr.org)

スコットランドの独立
―― 「独立にイエス」の可能性は

2014年9月号

マーク・ブリス ブラウン大学教授

スコットランドは「自分たちが支持しなかった政党が英政府を組織するという」民主的欠陥の問題に頭を抱えてきた。しかも、ロンドンとは違って、エジンバラは、緊縮財政に反対して福祉国家の実現を模索し、ヨーロッパ、欧州連合との関係を維持したいと考えている。一方、独立反対派が問題にしているのは独立の経済コストだ。しかし、人々の判断を最終的に左右するのはコスト、リスク、不確実性ではない。これまでとは異なる未来を実現するためのアイディアだ。この意味で、独立がいかなるコストを伴うかについての警告を独立支持派が無視したとしても、驚くべきことではない。これまでとは違う未来をたぐり寄せたいスコットランド人にとって、お金が問題ではないのだから。

ガザ地区封鎖の解除を
―― 第3次インティファーダを回避するには

2014年9月号

カレド・エルギンディ ブルッキングス研究所フェロー

第2次インティファーダを「われわれが犯した最大の間違いの一つ」とみなすパレスチナ自治政府のアッバス議長は、インティファーダ(暴力的抵抗路線)を復活させれば、前回同様にイスラエルの激しい対応を招き入れ、アメリカとの関係も悪化することを理解している。一方、ハマスも抵抗路線を西岸へと広げるよりも、イスラエルとの紛争が終わった後は傷を癒やして、ガザにおける立場の再建に専念したいと考えている。だが近いうちに、二つのグループはイスラエルに対する全面的な抵抗路線をとることへのためらいを払拭するかもしれない。別の言い方をすれば、現在進行しているガザでの戦争を前に、ハマスとファタハは異なるアジェンダをそれぞれが追い求めることの不毛を理解するようになるかもしれない。イスラエルもエジプトも、ハマスを信頼していない以上、第3次インティファーダを回避するには、ガザ地区の封鎖を解除し、その境界線をパレスチナ自治政府に監視させるしか手はないだろう。

エボラ・アウトブレイク
――感染の封じ込めを阻むアフリカの政治と文化

2014年9月号

ジョン・キャンベル 米外交問題評議会シニアフェロー(アフリカ政策担当)
ローリー・ギャレット 米外交問題評議会シニアフェロー(グローバルヘルス担当)
ロバート・マクマホン Editor, CFR.org

感染者が大量に出血しているときには、内部だけでなく、体外にも出血する。目、鼻、口、肛門、性器などのあらゆる部分から出血し、体液が出てくる。これらにウイルスが含まれている。この意味で、感染者の隔離、遺族たちが死体と接触しないようにすること、土葬ではなく火葬にすること、そして土葬せざるを得ない場合も地中深くに死体を埋めて、いかなる人物もウイルスに感染しないようにすることが重要だ。・・・だが現地の文化的伝統、風習がこれを阻んでいる。・・・医療関係者たちは、社会的に孤立し、現地の人々から軽蔑され、嫌われていると感じている。(L・ギャレット)

ギニア、シエラレオネ、リベリアは非常に弱い国家であることを認識する必要がある。いずれも長く続いた内戦を経験している。これらの地域の一部は、政府の指令を徹底できない状態にある。これら3カ国が急速な都市化を経験していることにも目を向ける必要がある。ますます多くの人が・・・都市部のスラムでひしめき合うように暮らしている。この環境では、エボラ出血熱に限らず、あらゆる病気が蔓延しやすい。(J・キャンベル)

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